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迷宮探究編
41.二人っきりの秘密
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「ったくマジで信じられーん!!」
朝から不機嫌に、私は朝食のパンを口に突っ込んだ。
「散々人のこと振り回してよぉ!なーにがベッドの上の帝王学じゃ!私が臣下だったらマジで謀反してるわ!そう思うだろ!なぁ?!」
「朝っぱらからうるっさいわね。いいじゃない、結果的に女王陛下と同衾せずに済んだんだから」
「それとこれとは!乙女心弄びやがって!」
おかげでこっちは【発情】だの【欲情】だの【避妊】だのとかいうスキルを手に入れる始末!!
なんだ【避妊】って生えてねーよ!!
ほとんど淫魔だぞこんなもん!!
「次会ったらもうヒィヒィ言わせてやる!」
「おーおーイキがってるわね」
「ねえねえシャーリーお姉ちゃん、同衾ってなーに?」
おおぅ…子どもの純粋無垢な質問。
頼むよシャーリー上手い具合に。
「好きな人同士で一緒に寝ることですよ」
うむ、よき。ぜーんぜん間違ってない。
「じゃあ今日はお姉ちゃんと同衾するー!」
「私もしたいですー」
「ふぅ…子どもに性を教えるのは大人の役目ってことでいいよね?」
「キリッとすんな」
「あでっ!パン投げんな食べ物で遊ぶんじゃねーこのやろー…って、師匠はともかくアルティもまだ寝てんの?」
「そうみたいね。疲れてるんじゃない?誰かさんのせいで」
くっそニヤニヤしやがって…だいたい処女だろドロシー貴様…
気恥ずかしさをごまかすのにパンを齧ると、ドアが開いてアルティがやって来た。
「おふぁようございまふ…」
「おはようございます、アルティさん」
「おはよーお姉ちゃん」
「おはようございます」
あくびしてるの可愛い…
てか、あれ?今日なんか一段と可愛くね?
女神が寝ぼけて地上に降り立ったかと思ったんだが?
「あ」
「あ、おはよ…アルティ」
「おはようございますリコちゃん…………はっ!!あ、いや、今のは違っ…リ、リコ…!」
「はいリコリスです」
可愛すぎて死ぬて…
ヤッベぇ…私、本当にアルティと…
うっわなんか恥ずかしくなってきた…
「はいはい。ノロケは後にしてあんたもご飯食べちゃいなさい」
「は、はい…いただきます。ふぁ…」
「眠たそうですね?昨夜は眠れませんでしたか?」
「リコリスのせいでね」
「やーめろやーもうー!」
「それもあるのですが…」
あるんかい。でも言うなそういうの。
「夜中に変な音がして。それが気になって寝付きが…ふあぁ」
「変な音?ドロシーのソロプレイか?」
どシンプルに中指立てられたんだが。
「何でしょう。カン…カン…という不気味な」
カン…カン…
「そう、ちょうどこういう…」
「なんだ?」
金属音…?
「誰かが藁人形に釘でも打ち込んでるとかじゃないだろうな」
「様子を見てきましょうか」
「あ、待ってシャーリー。私も行くよ」
私はシャーリーと共に、音が聞こえてくる方へ向かった。
カン…カン…
近付くに連れ大きくなる音。
「本当に誰かが呪いをかけてるとかだったら、どう対応するのが正解なんだろうか」
「気絶させるとか、では?」
「おぉ…理知的な見た目のわりに脳筋だな…」
慣れすぎて元暗殺者なの忘れるときあるわ。
「どうやら隣の墓地から聞こえてきているようですね」
「閑静だから音が響いたのか」
より一層怖いなと思いつつ、柵越しに様子を窺う。
すると…
「へ、へへ…」
見知った顔が、金槌と鑿を持って石の前で笑みを浮かべているところだった。
「エヴァ?」
「ゔぁぁぁぁ?!!」
奈落の大賢者ことエヴァ=ベリーディースは、心臓を激しく脈動させてこっちに振り返った。
「リリリ、リコリス、ちゃん…?!それにシャーリーさんも、な、なな、なんでこんなところに…?!」
「昨日隣に引っ越してきた」
とりあえず柵飛び越えて、と。
「エヴァこそ何やってんの?こんな墓地で」
「ぼ、墓地?!いやあの、ここ、私の屋敷で…」
「へ?」
「へ?」
「…………」
「…………ぐすっ、墓地です」
「うおおおゴメン!!マジで!!いやあまりにも雰囲気が暗くて人が住んでるとか思わなかったっていうか!!庭も石像とかがいっぱいで不気味だったっていうか…じゃねえ!!と、とにかくゴメン!!シャーリー、今すぐ引っ越しの挨拶持ってきて!!なんかいいやつ!!高っけー肉とか!!」
「かしこまりました」
「墓地って思われてたんだ…ハハ…どうも腐りかけの墓守です…」
「ゴメンって戻ってこいエヴァーーーー!!」
で、なんとか落ち着いて。
「それでエヴァは自分ちの庭で何やってんの?それ彫刻?自分で作ってるの?」
「あ、は、はい…」
あの音はこれを彫ってる音か。
よかった丑の刻参り的なのじゃなくて。
「しかし精巧な彫刻ですね」
「な。これマリスシャープリッパーでしょ?」
骨の一本、脊髄の一節、質感まで細かく再現されてる。
上手なんてレベルじゃなくて、今にも動き出しそうなくらいリアルだ。
しかもこれ、違うパーツを組み合わせてるんじゃなくて、一つの岩を彫ったやつみたいだし。
下手したら国宝認定されるぞ。
「む、昔から悩んだり考えごとするときとか、よく彫ってて…趣味っていうか、その」
「考えごと?もしかして、吐いたことまだ気にしてる?」
「ごごごごゴメンなさいゴメンなさい…新しい服買ってお詫びします…」
「いいってべつに。一昨日のことなんていちいち言わないよ」
「一昨日…?」
「うん」
「き、気付かなかった…もう一日経ってる…」
まさか…昨日からずっとやってたのか…?
ていうかそんなに悩んでたのかって、私は笑ってしまった。
「不器用っていうか、めんどくさいねエヴァって」
「ふグッ!!」
「けどおもしろい。可愛いと思うよ、そういうとこ。ニシシ」
「え、あ…はい…。……?あの、リコリスちゃん」
「なんだね?」
「なんか…変わりました?雰囲気が違う気が」
「ほ、ほへ?!ナ、ナンノコト、カネ?」
顔あっちぃ…
てかそういうのってわかるもん?気を付けよ…
全然やましいことはしてないんだけどね!
『リコ、ちゃん…』
いや、ちょっとはした…かな…
「そ、それより!いやー本当にすごいねこれ!うん!売れるレベル!」
「い、いえそれは、持っていくところが…」
「持っていくところ?」
「は、はい。あ、もしよかったらこの後一緒にどう…ですか?あ、予定があるなら全然…私ととか退屈だろうし…」
ふむ、店の方はプレオープンの日程決めの段階だし、後で顔を出せばいいか。
「よし、行こう。シャーリー、みんなを呼んできて。師匠も叩き起こしちゃえ」
「かしこまりました」
そんなわけで今日は、エヴァと一緒にお出かけだ。
しかし魔物の彫刻なんてどこに持っていくんだろう。
高く買ってくれるコレクターでもいるのかな?
一時間後。
私たち一行は、エヴァに連れられ街を歩いていた。
「…?アルティちゃんも、なんか雰囲気が…?」
「き、気のせいですが何か?!!」
「ひいいすみません!!」
後ろではドロシーが、
「はー最高に若返るわ」
とかツヤッツヤしてんの。
ムカつくわぁ…
「つ、つきました…」
「ここって…」
「孤児院ですね」
門をくぐり中に入る。
すると、子どもたちがこちらに…というかエヴァに気付くと嬉嬉とした声を上げた。
「あー!おばけのおねーちゃんだ!」
「おばけのおねーちゃん!」
「ぐぼぁ!!」
エヴァが子どもの突進に押し潰された。
ダメージは肉体より精神にくらってるようだけど。
「おねーちゃんたちはおばけのおねーちゃんのおともだち?」
「おねーちゃんもおばけー?」
「でもおねーちゃんすごくきれー!」
「かわいいおねーちゃんだー!」
「おひめさまみたーい!」
「ホッホッホ、なかなか見る目があるじゃねーか。子どもは素直で可愛いねえぐっは遠慮ないタックルしてくんのキチぃ!!」
威力が軽自動車じゃて。
私もまた子どもという純真無垢な生き物にもみくちゃにされた。
「スライムだー!」
「ウサギさんもー!」
「とりさんー!」
「おっきいワンワンー!」
「カブトムシかっこいいー!」
『わーーーー』
『おおおお…揺らすなぁぁ』
『フフフ、可愛い生き物なのでございます』
『くすぐったいのでござるよ』
『…………』
興味の対象がリルムたちに移った。
みんなを連れてきてよかった…
「ねこのおねーちゃんもいっしょにあそぼ!」
「あそぼあそぼ!」
「うん!」
「はーい!」
マリアとジャンヌもまた、同年代か自分たちより歳下の子たちの相手が出来て楽しそう。
「元気な子どもたちですね」
「昔のアルティはあれよりもっと甘えん坊だったけどな。いてっ」
「バカ」
言ったら照れ隠しに殴られた。
「あれ?賑やかだと思ったらリコリスさんたちじゃないですか」
「サリーナちゃん?」
「どうしたんですか?こんなところで」
「エヴァについて来たんだよ。サリーナちゃんは?」
「このサリュミエール孤児院は、私の古巣でして。月に何度か、こうして院のお手伝いに戻るんです」
籠の中には洗濯物がいっぱいで重たそうにしてたので、代わりに持ってあげる。
「偉いんだねサリーナちゃん。じゃあ、エヴァが持ってきた彫刻は…」
「おばけのおねーちゃんがあたらしいおばけもってきたー!」
「きゃーこわーい!」
「師匠の作った彫刻は、何故か子どもたちに人気で」
「ほうほう」
しかし…なんというか。
周囲を見渡していた私に、サリーナちゃんは苦笑した。
「ボロいでしょう」
「アハハ、少しね」
「昔は少しはマシだったんですけどね。親が亡くなったり、捨てられたり、身寄りの無い子どもたちを50人近く抱えていますから」
50て…いくらなんでもじゃないか?
「一番小さな子が2歳、上は14歳。国から援助金をもらってはいますが、それでも賄えず。私なんかのここを出て職についた人が、ささやかながら援助をしているんです」
あとは街のお手伝いをして、パンの売れ残りや野菜なんかをもらって慎ましく暮らしているのだとか。
なかなか世知辛い。
貧困はどの世界でも問題視されてるようだけど、目の当たりにしてやっとそれを自覚する。
テレビの向こうの話とはわけが違った。
「あ、すみませんこんなこと。立ち話もなんですから中へどうぞ。院長先生に紹介させてください」
「じゃ、お邪魔しようかな。ちょっと挨拶してくるから、子どもたちの相手は頼んだぞ」
「わ、私も行きます…」
すきま風の吹く薄暗い院内を案内され、院長と副院長の二人を紹介された。
「こちらサリュミエール孤児院の院長の、イオール=レストレイズ。私たち孤児院出身者の親代わりの方です。それから副院長のマチルダさん。院長、こちらは冒険者百合の楽園のリーダーのリコリス=ラプラスハートさんです」
「サリーナのお友だちですか。はじめまして、イオールです」
「マチルダです。サリーナがお友だちを連れてきてくれるなんて嬉しいわ」
どちらも初老くらいの女性。
結構苦労してるらしく、握手した手はあかぎれが多かった。
「大したおもてなしも出来ず申し訳ありません」
「お気になさらず。急な訪問をお許しください」
「ありがとうございます。エヴァさんも」
「い、いえ…あ、これ…」
イオール院長に手渡したのは、革袋に入ったお金のようだった。
「臨時の収入が入ったので…」
「まあ…いつもゴメンなさい」
サリーナとの仲があるからか、エヴァもたまにこうして寄付をしているようだった。
にしても…あちこちの老朽化が酷い。
よほど生活に困ってるんだな。
「お恥ずかしい限りで。平和な世の中でも、こうして悲しむ子どもは後を絶たず…」
「私たちもなんとか子どもたちにはいい暮らしをさせてあげたいのですが、なかなか上手くいかなくて…」
金策が下手とか、たぶんそういう段階の話じゃないんだろう。
大人が二人。50人もの子どもを育てるなんて、そもそもが並大抵のことじゃない。
「私がもっと稼げたらいいんですけどね。宮廷魔法使いって、じつはそんなに儲からないんですよ」
「いいんですよサリーナ。あなたには今も充分助けられていますから」
ここで私が手を焼くと、またおせっかいをとか言われるんだろう。
けどなあ、麗しき女性たちがこうも疲弊している様をどうして見過ごせようかて。
「あの、差し出がましいのは承知ですが、私からも少し援助させてはもらえませんか?」
「お気持ちはその、大変ありがたいのですが…見ず知らずの方に施しを受けるわけには…」
初対面故の遠慮は見て取れたけれど、それを押し切り【アイテムボックス】から食料を取り出した。
「必要でなければどうにでもしてもらって構いませんから」
「まぁ…こんなにたくさん…」
「よろしいのですか?」
「はい。子どもたちにひもじい思いはさせられませんからね。もちろん、美しい院長さんたちも」
ウインクを一つ決めたところで。
いっちょボランティアの時間と行くか。
「てなわけで、力を合わせて孤児院の役に立つぞ」
「またおせっかいを」
「はい想像余裕。残念でしたーもう言われること想定してまーす」
「自分が優位に立たないと気が済まない怪物じゃないですか」
「まあそう言うなよ。人助けするのは悪いことじゃないだろ?」
「…はぁ、わかりましたよ。では私はみんなの昼食の支度でも」
「作業中危ないから子どもたちの相手をしててくれるとリコリスさんめっちゃ助かるこれはアルティにしか頼めないなぁうんうん!!」
「は、はい…。わかりまし、た?」
尊い命を潰えさすわけにはいかねえ…
気を取り直して、建物の修繕から始めよう。
大工仕事なんて【技術神の恩寵】の力にかかればちょちょいのちょい。
釘を打つのもレンガを塗装するのも簡単簡単。
屋根からトイレのドアまで何でもお任せあれってなもんですよ。
ついでに家具も直してと。
耐震、耐火の付与を施せば新築も同然のステキ孤児院の完成だ。
リノベーション越えてこりゃリコベーションだね☆
……なんでもありませんけど?
「次は畑だ」
裏庭のスペースを利用して土魔法で土壌を耕し、種を撒いて成長を促進。
トマトやきゅうりがたわわに実った。
もうすぐ夏も終わることだし、秋にかけて芋類も植えておこう。
子どもは野菜食べないとね。
食料の自給ってことなら、家畜をここで育てるのもいいかもしれない。
幸い人手はあるし。
「乳牛とか鶏とか、アンドレアさんに言ったら手配してくれないかな?」
「問題は無いかと」
「よし、ルドナ。手紙を書いたからこれをアンドレアさんのとこまで届けてくれる?たぶん店にいるはずだから」
『お任せなのでございます』
厩舎を作って、と。これでよし。
「次は…っと」
「リコリスさん、皆さんの服を縫おうと思うのですがよろしいでしょうか」
「おーいいじゃん。任せたよシャーリー」
「かしこまりました」
と、シャーリーは瞬く間にほつれた衣服を縫っていく。
そればかりか新しい服まで作ってる。
尋常じゃないハンドスピードだ。
あんな手でグチョグチョにされたらヤバいだろうな…
「あ、糸が切れてしまいましたね」
「ああ、じゃあ買ってくるよ。師匠が」
「べつに構わぬが何故か腹が立つのう」
「あ、ああ、あの」
「どうした?」
「い、糸なら、わた、私が…」
エヴァは指の先から糸を出して棒に巻き付けた。
「ほう、白く強靭な糸。これはタイラントスパイダーとギガントキャタピラーの糸を紡いでおるのじゃな。どちらも一体で街を滅ぼすような凶暴な魔物じゃが」
「ま、前に討伐して食べたことがあるので、それで…」
「エヴァ」
「は、はい!」
「やっぱすごいねその力!」
「お、お役に立てる…でしょうか…」
「当たり前じゃん!ね、シャーリー!師匠!」
「はい。ありがとうございますエヴァさん」
「世に出回らぬ稀少素材まで生み出せるとはのう。そなたはもっとこの力を誇るべきじゃな」
「へ、へへへ…」
「あれ?てか師匠エヴァのこの力見るの初めてじゃないの?」
「バカをぬかせ。こやつがただの人間でないことくらい、最初から見抜いておったわ。そなたらに危害を加えるつもりがないのがわかって、何も言わずにおいたがの」
出来たロリババアだわ。さす師すぎる。
そんな感じでエヴァの活躍もあり、その後の作業は更に順調に進んで、昼前には一通り作業が終了した。
「よっしゃ。こんなもんかな?」
「…………!!」
「…………!!」
イオール院長とマチルダ副院長が口を開けてあんぐりしてる。
「リコリスさん…これは…」
「へ?あれ、どこか変なとこあった?ゴメンすぐに直すよ」
「いやそうじゃなくて…改めて規格外だと思っただけで…。こんな数ヶ月単位の大仕事を数時間で終わらせちゃうなんて…。しかも畑やみんなの服まで…」
見ると子どもたちはみんなはしゃいでいた。
「わー!」
「おうちがきれーになったー!」
子どもがキャッキャしてるのかわええ~。
頑張った甲斐ある~。
「院長先生!見て見て!新しい服!」
「おうちのなかね、ピカピカなんだよ!」
「まあまあ…子どもたちのこんな笑顔がまた見られるなんて…。あなたはまるで救世主です…」
「いやいや、ただのスーパー美少女ですとも」
「謙遜って言葉が載った辞書を枕にするといいわ」
「うるさし!それとこれ。うちの魔女が作った風邪薬と、院長さんたちに肌荒れ用の塗り薬です。どうぞ使ってください。あとこれも」
「リコリスさん、それ水精の泉…!そんな高価な宝具を…!」
サリーナちゃんは高価だと言うけど、価値あればこそ必要なところにあった方がいい。
「子どもたちがキレイな水を飲めるなら、こんなもの手放すくらいわけないよ」
「リコリスさん…」
「さ、お腹すいたしご飯にしよう。厨房お借りしますね」
何作ろうかな。
子どもが喜びそうな…それでいて安価でお腹いっぱいになる…ふむ。
よし、あれでいくか。
「リコリスちゃん、私も、手伝います…」
「おう。サンキュ」
「…………」
――――――――
「エヴァ皮剥き上手いね」
「そ、そうですか…?」
「料理とかするの?」
「い、一応…サリーナと交代で…」
「へえ。得意料理とかある?今度作ってよ」
「むむ、無理…無理です…。リコリスちゃん料理上手なのに…」
リコリスちゃんに私の手料理なんて…
ちょっといいなとか、分不相応なことを思う。
「私の料理だって普通だよ。ただ物珍しいから目に留まるだけで。ていうかうちのパーティー、私とリルム以外ほとんど料理しないんだよ」
「そ、そうなんですね」
「マリアとジャンヌはお手伝いしてくれるんだけどね。ドロシーなんか出来るくせに私にやらせんだよ?リーダーなのにさー。どう思うよエヴァ」
「み、皆さんがリコリスちゃんを頼るのは、わ…わかる気がします。リコリスちゃんは何をしても、その、すごいので」
「えーめっちゃ褒めてくれるの嬉しいンゴー。もーそんなに褒めても投げキッスくらいしか出ないぞっ♡んーちゅっ♡」
「ぅっぐ!!」
「心臓締め付けられたみたいな顔するじゃん。泣くんだが?」
可愛さに悶えたのと、圧倒的陽気に当てられて…
だけどこの笑顔は今…私だけに向けられているんだ…
そんなことで浮かれたからか、私はあることを訊ねた。
「あの、アルティちゃんとのことなんですけど」
「へ?な、なにか?」
「よ、様子がやっぱり違うなって。だ、だから、何かあったのかなって…」
「あー……と、えー」
リコリスちゃんはわかりやすくとぼけて、視線をあちこちに行き来させた。
「その、なんだ…?大人になった……的な?」
「大人…?……!!……そそそ、それ、そそれってつまりセッ――――――――!!」
「うおおおおい!そのとおりだけどあんま言うな!」
「なな、なんで、そんな、急に…?」
「流れというか…求め合ったが故の結果というか…なんというか、ねえ?アハハ、説明すんの恥ずかしいからこの話終わり!ほら、子どもたちがお腹すかせて待ってるぞ!」
二人はもうそんな仲なんだ。
いいなって思って、同じくらい…モヤってした。
「蒸したじゃがいもを潰して炒めたひき肉と混ぜる。そしたら一口サイズに形を整えて、ここに固くなったパンを削った粉をまぶす。油をひいた鍋でこんがり焼けば、リコリスさん特製のお手軽コロッケの出来上がり~♡」
この料理と同じだ。
目の前で孤児院がまたたく間に姿を変えていった。
まるで魔法みたい。
その中心で、リコリスちゃんは踊るように、楽しそうに笑っていた。
何をするにも自由に。そして無償の愛をみんなに齎した。
見る人が見れば、持つ者の傲慢な施しに映るかもしれない。
それでも私は思った。感じた。
なんて優しい人、と。
この人の全てが誰かのために繋がってる。
眩しくて、あたたかくて、この人の傍は居心地がいい。
生まれながらの愛される人。
私とは全然違うけど思ってしまう。
一番になれなくてもいい。
それでもやっぱり…私はこの人が好きだと。
「ほれほれ♡エヴァ、味見味見♡」
「へ、は、あーん…はふっ、はちっはちっ!はふふ…おいひい、へふ」
「ニッシッシ♡だろー?♡私も私も~パクッ、んーうっまぁ♡お店で出せるわー♡」
どうしていいかわからないくらい。
「これ本当は油で揚げる料理なんだよ。でも油って高いしさ。今の孤児院で作るなら安価な方がいいかなって思ったんだ。焼いたのは初めてだったけどいけるね。これなら子どもたちも喜んでくれるかな」
どうするのが正解なのかわからなくて。
「片っ端から焼いて~パンとサラダと、骨で出汁を取った野菜スープも付けて~よーしリコリスさんスペシャルランチの完成だぜ~。よし、じゃあ運ぶか。天気いいし外で食べよ~」
リコリスさんのエプロンの裾を摘んだ。
「エヴァ?」
「好き…です」
小さく小さく。
顔をうつむかせたまま。
私は頭の中を埋め尽くしていた言葉を口から吐き出した。
心臓の音がうるさくて、顔が熱くて。
どうにかなってしまいそう。
いや、もうどうにかなってるのか…
どれだけ時間が経ったか。ううん、たぶんまだ一瞬。
リコリスちゃんの顔が見れない。
言ってから後悔までしてしまった。
私なんかが…と。
「エヴァ」
ビクッと身体を震わせ、おそるおそる顔を上げる。
すると、
「むぐ」
口にまん丸なコロッケが入ってきた。
「もーエヴァったら食いしん坊だな。そんなに気に入った?嬉しいけど、つまみ食いはこれで終わりだからね」
一気に身体の力が抜けた。
それはそうだ。
この人はみんなから好意を向けられるのに慣れてる。
私なんかが相手にされるはずない。
自己嫌悪に押し潰されてまたうつむき、泣きそうになって、吐きそうになった。
ダメだ…耐えろ…
好きならせめて迷惑をかけるな。
好きなら――――――――
「ん」
開けた視界に映ったのは、至近距離のリコリスちゃん。
油の味に混じった甘い匂い。
柔らかな感触。
離れていく吐息の熱さまで全てが鮮明だった。
「リコリス、ちゃん…」
「なんか恥ずかしいな…改めてするのって。なあ、 エヴァ」
ニシシといつもみたいに笑うリコリスちゃんの顔は、ほんの少しだけ赤くなってて。
「また二人っきりの秘密が出来たな」
大好きって気持ちに溺れた。
――――――――
その後、私たちと孤児院のみんなで仲良く昼食会をしたわけだけど、結果から言ってめちゃくちゃ好評だった。
「おいしー!!」
「おいもホクホクサクサクするよー!」
ンフフー♡
子どもたちの満足そうな顔でリコリスさんお腹いっぱいじゃよ♡
「レシピを残しておくので、また作ってあげてください」
「本当に何から何まで…いったいどう感謝したらいいか…。この御恩に報いるだけのものが私どもには…」
「子どもたちの明るい顔が見られるだけで充分ですよ」
しばらく不自由無く暮らせるようにしたとはいえ、どれだけ環境を整えても、根本的な解決にはなってない。
恒久的に収入を増やすアイデアを考えないと。
と、頭を働かそうとして、目の端にエヴァを捉えた。
手を振ると顔を真っ赤にしてすぐに目を逸らされたけど。
……なんか付き合いたてのカップルみたいでいいな。
「私が言えたことじゃないのかもしれませんけど、人の変化はよくわかりますね」
「な、なんのことじゃね?」
「一応言っておきますけど、もう初めてじゃないからと乱りに手を出すようなことをしたら粛清しますから」
「なんだそのお前はどうせ誰でも抱くだろみたいな言い草は!失敬だぞ!プンッ!」
「抱くでしょう?」
「抱きたいでーす♡イェイイェーイへぶち愚地○歩の正拳突き!おい人中殴るのは普通に敵意ありだろ!!」
「愛情故にということでひとつ」
「うーんならしょうがなし♡じゃねーよDVヤローじゃん」
「まあそれはさておき」
人殴ったことさておいたぞこいつ。
「友人の思いを蔑ろにしたら赦しませんからね」
「誰にもの言ってんだ。当然だろ」
全ての女性を愛するのが私だぜ。
なんて格好つけても、孤児院を救う妙案の一つも出ないのが現実なんだけど。
「あかいおねーちゃんっ」
「ん?」
5歳くらいの女の子が3人集まってきた。
「いくよ、せーのっ!おうちとごはんを!」
「「「ありがとうございました!」」」
「キャハハハ!」
「わー!」
言うだけ言って恥ずかしくなったらしい。
子どもたちは満面の笑みで言って走っていってしまった。
心が洗われるってのはこういうのを言うんだろう。
「なんとかしてやりたいな」
決意は芽生えたけど、それですぐに何か思いつくような頭は無くて。
数日後、私たちはリコリスカフェのプレオープンを迎えた。
朝から不機嫌に、私は朝食のパンを口に突っ込んだ。
「散々人のこと振り回してよぉ!なーにがベッドの上の帝王学じゃ!私が臣下だったらマジで謀反してるわ!そう思うだろ!なぁ?!」
「朝っぱらからうるっさいわね。いいじゃない、結果的に女王陛下と同衾せずに済んだんだから」
「それとこれとは!乙女心弄びやがって!」
おかげでこっちは【発情】だの【欲情】だの【避妊】だのとかいうスキルを手に入れる始末!!
なんだ【避妊】って生えてねーよ!!
ほとんど淫魔だぞこんなもん!!
「次会ったらもうヒィヒィ言わせてやる!」
「おーおーイキがってるわね」
「ねえねえシャーリーお姉ちゃん、同衾ってなーに?」
おおぅ…子どもの純粋無垢な質問。
頼むよシャーリー上手い具合に。
「好きな人同士で一緒に寝ることですよ」
うむ、よき。ぜーんぜん間違ってない。
「じゃあ今日はお姉ちゃんと同衾するー!」
「私もしたいですー」
「ふぅ…子どもに性を教えるのは大人の役目ってことでいいよね?」
「キリッとすんな」
「あでっ!パン投げんな食べ物で遊ぶんじゃねーこのやろー…って、師匠はともかくアルティもまだ寝てんの?」
「そうみたいね。疲れてるんじゃない?誰かさんのせいで」
くっそニヤニヤしやがって…だいたい処女だろドロシー貴様…
気恥ずかしさをごまかすのにパンを齧ると、ドアが開いてアルティがやって来た。
「おふぁようございまふ…」
「おはようございます、アルティさん」
「おはよーお姉ちゃん」
「おはようございます」
あくびしてるの可愛い…
てか、あれ?今日なんか一段と可愛くね?
女神が寝ぼけて地上に降り立ったかと思ったんだが?
「あ」
「あ、おはよ…アルティ」
「おはようございますリコちゃん…………はっ!!あ、いや、今のは違っ…リ、リコ…!」
「はいリコリスです」
可愛すぎて死ぬて…
ヤッベぇ…私、本当にアルティと…
うっわなんか恥ずかしくなってきた…
「はいはい。ノロケは後にしてあんたもご飯食べちゃいなさい」
「は、はい…いただきます。ふぁ…」
「眠たそうですね?昨夜は眠れませんでしたか?」
「リコリスのせいでね」
「やーめろやーもうー!」
「それもあるのですが…」
あるんかい。でも言うなそういうの。
「夜中に変な音がして。それが気になって寝付きが…ふあぁ」
「変な音?ドロシーのソロプレイか?」
どシンプルに中指立てられたんだが。
「何でしょう。カン…カン…という不気味な」
カン…カン…
「そう、ちょうどこういう…」
「なんだ?」
金属音…?
「誰かが藁人形に釘でも打ち込んでるとかじゃないだろうな」
「様子を見てきましょうか」
「あ、待ってシャーリー。私も行くよ」
私はシャーリーと共に、音が聞こえてくる方へ向かった。
カン…カン…
近付くに連れ大きくなる音。
「本当に誰かが呪いをかけてるとかだったら、どう対応するのが正解なんだろうか」
「気絶させるとか、では?」
「おぉ…理知的な見た目のわりに脳筋だな…」
慣れすぎて元暗殺者なの忘れるときあるわ。
「どうやら隣の墓地から聞こえてきているようですね」
「閑静だから音が響いたのか」
より一層怖いなと思いつつ、柵越しに様子を窺う。
すると…
「へ、へへ…」
見知った顔が、金槌と鑿を持って石の前で笑みを浮かべているところだった。
「エヴァ?」
「ゔぁぁぁぁ?!!」
奈落の大賢者ことエヴァ=ベリーディースは、心臓を激しく脈動させてこっちに振り返った。
「リリリ、リコリス、ちゃん…?!それにシャーリーさんも、な、なな、なんでこんなところに…?!」
「昨日隣に引っ越してきた」
とりあえず柵飛び越えて、と。
「エヴァこそ何やってんの?こんな墓地で」
「ぼ、墓地?!いやあの、ここ、私の屋敷で…」
「へ?」
「へ?」
「…………」
「…………ぐすっ、墓地です」
「うおおおゴメン!!マジで!!いやあまりにも雰囲気が暗くて人が住んでるとか思わなかったっていうか!!庭も石像とかがいっぱいで不気味だったっていうか…じゃねえ!!と、とにかくゴメン!!シャーリー、今すぐ引っ越しの挨拶持ってきて!!なんかいいやつ!!高っけー肉とか!!」
「かしこまりました」
「墓地って思われてたんだ…ハハ…どうも腐りかけの墓守です…」
「ゴメンって戻ってこいエヴァーーーー!!」
で、なんとか落ち着いて。
「それでエヴァは自分ちの庭で何やってんの?それ彫刻?自分で作ってるの?」
「あ、は、はい…」
あの音はこれを彫ってる音か。
よかった丑の刻参り的なのじゃなくて。
「しかし精巧な彫刻ですね」
「な。これマリスシャープリッパーでしょ?」
骨の一本、脊髄の一節、質感まで細かく再現されてる。
上手なんてレベルじゃなくて、今にも動き出しそうなくらいリアルだ。
しかもこれ、違うパーツを組み合わせてるんじゃなくて、一つの岩を彫ったやつみたいだし。
下手したら国宝認定されるぞ。
「む、昔から悩んだり考えごとするときとか、よく彫ってて…趣味っていうか、その」
「考えごと?もしかして、吐いたことまだ気にしてる?」
「ごごごごゴメンなさいゴメンなさい…新しい服買ってお詫びします…」
「いいってべつに。一昨日のことなんていちいち言わないよ」
「一昨日…?」
「うん」
「き、気付かなかった…もう一日経ってる…」
まさか…昨日からずっとやってたのか…?
ていうかそんなに悩んでたのかって、私は笑ってしまった。
「不器用っていうか、めんどくさいねエヴァって」
「ふグッ!!」
「けどおもしろい。可愛いと思うよ、そういうとこ。ニシシ」
「え、あ…はい…。……?あの、リコリスちゃん」
「なんだね?」
「なんか…変わりました?雰囲気が違う気が」
「ほ、ほへ?!ナ、ナンノコト、カネ?」
顔あっちぃ…
てかそういうのってわかるもん?気を付けよ…
全然やましいことはしてないんだけどね!
『リコ、ちゃん…』
いや、ちょっとはした…かな…
「そ、それより!いやー本当にすごいねこれ!うん!売れるレベル!」
「い、いえそれは、持っていくところが…」
「持っていくところ?」
「は、はい。あ、もしよかったらこの後一緒にどう…ですか?あ、予定があるなら全然…私ととか退屈だろうし…」
ふむ、店の方はプレオープンの日程決めの段階だし、後で顔を出せばいいか。
「よし、行こう。シャーリー、みんなを呼んできて。師匠も叩き起こしちゃえ」
「かしこまりました」
そんなわけで今日は、エヴァと一緒にお出かけだ。
しかし魔物の彫刻なんてどこに持っていくんだろう。
高く買ってくれるコレクターでもいるのかな?
一時間後。
私たち一行は、エヴァに連れられ街を歩いていた。
「…?アルティちゃんも、なんか雰囲気が…?」
「き、気のせいですが何か?!!」
「ひいいすみません!!」
後ろではドロシーが、
「はー最高に若返るわ」
とかツヤッツヤしてんの。
ムカつくわぁ…
「つ、つきました…」
「ここって…」
「孤児院ですね」
門をくぐり中に入る。
すると、子どもたちがこちらに…というかエヴァに気付くと嬉嬉とした声を上げた。
「あー!おばけのおねーちゃんだ!」
「おばけのおねーちゃん!」
「ぐぼぁ!!」
エヴァが子どもの突進に押し潰された。
ダメージは肉体より精神にくらってるようだけど。
「おねーちゃんたちはおばけのおねーちゃんのおともだち?」
「おねーちゃんもおばけー?」
「でもおねーちゃんすごくきれー!」
「かわいいおねーちゃんだー!」
「おひめさまみたーい!」
「ホッホッホ、なかなか見る目があるじゃねーか。子どもは素直で可愛いねえぐっは遠慮ないタックルしてくんのキチぃ!!」
威力が軽自動車じゃて。
私もまた子どもという純真無垢な生き物にもみくちゃにされた。
「スライムだー!」
「ウサギさんもー!」
「とりさんー!」
「おっきいワンワンー!」
「カブトムシかっこいいー!」
『わーーーー』
『おおおお…揺らすなぁぁ』
『フフフ、可愛い生き物なのでございます』
『くすぐったいのでござるよ』
『…………』
興味の対象がリルムたちに移った。
みんなを連れてきてよかった…
「ねこのおねーちゃんもいっしょにあそぼ!」
「あそぼあそぼ!」
「うん!」
「はーい!」
マリアとジャンヌもまた、同年代か自分たちより歳下の子たちの相手が出来て楽しそう。
「元気な子どもたちですね」
「昔のアルティはあれよりもっと甘えん坊だったけどな。いてっ」
「バカ」
言ったら照れ隠しに殴られた。
「あれ?賑やかだと思ったらリコリスさんたちじゃないですか」
「サリーナちゃん?」
「どうしたんですか?こんなところで」
「エヴァについて来たんだよ。サリーナちゃんは?」
「このサリュミエール孤児院は、私の古巣でして。月に何度か、こうして院のお手伝いに戻るんです」
籠の中には洗濯物がいっぱいで重たそうにしてたので、代わりに持ってあげる。
「偉いんだねサリーナちゃん。じゃあ、エヴァが持ってきた彫刻は…」
「おばけのおねーちゃんがあたらしいおばけもってきたー!」
「きゃーこわーい!」
「師匠の作った彫刻は、何故か子どもたちに人気で」
「ほうほう」
しかし…なんというか。
周囲を見渡していた私に、サリーナちゃんは苦笑した。
「ボロいでしょう」
「アハハ、少しね」
「昔は少しはマシだったんですけどね。親が亡くなったり、捨てられたり、身寄りの無い子どもたちを50人近く抱えていますから」
50て…いくらなんでもじゃないか?
「一番小さな子が2歳、上は14歳。国から援助金をもらってはいますが、それでも賄えず。私なんかのここを出て職についた人が、ささやかながら援助をしているんです」
あとは街のお手伝いをして、パンの売れ残りや野菜なんかをもらって慎ましく暮らしているのだとか。
なかなか世知辛い。
貧困はどの世界でも問題視されてるようだけど、目の当たりにしてやっとそれを自覚する。
テレビの向こうの話とはわけが違った。
「あ、すみませんこんなこと。立ち話もなんですから中へどうぞ。院長先生に紹介させてください」
「じゃ、お邪魔しようかな。ちょっと挨拶してくるから、子どもたちの相手は頼んだぞ」
「わ、私も行きます…」
すきま風の吹く薄暗い院内を案内され、院長と副院長の二人を紹介された。
「こちらサリュミエール孤児院の院長の、イオール=レストレイズ。私たち孤児院出身者の親代わりの方です。それから副院長のマチルダさん。院長、こちらは冒険者百合の楽園のリーダーのリコリス=ラプラスハートさんです」
「サリーナのお友だちですか。はじめまして、イオールです」
「マチルダです。サリーナがお友だちを連れてきてくれるなんて嬉しいわ」
どちらも初老くらいの女性。
結構苦労してるらしく、握手した手はあかぎれが多かった。
「大したおもてなしも出来ず申し訳ありません」
「お気になさらず。急な訪問をお許しください」
「ありがとうございます。エヴァさんも」
「い、いえ…あ、これ…」
イオール院長に手渡したのは、革袋に入ったお金のようだった。
「臨時の収入が入ったので…」
「まあ…いつもゴメンなさい」
サリーナとの仲があるからか、エヴァもたまにこうして寄付をしているようだった。
にしても…あちこちの老朽化が酷い。
よほど生活に困ってるんだな。
「お恥ずかしい限りで。平和な世の中でも、こうして悲しむ子どもは後を絶たず…」
「私たちもなんとか子どもたちにはいい暮らしをさせてあげたいのですが、なかなか上手くいかなくて…」
金策が下手とか、たぶんそういう段階の話じゃないんだろう。
大人が二人。50人もの子どもを育てるなんて、そもそもが並大抵のことじゃない。
「私がもっと稼げたらいいんですけどね。宮廷魔法使いって、じつはそんなに儲からないんですよ」
「いいんですよサリーナ。あなたには今も充分助けられていますから」
ここで私が手を焼くと、またおせっかいをとか言われるんだろう。
けどなあ、麗しき女性たちがこうも疲弊している様をどうして見過ごせようかて。
「あの、差し出がましいのは承知ですが、私からも少し援助させてはもらえませんか?」
「お気持ちはその、大変ありがたいのですが…見ず知らずの方に施しを受けるわけには…」
初対面故の遠慮は見て取れたけれど、それを押し切り【アイテムボックス】から食料を取り出した。
「必要でなければどうにでもしてもらって構いませんから」
「まぁ…こんなにたくさん…」
「よろしいのですか?」
「はい。子どもたちにひもじい思いはさせられませんからね。もちろん、美しい院長さんたちも」
ウインクを一つ決めたところで。
いっちょボランティアの時間と行くか。
「てなわけで、力を合わせて孤児院の役に立つぞ」
「またおせっかいを」
「はい想像余裕。残念でしたーもう言われること想定してまーす」
「自分が優位に立たないと気が済まない怪物じゃないですか」
「まあそう言うなよ。人助けするのは悪いことじゃないだろ?」
「…はぁ、わかりましたよ。では私はみんなの昼食の支度でも」
「作業中危ないから子どもたちの相手をしててくれるとリコリスさんめっちゃ助かるこれはアルティにしか頼めないなぁうんうん!!」
「は、はい…。わかりまし、た?」
尊い命を潰えさすわけにはいかねえ…
気を取り直して、建物の修繕から始めよう。
大工仕事なんて【技術神の恩寵】の力にかかればちょちょいのちょい。
釘を打つのもレンガを塗装するのも簡単簡単。
屋根からトイレのドアまで何でもお任せあれってなもんですよ。
ついでに家具も直してと。
耐震、耐火の付与を施せば新築も同然のステキ孤児院の完成だ。
リノベーション越えてこりゃリコベーションだね☆
……なんでもありませんけど?
「次は畑だ」
裏庭のスペースを利用して土魔法で土壌を耕し、種を撒いて成長を促進。
トマトやきゅうりがたわわに実った。
もうすぐ夏も終わることだし、秋にかけて芋類も植えておこう。
子どもは野菜食べないとね。
食料の自給ってことなら、家畜をここで育てるのもいいかもしれない。
幸い人手はあるし。
「乳牛とか鶏とか、アンドレアさんに言ったら手配してくれないかな?」
「問題は無いかと」
「よし、ルドナ。手紙を書いたからこれをアンドレアさんのとこまで届けてくれる?たぶん店にいるはずだから」
『お任せなのでございます』
厩舎を作って、と。これでよし。
「次は…っと」
「リコリスさん、皆さんの服を縫おうと思うのですがよろしいでしょうか」
「おーいいじゃん。任せたよシャーリー」
「かしこまりました」
と、シャーリーは瞬く間にほつれた衣服を縫っていく。
そればかりか新しい服まで作ってる。
尋常じゃないハンドスピードだ。
あんな手でグチョグチョにされたらヤバいだろうな…
「あ、糸が切れてしまいましたね」
「ああ、じゃあ買ってくるよ。師匠が」
「べつに構わぬが何故か腹が立つのう」
「あ、ああ、あの」
「どうした?」
「い、糸なら、わた、私が…」
エヴァは指の先から糸を出して棒に巻き付けた。
「ほう、白く強靭な糸。これはタイラントスパイダーとギガントキャタピラーの糸を紡いでおるのじゃな。どちらも一体で街を滅ぼすような凶暴な魔物じゃが」
「ま、前に討伐して食べたことがあるので、それで…」
「エヴァ」
「は、はい!」
「やっぱすごいねその力!」
「お、お役に立てる…でしょうか…」
「当たり前じゃん!ね、シャーリー!師匠!」
「はい。ありがとうございますエヴァさん」
「世に出回らぬ稀少素材まで生み出せるとはのう。そなたはもっとこの力を誇るべきじゃな」
「へ、へへへ…」
「あれ?てか師匠エヴァのこの力見るの初めてじゃないの?」
「バカをぬかせ。こやつがただの人間でないことくらい、最初から見抜いておったわ。そなたらに危害を加えるつもりがないのがわかって、何も言わずにおいたがの」
出来たロリババアだわ。さす師すぎる。
そんな感じでエヴァの活躍もあり、その後の作業は更に順調に進んで、昼前には一通り作業が終了した。
「よっしゃ。こんなもんかな?」
「…………!!」
「…………!!」
イオール院長とマチルダ副院長が口を開けてあんぐりしてる。
「リコリスさん…これは…」
「へ?あれ、どこか変なとこあった?ゴメンすぐに直すよ」
「いやそうじゃなくて…改めて規格外だと思っただけで…。こんな数ヶ月単位の大仕事を数時間で終わらせちゃうなんて…。しかも畑やみんなの服まで…」
見ると子どもたちはみんなはしゃいでいた。
「わー!」
「おうちがきれーになったー!」
子どもがキャッキャしてるのかわええ~。
頑張った甲斐ある~。
「院長先生!見て見て!新しい服!」
「おうちのなかね、ピカピカなんだよ!」
「まあまあ…子どもたちのこんな笑顔がまた見られるなんて…。あなたはまるで救世主です…」
「いやいや、ただのスーパー美少女ですとも」
「謙遜って言葉が載った辞書を枕にするといいわ」
「うるさし!それとこれ。うちの魔女が作った風邪薬と、院長さんたちに肌荒れ用の塗り薬です。どうぞ使ってください。あとこれも」
「リコリスさん、それ水精の泉…!そんな高価な宝具を…!」
サリーナちゃんは高価だと言うけど、価値あればこそ必要なところにあった方がいい。
「子どもたちがキレイな水を飲めるなら、こんなもの手放すくらいわけないよ」
「リコリスさん…」
「さ、お腹すいたしご飯にしよう。厨房お借りしますね」
何作ろうかな。
子どもが喜びそうな…それでいて安価でお腹いっぱいになる…ふむ。
よし、あれでいくか。
「リコリスちゃん、私も、手伝います…」
「おう。サンキュ」
「…………」
――――――――
「エヴァ皮剥き上手いね」
「そ、そうですか…?」
「料理とかするの?」
「い、一応…サリーナと交代で…」
「へえ。得意料理とかある?今度作ってよ」
「むむ、無理…無理です…。リコリスちゃん料理上手なのに…」
リコリスちゃんに私の手料理なんて…
ちょっといいなとか、分不相応なことを思う。
「私の料理だって普通だよ。ただ物珍しいから目に留まるだけで。ていうかうちのパーティー、私とリルム以外ほとんど料理しないんだよ」
「そ、そうなんですね」
「マリアとジャンヌはお手伝いしてくれるんだけどね。ドロシーなんか出来るくせに私にやらせんだよ?リーダーなのにさー。どう思うよエヴァ」
「み、皆さんがリコリスちゃんを頼るのは、わ…わかる気がします。リコリスちゃんは何をしても、その、すごいので」
「えーめっちゃ褒めてくれるの嬉しいンゴー。もーそんなに褒めても投げキッスくらいしか出ないぞっ♡んーちゅっ♡」
「ぅっぐ!!」
「心臓締め付けられたみたいな顔するじゃん。泣くんだが?」
可愛さに悶えたのと、圧倒的陽気に当てられて…
だけどこの笑顔は今…私だけに向けられているんだ…
そんなことで浮かれたからか、私はあることを訊ねた。
「あの、アルティちゃんとのことなんですけど」
「へ?な、なにか?」
「よ、様子がやっぱり違うなって。だ、だから、何かあったのかなって…」
「あー……と、えー」
リコリスちゃんはわかりやすくとぼけて、視線をあちこちに行き来させた。
「その、なんだ…?大人になった……的な?」
「大人…?……!!……そそそ、それ、そそれってつまりセッ――――――――!!」
「うおおおおい!そのとおりだけどあんま言うな!」
「なな、なんで、そんな、急に…?」
「流れというか…求め合ったが故の結果というか…なんというか、ねえ?アハハ、説明すんの恥ずかしいからこの話終わり!ほら、子どもたちがお腹すかせて待ってるぞ!」
二人はもうそんな仲なんだ。
いいなって思って、同じくらい…モヤってした。
「蒸したじゃがいもを潰して炒めたひき肉と混ぜる。そしたら一口サイズに形を整えて、ここに固くなったパンを削った粉をまぶす。油をひいた鍋でこんがり焼けば、リコリスさん特製のお手軽コロッケの出来上がり~♡」
この料理と同じだ。
目の前で孤児院がまたたく間に姿を変えていった。
まるで魔法みたい。
その中心で、リコリスちゃんは踊るように、楽しそうに笑っていた。
何をするにも自由に。そして無償の愛をみんなに齎した。
見る人が見れば、持つ者の傲慢な施しに映るかもしれない。
それでも私は思った。感じた。
なんて優しい人、と。
この人の全てが誰かのために繋がってる。
眩しくて、あたたかくて、この人の傍は居心地がいい。
生まれながらの愛される人。
私とは全然違うけど思ってしまう。
一番になれなくてもいい。
それでもやっぱり…私はこの人が好きだと。
「ほれほれ♡エヴァ、味見味見♡」
「へ、は、あーん…はふっ、はちっはちっ!はふふ…おいひい、へふ」
「ニッシッシ♡だろー?♡私も私も~パクッ、んーうっまぁ♡お店で出せるわー♡」
どうしていいかわからないくらい。
「これ本当は油で揚げる料理なんだよ。でも油って高いしさ。今の孤児院で作るなら安価な方がいいかなって思ったんだ。焼いたのは初めてだったけどいけるね。これなら子どもたちも喜んでくれるかな」
どうするのが正解なのかわからなくて。
「片っ端から焼いて~パンとサラダと、骨で出汁を取った野菜スープも付けて~よーしリコリスさんスペシャルランチの完成だぜ~。よし、じゃあ運ぶか。天気いいし外で食べよ~」
リコリスさんのエプロンの裾を摘んだ。
「エヴァ?」
「好き…です」
小さく小さく。
顔をうつむかせたまま。
私は頭の中を埋め尽くしていた言葉を口から吐き出した。
心臓の音がうるさくて、顔が熱くて。
どうにかなってしまいそう。
いや、もうどうにかなってるのか…
どれだけ時間が経ったか。ううん、たぶんまだ一瞬。
リコリスちゃんの顔が見れない。
言ってから後悔までしてしまった。
私なんかが…と。
「エヴァ」
ビクッと身体を震わせ、おそるおそる顔を上げる。
すると、
「むぐ」
口にまん丸なコロッケが入ってきた。
「もーエヴァったら食いしん坊だな。そんなに気に入った?嬉しいけど、つまみ食いはこれで終わりだからね」
一気に身体の力が抜けた。
それはそうだ。
この人はみんなから好意を向けられるのに慣れてる。
私なんかが相手にされるはずない。
自己嫌悪に押し潰されてまたうつむき、泣きそうになって、吐きそうになった。
ダメだ…耐えろ…
好きならせめて迷惑をかけるな。
好きなら――――――――
「ん」
開けた視界に映ったのは、至近距離のリコリスちゃん。
油の味に混じった甘い匂い。
柔らかな感触。
離れていく吐息の熱さまで全てが鮮明だった。
「リコリス、ちゃん…」
「なんか恥ずかしいな…改めてするのって。なあ、 エヴァ」
ニシシといつもみたいに笑うリコリスちゃんの顔は、ほんの少しだけ赤くなってて。
「また二人っきりの秘密が出来たな」
大好きって気持ちに溺れた。
――――――――
その後、私たちと孤児院のみんなで仲良く昼食会をしたわけだけど、結果から言ってめちゃくちゃ好評だった。
「おいしー!!」
「おいもホクホクサクサクするよー!」
ンフフー♡
子どもたちの満足そうな顔でリコリスさんお腹いっぱいじゃよ♡
「レシピを残しておくので、また作ってあげてください」
「本当に何から何まで…いったいどう感謝したらいいか…。この御恩に報いるだけのものが私どもには…」
「子どもたちの明るい顔が見られるだけで充分ですよ」
しばらく不自由無く暮らせるようにしたとはいえ、どれだけ環境を整えても、根本的な解決にはなってない。
恒久的に収入を増やすアイデアを考えないと。
と、頭を働かそうとして、目の端にエヴァを捉えた。
手を振ると顔を真っ赤にしてすぐに目を逸らされたけど。
……なんか付き合いたてのカップルみたいでいいな。
「私が言えたことじゃないのかもしれませんけど、人の変化はよくわかりますね」
「な、なんのことじゃね?」
「一応言っておきますけど、もう初めてじゃないからと乱りに手を出すようなことをしたら粛清しますから」
「なんだそのお前はどうせ誰でも抱くだろみたいな言い草は!失敬だぞ!プンッ!」
「抱くでしょう?」
「抱きたいでーす♡イェイイェーイへぶち愚地○歩の正拳突き!おい人中殴るのは普通に敵意ありだろ!!」
「愛情故にということでひとつ」
「うーんならしょうがなし♡じゃねーよDVヤローじゃん」
「まあそれはさておき」
人殴ったことさておいたぞこいつ。
「友人の思いを蔑ろにしたら赦しませんからね」
「誰にもの言ってんだ。当然だろ」
全ての女性を愛するのが私だぜ。
なんて格好つけても、孤児院を救う妙案の一つも出ないのが現実なんだけど。
「あかいおねーちゃんっ」
「ん?」
5歳くらいの女の子が3人集まってきた。
「いくよ、せーのっ!おうちとごはんを!」
「「「ありがとうございました!」」」
「キャハハハ!」
「わー!」
言うだけ言って恥ずかしくなったらしい。
子どもたちは満面の笑みで言って走っていってしまった。
心が洗われるってのはこういうのを言うんだろう。
「なんとかしてやりたいな」
決意は芽生えたけど、それですぐに何か思いつくような頭は無くて。
数日後、私たちはリコリスカフェのプレオープンを迎えた。
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