上 下
2 / 17
1章 転生早々、やらかしも

1-1 転生初日、確認大事

しおりを挟む
―――新しい生というのは、そもそもどうなっているのか。
 人でない身になるのならば、何かの卵か、あるいは普通に胎生のものから産まれるのかもしれない。

 でも、実際に体験してみないと分からなかったが…

「そんな体験、全然わからなかったけど…とりあえず、確実に人じゃないなこれ」
 
 転生先がどうなるのかわからなかったが、出てきた場所を見てどういう状況なのか分かった。
 
 かなり高い木の、その葉っぱの上にしずくが落ちるようにして、ここに生まれ落ちたようだ。
 見れば基本的には人の体に似たような感じで、転生特典というべきなのか素っ裸ではなく葉っぱのような布地でできた衣服を身に纏っている。
 その辺にあった水滴で、自分の姿を映してみれば…そこには、小さな羽の生えた少年の姿があった。

 ちょっと色白で、髪の色は金髪で目は青い。
 かといってすごく外人寄りというわけではなく、整っている方の感じだろう。
 ただ、背中の羽は鳥とか虫のものではなく、うすぼんやりとした実体のない感じがある。というか、全体的に薄く発光しているようにも見えるだろう。

「この状況を確認するための、異世界転生もののお約束といえば…『鑑定』とか?」

 試しにちょっとぽつりとつぶやき、自分自身が何なのか確認してみると、お約束はしっかりと再現されていたらしい。
 つぶやくと同時に目の前に映画とかで出るような、半透明のウィンドウのような画面が出現し、その中に今の自分に関しての詳細な情報が記載されていた。

―――
【鑑定結果】
対象種族:光妖精
名前:無し
スキル:「言語翻訳」「妖精魔法」「アイテムストレージ」「高速習得」「鑑定能力」

「光妖精」
妖精と呼ばれる種族の中で、光の加護を受けた希少な妖精。
その明かりは灯台の灯や希望の光のように、導く力を持つといわれている。

「言語翻訳」
異世界転生者に付属するスキルの一種。ありとあらゆる言語翻訳を任意で行うことが可能であり、見聞きするだけではなく、書く際にも自動でこの世界での文字の形へ修正が行われる。

「妖精魔法」
妖精だけが扱うことができる特殊な魔法、人や魔物が扱うものとは異なり、自然そのものから力を借りることができる。応用を重ねていけば、強力な魔法として扱うことが可能。

「アイテムストレージ」
いわゆる収納魔法の一種。生体反応がないものならば収納が可能であり、保存されたものの時間は停止するため腐るようなことはない。

「高速習得」
スキルの習得に対して、時間をさほどかけずに習得することが可能。
ただし、得るための努力などは必要である。

「鑑定能力」
『鑑定』の一言で、対象の情報を確認することが可能になるスキル。
ただし、本人が持つ知識の影響を受けるため、より詳しい鑑定をするには多くの知識を得ていく必要がある。
―――

 ふむ…大体の内容を見ると、オーソドックスなものになっているらしい。
 滅茶苦茶チートなものとかもあるかなと思ったが、一部努力などが必要になっているようで、人生をイージーモードにしてしまうのはないようだ。
 まぁ、簡単すぎる人生というのも飽きが来るし、ある程度の苦難などが必要になるのは理解できるだろう。この世界を知るには、自ら動くほうが良いだろうし、そっちのほうが面白いと思うのもある。


 そのため今は、まずは使える情報をどう処理していくか考えるのであった。













「…えーっと、妖精魔法ってこんな感じかな。ある程度想像したものを実現できるようだし…狙いを定めて『ライトレーザー』!!」

 ちょっと周囲を飛翔して、まずは妖精魔法に関しての確認を行っていく。
 まだこの世界での知識が少ないがゆえに、鑑定で開示できる情報は少ないが、多少の扱い方に関しては記載されており、さらに本能的に扱えそうなものであれば自然とその使い方が見えてくる。

 そこでまずは、妖精魔法の中で光妖精なら光の魔法が良いかなと思い、この小さな体でも対応できる自衛手段を得ようと思って、攻撃的な妖精魔法を使用してみたが…ある程度の想像次第な部分があることが分かった。

 レーザー光線のような光の妖精魔法を出してみたのだが、イメージとして光の束がまとめて撃ちだされる形を持っていたのと同じようなものになっている。

 びゅんっという音共に、銃弾のように飛翔し、的としていた木の葉を打ち抜いた。


 どのぐらいの出力が可能か試すと、打ち抜けないレベルから貫通、場合によっては光の熱で炎上させるなどの手段が取れるようだ。
 また、まっすぐ飛ばすだけになるかと思ったが、軌道を曲げたりすることができるようで、空中で何もぶつかっていないはずなのに狙い通りの軌跡をたどって飛ぶこともできるらしい。

「うーん、威力もそこそこ調整可能…この妖精の指サイズの超小さなものから、サイズを超えるレベルのぶっといものも可能か…」

 うまく工夫すれば、某有名な手から打ち出すエネルギー弾みたいなこともできそうだが、狙いを定めるイメージだと、指を拳銃のようにしてやった方が命中率が高い。
 基本的に妖精側のほうの意思に左右されるのか…何も考えずに打つと途中で無産してしまうのもあった。



 ある程度の使い勝手を試していたが、気が付けば日が落ちてきており、少しだけ周囲が薄暗くなってきた様子。
 ただ、光妖精としての能力なので、自身がちょっと発光しているので、暗闇に閉じ込められることはないだろう。


「でも、真夜中光っていたら、変な肉食獣とかに狙われやすくもあるかな…ちょっと調節できないかな?」

 試しに体に力を入れたり抜いたりして確認してみたところ、発光量も多少は調節が効くことが分かった。
 考えたら、寝る時まで光っていたら寝にくいもんな…オンオフが自分で切り替えられなければ、寝不足の光妖精が大量発生しそうではある。


 なので本日は、ここらへんでいったん自分の確認に区切りをつけ、手ごろな葉っぱの上を寝床にして、睡眠をとることにしたのであった…


「…あ、ちょっとお腹減ってきたかも。こりゃ、朝一で食べられるもの探したほうが良いかな?」

 自分の名前もそこでさっさと決めたほうがよさそうかな…今のところまだ誰にも出会っていないが、もし人と遭遇した時に名前がない状態だと双方ともに呼びづらいのもある。
 そもそも、この世界に人間はいるのか。いたとしても妖精は人とはどういう立ち位置で触れられるのか、わかっていない部分も多いし、慎重に探っていくか…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の叔父のところに就職します

まはぷる
ファンタジー
白木秋人は21歳。成績も運動もいたって平凡、就職浪人一歩手前の大学4年生だ。 実家の仕送りに釣られ、夏休暇を利用して、無人の祖父母宅の後片付けを請け負うことになった。 そんなとき、15年前に失踪したはずの叔父の征司が、押入れから鎧姿でいきなり帰ってきた! 異世界に行っていたという叔父に連れられ、秋人もまた異世界に行ってみることに。 ごく普通な主人公の、普通でない人たちとの異世界暮らしを綴っています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 以前にアルファポリス様で投稿していた処女作です。 物語の大筋は変わっていませんが、文体を完全な一人称に、誤字脱字と文章修正を行なっています。 小説家になろう様とカクヨム様でも投稿している物の逆輸入版となります。 それなりに書き溜め量があるので、さくさく更新していきます。

僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。 僕は治ることなく亡くなってしまった。 心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。 そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。 そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子 処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。 --------------------------------------------------------------------------------------- プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

貴族の家に転生した俺は、やり過ぎチートで異世界を自由に生きる

フリウス
ファンタジー
幼い頃からファンタジー好きな夢幻才斗(むげんさいと)。 自室でのゲーム中に突然死した才斗だが、才斗大好き女神:レアオルによって、自分が管理している異世界に転生する。 だが、事前に二人で相談して身につけたチートは…一言で言えば普通の神が裸足で逃げ出すような「やり過ぎチート」だった!? 伯爵家の三男に転生した才斗=ウェルガは、今日も気ままに非常識で遊び倒し、剣と魔法の異世界を楽しんでいる…。 アホみたいに異世界転生作品を読んでいたら、自分でも作りたくなって勢いで書いちゃいましたww ご都合主義やらなにやら色々ありますが、主人公最強物が書きたかったので…興味がある方は是非♪ それと、作者の都合上、かなり更新が不安定になります。あしからず。 ちなみにミスって各話が1100~1500字と短めです。なのでなかなか主人公は大人になれません。 現在、最低でも月1~2月(ふたつき)に1話更新中…

処理中です...