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第2章 おばあちゃんと化け猫
遠い記憶
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立川さんは僕らにお茶を出してくれた。通された居間は昔ながらの和室で、部屋の一画には仏壇があった。そこには、優しい笑顔で笑うおじいさんが写っていた。立川さんの旦那さんだろうか。
お茶と一緒に出された茶菓子は、餡であんこを包み込んだ、繊細なつくりの和菓子だった。ノラさんはそれを、つまようじを使い上手に食べている。立川さんはそれを、楽しそうに見ている。
絵を描きに来たはずなのに、こんなに振舞ってもらっていいんだろうか。居心地悪そうにしてるのが伝わったのか、立川さんが優しく声をかけてくれる。
「どうぞ召し上がって。ノラちゃんが来た時はね、いつもこうやってお菓子を食べる事から始めるの」
「そうなんですね。このお菓子、すごく美味しいです」
「有難う。ノラちゃんグルメさんだから、買う時すごい厳選してるの」
立川さんの言葉に、「食い意地はってるみたいに言うな」とノラさんからツッコミが入ってくる。立川さんはそれにクスクス笑う。
一息つくと、絵を描く事になった。どこがいいか悩んだが、庭を背にした構図になった。立川さんは座椅子に座り、その膝の上でノラさんを抱えた。ノラさんは嫌がる事なく、すっぽりとおさまる。
「うふふ。嬉しいわぁ。こんな風に絵を描いてもらうなんて、はじめて」
「ブサイクに描くなよ」
「はい!」
俺は下敷きにしていい新聞紙をもらい、その上に画材を広げていく。そうして、キャンパスに色を置き始める。こうして向き合うと、立川さんの細さが際立つ。その姿に、遠い記憶が重なった。俺はその記憶を振り払いたくて、目の前の人物に話しかける。
「あの、立川さん」
「良かったら、下の名前で呼んで。皆からは、そめばあ、とか、そめさんって呼ばれてるの」
「あ、じゃあ、そめさんで。そめさんは、妖怪がいつから見えるようになったんですか?」
俺が尋ねると、「物心ついた時から」とそめさんは答えてくれた。
そうして、彼女が見てきた妖怪たちについて、話し始めてくれた。
お茶と一緒に出された茶菓子は、餡であんこを包み込んだ、繊細なつくりの和菓子だった。ノラさんはそれを、つまようじを使い上手に食べている。立川さんはそれを、楽しそうに見ている。
絵を描きに来たはずなのに、こんなに振舞ってもらっていいんだろうか。居心地悪そうにしてるのが伝わったのか、立川さんが優しく声をかけてくれる。
「どうぞ召し上がって。ノラちゃんが来た時はね、いつもこうやってお菓子を食べる事から始めるの」
「そうなんですね。このお菓子、すごく美味しいです」
「有難う。ノラちゃんグルメさんだから、買う時すごい厳選してるの」
立川さんの言葉に、「食い意地はってるみたいに言うな」とノラさんからツッコミが入ってくる。立川さんはそれにクスクス笑う。
一息つくと、絵を描く事になった。どこがいいか悩んだが、庭を背にした構図になった。立川さんは座椅子に座り、その膝の上でノラさんを抱えた。ノラさんは嫌がる事なく、すっぽりとおさまる。
「うふふ。嬉しいわぁ。こんな風に絵を描いてもらうなんて、はじめて」
「ブサイクに描くなよ」
「はい!」
俺は下敷きにしていい新聞紙をもらい、その上に画材を広げていく。そうして、キャンパスに色を置き始める。こうして向き合うと、立川さんの細さが際立つ。その姿に、遠い記憶が重なった。俺はその記憶を振り払いたくて、目の前の人物に話しかける。
「あの、立川さん」
「良かったら、下の名前で呼んで。皆からは、そめばあ、とか、そめさんって呼ばれてるの」
「あ、じゃあ、そめさんで。そめさんは、妖怪がいつから見えるようになったんですか?」
俺が尋ねると、「物心ついた時から」とそめさんは答えてくれた。
そうして、彼女が見てきた妖怪たちについて、話し始めてくれた。
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