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プロローグ
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最初の銃声が鳴り響いたときに、あたしが考えたのはあなたのことだった。
ダン ダン ダン
それが銃声だって最初に気づいたのはあたしだったかもしれない。映画なんかとはちがうその音。映画よりももっと低くて、もっと日常な感じのあの音。
あたしは鏡の前にいて、ちょっとでも自分をきれいに見せようってばかみたいに頑張ってた。
ドレッサーはすごく豪華であたしなんかが顏を映すだけでも勿体なくて、あたしは間違えて鏡に指紋なんかつけないようにすごく慎重に取れかけちゃったつけ睫毛を直してた。
ダン ダン ダン ダン ダン
悲鳴が聞こえたのはしばらく経ってからだった。あたしは顔を直すのをやめて、ドアの方を振り返った。
本当はすぐに伏せなきゃいけないって分かってた。でもあたしはやっぱり上手に動けなくて、ただドアを見つめながらあなたのことを考えてた。
あなたは大丈夫かなって、あなたはちゃんと安全な場所にいるのかなって、そんなことを考えなくてもいいのに考えてた。あたしがそんなこと心配しなくても、あなたは絶対に大丈夫なのに。あなたはあたしとは違うんだから。たぶん地球が割れたって安全な場所にいられるんだから。
ダン
それはあたしがいる場所のすぐ外だった。ついでに思い出したみたいにひとつ銃声がして、だれかがドアの向こう側で止まった。
あたしはドレスの肩ひもを直した。できるだけきれいな格好でいたかった。ほんの少しでもいいからマシでいたかった。あなたがあたしを見つけたときのために。
撃った人の顔は見えなかった。ドアが開いて、見えたのは黒っぽい影だけだった。
あたしが床にしゃがんだのは身を守るためじゃない。このきれいなドレッサーをあたしの血で汚したくなかったんだ。
ダン ダン ダン
それが銃声だって最初に気づいたのはあたしだったかもしれない。映画なんかとはちがうその音。映画よりももっと低くて、もっと日常な感じのあの音。
あたしは鏡の前にいて、ちょっとでも自分をきれいに見せようってばかみたいに頑張ってた。
ドレッサーはすごく豪華であたしなんかが顏を映すだけでも勿体なくて、あたしは間違えて鏡に指紋なんかつけないようにすごく慎重に取れかけちゃったつけ睫毛を直してた。
ダン ダン ダン ダン ダン
悲鳴が聞こえたのはしばらく経ってからだった。あたしは顔を直すのをやめて、ドアの方を振り返った。
本当はすぐに伏せなきゃいけないって分かってた。でもあたしはやっぱり上手に動けなくて、ただドアを見つめながらあなたのことを考えてた。
あなたは大丈夫かなって、あなたはちゃんと安全な場所にいるのかなって、そんなことを考えなくてもいいのに考えてた。あたしがそんなこと心配しなくても、あなたは絶対に大丈夫なのに。あなたはあたしとは違うんだから。たぶん地球が割れたって安全な場所にいられるんだから。
ダン
それはあたしがいる場所のすぐ外だった。ついでに思い出したみたいにひとつ銃声がして、だれかがドアの向こう側で止まった。
あたしはドレスの肩ひもを直した。できるだけきれいな格好でいたかった。ほんの少しでもいいからマシでいたかった。あなたがあたしを見つけたときのために。
撃った人の顔は見えなかった。ドアが開いて、見えたのは黒っぽい影だけだった。
あたしが床にしゃがんだのは身を守るためじゃない。このきれいなドレッサーをあたしの血で汚したくなかったんだ。
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