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秋の訪れで章
153話
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ルースが地下をさまよっているその頃、エルゼ達の方ではルースが行方不明なことが発覚した。
バトが何とか皆を見つけ、集合予定地であった時計塔の下に集まったのだが、その場にルースが居なかった。
当初は用でも足しているのかと思われたが…‥‥それは間違いであると、すぐに判明した。
「モフモフに担がれてどこかへいったぞ?」
「ああ、誰かが運ばれていったな」
「シャベルを担いだもこもこ物体か?それなら何かを担いでいったぞ」
少々遅いなと思ったエルゼ達が周辺に聞き込みをして、ルースがヴィーラによって連れ去られたのだと皆は理解したのだ。
ゆえに、慌てて後を追いかけようとしたが、念入りな事に足跡もなく、エルゼ達だけでは追跡不可能。
……では、どうすればいいのか。
とりあえず、偶然その場を通りかかったタキを見かけたので、エルゼ達はヴィーラに対抗できるだけの戦力や知識が欲しかったので、彼女に説明をした。
【召喚主殿が…‥‥ヴィーラによって攫われたじゃと】
唖然とした表情で、タキは持っていた綿あめを落としかけ、そうつぶやく。
「ええ、だから女狐、あんたなら追跡できないかしらと思って、探したのよ」
タキに対して、ここまでの経緯を手短に説明したエルゼがそう言う。
【‥‥‥一応、可能性としてはあったのじゃが…‥‥まさか、今日いきなりそのような強硬手段に出るとはのぅ】
ざわっと毛が逆立ち始め、周囲の地面が揺れ始める。
「予想していたって‥‥それなら、何故防げなかったのかしら?」
【我とやつが本気で激突したら、流石に周囲に甚大な被害が出るのをちょっと自覚しているのじゃ。召喚主殿に迷惑をかけぬように、しばらくは威嚇をしつつ、迂闊な行動をさせぬようにしておったが…‥‥ちょっと我も、読みが甘かったかのぅ】
ゆらりと九本の尻尾が動き始め、自然とタキから猛烈な威圧が噴き出てくる。
【じゃが、召喚主殿を攫うとは言語道断。‥‥‥‥この際、どちらの方がより上か…‥‥教えてやるべきか】
ごうっと風が吹き荒れ始め、タキの周囲に渦を巻く。
……タキは心中、かなりの憤怒に包まれていながら抑えていた。
ヴィーラの詳細な目的は不明だが、ルースを狙う可能性があったことは予想できていたのだ。
だが、周囲に迷惑をかけたくはないという思いもあって、この都市にヴィーラがいる間は、精々威嚇を放ってある程度牽制しておく程度にとどめていたのである。
しかし、それは甘かったのだとタキは思い、自らのふがいなさに激怒したのだ。
そして、己にとって大事な召喚主でもあるルースを攫われて……その怒りは天に届き、地を貫くほどであった。
一応、このまま怒りのままに動けば周囲が災害に見舞われると思い、ギリギリのところでセーブしているのだが、その理性が無くなれば大惨事は確定だ。
【じゃがのぅ……奴を追おうにも、あやつは地の中を行く。ゆえに、追跡は不可能じゃな】
尻尾をぶんぶん回し、怒りを抑えながらタキは憎々しげにそうつぶやく。
生憎、ヴィーラの得意分野は地中。
ゆえに、においなどで追おうにも途中で途切れる可能性があり、彼女だけでは難しい。
【誰か、土に関する能力が高い奴がおると良いんじゃがのぅ。土魔法とかで地中を探り当てさせたりできぬのか?】
――――――生憎、皆土魔法ハ専門外ダヨ。
「あたしは水や氷だし、レリアは火よね?」
「ああ、どちらも土では‥‥‥待てよ?」
ふと、そこでレリアが何かに気が付いたような表情になった。
「そう言えば、身近なところに茶色の魔導書を持つ奴がいたよな?彼ならば土魔法が扱えるのではないか?」
「え?‥‥‥ああ、なるほどそういうことね」
レリアの言葉に、少しだけ考え、エルゼも気が付いた。
普段は影が薄かったり、出番が余り無かったりするが、それでもそれなりの実力を持ち、土魔法に関しての能力を持つ、都合のいい奴がいるのだ。
「下僕……もといスアーン、あれなら茶色の魔導書所持者だったわね」
ニヤリと笑みを浮かべつつ、ヴィーラに対してルースを奪われた怒りを皆は燃え滾らせ、この状況の打開策になり得そうなスアーンの元へ素早く向かった。
……後に、スアーンは語った。
「本気で命がなくなるのを覚悟した。それだけやばい修羅のごとき気迫が、彼女達から立ち上っていた」のだと…‥‥。
地上ではそのようなやりとりが行われていたその頃、ルースは現れた階段を下っていた。
「一体どれだけ下るんだろうか?」
階段の上り下りとかで、上りもきついが、下りは下りできつい物がある。
それがかなりの距離だと、かなり大変なのだ。
……まぁ、精霊状態になって浮かべば上りは楽なので、今のこの下りはその為の必要な行動だと思うことによって自己解決をした。
そうこうしているうちに、最後の段を降りたところで……ルースはあたりを見渡した。
どうやらこの最下層とでもいうべき場所は、先ほどの部屋よりも狭いらしい。
明かりはともされているが、上下左右斜め、人為的にきちんと整備されている。
ただ、その材質は分からない。
金属光沢などがあることから、何かしらの金属かもしくはそう見えるようにした塗料で塗られたか考えられるが…‥‥いったい何のための部屋なのか?
「ん?」
そこでふと、奥の方に何かがあることをルースは見つけた。
かなり小さいが、宝箱のようであり、質素ながらもおしゃれな装飾が施されている。
金縁で木製と言ったところなのだろうけれども、こんなところに怪しい箱と言うのはどう見ても罠にしか思えない。
もしや、ミミックとかいう宝箱のようなモンスターって可能性もあるし、開いたとたんに爆発なんている可能性もある。
……とはいえ、何もしないでこの状況が変わるわけではない。
精霊状態の今なら、生半可なことで死ぬようなことはないはずだし…‥‥好奇心がどうしても出てしまう。
「よし、開けてみるか」
何が出てきてもいいように身構えながら、ルースは思い切ってその宝箱を開けた。
ギィィィィッツ…‥‥
「うわっ、硬いな!?」
見た目こそ綺麗にできてはいるが、かなり長い年月放置されていたのだろう。
見えない部分でさび付いているのか、それとも老朽化しているのか、開けるのにかなりの力がいる。
それでも何とか開けて、中を覗いてみれば‥‥‥そこには、小さな瓶があった。
「なんだこれ?」
中身を見れば、何かの液体がある。
栓がされていて、蒸発とかはしていないようだが…‥‥いったい何の液体なのだろうか?
一瞬、フェイカ-のものかと思ったが、あの組織の作るものはとにかく不気味な色合いをしているのに対して、この液体は無色なので関係ないと、ルースはそう判断した。
「もしかして、何かの薬なのか?」
こういう類は、何かしらの薬である可能性が高い。
これだけ地下深く、それも仕掛けが施され、このように保管されていたことを考えると、よっぽど重要な薬品に…‥‥
【‥‥‥おオ!つイに見つケたか!!】
「!?」
声が聞こえ、後ろを振り返ってみれば、そこにはモフモコな大きな兎…‥‥ヴィーラがいつの間にか立っていた。
「ヴィーラさん、いやヴィーラ、一体いつの間に」
ここまでしてきたことを考え、さん付けはせずにルースは問いかける。
いつでも戦闘できるように、ルースは身構えた。
【先ほど、よウやく追いツいたとコろだ。何にせよ‥‥‥その薬ヲ見つけてくレたことに感謝すル】
ルースの警戒を身ながら、ヴィーラは前に出ず、答える。
「感謝?この液体‥‥‥薬が目的で、俺を攫ったのか?」
【あア、何しろこの場所まデは判明しなかっタのだが、精霊王関係者が必要な事は分かってイたからね。場所の判明よリ先に確保ヲ選んだが‥‥‥その場所モ同時に見つけ、入手するトは、正直言って予想外ダったね】
やれやれと肩をすくめるようにいうヴィーラに、ルースは首を傾げた。
「精霊王関係者が必要……で、この薬を求めていたということか」
【そういう事ダ。せっかくだし、少シ話しテやろう】
ルースの言葉に間違いがないことに頷き、ヴィーラは語り始めた。
なぜ、今ルースが持っている薬品を求めていたのかを‥‥‥
バトが何とか皆を見つけ、集合予定地であった時計塔の下に集まったのだが、その場にルースが居なかった。
当初は用でも足しているのかと思われたが…‥‥それは間違いであると、すぐに判明した。
「モフモフに担がれてどこかへいったぞ?」
「ああ、誰かが運ばれていったな」
「シャベルを担いだもこもこ物体か?それなら何かを担いでいったぞ」
少々遅いなと思ったエルゼ達が周辺に聞き込みをして、ルースがヴィーラによって連れ去られたのだと皆は理解したのだ。
ゆえに、慌てて後を追いかけようとしたが、念入りな事に足跡もなく、エルゼ達だけでは追跡不可能。
……では、どうすればいいのか。
とりあえず、偶然その場を通りかかったタキを見かけたので、エルゼ達はヴィーラに対抗できるだけの戦力や知識が欲しかったので、彼女に説明をした。
【召喚主殿が…‥‥ヴィーラによって攫われたじゃと】
唖然とした表情で、タキは持っていた綿あめを落としかけ、そうつぶやく。
「ええ、だから女狐、あんたなら追跡できないかしらと思って、探したのよ」
タキに対して、ここまでの経緯を手短に説明したエルゼがそう言う。
【‥‥‥一応、可能性としてはあったのじゃが…‥‥まさか、今日いきなりそのような強硬手段に出るとはのぅ】
ざわっと毛が逆立ち始め、周囲の地面が揺れ始める。
「予想していたって‥‥それなら、何故防げなかったのかしら?」
【我とやつが本気で激突したら、流石に周囲に甚大な被害が出るのをちょっと自覚しているのじゃ。召喚主殿に迷惑をかけぬように、しばらくは威嚇をしつつ、迂闊な行動をさせぬようにしておったが…‥‥ちょっと我も、読みが甘かったかのぅ】
ゆらりと九本の尻尾が動き始め、自然とタキから猛烈な威圧が噴き出てくる。
【じゃが、召喚主殿を攫うとは言語道断。‥‥‥‥この際、どちらの方がより上か…‥‥教えてやるべきか】
ごうっと風が吹き荒れ始め、タキの周囲に渦を巻く。
……タキは心中、かなりの憤怒に包まれていながら抑えていた。
ヴィーラの詳細な目的は不明だが、ルースを狙う可能性があったことは予想できていたのだ。
だが、周囲に迷惑をかけたくはないという思いもあって、この都市にヴィーラがいる間は、精々威嚇を放ってある程度牽制しておく程度にとどめていたのである。
しかし、それは甘かったのだとタキは思い、自らのふがいなさに激怒したのだ。
そして、己にとって大事な召喚主でもあるルースを攫われて……その怒りは天に届き、地を貫くほどであった。
一応、このまま怒りのままに動けば周囲が災害に見舞われると思い、ギリギリのところでセーブしているのだが、その理性が無くなれば大惨事は確定だ。
【じゃがのぅ……奴を追おうにも、あやつは地の中を行く。ゆえに、追跡は不可能じゃな】
尻尾をぶんぶん回し、怒りを抑えながらタキは憎々しげにそうつぶやく。
生憎、ヴィーラの得意分野は地中。
ゆえに、においなどで追おうにも途中で途切れる可能性があり、彼女だけでは難しい。
【誰か、土に関する能力が高い奴がおると良いんじゃがのぅ。土魔法とかで地中を探り当てさせたりできぬのか?】
――――――生憎、皆土魔法ハ専門外ダヨ。
「あたしは水や氷だし、レリアは火よね?」
「ああ、どちらも土では‥‥‥待てよ?」
ふと、そこでレリアが何かに気が付いたような表情になった。
「そう言えば、身近なところに茶色の魔導書を持つ奴がいたよな?彼ならば土魔法が扱えるのではないか?」
「え?‥‥‥ああ、なるほどそういうことね」
レリアの言葉に、少しだけ考え、エルゼも気が付いた。
普段は影が薄かったり、出番が余り無かったりするが、それでもそれなりの実力を持ち、土魔法に関しての能力を持つ、都合のいい奴がいるのだ。
「下僕……もといスアーン、あれなら茶色の魔導書所持者だったわね」
ニヤリと笑みを浮かべつつ、ヴィーラに対してルースを奪われた怒りを皆は燃え滾らせ、この状況の打開策になり得そうなスアーンの元へ素早く向かった。
……後に、スアーンは語った。
「本気で命がなくなるのを覚悟した。それだけやばい修羅のごとき気迫が、彼女達から立ち上っていた」のだと…‥‥。
地上ではそのようなやりとりが行われていたその頃、ルースは現れた階段を下っていた。
「一体どれだけ下るんだろうか?」
階段の上り下りとかで、上りもきついが、下りは下りできつい物がある。
それがかなりの距離だと、かなり大変なのだ。
……まぁ、精霊状態になって浮かべば上りは楽なので、今のこの下りはその為の必要な行動だと思うことによって自己解決をした。
そうこうしているうちに、最後の段を降りたところで……ルースはあたりを見渡した。
どうやらこの最下層とでもいうべき場所は、先ほどの部屋よりも狭いらしい。
明かりはともされているが、上下左右斜め、人為的にきちんと整備されている。
ただ、その材質は分からない。
金属光沢などがあることから、何かしらの金属かもしくはそう見えるようにした塗料で塗られたか考えられるが…‥‥いったい何のための部屋なのか?
「ん?」
そこでふと、奥の方に何かがあることをルースは見つけた。
かなり小さいが、宝箱のようであり、質素ながらもおしゃれな装飾が施されている。
金縁で木製と言ったところなのだろうけれども、こんなところに怪しい箱と言うのはどう見ても罠にしか思えない。
もしや、ミミックとかいう宝箱のようなモンスターって可能性もあるし、開いたとたんに爆発なんている可能性もある。
……とはいえ、何もしないでこの状況が変わるわけではない。
精霊状態の今なら、生半可なことで死ぬようなことはないはずだし…‥‥好奇心がどうしても出てしまう。
「よし、開けてみるか」
何が出てきてもいいように身構えながら、ルースは思い切ってその宝箱を開けた。
ギィィィィッツ…‥‥
「うわっ、硬いな!?」
見た目こそ綺麗にできてはいるが、かなり長い年月放置されていたのだろう。
見えない部分でさび付いているのか、それとも老朽化しているのか、開けるのにかなりの力がいる。
それでも何とか開けて、中を覗いてみれば‥‥‥そこには、小さな瓶があった。
「なんだこれ?」
中身を見れば、何かの液体がある。
栓がされていて、蒸発とかはしていないようだが…‥‥いったい何の液体なのだろうか?
一瞬、フェイカ-のものかと思ったが、あの組織の作るものはとにかく不気味な色合いをしているのに対して、この液体は無色なので関係ないと、ルースはそう判断した。
「もしかして、何かの薬なのか?」
こういう類は、何かしらの薬である可能性が高い。
これだけ地下深く、それも仕掛けが施され、このように保管されていたことを考えると、よっぽど重要な薬品に…‥‥
【‥‥‥おオ!つイに見つケたか!!】
「!?」
声が聞こえ、後ろを振り返ってみれば、そこにはモフモコな大きな兎…‥‥ヴィーラがいつの間にか立っていた。
「ヴィーラさん、いやヴィーラ、一体いつの間に」
ここまでしてきたことを考え、さん付けはせずにルースは問いかける。
いつでも戦闘できるように、ルースは身構えた。
【先ほど、よウやく追いツいたとコろだ。何にせよ‥‥‥その薬ヲ見つけてくレたことに感謝すル】
ルースの警戒を身ながら、ヴィーラは前に出ず、答える。
「感謝?この液体‥‥‥薬が目的で、俺を攫ったのか?」
【あア、何しろこの場所まデは判明しなかっタのだが、精霊王関係者が必要な事は分かってイたからね。場所の判明よリ先に確保ヲ選んだが‥‥‥その場所モ同時に見つけ、入手するトは、正直言って予想外ダったね】
やれやれと肩をすくめるようにいうヴィーラに、ルースは首を傾げた。
「精霊王関係者が必要……で、この薬を求めていたということか」
【そういう事ダ。せっかくだし、少シ話しテやろう】
ルースの言葉に間違いがないことに頷き、ヴィーラは語り始めた。
なぜ、今ルースが持っている薬品を求めていたのかを‥‥‥
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