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王国漫遊編
17.レミルブルの花祭り
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満開の花畑に四方を囲まれ、色鮮やかな風が吹く。
ここはレミルブル。
四季を彩る、活気と明るさに満ちた花の街。
「うっはぁ、すっごいキレイな街!めっちゃ映えスポット!」
「人もいっぱいですね」
「街中にも花壇と植木鉢。花の香りでむせ返りそう」
街はお祭りムード一色。
人はみんな笑顔で楽しそう。
なんかいい感じだ。
そんな中、シロンとウルはしかめっ面。
『なあリコリス…この街、ボクたちにはちょっとキツいぞ…』
『そうでござるな…。なんだかクラクラするでござるよ…』
「君たち鼻が利いちゃうんだな。じゃあ周りに薄く風魔法で膜を作って…ついでに今日はあったかいから氷魔法で涼しくして、と。これでどう?」
『ん…少しはマシだ…』
『拙者たちは大人しくしてるでござる…』
『リルムは平気ー』
『同じくでございます』
「いつもながら、似合わないくらい繊細な魔法の使い方するわよね」
「ドヤッ」
「当たり前のように無詠唱。しかも複数の属性を同時に使用してるから多重無詠唱ね。それで純粋な魔法使いじゃないんだから信じられないわ」
魔法を使えるのはアルティのおかげで、魔法の使い方を教えてくれたのはお母さんだから、一概に私がすごいのかというと、ちょっと微妙なとこなんだけど。
説明めんどくさいな。
とりあえず宿を探すかと歩き始めようとして。
「ようこそレミルブルへ!」
「お日様をいっぱい浴びて咲いたお花をどうぞ!」
籠いっぱいの花を持った小さな女の子たちがお出迎え。
首に花で編んだ輪をかけてくれた。
「ありがとう可愛いレディたち」
お礼に二人のほっぺにチュー。
「事案…」
何悍ましいもの見た顔してんだセーフだろまだ子どもだぞ。
『いいないいなーリルムもー』
え?チュー?
あ、花輪か。
「この子にももらえる?」
「はいっ、もちろんです!」
『わーいわーい』
「似合ってるよリルム」
『おいしそー』
「食うなよ?」
「お姉さんたち、花祭りは初めてですか?」
「花祭りはお花と笑顔がいっぱいのお祭りです。好きな人、いつもお世話になっている人、どこかの誰かも知らない人、どんな人にも自分の好きな色のお花を渡して、大好きとありがとう、これからもよろしくねを伝える特別な日。それが花祭りです」
「へぇ、なんだかステキなお祭りね」
「お姉さんたちもお祭りを楽しんでくださいね。フローラ様の祝福がありますように」
可愛い子たちだったなぁ。
「フローラ様って?」
「花の神フローラ。花と春を司る女神よ。ほら、あそこに銅像が建ってるでしょ」
花冠を被った女神像…
リベルタスが唯一神ってわけじゃないのか、宗教に興味が無さすぎて知らなかった。
そりゃ八百万の神々ってくらいだし当然か。
最近教会も行ってなかったし、久しぶりに足を運んでみよう。
それにしても…なるほど、陽気に包まれてるわけだ。
みんな楽しく。
このお祭りは人と人との思いやりで成り立ってると。
こっちまでウキウキしてくる。
「優しさに包まれまくってるな。ん、待てよ…てことはお花渡しまくって好き好きチュッチュしても合法で許されるってこと?!ひゅーテンション上がってきたぜー!宿探しは任せた私はレッツお姉さんだー!イェー!」
スタタタタ…
「なんでリコリスってああバカなの?」
「思考回路が下半身に直結してるんじゃないですか。まあ…あんな人でも真性の考え無しなわけでもないので、自分から問題を起こすことは無いと思いますけど」
「それもそうね」
その三十分後のこと。
「私、リコリスと結婚することに決めたの!」
「はへぁ?」
私は美女に抱きつかれながら、めちゃくちゃポカンとしていた。
いや、私が一番ビックリしてる。
道行く女の子たちにお花を渡して、
「こんにちは笑顔がステキなお姉さん♡」
「とっても可愛いね花の妖精さんかと思ったよ♡」
「花の蜜より甘いひとときを過ごしましょう♡」
なんていつもみたいに……いつもみたいに?ナンパという名の交流してウヒヒ花祭り楽しすぎりゅ~なんてしてたら、
「ひゃあっはぁぁぁぁ!」
「美人さん発見だぜぇぇぇ!」
「眩しすぎて咲き誇る花が霞んじゃうんだぜぇぇぇ!」
「「「ひゃあっはぁぁぁぁ!!」」」
「ちょっと、困るわこういうことは」
お姉さんが輩に絡まれて困ってて…
「何お祭りの空気壊してんだ下郎がぁ!」
って輩を追い払ったら…
「カッコいい…」
「ほぇ?」
「あなた…名前は?」
「リコリス…おぉうガバッて来るのビックリする!」
「これが運命というやつね!一目惚れしたわ!私と結婚して!一生幸せにするから!」
ってなって、今に至る。
なんのこっちゃって?
私が一番そう思ってるよ。
「あなた…」
「いやいや【百合の姫】の力じゃねーわ。疑いの眼差し向けんな。純粋に私の素の美貌と魅力に当てられたんだろ我ながら魅力的で困っちゃう……って冗談はさておいて。えっと…」
「フィーナ=ローレンス。フィーナって呼んでね」
格好といい雰囲気といい、見るからにいいとこのお嬢様なんだよなこの人。
ただ爛漫そうで好みかすごく好みかって訊かれると超好みなんだけども。
キレイと可愛いのハイブリッド。
するとアルティがハッとした。
「あの、失礼ですが…まさかローレンス公爵ですか?」
「そういうあなたは…アルティ…アルティじゃない!すごい偶然!マルトレウス伯爵の晩餐会で会って以来だから、もう五年?すっかり大人のレディになったね!」
知り合いとな。
てか公爵夫人とかじゃなくて、この人が公爵?
立場的には辺境伯家のアルティよりも上になるのかな。
公爵って爵位の一番上だったっけ…あれ超大物貴族じゃん。
アルティは胸に手を当てて一礼した。
「お久しぶりですローレンス卿。そういえばこの辺りもローレンス家の領地でしたか」
「公式の場じゃないんだから固くならないで。フィーナって呼んでよ。歳だって二つしか変わらないでしょ」
歳上なんだ。
外見以上に性格が子どもっぽくて全然見えなかった。
この若さで公爵なんて、さぞ遣り手なんだろうな。
「毎年この時期は花祭りのために足を運ぶの。自分で企画して始めたお祭りだしね。それより聞いたよアルティ。旅に出るからって女王陛下に啖呵を切ったって。ということは…この人が例の、女王陛下を口説いた伝説さんだね」
「どうも伝説です」
「あの鉄血の陛下を誘うなんて、どんな命知らずかと思えば、納得の美しさ。ますます気に入ったわ!式はいつがいい?あなたとの子どもなら何人だって孕んであげる!お金ならたくさんあるし、毎日好きなことをしてくれればいいよ!」
おおおおグイグイくるじゃん。
「あ、もちろん私が遊びでも全然いいから。他に女を作ってもいいよ♡」
え~そんなのダメになっちゃう。
公爵様に飼われるダメ人間生活かぁ。
悪くねえ~……
出逢ってすぐ好感度カンストするの人生楽すぎる。
間の抜けた顔で酒池肉林の毎日を妄想してたら、右腕をアルティに絡め取られた。
「ダメですよフィーナ様。この人は私のなので」
それから左腕をドロシーに。
「生憎だけど、先にツバ付けてるのはこっちだから」
…………おモテになりよるわぁ私。
こんな美少女たちが取り合って…はぁ幸せ。
齢二十にして人生もう薔薇色。否、百合色。
「人気者なのね。でも…」
と、フィーナはクスッと笑ってから頬に手を伸ばし、
「チュ♡」
唐突に、あまりに無遠慮に。
唇を重ねてきた。
「――――――――!!!」
「ちょっ――――――――!!!」
「私、好きになったら遠慮しないよ♡」
浮気は許す。
序列は何番目でもいいし、なんなら愛人でも構わない。
好きになったらとことん貢いで尽くす。
今回はそんなダメ人間製造機、もといダメ人間大好きフィーナ=ローレンス公爵とのセンシティブな出逢いと、それにまつわる私たちの物語を語ることにしよう。
唇の柔らかさに蕩けて忘れてしまう前に。
ここはレミルブル。
四季を彩る、活気と明るさに満ちた花の街。
「うっはぁ、すっごいキレイな街!めっちゃ映えスポット!」
「人もいっぱいですね」
「街中にも花壇と植木鉢。花の香りでむせ返りそう」
街はお祭りムード一色。
人はみんな笑顔で楽しそう。
なんかいい感じだ。
そんな中、シロンとウルはしかめっ面。
『なあリコリス…この街、ボクたちにはちょっとキツいぞ…』
『そうでござるな…。なんだかクラクラするでござるよ…』
「君たち鼻が利いちゃうんだな。じゃあ周りに薄く風魔法で膜を作って…ついでに今日はあったかいから氷魔法で涼しくして、と。これでどう?」
『ん…少しはマシだ…』
『拙者たちは大人しくしてるでござる…』
『リルムは平気ー』
『同じくでございます』
「いつもながら、似合わないくらい繊細な魔法の使い方するわよね」
「ドヤッ」
「当たり前のように無詠唱。しかも複数の属性を同時に使用してるから多重無詠唱ね。それで純粋な魔法使いじゃないんだから信じられないわ」
魔法を使えるのはアルティのおかげで、魔法の使い方を教えてくれたのはお母さんだから、一概に私がすごいのかというと、ちょっと微妙なとこなんだけど。
説明めんどくさいな。
とりあえず宿を探すかと歩き始めようとして。
「ようこそレミルブルへ!」
「お日様をいっぱい浴びて咲いたお花をどうぞ!」
籠いっぱいの花を持った小さな女の子たちがお出迎え。
首に花で編んだ輪をかけてくれた。
「ありがとう可愛いレディたち」
お礼に二人のほっぺにチュー。
「事案…」
何悍ましいもの見た顔してんだセーフだろまだ子どもだぞ。
『いいないいなーリルムもー』
え?チュー?
あ、花輪か。
「この子にももらえる?」
「はいっ、もちろんです!」
『わーいわーい』
「似合ってるよリルム」
『おいしそー』
「食うなよ?」
「お姉さんたち、花祭りは初めてですか?」
「花祭りはお花と笑顔がいっぱいのお祭りです。好きな人、いつもお世話になっている人、どこかの誰かも知らない人、どんな人にも自分の好きな色のお花を渡して、大好きとありがとう、これからもよろしくねを伝える特別な日。それが花祭りです」
「へぇ、なんだかステキなお祭りね」
「お姉さんたちもお祭りを楽しんでくださいね。フローラ様の祝福がありますように」
可愛い子たちだったなぁ。
「フローラ様って?」
「花の神フローラ。花と春を司る女神よ。ほら、あそこに銅像が建ってるでしょ」
花冠を被った女神像…
リベルタスが唯一神ってわけじゃないのか、宗教に興味が無さすぎて知らなかった。
そりゃ八百万の神々ってくらいだし当然か。
最近教会も行ってなかったし、久しぶりに足を運んでみよう。
それにしても…なるほど、陽気に包まれてるわけだ。
みんな楽しく。
このお祭りは人と人との思いやりで成り立ってると。
こっちまでウキウキしてくる。
「優しさに包まれまくってるな。ん、待てよ…てことはお花渡しまくって好き好きチュッチュしても合法で許されるってこと?!ひゅーテンション上がってきたぜー!宿探しは任せた私はレッツお姉さんだー!イェー!」
スタタタタ…
「なんでリコリスってああバカなの?」
「思考回路が下半身に直結してるんじゃないですか。まあ…あんな人でも真性の考え無しなわけでもないので、自分から問題を起こすことは無いと思いますけど」
「それもそうね」
その三十分後のこと。
「私、リコリスと結婚することに決めたの!」
「はへぁ?」
私は美女に抱きつかれながら、めちゃくちゃポカンとしていた。
いや、私が一番ビックリしてる。
道行く女の子たちにお花を渡して、
「こんにちは笑顔がステキなお姉さん♡」
「とっても可愛いね花の妖精さんかと思ったよ♡」
「花の蜜より甘いひとときを過ごしましょう♡」
なんていつもみたいに……いつもみたいに?ナンパという名の交流してウヒヒ花祭り楽しすぎりゅ~なんてしてたら、
「ひゃあっはぁぁぁぁ!」
「美人さん発見だぜぇぇぇ!」
「眩しすぎて咲き誇る花が霞んじゃうんだぜぇぇぇ!」
「「「ひゃあっはぁぁぁぁ!!」」」
「ちょっと、困るわこういうことは」
お姉さんが輩に絡まれて困ってて…
「何お祭りの空気壊してんだ下郎がぁ!」
って輩を追い払ったら…
「カッコいい…」
「ほぇ?」
「あなた…名前は?」
「リコリス…おぉうガバッて来るのビックリする!」
「これが運命というやつね!一目惚れしたわ!私と結婚して!一生幸せにするから!」
ってなって、今に至る。
なんのこっちゃって?
私が一番そう思ってるよ。
「あなた…」
「いやいや【百合の姫】の力じゃねーわ。疑いの眼差し向けんな。純粋に私の素の美貌と魅力に当てられたんだろ我ながら魅力的で困っちゃう……って冗談はさておいて。えっと…」
「フィーナ=ローレンス。フィーナって呼んでね」
格好といい雰囲気といい、見るからにいいとこのお嬢様なんだよなこの人。
ただ爛漫そうで好みかすごく好みかって訊かれると超好みなんだけども。
キレイと可愛いのハイブリッド。
するとアルティがハッとした。
「あの、失礼ですが…まさかローレンス公爵ですか?」
「そういうあなたは…アルティ…アルティじゃない!すごい偶然!マルトレウス伯爵の晩餐会で会って以来だから、もう五年?すっかり大人のレディになったね!」
知り合いとな。
てか公爵夫人とかじゃなくて、この人が公爵?
立場的には辺境伯家のアルティよりも上になるのかな。
公爵って爵位の一番上だったっけ…あれ超大物貴族じゃん。
アルティは胸に手を当てて一礼した。
「お久しぶりですローレンス卿。そういえばこの辺りもローレンス家の領地でしたか」
「公式の場じゃないんだから固くならないで。フィーナって呼んでよ。歳だって二つしか変わらないでしょ」
歳上なんだ。
外見以上に性格が子どもっぽくて全然見えなかった。
この若さで公爵なんて、さぞ遣り手なんだろうな。
「毎年この時期は花祭りのために足を運ぶの。自分で企画して始めたお祭りだしね。それより聞いたよアルティ。旅に出るからって女王陛下に啖呵を切ったって。ということは…この人が例の、女王陛下を口説いた伝説さんだね」
「どうも伝説です」
「あの鉄血の陛下を誘うなんて、どんな命知らずかと思えば、納得の美しさ。ますます気に入ったわ!式はいつがいい?あなたとの子どもなら何人だって孕んであげる!お金ならたくさんあるし、毎日好きなことをしてくれればいいよ!」
おおおおグイグイくるじゃん。
「あ、もちろん私が遊びでも全然いいから。他に女を作ってもいいよ♡」
え~そんなのダメになっちゃう。
公爵様に飼われるダメ人間生活かぁ。
悪くねえ~……
出逢ってすぐ好感度カンストするの人生楽すぎる。
間の抜けた顔で酒池肉林の毎日を妄想してたら、右腕をアルティに絡め取られた。
「ダメですよフィーナ様。この人は私のなので」
それから左腕をドロシーに。
「生憎だけど、先にツバ付けてるのはこっちだから」
…………おモテになりよるわぁ私。
こんな美少女たちが取り合って…はぁ幸せ。
齢二十にして人生もう薔薇色。否、百合色。
「人気者なのね。でも…」
と、フィーナはクスッと笑ってから頬に手を伸ばし、
「チュ♡」
唐突に、あまりに無遠慮に。
唇を重ねてきた。
「――――――――!!!」
「ちょっ――――――――!!!」
「私、好きになったら遠慮しないよ♡」
浮気は許す。
序列は何番目でもいいし、なんなら愛人でも構わない。
好きになったらとことん貢いで尽くす。
今回はそんなダメ人間製造機、もといダメ人間大好きフィーナ=ローレンス公爵とのセンシティブな出逢いと、それにまつわる私たちの物語を語ることにしよう。
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