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第1章 たぬきさんとパンケーキ
かげ
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電車に乗りやって来たのは、若い女性に人気のパンケーキ店。店内は白い壁と茶色の家具をベースにしており、シンプルな作りだ。
平日だからか、そんなに待たずに入れた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
店員が満面の笑顔を浮かべ尋ねてくれる。ヤイさんもそれに笑顔で答えた。
「四人です」
「四名様ですね。では、こちらのお席へどうぞ」
案内されたテーブルは四人がけだが、少し大きめのテーブルで椅子も座り心地がいい。荷物を置けるよう、床にカゴが置かれている。
テーブルも綺麗にセッティングされていて、砂糖などが入ってる小物は可愛い小人が描かれている。店内の隅々にその小人や観葉植物が置かれていて、どこか癒される。
店員の接客も良いし、なるほど。さすが人気店だ。
「タカヒロ、何にする?」
ヤイさんに聞かれ、我にかえる。接客業のバイトをしてるせいか、ついつい変な目で見てしまう。
「えーとじゃあ、チョコバナナのを」
「飲み物は? セットに出来るみたいだけど」
「カフェオレにします」
「分かった。すみません」
ヤイさんは目が合った店員に声をかけ、四人分の注文を伝えていく。その姿がなんともスマートで、惨めさも忘れただ尊敬の眼差しを向ける。
バイト中は社交度を上げれるが、日常生活ではどうしても縮こまってしまう。
「楽しみだわぁ」
「な! メニュー見ると俄然テンション上がるなぁ」
田貫さんご夫婦はとても楽しそうだ。奥さんはこの店一番人気のたくさんの苺とホイップクリームが乗ったパンケーキ、旦那さんはくるみが練りこまれたパンケーキを頼み、ヤイさんはデザートプレートを頼んだ。
しかし……周りを見ると、やはり女性やカップルが多い。この四人は周りから見たらどんな風に見えるんだろうか。気になり周りを見ると、チラチラ女性がこちらを見てる事に気づく。
やっぱり悪目立ちしてるのか……
俺が不安に思ってると、ヤイさんと田貫の旦那さんが頼まれたアイスコーヒーが運ばれてきた。
「ありがとうございます」
受け取る時ヤイさんが笑顔で礼を言うと、店員さんは少し緊張した様子でお辞儀した。それで周りの視線の原因に気づく。
「旦那、気にする事ないですよ。旦那も魅力的ですよ」
俺の思考に気づいたのか、いつのまにか肩に乗ってた八矢が慰めてくる。いや、べつに何も気にしてないんだが。
「ヤイくん、どう? 今の生活はもう慣れた?」
田貫さんの奥さんが、ヤイさんに尋ねる。どうやら客であり、知り合いでもあるらしい。
「なかなか。でも今、こうして自分でも出来る事を見つけて、頑張っていこうと思えてます」
その言葉に、ヤイさんを見る。彼の表情は、変わらない。穏やかに笑っている。
でも、気のせいだろうか。
一瞬、陰が見えた気がした。
平日だからか、そんなに待たずに入れた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
店員が満面の笑顔を浮かべ尋ねてくれる。ヤイさんもそれに笑顔で答えた。
「四人です」
「四名様ですね。では、こちらのお席へどうぞ」
案内されたテーブルは四人がけだが、少し大きめのテーブルで椅子も座り心地がいい。荷物を置けるよう、床にカゴが置かれている。
テーブルも綺麗にセッティングされていて、砂糖などが入ってる小物は可愛い小人が描かれている。店内の隅々にその小人や観葉植物が置かれていて、どこか癒される。
店員の接客も良いし、なるほど。さすが人気店だ。
「タカヒロ、何にする?」
ヤイさんに聞かれ、我にかえる。接客業のバイトをしてるせいか、ついつい変な目で見てしまう。
「えーとじゃあ、チョコバナナのを」
「飲み物は? セットに出来るみたいだけど」
「カフェオレにします」
「分かった。すみません」
ヤイさんは目が合った店員に声をかけ、四人分の注文を伝えていく。その姿がなんともスマートで、惨めさも忘れただ尊敬の眼差しを向ける。
バイト中は社交度を上げれるが、日常生活ではどうしても縮こまってしまう。
「楽しみだわぁ」
「な! メニュー見ると俄然テンション上がるなぁ」
田貫さんご夫婦はとても楽しそうだ。奥さんはこの店一番人気のたくさんの苺とホイップクリームが乗ったパンケーキ、旦那さんはくるみが練りこまれたパンケーキを頼み、ヤイさんはデザートプレートを頼んだ。
しかし……周りを見ると、やはり女性やカップルが多い。この四人は周りから見たらどんな風に見えるんだろうか。気になり周りを見ると、チラチラ女性がこちらを見てる事に気づく。
やっぱり悪目立ちしてるのか……
俺が不安に思ってると、ヤイさんと田貫の旦那さんが頼まれたアイスコーヒーが運ばれてきた。
「ありがとうございます」
受け取る時ヤイさんが笑顔で礼を言うと、店員さんは少し緊張した様子でお辞儀した。それで周りの視線の原因に気づく。
「旦那、気にする事ないですよ。旦那も魅力的ですよ」
俺の思考に気づいたのか、いつのまにか肩に乗ってた八矢が慰めてくる。いや、べつに何も気にしてないんだが。
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「なかなか。でも今、こうして自分でも出来る事を見つけて、頑張っていこうと思えてます」
その言葉に、ヤイさんを見る。彼の表情は、変わらない。穏やかに笑っている。
でも、気のせいだろうか。
一瞬、陰が見えた気がした。
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