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学園1年目
50話
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「そうか、ついに王女を捕らえたか」
「ついでに他2名を捕らえましたが、どうしましょうか?」
「まぁまて、今はまずどのような状態か見ておかないとな」
…‥‥都市メルドランから少し離れたとある平原。
連絡を受け、その場所へ向かう馬車内にて、その者たちは話していた。
彼らはモーガス帝国の属国となった国の出身の者で、表向きは独立、裏では自分達こそが国を支えるのにふさわしいと思っていた者たちであった。
その馬車内の一人は、その者たちの中でも幹部クラスの者であり、今回の捕獲の報告を受け、自らやって来たのだ。
正面から正々堂々と独立することはできないと思えた彼らは、今回、帝国から王女がグリモワール学園に入学したのを機に、誘拐を企てたのである。
人質という利用方法を持っているが‥‥‥それだけでは、これまでさんざん苦汁を飲まされてきた彼らの気は収まるはずもない。
その為、人質としての駒として王女を扱うと同時に、自分たちの欲望のはけ口にしてやると考えたのでる。
巷では、その王女は戦姫と呼ばれているようだが、それはあくまで容姿だけだろうと彼らは思っていたし、念には念を入れてそう簡単に身動きが取れないように、金属製の枷を付けたはずである。
ついでに一緒に捉えた者たちは特に問題ないだろうと思い、ただの縄で拘束しただけであった。
「とはいえ、たかがガキの腕力程度で引きちぎれるような代物じゃない。少なくとも超人的な縄抜け技術でもない限り抜け出せないようにしています」
「くっくっくっく、まぁそうだな」
一人のその言い方に、思わずその幹部の者は笑う。
馬車から身をせり出すと、もう間もなくその王女を捕らえた地下室がある場所にたどり着こうとしていた。
「誰にもバレていないはずだな?」
「間違いないです。あの地下室がある家は元々、昔計画されていた都市の拡張工事のために建造されたものらしいですが、その拡張工事が、当時の責任者の横領によって見直しに迫られ、結果として売りに出されていた物件ですから、別荘目的としているので早々バレないはずです」
問題ごとが起きるのは避けたかったが、どうやらそうあまり目立つことのない物件のようで、彼らは安心していた。
馬車が停車し、彼らは降りた。
「さてと、まずはそろそろ起きているであろう王女様とやらに挨拶でもして、ゆっくりと絶望でも味合わせ‥‥‥」
そうつぶやき、彼らが地下室へ向かおうとした時であった。
ズゥン!!
「っ!?」
「なんだ!?」
突然、何かがいきなり落ちてきたかのように地面が揺れ、彼らは驚いた。
だがしかし、周囲を見渡しても何も落ちてきた様子はない。
「今の振動は一体…‥‥」
そう疑問をつぶやいたその時であった。
ドッカァァァァン!!
「なぁぁぁぁぁっつ!?」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!?」
突如として目の前にあった家が上空へ吹き飛び、いや、その跡地から何やら巨大ない火の玉が吹っ飛んでいき、家を消し去った。
あまりにもなその光景に、驚愕する者たち。
しかも、その吹き飛んだ時に散らばったのか、家の残骸がそのすぐ後に降り注いできた。
‥‥‥全部、燃えた状態で。
時は数分前に遡る。
ルースは拘束されていたエルゼとレリアを解放し、未だに熟睡中だったのでとりあえず水と氷の複合でかなり冷たい水を顔にかけて起こした。
「ひゅあぁぁぁぁ!?」
「きゃぁぁぁぁ!?」
‥‥‥うん、なんか二人とも意外な悲鳴の上げ方だったような気がする。
「な、何をするのよルース君!!」
「寝ている淑女に何をするのだ!!」
「いや、二人とも落ち着け」
何とかなだめ、素早くこの状況をルースは二人に話した。
どうやらあの煙で眠らされ、何処かわからない地下室のようなところに監禁されているようであること。
その監禁してきたやつらのボスとやらが、もう間もなくやって来るらしいという事。
と言っても、この場合「ボス」=「トップ」と関連付けるのは速そうであるという予測も伝えた。
なぜならばこういう作業の場合、何かの組織のトップの地位に近い人が分担して行い、この誘拐や換金を担当する方の人が来るのではないだろうかと思えたからである。
「というわけで、今からド派手にやらかして逃亡するためにも、二人には協力して欲しい」
「ド派手?一体何をする気なのよルース君?」
「派手にするというのは‥‥‥ああ、なるほど。もしかしてそれで見つけやすくしてもいらうためか」
ルースの言葉にエルゼは疑問の声を上げたが、レリアはその意図を理解したようだ。
派手にやらかして遠くからも見えるようにしてしまえば、もしかしたらルースたちを探すような人たちの目につくかもしれないし、もしくは好奇心を刺激して人を集めることが出来るかもしれないからである。
また、ルースの方は平民とはいえ、エルゼは公爵令嬢、レリアは帝国の王女だ。
この二人に万が一のことが起きるかもしれないとあれば、行方不明と認識された瞬間にかなりの捜索隊が出されるかもしれないからである。
その為、そう言った人たちに見つけやすくするために、派手にやらかそうという事であった。
「作戦もすでに立てたし、あとはそのボスとやらが来るまで時間の勝負となるから協力してくれ!」
「わかったわ!!ルース君の頼みとあらば、あたしも全力を出そうじゃないの!」
「今はその手に賭けたほうが良さそうだし、協力しよう。でも、その作戦とは何か説明してくれ!」
ルースの頼みに、二人は快く協力を受け入れてくれたのであった。
「『アクアボルト』!」
金色の魔導書を顕現させ、ルースは上の方に向けて水の塊とその内部に電撃を発生させた。
続けて水色の魔導書を顕現させ、水魔法でエルゼはその水の塊に水を追加していく。
内部で電気分解が起こり、ぼこぼこと泡立ち始め、大きな気泡に統合されてその内部に充満されていく。
「これに何とか指向性を持たせて、こちらに被害がでないようにして‥‥‥レリア、こちらの合図で着火をしてくれ」
「それはいいが‥‥‥本当に大丈夫だよな?こちらまで被害を受けることはないよな?」
ルースの言葉に、不安げな顔色になるレリア。
そう、今回のこの派手にやらかす作戦とは、水を電気分解することによって得られる水素と酸素に着火し、爆発を起こして上部をふっ飛ばすという事である。
地下室とはいえ、体感的にはそう深くはない。
どうもこの造りから見て、急ごしらえの弱そうな感じがして、それに上部に誰かがいたとしても、ルースたちを誘拐した人たちの仲間である可能性が高いので気にすることはない。
ド派手に爆発させ、空が見えるようにしてしまうのだ。
その後は、適当にタキでも召喚して、その背中に乗せてもらって逃げるのである。
…‥‥とはいえ、シャレにならない爆発が起きるというルースの説明に、レリアは不安を覚えた。
指向性とかいうものを持たせて出来るだけ被害が来ないようにすると言われても、かなり無謀なような気がしたのだ。
そんな不安の色を隠せないレリアに、ルースは不安をぬぐわせるために励ます。
「大丈夫だレリア、大体戦姫呼ばれる人が怯えてどうするんだ?怯える者がいれば、それだけでも戦場では士気が下がる。だったらどっしり構えていればいいんだよ」
ルースのその言葉に、レリアは気が付かされた。
「そうだな‥‥‥不安なんてばかばかしい!!絶対に成功させるんだ!」
そう言い切り、レリアの顔から不安の色ははなくなった。
「・・・・・・でも、一つぐらいは怖い物があってもいいよな」
「ああ、それは同意する…‥というか、エルゼさっきから殺気を放つのはやめて!!」
「ええ?あたしは殺気を放っていないわよ。そう、ルース君とレリアが何やら仲を深めたようなことに、別に嫉妬していないわよ」
にこりとそう言うエルゼ。
だがしかし、その目は笑っていない。
(はっきり言って、エルゼのあの恐怖の笑みだけはどうしようもない)
(ああわかる…‥わかるぞ、本当に怖いという事は)
互いのアイコンタクトで、ルースとレリアは同意しあうのであった。
「っと、もうそろそろ良い頃合いか」
ふと気が付けば、そろそろ爆発させてもいい頃合いのようである。
「それじゃ、レリア。景気よく一発ドカンと火の魔法を撃て!!」
「ああ、ならばこの魔法だ!『ファイヤーランス』!!」
赤色の魔導書を顕現させ、レリアは真っ赤に燃える炎の槍を、充填し終えた内部にでかい気泡が出来た水の塊に向けて発射した。
水の膜は薄くなっており、触れた瞬間に、内部で爆発が起きる。
ズゥン!!
爆発が指向性も持って上に向き、天井に激突して…‥‥
ドッカァァァァン!!
そのまま突き破り、巨大な火の玉となって上空へ何もかも吹き飛ばしていったのであった…‥‥
「ついでに他2名を捕らえましたが、どうしましょうか?」
「まぁまて、今はまずどのような状態か見ておかないとな」
…‥‥都市メルドランから少し離れたとある平原。
連絡を受け、その場所へ向かう馬車内にて、その者たちは話していた。
彼らはモーガス帝国の属国となった国の出身の者で、表向きは独立、裏では自分達こそが国を支えるのにふさわしいと思っていた者たちであった。
その馬車内の一人は、その者たちの中でも幹部クラスの者であり、今回の捕獲の報告を受け、自らやって来たのだ。
正面から正々堂々と独立することはできないと思えた彼らは、今回、帝国から王女がグリモワール学園に入学したのを機に、誘拐を企てたのである。
人質という利用方法を持っているが‥‥‥それだけでは、これまでさんざん苦汁を飲まされてきた彼らの気は収まるはずもない。
その為、人質としての駒として王女を扱うと同時に、自分たちの欲望のはけ口にしてやると考えたのでる。
巷では、その王女は戦姫と呼ばれているようだが、それはあくまで容姿だけだろうと彼らは思っていたし、念には念を入れてそう簡単に身動きが取れないように、金属製の枷を付けたはずである。
ついでに一緒に捉えた者たちは特に問題ないだろうと思い、ただの縄で拘束しただけであった。
「とはいえ、たかがガキの腕力程度で引きちぎれるような代物じゃない。少なくとも超人的な縄抜け技術でもない限り抜け出せないようにしています」
「くっくっくっく、まぁそうだな」
一人のその言い方に、思わずその幹部の者は笑う。
馬車から身をせり出すと、もう間もなくその王女を捕らえた地下室がある場所にたどり着こうとしていた。
「誰にもバレていないはずだな?」
「間違いないです。あの地下室がある家は元々、昔計画されていた都市の拡張工事のために建造されたものらしいですが、その拡張工事が、当時の責任者の横領によって見直しに迫られ、結果として売りに出されていた物件ですから、別荘目的としているので早々バレないはずです」
問題ごとが起きるのは避けたかったが、どうやらそうあまり目立つことのない物件のようで、彼らは安心していた。
馬車が停車し、彼らは降りた。
「さてと、まずはそろそろ起きているであろう王女様とやらに挨拶でもして、ゆっくりと絶望でも味合わせ‥‥‥」
そうつぶやき、彼らが地下室へ向かおうとした時であった。
ズゥン!!
「っ!?」
「なんだ!?」
突然、何かがいきなり落ちてきたかのように地面が揺れ、彼らは驚いた。
だがしかし、周囲を見渡しても何も落ちてきた様子はない。
「今の振動は一体…‥‥」
そう疑問をつぶやいたその時であった。
ドッカァァァァン!!
「なぁぁぁぁぁっつ!?」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!?」
突如として目の前にあった家が上空へ吹き飛び、いや、その跡地から何やら巨大ない火の玉が吹っ飛んでいき、家を消し去った。
あまりにもなその光景に、驚愕する者たち。
しかも、その吹き飛んだ時に散らばったのか、家の残骸がそのすぐ後に降り注いできた。
‥‥‥全部、燃えた状態で。
時は数分前に遡る。
ルースは拘束されていたエルゼとレリアを解放し、未だに熟睡中だったのでとりあえず水と氷の複合でかなり冷たい水を顔にかけて起こした。
「ひゅあぁぁぁぁ!?」
「きゃぁぁぁぁ!?」
‥‥‥うん、なんか二人とも意外な悲鳴の上げ方だったような気がする。
「な、何をするのよルース君!!」
「寝ている淑女に何をするのだ!!」
「いや、二人とも落ち着け」
何とかなだめ、素早くこの状況をルースは二人に話した。
どうやらあの煙で眠らされ、何処かわからない地下室のようなところに監禁されているようであること。
その監禁してきたやつらのボスとやらが、もう間もなくやって来るらしいという事。
と言っても、この場合「ボス」=「トップ」と関連付けるのは速そうであるという予測も伝えた。
なぜならばこういう作業の場合、何かの組織のトップの地位に近い人が分担して行い、この誘拐や換金を担当する方の人が来るのではないだろうかと思えたからである。
「というわけで、今からド派手にやらかして逃亡するためにも、二人には協力して欲しい」
「ド派手?一体何をする気なのよルース君?」
「派手にするというのは‥‥‥ああ、なるほど。もしかしてそれで見つけやすくしてもいらうためか」
ルースの言葉にエルゼは疑問の声を上げたが、レリアはその意図を理解したようだ。
派手にやらかして遠くからも見えるようにしてしまえば、もしかしたらルースたちを探すような人たちの目につくかもしれないし、もしくは好奇心を刺激して人を集めることが出来るかもしれないからである。
また、ルースの方は平民とはいえ、エルゼは公爵令嬢、レリアは帝国の王女だ。
この二人に万が一のことが起きるかもしれないとあれば、行方不明と認識された瞬間にかなりの捜索隊が出されるかもしれないからである。
その為、そう言った人たちに見つけやすくするために、派手にやらかそうという事であった。
「作戦もすでに立てたし、あとはそのボスとやらが来るまで時間の勝負となるから協力してくれ!」
「わかったわ!!ルース君の頼みとあらば、あたしも全力を出そうじゃないの!」
「今はその手に賭けたほうが良さそうだし、協力しよう。でも、その作戦とは何か説明してくれ!」
ルースの頼みに、二人は快く協力を受け入れてくれたのであった。
「『アクアボルト』!」
金色の魔導書を顕現させ、ルースは上の方に向けて水の塊とその内部に電撃を発生させた。
続けて水色の魔導書を顕現させ、水魔法でエルゼはその水の塊に水を追加していく。
内部で電気分解が起こり、ぼこぼこと泡立ち始め、大きな気泡に統合されてその内部に充満されていく。
「これに何とか指向性を持たせて、こちらに被害がでないようにして‥‥‥レリア、こちらの合図で着火をしてくれ」
「それはいいが‥‥‥本当に大丈夫だよな?こちらまで被害を受けることはないよな?」
ルースの言葉に、不安げな顔色になるレリア。
そう、今回のこの派手にやらかす作戦とは、水を電気分解することによって得られる水素と酸素に着火し、爆発を起こして上部をふっ飛ばすという事である。
地下室とはいえ、体感的にはそう深くはない。
どうもこの造りから見て、急ごしらえの弱そうな感じがして、それに上部に誰かがいたとしても、ルースたちを誘拐した人たちの仲間である可能性が高いので気にすることはない。
ド派手に爆発させ、空が見えるようにしてしまうのだ。
その後は、適当にタキでも召喚して、その背中に乗せてもらって逃げるのである。
…‥‥とはいえ、シャレにならない爆発が起きるというルースの説明に、レリアは不安を覚えた。
指向性とかいうものを持たせて出来るだけ被害が来ないようにすると言われても、かなり無謀なような気がしたのだ。
そんな不安の色を隠せないレリアに、ルースは不安をぬぐわせるために励ます。
「大丈夫だレリア、大体戦姫呼ばれる人が怯えてどうするんだ?怯える者がいれば、それだけでも戦場では士気が下がる。だったらどっしり構えていればいいんだよ」
ルースのその言葉に、レリアは気が付かされた。
「そうだな‥‥‥不安なんてばかばかしい!!絶対に成功させるんだ!」
そう言い切り、レリアの顔から不安の色ははなくなった。
「・・・・・・でも、一つぐらいは怖い物があってもいいよな」
「ああ、それは同意する…‥というか、エルゼさっきから殺気を放つのはやめて!!」
「ええ?あたしは殺気を放っていないわよ。そう、ルース君とレリアが何やら仲を深めたようなことに、別に嫉妬していないわよ」
にこりとそう言うエルゼ。
だがしかし、その目は笑っていない。
(はっきり言って、エルゼのあの恐怖の笑みだけはどうしようもない)
(ああわかる…‥わかるぞ、本当に怖いという事は)
互いのアイコンタクトで、ルースとレリアは同意しあうのであった。
「っと、もうそろそろ良い頃合いか」
ふと気が付けば、そろそろ爆発させてもいい頃合いのようである。
「それじゃ、レリア。景気よく一発ドカンと火の魔法を撃て!!」
「ああ、ならばこの魔法だ!『ファイヤーランス』!!」
赤色の魔導書を顕現させ、レリアは真っ赤に燃える炎の槍を、充填し終えた内部にでかい気泡が出来た水の塊に向けて発射した。
水の膜は薄くなっており、触れた瞬間に、内部で爆発が起きる。
ズゥン!!
爆発が指向性も持って上に向き、天井に激突して…‥‥
ドッカァァァァン!!
そのまま突き破り、巨大な火の玉となって上空へ何もかも吹き飛ばしていったのであった…‥‥
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