71 / 339
学園1年目
64話
しおりを挟む
…‥‥都市メルドランから馬車で進むこと30分ほど。
目的地は、森の中であり、そこには大きな湖が広がっていた。
この森の名は『エルゾーン』、そしてこの湖は『レーン湖』というそうである。
夏場であるならば、そこそこまだ近場の観光スポットとして人気があるのだが、冬場は人気がほとんどなく、寒中水泳の場としてはぴったりだそうである。
なお、今回はバルション学園長による訓練でルースたちは泳がされるのだが、水質が極めて高品質な事から、夏場は青色の魔導書を持つ人たちが一部を氷にして(きちんと煮沸消毒を行ってから)、かき氷の材料としてすることでも有名であるため、別名『材料湖』としても言われているのであった。
ひゅぅぅぅぅぅるるぅぅ~~~~~
冷たい風が吹き、馬車から降りて来たルースたちに容赦なく吹き付ける。
「寒っ!?」
「これ確実にあとで風邪をひきそうよ!!…‥あ、でもルース君が引いたら看病してあげられるわね」
「こ、このぐらいで風邪をひくなどな、はくちょい!!」
寒さに震えるルース、何か企んだエルゼ、意外にも可愛らしいくしゃみをしたレリア。
それぞれの声を混ぜつつ、学園長は目の前で‥‥‥
「ふぅ、極楽だーよ」
光魔法で太陽光を集め、シミやそばかすの下になるようなUVなどカットしつつ、ただ暖かい部分だけを浴びて、しっかりと防寒具を着こなしていた。
鬼畜の所業とは、まさにこのことであろうか。
そしてふとルースたちはエルゼの方を見た。
ルース自身が来ているのは、いたって普通のトランクスタイプの水着。ブーメランを出されそうになったが、流石に嫌だったので丁寧に断った。
一方、流石に訓練であり、遊ぶわけではないのでエルゼたちが来ている水着も華やかさがるような物ではない。
というか、明らかに絶対前世が地球出身で、マニアックな人がいたに違ないという代物‥‥‥前の方にわざわざ名前が書かれたゼッケンのついた、絶滅危惧種ともされるスクール水着をエルゼたちは着用していたのである。
下手に露出が高いビキニタイプにされていたらそれはそれで目の毒であったため、まだほっとルースは落ち着いたのだが…‥‥エルゼを見ただけでは、まだ甘かった。
レリアを見た瞬間、本当にまだ自分は考えが浅かったのだとルースは思った。
でかい。そう、もはや兵器としか言いようがない。
というか、明らかにサイズが合っていないというか、学園長がわざと改造していたのか、横からはみ出るようにもなっていたそれは‥‥‥本当に兵器としか言いようがなく、ルースは直視できなかった。
彼もまた、健全な男の子である。
まあ、この状況を後日男子たちに知られたら、想像を絶するような恨みを買うのは間違いないだろうけどね‥‥‥見るよりも寒さの方が辛い。
「でーは!!早速この湖の端かーら、端まーで、泳いでもらいまーす!!魔導書を使用すーるのは禁止!!」
「結構きついんですが!?」
「そこそこ距離があるのよ!?」
「夏場ならまだしも、冬場だと鬼畜の所業だ!!」
学園長の言葉に、ルースたちは抗議する。
「んー?それじゃ、往復回数を増やーすか、一旦水をかーぶってもらい、徒歩で寮にもーどるかい?」
「「「文句を言わずにやらせていただきます」」」
学園長の脅しに、ルースたちは速攻で屈するのであった。
なお、この時バトは停車させた馬車の中で寝ていたのであった。
いきなりは流石に心臓に悪いので、ゆっくりとルースたちは湖の中に体を付けた。
水中は気温の変化程急に変わるわけではないらしいが…‥‥
「‥‥‥あれ?案外冷たくない」
「本当ね。なんでかしら?」
「意外というか、何というか…‥‥まだ大丈夫か?」
何か湖がやけに温かい。
少なくとも、外の気温ほど冷たくもなく、なかなか快適なのである。
「これならいけるかな‥‥‥っ!?」
「あれ?どうしたのよ、ルース君?急に向きを変えて何かあったの?」
「ん?どうかしたのか?」
「いや、何でもないというか‥‥‥」
…‥‥うん、あれって脂肪の塊とか言うが、浮くって本当だったんだ。
そう思ったが、迂闊に口に出せばこの二人から相当きついことをさせられる危機を感じ取り、ルースは黙った。
そして3人は泳ぎ始めるのであった…‥‥‥。
「うんうん、中々いい泳ぎをしーているな」
湖の端の方まで泳いでいくルースたちを見ながら、バルション学園長はついでに仕事をするために持ってきた書類に目を通していた。
「…‥しかし、また面倒事というか、厄介な物があるね」
いつもの延ばす口調が消え、真面目な仕事モードになる学園長。
彼女が見たのは、都市内に入って来た間諜などについての者で、何処からかの割合を見て顔をしかめた。
「北の方にある国…‥そこからが多いわね。フェイカーの目撃情報は相変わらず少ないけど、そこから購入したらしき兵器情報も入ってきているし、油断禁物ね」
そしてふと、彼女は湖で泳ぐルースたちを、特にルースを見る。
「…‥金色に輝く黄金の魔導書を持つ者についての情報を探る輩もいるようね。学園の生徒たちは守るべきものだし、きちんと徹底的な策を練らないとね」
生徒を守るのは学園であり、その長たる自分も生徒たちを守らなければいけないと、バルション学園長は思う。
実は、今日わざわざ都市外の湖に来たのは、ルースを狙うような間諜たちをあぶりだすためであり、続けて付いてきた者たちから順番に捕縛していたのである。
これでしばらくはまだ大丈夫だとはいえ、また繰り返し来るのは分かっている。
「徹底的にというか、国内にも通じている者たちがいるかもしれないし、そのあたりの調査も国王陛下に進言しておきましょうかね」
報告書をしまい、そうつぶやくバルション学園長。
そして再びルースたちを見て、彼らだけでもでもきちんと守れるように鍛えてあげようと、しっかり計画を立てていくのであった。
目的地は、森の中であり、そこには大きな湖が広がっていた。
この森の名は『エルゾーン』、そしてこの湖は『レーン湖』というそうである。
夏場であるならば、そこそこまだ近場の観光スポットとして人気があるのだが、冬場は人気がほとんどなく、寒中水泳の場としてはぴったりだそうである。
なお、今回はバルション学園長による訓練でルースたちは泳がされるのだが、水質が極めて高品質な事から、夏場は青色の魔導書を持つ人たちが一部を氷にして(きちんと煮沸消毒を行ってから)、かき氷の材料としてすることでも有名であるため、別名『材料湖』としても言われているのであった。
ひゅぅぅぅぅぅるるぅぅ~~~~~
冷たい風が吹き、馬車から降りて来たルースたちに容赦なく吹き付ける。
「寒っ!?」
「これ確実にあとで風邪をひきそうよ!!…‥あ、でもルース君が引いたら看病してあげられるわね」
「こ、このぐらいで風邪をひくなどな、はくちょい!!」
寒さに震えるルース、何か企んだエルゼ、意外にも可愛らしいくしゃみをしたレリア。
それぞれの声を混ぜつつ、学園長は目の前で‥‥‥
「ふぅ、極楽だーよ」
光魔法で太陽光を集め、シミやそばかすの下になるようなUVなどカットしつつ、ただ暖かい部分だけを浴びて、しっかりと防寒具を着こなしていた。
鬼畜の所業とは、まさにこのことであろうか。
そしてふとルースたちはエルゼの方を見た。
ルース自身が来ているのは、いたって普通のトランクスタイプの水着。ブーメランを出されそうになったが、流石に嫌だったので丁寧に断った。
一方、流石に訓練であり、遊ぶわけではないのでエルゼたちが来ている水着も華やかさがるような物ではない。
というか、明らかに絶対前世が地球出身で、マニアックな人がいたに違ないという代物‥‥‥前の方にわざわざ名前が書かれたゼッケンのついた、絶滅危惧種ともされるスクール水着をエルゼたちは着用していたのである。
下手に露出が高いビキニタイプにされていたらそれはそれで目の毒であったため、まだほっとルースは落ち着いたのだが…‥‥エルゼを見ただけでは、まだ甘かった。
レリアを見た瞬間、本当にまだ自分は考えが浅かったのだとルースは思った。
でかい。そう、もはや兵器としか言いようがない。
というか、明らかにサイズが合っていないというか、学園長がわざと改造していたのか、横からはみ出るようにもなっていたそれは‥‥‥本当に兵器としか言いようがなく、ルースは直視できなかった。
彼もまた、健全な男の子である。
まあ、この状況を後日男子たちに知られたら、想像を絶するような恨みを買うのは間違いないだろうけどね‥‥‥見るよりも寒さの方が辛い。
「でーは!!早速この湖の端かーら、端まーで、泳いでもらいまーす!!魔導書を使用すーるのは禁止!!」
「結構きついんですが!?」
「そこそこ距離があるのよ!?」
「夏場ならまだしも、冬場だと鬼畜の所業だ!!」
学園長の言葉に、ルースたちは抗議する。
「んー?それじゃ、往復回数を増やーすか、一旦水をかーぶってもらい、徒歩で寮にもーどるかい?」
「「「文句を言わずにやらせていただきます」」」
学園長の脅しに、ルースたちは速攻で屈するのであった。
なお、この時バトは停車させた馬車の中で寝ていたのであった。
いきなりは流石に心臓に悪いので、ゆっくりとルースたちは湖の中に体を付けた。
水中は気温の変化程急に変わるわけではないらしいが…‥‥
「‥‥‥あれ?案外冷たくない」
「本当ね。なんでかしら?」
「意外というか、何というか…‥‥まだ大丈夫か?」
何か湖がやけに温かい。
少なくとも、外の気温ほど冷たくもなく、なかなか快適なのである。
「これならいけるかな‥‥‥っ!?」
「あれ?どうしたのよ、ルース君?急に向きを変えて何かあったの?」
「ん?どうかしたのか?」
「いや、何でもないというか‥‥‥」
…‥‥うん、あれって脂肪の塊とか言うが、浮くって本当だったんだ。
そう思ったが、迂闊に口に出せばこの二人から相当きついことをさせられる危機を感じ取り、ルースは黙った。
そして3人は泳ぎ始めるのであった…‥‥‥。
「うんうん、中々いい泳ぎをしーているな」
湖の端の方まで泳いでいくルースたちを見ながら、バルション学園長はついでに仕事をするために持ってきた書類に目を通していた。
「…‥しかし、また面倒事というか、厄介な物があるね」
いつもの延ばす口調が消え、真面目な仕事モードになる学園長。
彼女が見たのは、都市内に入って来た間諜などについての者で、何処からかの割合を見て顔をしかめた。
「北の方にある国…‥そこからが多いわね。フェイカーの目撃情報は相変わらず少ないけど、そこから購入したらしき兵器情報も入ってきているし、油断禁物ね」
そしてふと、彼女は湖で泳ぐルースたちを、特にルースを見る。
「…‥金色に輝く黄金の魔導書を持つ者についての情報を探る輩もいるようね。学園の生徒たちは守るべきものだし、きちんと徹底的な策を練らないとね」
生徒を守るのは学園であり、その長たる自分も生徒たちを守らなければいけないと、バルション学園長は思う。
実は、今日わざわざ都市外の湖に来たのは、ルースを狙うような間諜たちをあぶりだすためであり、続けて付いてきた者たちから順番に捕縛していたのである。
これでしばらくはまだ大丈夫だとはいえ、また繰り返し来るのは分かっている。
「徹底的にというか、国内にも通じている者たちがいるかもしれないし、そのあたりの調査も国王陛下に進言しておきましょうかね」
報告書をしまい、そうつぶやくバルション学園長。
そして再びルースたちを見て、彼らだけでもでもきちんと守れるように鍛えてあげようと、しっかり計画を立てていくのであった。
0
お気に入りに追加
1,196
あなたにおすすめの小説
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる