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精霊の章
閑話 知り過ぎることができない
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…‥‥真夜中、ルースは熟睡していたはずであった。
だが、ものすごく久し振りの感覚を味わい、目を開くとそこは暗い空間…‥‥ではなかった。
「あれ?」
少し前までは暗闇であり、明かりだったのは…‥‥目の前に浮かぶ黄金の魔導書のみであったはず。
しかし、今はどういうわけかこの空間は暗くはなく、どこか別の世界‥‥‥いや、むしろ最も懐かしいように感じた場所になっていた。
「ここは‥‥‥まさか」
―――――ドコカ察シタヨウダナ、主ヨ。
ルースの驚きの言葉に、ニヤリと笑うような声を出す魔導書。
いつもならば、ここはこの魔導書との会話できる空間であったはずが……驚くべきことに、ルースの前世であった者の私室の空間になっていたのである。
―――――イツモイツモ同ジデハ面白ミガ無イ。ユエニ、主ノ記憶ノ一部ヲ再現シタ。
「前世の俺の私室の再現ってか…‥‥でも一ついいか?」
―――――ナンダ?
「いや、言うのもなんだが…‥‥俺、前世の事をほとんど覚えていないから、ここが見覚えがあったとしても今一つという感想しか出ないぞ」
―――――…‥‥。
ルースのその感想に、魔導書はしばし呆れたようにぽかんとするそぶりを見せた。
とにもかくにも、かなり久し振りの魔導書との会話の時間である。
前回は背後に気を付けろという忠告の時であったが…‥‥今回は何であろうか。
「と言うか、わざわざこんな前世の再現をしたということは、そんな『つまらない場所だったから』という理由だけじゃないよね?ここまでわざわざ手の込んだことをするからには、何か裏があるようにしか思えないのだが」
―――――アア、ソノ通リダ。
ルースの投げかけた疑問の言葉に、魔導書は否定もせずに答えた。
―――――コノ空間ヲ見テ、主ノ今ノ感想カラ察スルニ、前世ヲホボ覚エテイナイナ?
「まぁ、そう言われればそうだけどな」
ただ単に、自分には前の人生の記憶がある。
けれどもそれはあくまで前の人生ということであり、今の自分の人生ではない。
そう考えてしまう故か、そこまで前世の自分に執着がなく、月日が流れていくうちに次第にその中身をルースは忘れていた。
よく小説やアニメであるように現代知識でチートなどを考える輩が聞けばかなりもったいないことをしていると言われるだろうが…‥‥そんなことを言われたとしても、ルースはそう知識を使うことはない。
と言うか、魔法が存在しているこの世界ではそんなに意味もなく、不便ではないからと言うのも理由にある。
とにもかくにも、精々ルースの覚えている前世と言えば、前世の死因が空から降って来た謎の光によるもの程度しかないのであった。
「‥‥‥待てよ?」
そこでふと、ルースはある違和感を覚えた。
この間のフェイカー製の怪物などを見たときには感じていなかったが、よくよく考えてみれば色々とおかしいことに気が付いたのである。
グッグゴコーチ……あの怪物はコオロギやカマキリ、台所にいるイメージのあるGなどの虫のキメラのような外見をしていた。
あれが単なる偶然によって生まれたのであればいいのだが、その外見がどうも意図的な‥‥‥それこそ、考えうる限りの気持ち悪い生き物を詰め込み、いかに気持ち悪さを際立たせるかのような外見だったのだ。
気持ち悪いものが偶然生まれることがあったとしても、一目で何と何が混ざっているような生物を作れるものであろうか?
それにそもそも、これまでフェイカ―と関わって来たが‥‥‥生物兵器とかをよく見かけたが、これはこれでおかしいのだ。
この世界には魔法があるからそのようなものを作り上げる技術があるかもしれないが、それにこだわっているようにも感じさせる。
ルースの思考する様子に、魔導書は何を考えているのかわかったようだ。
―――――主、何ヲ考エテイルノカ、我ニハ分カル。大方、ソノ怪物ヲ作リ上ゲタ相手ガドノヨウナ者カ予想ガツイタノダロウ?
魔導書のその言葉に、ルースは頷いた。
「‥‥‥この予想が当たっていたとすれば、色々と辻妻が遭うというか……それにその可能性が否定できないということもないし…‥‥でも、いくらなんでもそんなことがあるのか?」
ルースはそうつぶやいたが、否定されないところを見ると真実のようであった。
―――――主ノ予想通リ、現在フェイカーデ生物兵器ヲ作ッテイルノハ、主ト同ジ「前世ノ記憶保持者」デアル。
魔導書の告げた言葉に、ルースは己の予想が当たっていることを理解してしまった。
考えてみれば、この世界で今まで兵器として扱われてきたのはマジックアイテムや魔法、普通に剣や槍と言ったものであり、「生物兵器」なんてものを考えたのはフェイカーぐらいしか思いつかない。
タキやヴィーラといった国滅ぼしのモンスターがいるからと言って、生物兵器とは言わずに普通にモンスターと言っているのだ。
だが、フェイカ―が扱うのは「生物兵器」‥‥‥それこそ、ルースのように前世の知識があるような者がSFなどでその言葉を知った者が扱うような物ばかり。
グッグゴコーチの外見も、作り上げた人物がきもち悪さを追求し、虫嫌いであれば嫌なものを詰め込んだのであろう。
その他にも色々とあるかもしれないが…‥‥とにもかくにも、確信は持てた。
ただ、一つ気になる点があった。
「魔導書、なんでお前がそんなことを確信を持って言えるんだ?フェイカー側でもあるまいし、そんな内部の情報を言えるなんて、いや、そもそも前から俺についての忠告とかをしてくれるが、そんな未来の事を分かっているように告げてくるなんて、おかしくないか?」
――――――‥‥‥。
ルースのその問いかけに、しばし魔導書は黙り込む。
何も言えないのか、それとも言えないようになっているのか…‥‥それは分からない。
だが、一つ言えるとすれば、この魔導書は怪しいということである。
…‥‥いや、そもそも喋る魔導書と言う時点で色々とおかしいけれどね。
とにもかくにも、黙っていた魔導書はしばし考える様なそぶりを見せた後、言葉を発した。
―――――ソノ質問、今答エルノハ不可能。‥‥‥ダガ、一部ダケ話ソウ。
全てを答えることはしないが、それでも話せる範囲であれば可能らしい。
それだけでもいいので、魔導書の言葉にルースは耳を傾けた。
…‥‥そして、ある事を知った。
「‥‥‥え?」
その事実を聞き、ルースは唖然とした。
前々から怪しいとは思っていたのだが…‥‥時期やタイミングを考えても、おかしくはない。
けれども、どうしてもそうだと受け入れるには頭が混乱し、まとまらない。
「いやちょっと待って、え、本当に…‥‥そうな、」
もう一度問いかけようとしたが…‥‥もう、時間切れだった。
いや、むしろ話している間にその可能な範囲を超えてしまったのかもしれない。
魔導書がいきなり輝き、目を防いで光をしのいだところで…‥‥ルースの意識は途切れた。
そして翌日、ルースは今回あったその離された内容の事だけは覚えていなかった。
何かを言われたのは確か。
けれども、まるで消されたかのように、すっぽりとその部分だけ記憶が無くなっていたのである。
……魔導書に不信感を覚えたが、どうすることもできない。
今はただ、忘れたのであれば忘れておくべきかと思いつつも、心の底では魔導書に不信感を抱くのであった‥‥‥‥
だが、ものすごく久し振りの感覚を味わい、目を開くとそこは暗い空間…‥‥ではなかった。
「あれ?」
少し前までは暗闇であり、明かりだったのは…‥‥目の前に浮かぶ黄金の魔導書のみであったはず。
しかし、今はどういうわけかこの空間は暗くはなく、どこか別の世界‥‥‥いや、むしろ最も懐かしいように感じた場所になっていた。
「ここは‥‥‥まさか」
―――――ドコカ察シタヨウダナ、主ヨ。
ルースの驚きの言葉に、ニヤリと笑うような声を出す魔導書。
いつもならば、ここはこの魔導書との会話できる空間であったはずが……驚くべきことに、ルースの前世であった者の私室の空間になっていたのである。
―――――イツモイツモ同ジデハ面白ミガ無イ。ユエニ、主ノ記憶ノ一部ヲ再現シタ。
「前世の俺の私室の再現ってか…‥‥でも一ついいか?」
―――――ナンダ?
「いや、言うのもなんだが…‥‥俺、前世の事をほとんど覚えていないから、ここが見覚えがあったとしても今一つという感想しか出ないぞ」
―――――…‥‥。
ルースのその感想に、魔導書はしばし呆れたようにぽかんとするそぶりを見せた。
とにもかくにも、かなり久し振りの魔導書との会話の時間である。
前回は背後に気を付けろという忠告の時であったが…‥‥今回は何であろうか。
「と言うか、わざわざこんな前世の再現をしたということは、そんな『つまらない場所だったから』という理由だけじゃないよね?ここまでわざわざ手の込んだことをするからには、何か裏があるようにしか思えないのだが」
―――――アア、ソノ通リダ。
ルースの投げかけた疑問の言葉に、魔導書は否定もせずに答えた。
―――――コノ空間ヲ見テ、主ノ今ノ感想カラ察スルニ、前世ヲホボ覚エテイナイナ?
「まぁ、そう言われればそうだけどな」
ただ単に、自分には前の人生の記憶がある。
けれどもそれはあくまで前の人生ということであり、今の自分の人生ではない。
そう考えてしまう故か、そこまで前世の自分に執着がなく、月日が流れていくうちに次第にその中身をルースは忘れていた。
よく小説やアニメであるように現代知識でチートなどを考える輩が聞けばかなりもったいないことをしていると言われるだろうが…‥‥そんなことを言われたとしても、ルースはそう知識を使うことはない。
と言うか、魔法が存在しているこの世界ではそんなに意味もなく、不便ではないからと言うのも理由にある。
とにもかくにも、精々ルースの覚えている前世と言えば、前世の死因が空から降って来た謎の光によるもの程度しかないのであった。
「‥‥‥待てよ?」
そこでふと、ルースはある違和感を覚えた。
この間のフェイカー製の怪物などを見たときには感じていなかったが、よくよく考えてみれば色々とおかしいことに気が付いたのである。
グッグゴコーチ……あの怪物はコオロギやカマキリ、台所にいるイメージのあるGなどの虫のキメラのような外見をしていた。
あれが単なる偶然によって生まれたのであればいいのだが、その外見がどうも意図的な‥‥‥それこそ、考えうる限りの気持ち悪い生き物を詰め込み、いかに気持ち悪さを際立たせるかのような外見だったのだ。
気持ち悪いものが偶然生まれることがあったとしても、一目で何と何が混ざっているような生物を作れるものであろうか?
それにそもそも、これまでフェイカ―と関わって来たが‥‥‥生物兵器とかをよく見かけたが、これはこれでおかしいのだ。
この世界には魔法があるからそのようなものを作り上げる技術があるかもしれないが、それにこだわっているようにも感じさせる。
ルースの思考する様子に、魔導書は何を考えているのかわかったようだ。
―――――主、何ヲ考エテイルノカ、我ニハ分カル。大方、ソノ怪物ヲ作リ上ゲタ相手ガドノヨウナ者カ予想ガツイタノダロウ?
魔導書のその言葉に、ルースは頷いた。
「‥‥‥この予想が当たっていたとすれば、色々と辻妻が遭うというか……それにその可能性が否定できないということもないし…‥‥でも、いくらなんでもそんなことがあるのか?」
ルースはそうつぶやいたが、否定されないところを見ると真実のようであった。
―――――主ノ予想通リ、現在フェイカーデ生物兵器ヲ作ッテイルノハ、主ト同ジ「前世ノ記憶保持者」デアル。
魔導書の告げた言葉に、ルースは己の予想が当たっていることを理解してしまった。
考えてみれば、この世界で今まで兵器として扱われてきたのはマジックアイテムや魔法、普通に剣や槍と言ったものであり、「生物兵器」なんてものを考えたのはフェイカーぐらいしか思いつかない。
タキやヴィーラといった国滅ぼしのモンスターがいるからと言って、生物兵器とは言わずに普通にモンスターと言っているのだ。
だが、フェイカ―が扱うのは「生物兵器」‥‥‥それこそ、ルースのように前世の知識があるような者がSFなどでその言葉を知った者が扱うような物ばかり。
グッグゴコーチの外見も、作り上げた人物がきもち悪さを追求し、虫嫌いであれば嫌なものを詰め込んだのであろう。
その他にも色々とあるかもしれないが…‥‥とにもかくにも、確信は持てた。
ただ、一つ気になる点があった。
「魔導書、なんでお前がそんなことを確信を持って言えるんだ?フェイカー側でもあるまいし、そんな内部の情報を言えるなんて、いや、そもそも前から俺についての忠告とかをしてくれるが、そんな未来の事を分かっているように告げてくるなんて、おかしくないか?」
――――――‥‥‥。
ルースのその問いかけに、しばし魔導書は黙り込む。
何も言えないのか、それとも言えないようになっているのか…‥‥それは分からない。
だが、一つ言えるとすれば、この魔導書は怪しいということである。
…‥‥いや、そもそも喋る魔導書と言う時点で色々とおかしいけれどね。
とにもかくにも、黙っていた魔導書はしばし考える様なそぶりを見せた後、言葉を発した。
―――――ソノ質問、今答エルノハ不可能。‥‥‥ダガ、一部ダケ話ソウ。
全てを答えることはしないが、それでも話せる範囲であれば可能らしい。
それだけでもいいので、魔導書の言葉にルースは耳を傾けた。
…‥‥そして、ある事を知った。
「‥‥‥え?」
その事実を聞き、ルースは唖然とした。
前々から怪しいとは思っていたのだが…‥‥時期やタイミングを考えても、おかしくはない。
けれども、どうしてもそうだと受け入れるには頭が混乱し、まとまらない。
「いやちょっと待って、え、本当に…‥‥そうな、」
もう一度問いかけようとしたが…‥‥もう、時間切れだった。
いや、むしろ話している間にその可能な範囲を超えてしまったのかもしれない。
魔導書がいきなり輝き、目を防いで光をしのいだところで…‥‥ルースの意識は途切れた。
そして翌日、ルースは今回あったその離された内容の事だけは覚えていなかった。
何かを言われたのは確か。
けれども、まるで消されたかのように、すっぽりとその部分だけ記憶が無くなっていたのである。
……魔導書に不信感を覚えたが、どうすることもできない。
今はただ、忘れたのであれば忘れておくべきかと思いつつも、心の底では魔導書に不信感を抱くのであった‥‥‥‥
応援ありがとうございます!
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