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第1章 たぬきさんとパンケーキ
ヤイさんは変幻自在
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約束の十時。
俺は公園に来ていた。
画材はヤイさんたちが持ち帰ったので、持っているのは必要最小限の貴重品だけだ。
ダウンジャケットを着てきたが、寒くて身震いする。
「やぁ、待たせたね」
ヤイさんの声がしたので顔をあげ、そうして目の前の相手を凝視する。
「では行こうか。客との待ち合わせ場所はこの前と同じ、歩道橋だ」
「あの」
「ん?」
「ヤイさん……ですか?」
尋ねると、目の前の男は少し不満気に眉をひそめた。
「もう忘れたのかい?」
「いやあの、その姿……」
俺の指摘に、ようやくヤイさんは気づいたようだ。「ああ」と呑気に笑う。
「今日は人間に化けれる方たちだからね。俺も合わせて人間の姿をしてるんだ」
そう笑う男は、黒髪短髪のさわやか好青年だった。美男子なのに変わりはないが、以前のような神秘さはない。紺色のコートに、黒いズボンとブーツ。長身で、まるでモデルのようだ。
俺は自分の姿を省みる。ズボンはシワがついてるし、ダウンジャケットで着膨れしている。
「人間やめたくなってきた……」
「さぁ早く行こう。落ち込むのは家に帰ってからにしなさい」
俺は少し感じた惨めさに蓋をしつつ、ヤイさんの後につづいていく。
「前回は君がぐずった為先にお客さんが到着してしまっていたが、本来ならこうして客を迎えるんだ」
歩道橋の上には、扉が立っている。まだお客さんは来ていないようだ。
「あの、本日は一体どんな妖怪が」
「来るよ」
その声を合図に、ドアのまわりに暗雲が立ち込める。まるで恐ろしい魔物が来る時みたいだ。
俺は思わずヤイさんの後ろに隠れる。するとそこで、雷が鳴った。
「ヒィぃっ」
「田貫さん、ようこそいらっしゃいました」
叫ぶ俺とは対照的に、ヤイさんは営業スマイルで出迎える。
「やぁヤイさん、今日はよろしくお願いします」
八矢と共にドアを超えて来たのは、二匹のタヌキだった。
俺は公園に来ていた。
画材はヤイさんたちが持ち帰ったので、持っているのは必要最小限の貴重品だけだ。
ダウンジャケットを着てきたが、寒くて身震いする。
「やぁ、待たせたね」
ヤイさんの声がしたので顔をあげ、そうして目の前の相手を凝視する。
「では行こうか。客との待ち合わせ場所はこの前と同じ、歩道橋だ」
「あの」
「ん?」
「ヤイさん……ですか?」
尋ねると、目の前の男は少し不満気に眉をひそめた。
「もう忘れたのかい?」
「いやあの、その姿……」
俺の指摘に、ようやくヤイさんは気づいたようだ。「ああ」と呑気に笑う。
「今日は人間に化けれる方たちだからね。俺も合わせて人間の姿をしてるんだ」
そう笑う男は、黒髪短髪のさわやか好青年だった。美男子なのに変わりはないが、以前のような神秘さはない。紺色のコートに、黒いズボンとブーツ。長身で、まるでモデルのようだ。
俺は自分の姿を省みる。ズボンはシワがついてるし、ダウンジャケットで着膨れしている。
「人間やめたくなってきた……」
「さぁ早く行こう。落ち込むのは家に帰ってからにしなさい」
俺は少し感じた惨めさに蓋をしつつ、ヤイさんの後につづいていく。
「前回は君がぐずった為先にお客さんが到着してしまっていたが、本来ならこうして客を迎えるんだ」
歩道橋の上には、扉が立っている。まだお客さんは来ていないようだ。
「あの、本日は一体どんな妖怪が」
「来るよ」
その声を合図に、ドアのまわりに暗雲が立ち込める。まるで恐ろしい魔物が来る時みたいだ。
俺は思わずヤイさんの後ろに隠れる。するとそこで、雷が鳴った。
「ヒィぃっ」
「田貫さん、ようこそいらっしゃいました」
叫ぶ俺とは対照的に、ヤイさんは営業スマイルで出迎える。
「やぁヤイさん、今日はよろしくお願いします」
八矢と共にドアを超えて来たのは、二匹のタヌキだった。
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