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貴族問題で章

199話

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‥‥‥王城がある王都グレイモに到着したルースたち。

 先日の王女たちの護送の際には、王城前には偽物王女たちを連れた者たちであふれかえっていたのだが、本日は馬車が並んでいた。


「この馬車全部が、今回の王城で行われる発表のためにやって来た貴族の馬車か…‥‥」

 様々な多種多様な馬車があるが、目を引くのは馬車の豪華さとかではなく‥‥‥


【ブルヒヒィィン】
【ヴンヴゥぅ!!】
【ゲラポッパァァァ】
【ヒィィィィヤァァァァホフゥゥゥ】


「‥‥‥数割ほど、明らかに馬車を引けるのか疑問なモンスターが多いな」
「召喚魔法で使役しているっモンスターに引かせた馬車のようね」
「明らかにおかしい鳴き声が混じっていないか?」

 馬車の場合、速度を重視して召喚魔法によるモンスターにけん引してもらうことがある。

 シーホースやユニコーン、バイコーンなど、馬のようなモンスターに牽引してもらったりするのが良い例であろうか。

 中には鼠のような小さなモンスターなどが牽引している光景もあってそれはそれで面白いのだが‥‥‥



「中にーは、見栄を張って雇っているのもいーるわね」

 バルション学園長がそう言いながら指をさしたのは、ある貴族の馬車。

 一見、馬車本体はまともなのだが…‥‥引いているのがミミズみたいな、それも大量になのはどうなのだろうか。

 というか、あれは見栄と言うのか?


「いや、そっちじゃなーいわよ」

 ルースの見たほうがわずかに違う事に気が付いたのか、改めて指を指し示すバルション学園長。

 その方向を改めて見て見れば…‥‥今度はまともというか、金魚のような者に引かせていた馬車があった。


――――――‥‥‥何アレ?

 一応見た目の事もあるので、馬車の上でバルション学園長によって姿を隠しているバトがそう口に洩らした。

「あれはあーれで、中々お目にかかれないモンスターだったはーずね」

 要は珍しいという事なのだろうけれども‥‥‥すごい微妙な見た目。

 あれで見栄を張っているのかといろいろ言いたくなったが、気にしたら負けだという結論にルースは至ったときであった。


「‥‥ん?」
「どうしたのよルース君?」
「いや、何でもない」

 ふと、何か視線を感じたような気がしたが、気のせいだとルースは思った。

‥‥‥だが、それは気のせいではなかった。

 王城の屋根に備え付けられているしゃちほこ。

 何かのマジックアイテムらしいのだが、そのしゃちほこの顔がルースたちの方に向いていたのだ。

 高い位置にあるので、そうそう気にするような人はおらず、気が付いている者はほとんどいなかった。


『システム起動…‥‥チェック開始。コレヨリ、対象ニ関シテデータ収集ヲ開始シマス』

 機械音のような音声は小さく、誰の耳にも入らない。

 ただ、その目はルースたちを‥‥‥いや、ルースのみを見続ける。

 何もかも見透かすようにじっと見つめ、命じられた内容を実行するしゃちほこ。

 しかし、どこの誰がしゃちほこに対して命じたのかは‥‥‥‥この時はまだ、知る由もなかったのであった。







 王城内へ入ると、以前にも入ったことがある着替え用の部屋に通されるルースたち。

 きちんと男女別に分けられているので、正装に着替えていく。

 とはいえ、今回は褒美をもらいつつ、その発表とやらも聞くだけなので長居する気はないゆえに、さっさと帰りたいともルースは思っていた。

「…‥‥というか、なーんか視線を感じるな」

 以前来た時よりも感覚が鋭くなっているのか、視線をルースは感じていた。

 ここは密室であり、覗ける者はいないはずだが…‥‥

「あ、そうだ」

 そこでふと、ある確認をしようとルースは思いついた。



「『魔導書グリモワール顕現』…‥‥からの『ギガ・フラッシュ』!!」

 水球を生み出し、その内部で光球を発生させ、レンズの要領で強力な光を一瞬発動させる。



 ほんの一瞬であったが、すぐに視線の気配は消え失せたのであった。

「まぁ、目をやったとしてもほんの数秒程だろうけど…‥‥十分に撃退できただろうな」

 魔導書グリモワールをしまいつつ、ルースはそうつぶやいたのであった。





…‥‥一方、その隣室では。

「目がぁぁぁぁぁ!!強烈な光がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「‥‥‥前にも使った除き穴を利用したのか」
―――――エルゼッテ、案外馬鹿ナノ?

 ゴロゴロと目を抑えもだえ苦しむエルゼを見ながら、レリアとバトは呆れたようにつぶやき、着替えをするのであった。


「あーれ?でも前に来た際に、一応きちんとふさぐよーうに申請したはーずよね?誰かふせぐための金を着服しーたのかしらね?」」

 首を傾げつつも、とりあえずバルション学園長は王城関係者に後で再び申請しておこうと決めていたのであった。
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