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学園1年目
75話
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・・・・・・スッパリンの木の実を探すために、都市メルドランの外へルースたちは出た後、以前にも訪れた湖に来ていた。
「この周辺に自生しているのか?」
【そのはずじゃな。あの酸っぱい匂いが独特ゆえに・・・・・ぐっ、今大量になっているようじゃな】
クンクンとタキが匂いを嗅ぎ、顔をしかめっ面にしてそう告げた。
確か、犬の嗅覚って人間以上だから、イヌ科でもある狐も同じなのかな。
そしたら、その酸っぱい匂いもかなり分かるんじゃ‥‥
犬並みの嗅覚を自分が持っていないことにほっとしつつ、ちょっとタキに同情するルースであった。
しばし探索し、タキがその臭いを嗅ぎながら進むと、そこには目的のスッパリンの木の実を大量に付けた木があった。
「これがスッパリンの木の実を付けた木か」
ここまで近くに行くと、嫌でもルースの鼻にもその酸っぱい香りがしてきた。
例えで言うなれば、理科で使用する酢酸液や、お酢を大量に混ぜつつ、濃縮し、梅干しの酸っぱさすら凌駕する・・・・・・ダメだ、語彙力が足りない。
とにもかくにも、言いようのない酸っぱさの香りが漂っているという事だけははっきりした。
「この木の実を持って帰って、先生に見せて終了だけど、これだけの強烈な凝りを放つ木の実をどうやって持って帰るべきだこれ?」
【そこまでは考えていなかったのぅ】
持って来ればいいとだけ考えていたが、思わぬところに落とし穴があった者である。
服のポケットの中に入れれば恐ろしく強烈な香りが染みつくだろうし、潰れたらそれはそれで目も当てられない状態となる。
「魔法で何とか出来そうなものは‥‥‥」
魔導書を顕現させ、ルースは考える。
ここまで強烈な酸っぱい香りを漂わせるものを遮断して持って帰るには、それを防げるだけの入れ物が必要である。
魔法によって何とか包み込んでできないかと考え、結論として3属性の複合魔法で有効そうな組み合わせを使用することにした。
まずは単純に土で覆って、その後に水の膜を張って空気が漏れ出ないようにして、さらに匂いを通さないように氷の壁も作成する。
土、水、氷の3属性の壁によって匂いを遮断する魔法・・・・・・
「『アイスソイルポケット』!」
ポンっと出来たのは小さな袋。
その中に手に匂いが付く前に素早くスッパリンの木の実を投入し、包んでしまえば匂いが漏れ出ることはなかった。
「とは言っても、氷が解けたら漏れ出てくるだろうし、さっさと持って帰らないとね」
【そうじゃな、超特急で飛ばすのじゃ!】
万が一にでも落として辺りに爆散しないように丁寧にその袋を持ちながら、帰還するためにルースがタキの背中に乗ろうとした時であった。
【ん?】
ふと、タキが何かに気が付いたように顔を上げる。
「どうした?」
【・・・・・何か嫌な香りがするモノが近づいておる】
毛を逆立て、警戒するタキ。
よく耳を澄ませると、何かが木々をなぎ倒している音が聞こえた。
・・・・・ズドバキバキズドズドバキバキバキバキ!!
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
【「!?」】
咆哮のような声が聞こえた次の瞬間、森の中から木を吹き飛ばし、何かがルースたちのところへ突進してきた。
【危ないのじゃ召喚主殿!!】
背に乗せるよりも早くタキがルースを加え、素早く跳躍する。
その数秒後に、先ほどまでルースたちがいたところを何かがすごい勢いで突っ込んでいき、木々を薙ぎ払った。
【グモアァァァァァァァァァ!!】
「な、なんだありゃ!?」
突進し損ねたのが悔しいのか、その生物は方向転換し、ルースたちに向かって激しい雄叫びを上げた。
よく見れば、それは表面が不気味な色合いをした、イノシシ・・・・いや、マンモスとかも混ざっているような形状であり、なんとなく某映画のタ〇リ神のようにも見える。
どちらかといえば、表面がつるつるで、大口を開けているからカ〇ナシ暴走バージョンの方が近いのかもしれない。
【気を付けるのじゃ召喚主殿!!こやつから血の臭いがスゴイするのじゃ!!】
タキが威嚇しつつ、加えていたルースを器用に背中に乗せ、注意を呼び掛ける。
どうやら彼女にとってもこの目の前の不気味な怪物のような奴は警戒すべき対象で、相当危険なものらしい。
【グモアァァァァァ!!】
と、その怪物は口を開け、何かを飛ばしてきた。
それ時はまるでヘドロのような塊で、怪物と同色の不気味な色を放つ物体である。
「避けろタキ!!」
【言われなくとも避けるのじゃ!!】
すばやくタキが横に移動し、その怪物が飛ばしてきたものが着弾する。
ジュワァァァァァァァァァァァ!!
一瞬にして、着弾地点の地面が焼け爛れ、溶解したようになった。
「・・・・・しゃ、シャレにならないような怪物だな」
思わずぞくっと悪寒がしつつ、ルースはその怪物の危険性を十分に理解した。
【グモアァァァァァァ!!】
2発目を放つかのように、再びその怪物は大口を開ける。
【ちっ、これはまずいのぅ】
どうやら大きいものを出すようであり、避けるのは難しそうである。
【召喚主殿、遠距離攻撃できる魔法で対抗できぬか!?我はその手の攻撃が苦手なのじゃ!】
「いわれなくてもやるってば!!」
魔導書を開き、素早くルースは相手が2発目の攻撃を放つ前に魔法を発動させる。
「最初から全力で『テンペストカノン』!!」
相手の危険性を十分に理解していたルースは、一番威力が髙そうな魔法を発動させた。
風の渦を発生させ、水と電気を巻き込むようにして、まるで横倒しになった嵐の奔流が怪物へめがけて突っ込んでいく。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
怪物側も負けじと2発目の、先ほどよりも大きな塊を発射する。
双方の攻撃がぶつかり合い、ルースの方が威力があったのか押し返し、一気に怪物へ襲い掛かる。
ドガァァァァァァン!!
【グモガァァァァァァ!!】
怪物の叫び声と共に、爆発を引き起こした。
「やったか!?」
【・・・・・いや、まだじゃ!!】
ルースはこの攻撃で倒せたかと思ったが、タキが見る限りまだできていないようである。
煙がはれ、出てきたのは何やらいろいろと体のあちこちが吹き飛んだ怪物。
だがしかし、その傷口は盛り上がり、まるで再生しているかのようである。
「こりゃ不味いな、攻撃が再生を上回らないのか」
【なんにせよ、今のうちに逃げたほうがいのじゃ!】
先ほどの攻撃はかなり大規模なものだったはずなのだが、どうも耐え切られて、再生されているようである。
形勢不利と感じ取り、タキがルースを乗せて逃亡を図ろうとしたが‥‥
【ぬっつ!?】
「どうしたタキ!!」
【あ、足元にいつの間にかやつの体液が!!固まって動かぬ!!】
「なんだと!?」
見れば、いつの間にか怪物の方からドロドロしたような物が流れてきており、タキの足元に広がって、彼女の足を拘束しているようである。
攻撃時に出た煙に紛れ、傷口から流れ出ていた体液を素早く流したのであろう。
【グモアァァァァァァァァ!!】
再生が終わり、雄叫びを上げその怪物は牛が突進するがのごとく、地面を蹴り砂埃を上げる。
どうやら動きを固めた今、全力で突っ込んでくる気らしい。
【まずい、避けられぬのじゃ!!】
流石に動きを封じられては、この攻撃は避けきれない。
だがしかし、どうすれば‥‥‥あ。
「タキ!!人型になれ!!」
【あ、その手があったか!?】
ルースの言葉に、タキが素早く大きな九尾の狐の姿から人の形へ化ける。
あの狐時の足元を拘束されていたが、変化で体が小さくなることで拘束は意味をなさず、其のままタキはルースを抱え、地面に触れぬように動く。
【緊急時用必殺『テールコプター』!!】
人型になっても生えている九本の尻尾を回転させ、まるでヘリコプターのようにタキはその場を上に逃れ、何とか怪物の突進をかわし、あの体液が流れていない地に降りると同時に、再び九尾の狐の姿に戻った。
【ふぅ、間一髪じゃった】
「というか、あれで飛べるのかよ!!」
【緊急時用ゆえに、明日辺りは尻尾が筋肉痛になりそうじゃが・・・・・なんにせよ、まずい状況なのは変わらないのじゃ。むしろ悪化しておる】
タキの言葉を聞き、ルースが周囲を見渡せば、いつの間にかあの怪物の体液があちこちに流れており、囲まれてしまっていた。
タキの跳躍力でも乗り超えることは難しそうであり、今度こそ非常に絶体絶命な状態である。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
再び大口を開け、3発目のあの攻撃を今度こそ外さない気なのか、あの怪物が準備を始める。
魔法攻撃ではどうも攻撃力不足であり、かと言って物理攻撃では、あの怪物の体液が出てきて触れる危険性がある。
「タキ、何とかならないのか!?」
【・・・・・こうなれば苦手じゃが、我も遠距離攻撃をするからそれに合わせてほしいのじゃ!!】
幸いというべきか、怪物側は確実なトドメとするために充填しているようであり、その隙の間であれば何とか攻撃できそうなのだという。
【すぅぅぅぅぅぅぅっと、思いっきり息を吸い込んでぇぇぇぇぇぇぇ】
タキが口を開け、口腔内が光り始める。
どうやら光属性の攻撃を行うようであり、その攻撃を更に強化する攻撃魔法をルースは発動させる。
以前、入学式の時に学園長によって利用された魔法。
あの魔法を改良し、今回のタキの攻撃を更に強化するものとして・・・・・
「水で光を収束し、更にこちらの光属性の魔法を加え、そこに相手の攻撃に対して収束できるように・・・・この魔法でどうだ!!」
相手側が攻撃をする瞬間、タキも攻撃をし、それにルースは合わせる。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
【これでも喰らうのじゃ!!『爆裂光線砲』!!】
「『ブーストライト』!!」
魔法の発動と同時に、ルースたちの目の前に巨大なレンズが出現し、そこに続けて強制的に集中するための土魔法で道筋が形作られ、タキの口から出た光線にルースの光魔法が合わさり、レンズを通過して集中し、道筋に沿って一点集中の強力な光線が放たれる。
怪物が吐き出した巨大な塊に正面からぶつかり、一瞬で蒸発させるとともに怪物めがけて一直線に突き進む。
怪物はよけようとしたが、流石に攻撃を放ったばかりで素早く動けないようで、そのままま直撃し、あっという間に蒸発していく。
【グモガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!】
あっという間に怪物は最後の悲鳴を上げ、そのまま消滅していった。
あとに残るのは、攻撃した跡のみであったが…‥‥
「‥‥‥あ、やべ。やり過ぎた?」
【・・・・・よし、ここは逃げてみなかったことにするのじゃ】
その怪物の消滅した跡地は、まるでドラゴンが、いや某腐った巨人が焼きはらった跡地のようになったので、慌ててルースたちはその場から逃亡するのであった。
あの怪物に全て押しつけてしまおう。そうしよう。
というか、タキ。お前遠距離攻撃は苦手と言っていたくせに、ちょっと強化しただけで本気で国を滅ぼせる攻撃になっているぞこれ。
「この周辺に自生しているのか?」
【そのはずじゃな。あの酸っぱい匂いが独特ゆえに・・・・・ぐっ、今大量になっているようじゃな】
クンクンとタキが匂いを嗅ぎ、顔をしかめっ面にしてそう告げた。
確か、犬の嗅覚って人間以上だから、イヌ科でもある狐も同じなのかな。
そしたら、その酸っぱい匂いもかなり分かるんじゃ‥‥
犬並みの嗅覚を自分が持っていないことにほっとしつつ、ちょっとタキに同情するルースであった。
しばし探索し、タキがその臭いを嗅ぎながら進むと、そこには目的のスッパリンの木の実を大量に付けた木があった。
「これがスッパリンの木の実を付けた木か」
ここまで近くに行くと、嫌でもルースの鼻にもその酸っぱい香りがしてきた。
例えで言うなれば、理科で使用する酢酸液や、お酢を大量に混ぜつつ、濃縮し、梅干しの酸っぱさすら凌駕する・・・・・・ダメだ、語彙力が足りない。
とにもかくにも、言いようのない酸っぱさの香りが漂っているという事だけははっきりした。
「この木の実を持って帰って、先生に見せて終了だけど、これだけの強烈な凝りを放つ木の実をどうやって持って帰るべきだこれ?」
【そこまでは考えていなかったのぅ】
持って来ればいいとだけ考えていたが、思わぬところに落とし穴があった者である。
服のポケットの中に入れれば恐ろしく強烈な香りが染みつくだろうし、潰れたらそれはそれで目も当てられない状態となる。
「魔法で何とか出来そうなものは‥‥‥」
魔導書を顕現させ、ルースは考える。
ここまで強烈な酸っぱい香りを漂わせるものを遮断して持って帰るには、それを防げるだけの入れ物が必要である。
魔法によって何とか包み込んでできないかと考え、結論として3属性の複合魔法で有効そうな組み合わせを使用することにした。
まずは単純に土で覆って、その後に水の膜を張って空気が漏れ出ないようにして、さらに匂いを通さないように氷の壁も作成する。
土、水、氷の3属性の壁によって匂いを遮断する魔法・・・・・・
「『アイスソイルポケット』!」
ポンっと出来たのは小さな袋。
その中に手に匂いが付く前に素早くスッパリンの木の実を投入し、包んでしまえば匂いが漏れ出ることはなかった。
「とは言っても、氷が解けたら漏れ出てくるだろうし、さっさと持って帰らないとね」
【そうじゃな、超特急で飛ばすのじゃ!】
万が一にでも落として辺りに爆散しないように丁寧にその袋を持ちながら、帰還するためにルースがタキの背中に乗ろうとした時であった。
【ん?】
ふと、タキが何かに気が付いたように顔を上げる。
「どうした?」
【・・・・・何か嫌な香りがするモノが近づいておる】
毛を逆立て、警戒するタキ。
よく耳を澄ませると、何かが木々をなぎ倒している音が聞こえた。
・・・・・ズドバキバキズドズドバキバキバキバキ!!
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
【「!?」】
咆哮のような声が聞こえた次の瞬間、森の中から木を吹き飛ばし、何かがルースたちのところへ突進してきた。
【危ないのじゃ召喚主殿!!】
背に乗せるよりも早くタキがルースを加え、素早く跳躍する。
その数秒後に、先ほどまでルースたちがいたところを何かがすごい勢いで突っ込んでいき、木々を薙ぎ払った。
【グモアァァァァァァァァァ!!】
「な、なんだありゃ!?」
突進し損ねたのが悔しいのか、その生物は方向転換し、ルースたちに向かって激しい雄叫びを上げた。
よく見れば、それは表面が不気味な色合いをした、イノシシ・・・・いや、マンモスとかも混ざっているような形状であり、なんとなく某映画のタ〇リ神のようにも見える。
どちらかといえば、表面がつるつるで、大口を開けているからカ〇ナシ暴走バージョンの方が近いのかもしれない。
【気を付けるのじゃ召喚主殿!!こやつから血の臭いがスゴイするのじゃ!!】
タキが威嚇しつつ、加えていたルースを器用に背中に乗せ、注意を呼び掛ける。
どうやら彼女にとってもこの目の前の不気味な怪物のような奴は警戒すべき対象で、相当危険なものらしい。
【グモアァァァァァ!!】
と、その怪物は口を開け、何かを飛ばしてきた。
それ時はまるでヘドロのような塊で、怪物と同色の不気味な色を放つ物体である。
「避けろタキ!!」
【言われなくとも避けるのじゃ!!】
すばやくタキが横に移動し、その怪物が飛ばしてきたものが着弾する。
ジュワァァァァァァァァァァァ!!
一瞬にして、着弾地点の地面が焼け爛れ、溶解したようになった。
「・・・・・しゃ、シャレにならないような怪物だな」
思わずぞくっと悪寒がしつつ、ルースはその怪物の危険性を十分に理解した。
【グモアァァァァァァ!!】
2発目を放つかのように、再びその怪物は大口を開ける。
【ちっ、これはまずいのぅ】
どうやら大きいものを出すようであり、避けるのは難しそうである。
【召喚主殿、遠距離攻撃できる魔法で対抗できぬか!?我はその手の攻撃が苦手なのじゃ!】
「いわれなくてもやるってば!!」
魔導書を開き、素早くルースは相手が2発目の攻撃を放つ前に魔法を発動させる。
「最初から全力で『テンペストカノン』!!」
相手の危険性を十分に理解していたルースは、一番威力が髙そうな魔法を発動させた。
風の渦を発生させ、水と電気を巻き込むようにして、まるで横倒しになった嵐の奔流が怪物へめがけて突っ込んでいく。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
怪物側も負けじと2発目の、先ほどよりも大きな塊を発射する。
双方の攻撃がぶつかり合い、ルースの方が威力があったのか押し返し、一気に怪物へ襲い掛かる。
ドガァァァァァァン!!
【グモガァァァァァァ!!】
怪物の叫び声と共に、爆発を引き起こした。
「やったか!?」
【・・・・・いや、まだじゃ!!】
ルースはこの攻撃で倒せたかと思ったが、タキが見る限りまだできていないようである。
煙がはれ、出てきたのは何やらいろいろと体のあちこちが吹き飛んだ怪物。
だがしかし、その傷口は盛り上がり、まるで再生しているかのようである。
「こりゃ不味いな、攻撃が再生を上回らないのか」
【なんにせよ、今のうちに逃げたほうがいのじゃ!】
先ほどの攻撃はかなり大規模なものだったはずなのだが、どうも耐え切られて、再生されているようである。
形勢不利と感じ取り、タキがルースを乗せて逃亡を図ろうとしたが‥‥
【ぬっつ!?】
「どうしたタキ!!」
【あ、足元にいつの間にかやつの体液が!!固まって動かぬ!!】
「なんだと!?」
見れば、いつの間にか怪物の方からドロドロしたような物が流れてきており、タキの足元に広がって、彼女の足を拘束しているようである。
攻撃時に出た煙に紛れ、傷口から流れ出ていた体液を素早く流したのであろう。
【グモアァァァァァァァァ!!】
再生が終わり、雄叫びを上げその怪物は牛が突進するがのごとく、地面を蹴り砂埃を上げる。
どうやら動きを固めた今、全力で突っ込んでくる気らしい。
【まずい、避けられぬのじゃ!!】
流石に動きを封じられては、この攻撃は避けきれない。
だがしかし、どうすれば‥‥‥あ。
「タキ!!人型になれ!!」
【あ、その手があったか!?】
ルースの言葉に、タキが素早く大きな九尾の狐の姿から人の形へ化ける。
あの狐時の足元を拘束されていたが、変化で体が小さくなることで拘束は意味をなさず、其のままタキはルースを抱え、地面に触れぬように動く。
【緊急時用必殺『テールコプター』!!】
人型になっても生えている九本の尻尾を回転させ、まるでヘリコプターのようにタキはその場を上に逃れ、何とか怪物の突進をかわし、あの体液が流れていない地に降りると同時に、再び九尾の狐の姿に戻った。
【ふぅ、間一髪じゃった】
「というか、あれで飛べるのかよ!!」
【緊急時用ゆえに、明日辺りは尻尾が筋肉痛になりそうじゃが・・・・・なんにせよ、まずい状況なのは変わらないのじゃ。むしろ悪化しておる】
タキの言葉を聞き、ルースが周囲を見渡せば、いつの間にかあの怪物の体液があちこちに流れており、囲まれてしまっていた。
タキの跳躍力でも乗り超えることは難しそうであり、今度こそ非常に絶体絶命な状態である。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
再び大口を開け、3発目のあの攻撃を今度こそ外さない気なのか、あの怪物が準備を始める。
魔法攻撃ではどうも攻撃力不足であり、かと言って物理攻撃では、あの怪物の体液が出てきて触れる危険性がある。
「タキ、何とかならないのか!?」
【・・・・・こうなれば苦手じゃが、我も遠距離攻撃をするからそれに合わせてほしいのじゃ!!】
幸いというべきか、怪物側は確実なトドメとするために充填しているようであり、その隙の間であれば何とか攻撃できそうなのだという。
【すぅぅぅぅぅぅぅっと、思いっきり息を吸い込んでぇぇぇぇぇぇぇ】
タキが口を開け、口腔内が光り始める。
どうやら光属性の攻撃を行うようであり、その攻撃を更に強化する攻撃魔法をルースは発動させる。
以前、入学式の時に学園長によって利用された魔法。
あの魔法を改良し、今回のタキの攻撃を更に強化するものとして・・・・・
「水で光を収束し、更にこちらの光属性の魔法を加え、そこに相手の攻撃に対して収束できるように・・・・この魔法でどうだ!!」
相手側が攻撃をする瞬間、タキも攻撃をし、それにルースは合わせる。
【グモアァァァァァァァァァァァァ!!】
【これでも喰らうのじゃ!!『爆裂光線砲』!!】
「『ブーストライト』!!」
魔法の発動と同時に、ルースたちの目の前に巨大なレンズが出現し、そこに続けて強制的に集中するための土魔法で道筋が形作られ、タキの口から出た光線にルースの光魔法が合わさり、レンズを通過して集中し、道筋に沿って一点集中の強力な光線が放たれる。
怪物が吐き出した巨大な塊に正面からぶつかり、一瞬で蒸発させるとともに怪物めがけて一直線に突き進む。
怪物はよけようとしたが、流石に攻撃を放ったばかりで素早く動けないようで、そのままま直撃し、あっという間に蒸発していく。
【グモガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!】
あっという間に怪物は最後の悲鳴を上げ、そのまま消滅していった。
あとに残るのは、攻撃した跡のみであったが…‥‥
「‥‥‥あ、やべ。やり過ぎた?」
【・・・・・よし、ここは逃げてみなかったことにするのじゃ】
その怪物の消滅した跡地は、まるでドラゴンが、いや某腐った巨人が焼きはらった跡地のようになったので、慌ててルースたちはその場から逃亡するのであった。
あの怪物に全て押しつけてしまおう。そうしよう。
というか、タキ。お前遠距離攻撃は苦手と言っていたくせに、ちょっと強化しただけで本気で国を滅ぼせる攻撃になっているぞこれ。
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