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貴族問題で章

198話

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‥‥‥王城へ向かう当日となり、ルース、レリア、エルゼ、バルション学園長たちは、王城から来た迎えの馬車に乗っていた。

 着替えは前の謁見時にもあったように王城に用意されているので、馬車に登場するときは普段着で良かった。

 ペットであったマロは召喚魔法で呼びだせるのでいったん寮に置いておき、呼びたい時に呼ばせてもらうことに。

 念のためにタキとヴィーラにも事情を説明し、もし召喚することがあったとしたら召喚するので、そのように心構えてほしいというと、彼女達は快く引き受けてくれたのであった。


‥‥‥なお、バトに関して、彼女は以前は小さな妖精サイズであったために、その時はポケットの中に入れて一緒に向かうことができたが、今回は人間サイズとなったのでそのように行動するのは不可能。

 とはいえ、馬車に一緒に乗れるかと言えば、その背中にある翅が少々邪魔となって乗れない。


――――――‥‥‥主様ノ下ニ私アリ。ケレド……。

 ぶつぶつといているのが聞こえるが、この場にはいない。

 いや、正確言えばこの上にいるのだが‥‥‥




「おーい、バト。無理して馬車の上に乗らなくてもいいんだぞ?」
―――――無理シテイナイ。主様ノ側ニイルタメニ、頑張ッテイル。


 馬車の天井に乗っているバトに対してルースは声をかけたが、彼女は引き下がらなかった。

 天井に乗る選択肢を取ったようだが、馬車って言うのは意外と風の抵抗を受ける。

 しかも、それなりに速力のある馬車ならばなおさらで、吹き曝しであれば相当吹くのだが…‥‥彼女は頑固として譲らなかった。

 というか、ここまで意固地になって一緒に居ようと行動を起こすのも珍しい。

 いつもならば周囲をふよふよと飛び回ったり、たまに空中で寝ていたりとのんびりしているのだが…‥


「‥‥‥多分、彼女もうすうす感じているのね」
「ああ、おそらく私たちと同じような勘が働いているのだろうな」

「ん?エルゼとレリアには、何でバトがああも意固地になってついてきているのか分かるのか?」
「ええ、それなりにはね」
「まぁ、ルースには分からぬ女の絆ってやつだ」
「‥‥そういうものなのか?」


 今一つわからないが、どうやら同じような想いを抱いているらしく、その感情を彼女たちは理解しているらしい。

 ゆえに、今回バトが付いてきた理由も分かるようだが‥‥‥どんな思いがあるのだろうか。


(‥‥‥というか、あたしたちと同じような勘で理解しているようなのよね)
(私だって同じようなものを薄々感じているが、より強い危機感を感じているんだろうな)

 なにやらぼそぼそとエルゼ達が会話していたが、ルースは聞いていないのであった。


‥‥‥ただ、この時ばかりは彼女達を気にしていたほうがよかったのかもしれない。

 その勘という物の内容をしっかりと聞けば、王城に行ったらさっさと帰宅するようにしたであろう。

 だが、聞いていなかったがゆえに、面倒ごとに巻き込まれることになったのだが…‥‥その事をルースが気が付くのは、時すでに遅かったのであった。











 丁度その頃、王城のとある一室にて、王子たちが集まっていた。

「‥‥‥なぁ、本当にやるのか?」

 あることを実行するために、準備を進めてきたのだが、いざその時が近づいてきたとなると、第3王子のギェーアは少しビビった声を出した。

「何を言うか、我々の目的のために、いかなる手段を用いてもあの可愛い妹たちを毒牙から守ると誓っただろ!!」
「そうだったな。ああ、そうしかないか…‥‥ビビっていてはいけないんだったな」

 第1王子のアレスの言葉に、ビビり気味であったギェーアは奮い立たされ、改めて気持ちを入れ替えて真面目に準備の最終確認に取り掛かる。

「実力差があろうが、何があろうが正々堂々と、いや、場合によっては卑怯な手でも構わない。なんとしてでも、ルルリアやアルミアのためにも、このわたしたちが動かねばならないのだ」

 第2王子のハルバーンの言葉に、アレスもギェーアも同意するかのようにうなずき、心を一つにする。


 本来であれば王位争いを行う間柄なのだが、妹たちへの愛情は少々変な方向へ曲がっていても同じ者同士。


 気持ちを、心を、想いを…‥‥何もかも一つにして、団結力を高める王子たち。

 勝負はもう間もなく始まり、その時までしっかり確認し、手を緩めてはならない。

 彼らは黙々と準備を進め、来るべきに備えて気を引き締めていくのであった。


‥‥‥なお、その肝心の妹たちの気持ちについては、ある程度の考慮はするつもりなのだが、それが本当に考慮できているのか、そして妹たちのためになるのかは、わからないのである。
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