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学園2年目
100話
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記念すべき100話!!
――――――――――――――――
‥‥‥冬も過ぎ、季節は春となり、ルースたちは進級することになった。
つまり、この春にある学園の入学式で後輩ができるのである。
だがしかし、「入学式」ということは…‥‥
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「助けてくれぇぇぇぇぇ!!」
「みっひゃぁぁぁぁぁあ!!」
「‥‥‥学園長による洗礼か。あれからもう1年経っているんだなぁ」
「ルース君、遠い目になっているわよ。まぁ気持ちはわからなくもないけどね‥‥‥」
「途中から留学してきたから、この光景は初めて見るが、あれはあれでなかなか良いな。力を真っ先に示してこそ、馬鹿を出さないようにできるのだろう」
―――――無茶苦茶ダヨ。
入学式会場となった校庭から聞こえる新入生たちの悲鳴を聞き、初めて学園に来た当初のことを思い出し、ルースとエルゼは遠い目をして、入学当初はいなかったレリアとバトは首を傾げた。
「って、あれ?そういえばスアーンはどこへ行った?」
最近影が薄くてほとんど見なくなった友人だが、彼も確か入学当初の学園長の洗礼を受けたはずである。
いまだに校庭から聞こえてくる新入生たちの悲鳴は良いとして、気が付けばスアーンがいないのである。
「ああ、そういえば彼ならば他の男子たちと一緒にある場所へ行ったぞ」
「ある場所?」
思い出したかのように言ったレリアに、ルースは尋ねた。
「ばかばかしいというか、女子から見れば最低とも言える行いでな‥‥‥他の女性生徒たちが企んでいた男子生徒たちをもろとも連れ去ったんだ」
「‥‥‥深く聞かないほうが良いか」
「ああ、そういうことだ」
・・・・・どこの世界も、一致団結した人は強いらしい。
特に、共通の敵を持った場合の団結力はかなりのようで、よくよく見れば男子生徒たちの数が少なく、女性生徒たちが何かをしているのであろう。
自業自得というか、犠牲となった者たちに対してルースは思わず同情するのであった。
入学式も終わったようで、会場からの悲鳴は無くなり、保健室に長蛇の列ができていた。
この保健室では普段、白い魔導書で行える治療用の魔法を使える人たちが常駐しているのだが、学園長のせいで手が足りずあたふたとしている。
「…‥‥で、その為に俺もかりだされたのか」
金色の魔導書を扱えるルースは当然のことながら、癒しの魔法も複合して扱える。
その為、治療する手助けをさせられるのであった。
「とはいえ、一気にやったほうが楽だから‥‥‥これでいくか。『ヒールミスト』!!」
水魔法と癒しの魔法の複合魔法。
一気に細かな霧が発生し、ズタボロになっていた生徒たちを覆っていき、自然治癒能力を高めさせて傷を治していく。
「すっげぇぇぇ!!あれが先輩か!!」
「傷が見る見るうちに・・・・・これだけの範囲をたった一人で!!」
「よし!!あの先輩を目指してやっていこう!!」
ルースが魔法を行使し、その実力を見て新入生たちは目を輝かせる。
既に国王には報告したので、この力がばれても良いのだが・・・・・こうも感謝というか、称賛のまなざしで見られることにルースは慣れていなかった。
「じ、じゃあこれで治療できるからね」
そそくさと魔法をその場に放置し、ルースは離れた。
慣れない賞賛というのは、純粋なものほど照れるものである。
おごり高ぶる気持ちはないが、それでも気持ちはいい方だ。
「‥‥‥ん?」
その時、ふとルースは誰かの視線を感じた。
その視線の方を向くと、誰かが立っていた。
チャイナドレスのような衣服をまとい、鬼の角のようなものが生えている少女を。
だがしかし、その姿は一瞬で消えた。
「え?」
あの時、晩餐会の会場のテラスで、少し声を交わした魔族のようであったが、なぜこの場にいたのだろうか?
その姿があった場所を少し探ってみたが特に何もない。
「?」
疑問に思いつつも、真昼の幻か見間違えかと考え、ルースは気にしないことにするのであった‥‥‥
「‥‥‥ほう、やはり実力は高めで、広範囲の治療魔法を扱えるのでアルか」
ルースが気にしないようにして、その場を去ってから再びその少女は姿を現した。
その手には、カバーで黒色に見えるが、その中身はまがまがしい色をした魔導書のようなものが握られていた。
「ふふふふふ、今はまだ様子見でアル。敵の情報を知らねば動けぬし、今は学園生活とやらに混ざってみるのでアル。忌々しいかもしれぬが、まぁたまにはこういうのも悪くはないでアルな」
にやりと不敵にその魔族の少女は笑い、その魔導書のようなものに手をかざすと、その姿は変化した。
角は失せ、身長も小さめになって年相応の背丈。
一部さすがに戻したくはないとアンバランスなところは兼ね備えていたが、少女は不敵な笑みをたたえながら新入生たちの中へ戻っていく。
‥‥‥この春、学園長の洗礼によって怪我をした新入生は大勢出たそうだが、その中で、この少女はわざと怪我を偽装し、全くの無傷であったことに気が付く者は誰もいないのであった。
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‥‥‥冬も過ぎ、季節は春となり、ルースたちは進級することになった。
つまり、この春にある学園の入学式で後輩ができるのである。
だがしかし、「入学式」ということは…‥‥
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「助けてくれぇぇぇぇぇ!!」
「みっひゃぁぁぁぁぁあ!!」
「‥‥‥学園長による洗礼か。あれからもう1年経っているんだなぁ」
「ルース君、遠い目になっているわよ。まぁ気持ちはわからなくもないけどね‥‥‥」
「途中から留学してきたから、この光景は初めて見るが、あれはあれでなかなか良いな。力を真っ先に示してこそ、馬鹿を出さないようにできるのだろう」
―――――無茶苦茶ダヨ。
入学式会場となった校庭から聞こえる新入生たちの悲鳴を聞き、初めて学園に来た当初のことを思い出し、ルースとエルゼは遠い目をして、入学当初はいなかったレリアとバトは首を傾げた。
「って、あれ?そういえばスアーンはどこへ行った?」
最近影が薄くてほとんど見なくなった友人だが、彼も確か入学当初の学園長の洗礼を受けたはずである。
いまだに校庭から聞こえてくる新入生たちの悲鳴は良いとして、気が付けばスアーンがいないのである。
「ああ、そういえば彼ならば他の男子たちと一緒にある場所へ行ったぞ」
「ある場所?」
思い出したかのように言ったレリアに、ルースは尋ねた。
「ばかばかしいというか、女子から見れば最低とも言える行いでな‥‥‥他の女性生徒たちが企んでいた男子生徒たちをもろとも連れ去ったんだ」
「‥‥‥深く聞かないほうが良いか」
「ああ、そういうことだ」
・・・・・どこの世界も、一致団結した人は強いらしい。
特に、共通の敵を持った場合の団結力はかなりのようで、よくよく見れば男子生徒たちの数が少なく、女性生徒たちが何かをしているのであろう。
自業自得というか、犠牲となった者たちに対してルースは思わず同情するのであった。
入学式も終わったようで、会場からの悲鳴は無くなり、保健室に長蛇の列ができていた。
この保健室では普段、白い魔導書で行える治療用の魔法を使える人たちが常駐しているのだが、学園長のせいで手が足りずあたふたとしている。
「…‥‥で、その為に俺もかりだされたのか」
金色の魔導書を扱えるルースは当然のことながら、癒しの魔法も複合して扱える。
その為、治療する手助けをさせられるのであった。
「とはいえ、一気にやったほうが楽だから‥‥‥これでいくか。『ヒールミスト』!!」
水魔法と癒しの魔法の複合魔法。
一気に細かな霧が発生し、ズタボロになっていた生徒たちを覆っていき、自然治癒能力を高めさせて傷を治していく。
「すっげぇぇぇ!!あれが先輩か!!」
「傷が見る見るうちに・・・・・これだけの範囲をたった一人で!!」
「よし!!あの先輩を目指してやっていこう!!」
ルースが魔法を行使し、その実力を見て新入生たちは目を輝かせる。
既に国王には報告したので、この力がばれても良いのだが・・・・・こうも感謝というか、称賛のまなざしで見られることにルースは慣れていなかった。
「じ、じゃあこれで治療できるからね」
そそくさと魔法をその場に放置し、ルースは離れた。
慣れない賞賛というのは、純粋なものほど照れるものである。
おごり高ぶる気持ちはないが、それでも気持ちはいい方だ。
「‥‥‥ん?」
その時、ふとルースは誰かの視線を感じた。
その視線の方を向くと、誰かが立っていた。
チャイナドレスのような衣服をまとい、鬼の角のようなものが生えている少女を。
だがしかし、その姿は一瞬で消えた。
「え?」
あの時、晩餐会の会場のテラスで、少し声を交わした魔族のようであったが、なぜこの場にいたのだろうか?
その姿があった場所を少し探ってみたが特に何もない。
「?」
疑問に思いつつも、真昼の幻か見間違えかと考え、ルースは気にしないことにするのであった‥‥‥
「‥‥‥ほう、やはり実力は高めで、広範囲の治療魔法を扱えるのでアルか」
ルースが気にしないようにして、その場を去ってから再びその少女は姿を現した。
その手には、カバーで黒色に見えるが、その中身はまがまがしい色をした魔導書のようなものが握られていた。
「ふふふふふ、今はまだ様子見でアル。敵の情報を知らねば動けぬし、今は学園生活とやらに混ざってみるのでアル。忌々しいかもしれぬが、まぁたまにはこういうのも悪くはないでアルな」
にやりと不敵にその魔族の少女は笑い、その魔導書のようなものに手をかざすと、その姿は変化した。
角は失せ、身長も小さめになって年相応の背丈。
一部さすがに戻したくはないとアンバランスなところは兼ね備えていたが、少女は不敵な笑みをたたえながら新入生たちの中へ戻っていく。
‥‥‥この春、学園長の洗礼によって怪我をした新入生は大勢出たそうだが、その中で、この少女はわざと怪我を偽装し、全くの無傷であったことに気が付く者は誰もいないのであった。
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