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学園1年目
73話
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真夜中、グレイモ王国とルンブル王国の戦場では、双方互に夜陣で休息をとっていた。
いくら戦争中とはいえ、流石に24時間戦闘し続けるのは容易ではなく、真夜中には休むものだという不文律が存在するのである。
夜襲や奇襲と言った戦法はあるのだが、やはり戦闘し続けるよりも休息をとる重要性を両軍とも心得ていたのだ。
とはいえ、流石にただ休息をとるのではなく、武器の手入れなどを行い、万が一の戦闘に備えておくのは必要不可欠なはずであった。
・・・・・だがしかし、この戦場はルンブル王国側の方が優勢だったために、ルンブル王国の陣営では、やや緩んだ雰囲気となり、油断もしていた。
「いやっふぅぅ!!いよいよ明日、ここで攻め入ってグレイモ王国側を潰せるはずだぜぇぇ!!」
「おいおい、そんなだらけた雰囲気で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
兵士たちの中でも勝利できそうな勢いで士気が向上し、軽い興奮を得ている者たちもいた。
「しかし、よくこの軍がグレイモ王国に対して優勢になったなぁ」
兵士の一人が思わずそうつぶやく。
「ああ、なんでも秘密兵器があるからだったな。それが相手を蹂躙し、俺達の方で攻められたんだよなぁ」
「秘密兵器か・・・・・でも、あれって兵器なのか?もろに生きたやつだったろう?」
「馬鹿かお前?そういうのは生物兵器という分類にはいるそうで、言い方としては間違ってはいないはずだぞ」
兵士たちは話し合い、その秘密兵器について議論を交わす。
それがあるからこそ、このルンブル王国軍は優位を保て、今こうして明日にも戦争に勝利しそうないきおいを得ているのだと結論づいていく
兵士たちが会話している中、陣営の奥、この戦の指揮をとっている者たちが集まっていた。
「いよいよ明日、勢いづいてこのまま攻め入る予定だが‥‥‥順調にいけば、吹雪が吹くような真冬前に国へ勝利の一報を入れられるだろう」
「最初は上の者たちがこの時期に戦争を行うなんて気が触れているかと思っていたが‥‥‥まさか、ここまで攻められるとはな」
・・・・・・実は、ルンブル王国の軍の中には、この戦争に反対している者たちもいた。
もうじき厳しい真冬となり、戦争を仕掛ければ間違いなく厳しい中を戦わされる最悪な状態となったに違いない。
だがしかし、戦場に持ちだされてきた秘密兵器とやらを使用すると、その考えが変わり、早い段階で勝利できそうな期待が高まったのである。
「そういえば、その秘密兵器は今どうしているんだ?」
ふと、その場にいた者一人がそう尋ねた。
「あの秘密兵器はひとたび暴れ出せば無茶苦茶強いが、管理下にきちんとおかないと危険極まりなさすぎるからな。今はその管理下に置くための拘束が緩んできたから、その締め直しのために調整中のはずだ」
「どんなものだろうと杜撰に管理してはだめになってしまうから、そのあたりをしっかりと締めねば何事にも最悪の結末が待つのだしな」
「ああ、だからこそ万全の状態でい、」
・・・・・・話し合いを進め、備えていたその時であった。
ズッガドォォォォン!!
「!?」
突如として響いた爆音。
それと同時に兵士たちから悲鳴が聞こえ、なにやら混乱が起きたようである。
「なんだ!?」
「夜襲なのか!?奇襲なのか!?」
「ええい!!落ち着け!!」
ルンブル王国軍が慌てふためく中、今回の指揮権を握っている将軍が声を荒げてそう叫んだ。
「何が起きたのか、報告出来る者から状況を説明しろ!!」
「はっ!!」
何とかその場の混乱はお収まり、何が起きたのか報告が素早くなされた。
・・・・・・そして、その報告は最悪なものであった。
「な、な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉ!?」
「も、もういちど言ってみろ!!」
信じがたいような報告に絶叫する者が出たり、嘘だと思いたい者は再度その報告を聞いた。
「で、ですから・・・・・・その秘密兵器が檻をふっ飛ばして、我が軍の兵士たちを喰らいながら逃亡しました!!被害は甚大なうえに、あと数体いたはずの秘密兵器たちも取り込み、そのまま逃げてしまったのです!!」
この軍を支えていた秘密兵器・・・・・それが、まさかの脱走をしてしまったのである。
管理下に置き、暴れることはないだろうと高をくくっていた者たちがいたのは事実だが、なぜそうなったのか不可解だった。
「な、なぜだ!?」
「あの兵器は暴れ出さないようにきちんと対処されていたはずなのだが・・・・・」
「そ、それがですね・・・・・」
事の発端は、恐ろしくくだらないものであった。
このルンブル王国軍、軍の兵士たちはそれなりに統率がとれているのだが、実はグレイモ王国に対抗して戦力を確かにするために、傭兵とよばれる者たちも雇っていたのだ。
その者たちは本来、その秘密兵器が調整されているところに勝手に行けないようにされていたのだが、今宵は戦争に勝利できそうだという気のゆるみがあり、どうも近くから一目見てみたいという者が出て、許してしまったのだとか。
そしてその秘密兵器を見て、馬鹿な事を思いついたやつがいた。
「そうだ、度胸試しをしてみようぜ!!」
「‥‥‥つまり、その度胸試しとやらで、秘密兵器に対してどれだけ強気に行けるかと考えたド阿呆がいたというわけか」
報告を聞き、頭痛がする者たち。
そんなくだらない馬鹿な事のせいで、秘密兵器はそこで激怒し、そしてその者たちも、周囲にいた兵士たちもまとめて喰らって、そのまま逃走したのだという。
しかも、よりによってコントロールをするために付けていた物があったのだが、それは対になる物が必要で、一度失えば替えが聞かず、万が一にでも故障してしまった場合は新たなものと丸ごと交換しなければいけない品でもあったのだ。
おかげで被害甚大、兵士たちの士気が駄々下がり、明日の戦場でほぼ負け戦になってしまうのが目に見えてしまっていた。
「逃亡した秘密兵器はどこへ向かった?」
「グレイモ王国側のようで、少なくともルンブル王国へ歯向かっていないようですが…‥‥」
何処へ向かったのか正確にはわからない。
だがしかし、この状況は非常にまずいことだけはしっかり分かっている。
しかも、どうやら相手の・・・・・グレイモ王国軍もすぐに気が付いたようで、なにやら騒がしくなった。
ルンブル王国軍の秘密兵器が逃走し、グレイモ王国のどこかへ向かった。
その知らせは敵味方関係なく伝わり、この戦場はカオスに包まれそうであった…‥‥
【・・・・・ぬぅ?】
同時刻、グレイモ王国内の都市メルドランにて、タキは寝床でふと目が覚めた。
横を見てみれば、室内用鳥の翼をもつ魔族専用止まり木でエルモアが寝ているが、この場で何か起きたわけではない。
何かこう、モンスターとしての勘が警鐘を鳴らし、何かが迫っているのかもしれないという感覚がしたのである。
とはいえ、今は何なのかは不明なため、すぐさま行動には移れない。
しかも、真夜中でまだ眠気が強く、感覚的には今すぐというわけでもなさそうだったので、そのまま彼女は眠りにつくのであった。
【まぁ、どうせたいしたことじゃないじゃろう・・・・・・】
国を滅ぼしたことがあるモンスターにとっては、特にたいしたことではなかっただろう。
というか、タキが恐れるのはルースに対しての執着を見せるエルゼぐらいである。
だがしかし、タキにとってはたいしたことではないのは、そうではない者たちにとってはとんでもない事態だったのだが・・・・・今は知る由もない。
――――――アレ?何カ嫌ナ予感スル。
一方で、寮室でバトが触角をくるくる回し、嫌な予感を察知していたが、何かできるわけでもなく、不安を感じつつも、寝る事しかできなかったのであった。
いくら戦争中とはいえ、流石に24時間戦闘し続けるのは容易ではなく、真夜中には休むものだという不文律が存在するのである。
夜襲や奇襲と言った戦法はあるのだが、やはり戦闘し続けるよりも休息をとる重要性を両軍とも心得ていたのだ。
とはいえ、流石にただ休息をとるのではなく、武器の手入れなどを行い、万が一の戦闘に備えておくのは必要不可欠なはずであった。
・・・・・だがしかし、この戦場はルンブル王国側の方が優勢だったために、ルンブル王国の陣営では、やや緩んだ雰囲気となり、油断もしていた。
「いやっふぅぅ!!いよいよ明日、ここで攻め入ってグレイモ王国側を潰せるはずだぜぇぇ!!」
「おいおい、そんなだらけた雰囲気で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
兵士たちの中でも勝利できそうな勢いで士気が向上し、軽い興奮を得ている者たちもいた。
「しかし、よくこの軍がグレイモ王国に対して優勢になったなぁ」
兵士の一人が思わずそうつぶやく。
「ああ、なんでも秘密兵器があるからだったな。それが相手を蹂躙し、俺達の方で攻められたんだよなぁ」
「秘密兵器か・・・・・でも、あれって兵器なのか?もろに生きたやつだったろう?」
「馬鹿かお前?そういうのは生物兵器という分類にはいるそうで、言い方としては間違ってはいないはずだぞ」
兵士たちは話し合い、その秘密兵器について議論を交わす。
それがあるからこそ、このルンブル王国軍は優位を保て、今こうして明日にも戦争に勝利しそうないきおいを得ているのだと結論づいていく
兵士たちが会話している中、陣営の奥、この戦の指揮をとっている者たちが集まっていた。
「いよいよ明日、勢いづいてこのまま攻め入る予定だが‥‥‥順調にいけば、吹雪が吹くような真冬前に国へ勝利の一報を入れられるだろう」
「最初は上の者たちがこの時期に戦争を行うなんて気が触れているかと思っていたが‥‥‥まさか、ここまで攻められるとはな」
・・・・・・実は、ルンブル王国の軍の中には、この戦争に反対している者たちもいた。
もうじき厳しい真冬となり、戦争を仕掛ければ間違いなく厳しい中を戦わされる最悪な状態となったに違いない。
だがしかし、戦場に持ちだされてきた秘密兵器とやらを使用すると、その考えが変わり、早い段階で勝利できそうな期待が高まったのである。
「そういえば、その秘密兵器は今どうしているんだ?」
ふと、その場にいた者一人がそう尋ねた。
「あの秘密兵器はひとたび暴れ出せば無茶苦茶強いが、管理下にきちんとおかないと危険極まりなさすぎるからな。今はその管理下に置くための拘束が緩んできたから、その締め直しのために調整中のはずだ」
「どんなものだろうと杜撰に管理してはだめになってしまうから、そのあたりをしっかりと締めねば何事にも最悪の結末が待つのだしな」
「ああ、だからこそ万全の状態でい、」
・・・・・・話し合いを進め、備えていたその時であった。
ズッガドォォォォン!!
「!?」
突如として響いた爆音。
それと同時に兵士たちから悲鳴が聞こえ、なにやら混乱が起きたようである。
「なんだ!?」
「夜襲なのか!?奇襲なのか!?」
「ええい!!落ち着け!!」
ルンブル王国軍が慌てふためく中、今回の指揮権を握っている将軍が声を荒げてそう叫んだ。
「何が起きたのか、報告出来る者から状況を説明しろ!!」
「はっ!!」
何とかその場の混乱はお収まり、何が起きたのか報告が素早くなされた。
・・・・・・そして、その報告は最悪なものであった。
「な、な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉ!?」
「も、もういちど言ってみろ!!」
信じがたいような報告に絶叫する者が出たり、嘘だと思いたい者は再度その報告を聞いた。
「で、ですから・・・・・・その秘密兵器が檻をふっ飛ばして、我が軍の兵士たちを喰らいながら逃亡しました!!被害は甚大なうえに、あと数体いたはずの秘密兵器たちも取り込み、そのまま逃げてしまったのです!!」
この軍を支えていた秘密兵器・・・・・それが、まさかの脱走をしてしまったのである。
管理下に置き、暴れることはないだろうと高をくくっていた者たちがいたのは事実だが、なぜそうなったのか不可解だった。
「な、なぜだ!?」
「あの兵器は暴れ出さないようにきちんと対処されていたはずなのだが・・・・・」
「そ、それがですね・・・・・」
事の発端は、恐ろしくくだらないものであった。
このルンブル王国軍、軍の兵士たちはそれなりに統率がとれているのだが、実はグレイモ王国に対抗して戦力を確かにするために、傭兵とよばれる者たちも雇っていたのだ。
その者たちは本来、その秘密兵器が調整されているところに勝手に行けないようにされていたのだが、今宵は戦争に勝利できそうだという気のゆるみがあり、どうも近くから一目見てみたいという者が出て、許してしまったのだとか。
そしてその秘密兵器を見て、馬鹿な事を思いついたやつがいた。
「そうだ、度胸試しをしてみようぜ!!」
「‥‥‥つまり、その度胸試しとやらで、秘密兵器に対してどれだけ強気に行けるかと考えたド阿呆がいたというわけか」
報告を聞き、頭痛がする者たち。
そんなくだらない馬鹿な事のせいで、秘密兵器はそこで激怒し、そしてその者たちも、周囲にいた兵士たちもまとめて喰らって、そのまま逃走したのだという。
しかも、よりによってコントロールをするために付けていた物があったのだが、それは対になる物が必要で、一度失えば替えが聞かず、万が一にでも故障してしまった場合は新たなものと丸ごと交換しなければいけない品でもあったのだ。
おかげで被害甚大、兵士たちの士気が駄々下がり、明日の戦場でほぼ負け戦になってしまうのが目に見えてしまっていた。
「逃亡した秘密兵器はどこへ向かった?」
「グレイモ王国側のようで、少なくともルンブル王国へ歯向かっていないようですが…‥‥」
何処へ向かったのか正確にはわからない。
だがしかし、この状況は非常にまずいことだけはしっかり分かっている。
しかも、どうやら相手の・・・・・グレイモ王国軍もすぐに気が付いたようで、なにやら騒がしくなった。
ルンブル王国軍の秘密兵器が逃走し、グレイモ王国のどこかへ向かった。
その知らせは敵味方関係なく伝わり、この戦場はカオスに包まれそうであった…‥‥
【・・・・・ぬぅ?】
同時刻、グレイモ王国内の都市メルドランにて、タキは寝床でふと目が覚めた。
横を見てみれば、室内用鳥の翼をもつ魔族専用止まり木でエルモアが寝ているが、この場で何か起きたわけではない。
何かこう、モンスターとしての勘が警鐘を鳴らし、何かが迫っているのかもしれないという感覚がしたのである。
とはいえ、今は何なのかは不明なため、すぐさま行動には移れない。
しかも、真夜中でまだ眠気が強く、感覚的には今すぐというわけでもなさそうだったので、そのまま彼女は眠りにつくのであった。
【まぁ、どうせたいしたことじゃないじゃろう・・・・・・】
国を滅ぼしたことがあるモンスターにとっては、特にたいしたことではなかっただろう。
というか、タキが恐れるのはルースに対しての執着を見せるエルゼぐらいである。
だがしかし、タキにとってはたいしたことではないのは、そうではない者たちにとってはとんでもない事態だったのだが・・・・・今は知る由もない。
――――――アレ?何カ嫌ナ予感スル。
一方で、寮室でバトが触角をくるくる回し、嫌な予感を察知していたが、何かできるわけでもなく、不安を感じつつも、寝る事しかできなかったのであった。
応援ありがとうございます!
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