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学園1年目

42話

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‥‥‥夏休みも開け、始業式早々ルースたちは大変な目に遭っていた。

「ほーらほらほらほらほら!!入学式の時に比べーて、たーるんでいた人もいーるよ!!」
「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」


 入学式時の悪夢再び。

 バルション学園長による、夏休み明け早々の実力テストだという。

 なんでも、こういった長期休みの帰還の後は怠慢になる生徒も出るそうなので、それを防ぐために自ら生徒たちに対して愛の鞭と称して攻撃するそうである。


 レーザー光線や光の玉の雨あられに、某宇宙戦艦もびっくりな大口径の波状攻撃。いや、それは光線と変わらないか?

 少なくとも、これは人に向けては良い魔法ではないと皆は思ったが、逆らう前にやられそうなので必死になって何とか生き延びていた。


「うーん、思った以上に成長しーているね!それじゃ、おまーけとして、最後の一人とーなるまでやって、脱落しーてしまった人たーちには、特別短期集中特訓、その名も『綺麗なお花畑も、あっちーで死んだ爺ちゃんが手を振っている小川も見えーるよ』をおこなーいます!!」
「「「「「「それって臨死体験しているよね!?」」」」」」

 全員、思わずバルション学園長の言葉にツッコミを入れた。

 世界が変わろうが、万国共通で、いや、万世界共通の臨死体験は存在したようだ。

 というか、シャレにならないのだが‥‥‥‥本当になぜこんな人が学園長になったのであろうか。



 何せよ、今はこれに生き延びねば己の命が危ないと皆は思い、必死になって抵抗して最後の一人になるまで争うのであった‥‥‥‥









 ガラガラッと教室の扉が開かれ、そこからルースたちの担任でもあるデイモンド=レイダーが入って来た。

「よーし!夏休みも終わり、しゃっきっとしなければいけない季節になったが‥‥‥‥全員、撃沈しているな」

 一目見て、教室内の惨状を先生は理解したようである。


 先ほどのバルション学園長による無差別攻撃とも言うべき行為。

 結局、最後の一人まで残れればよかったのだが、次々と脱落していき、最後まで残れそうなところで一気に手数を増やして殲滅を駆けられ、全員その特別授業とやらを受ける羽目になったのである。

 保健室で治療を終えたとはいえ、そのショックと疲れによって、教室内は死屍累々と化していたのであった。


「あー、こんな全員が大変な状態で言うのもなだが、皆が無事にここに来れてうれしく思うぞ!」
「‥‥‥いえ」
「メンタルや」
「肉体的に」
「酷くやられて」
「「「「「無事ではありません‥‥‥」」」」」

 全員の声が一致した。


 まぁ、大体これを予想できていたというか、入学時の経験や勘で対策を練っていた者たちもいたらしい。

 だがしかし、それらをすべて完膚なきまで徹底的に叩き潰し、まだまだ甘いとあのバルション学園長は皆に思い知らしめたのであった。

 上には上が、そしてさらにその上が常に存在するとも。

 ルースも一応予想はしていたのだが…‥‥未だに学園長には勝てないという事だけは分かった。

 というかあの人、敗北という文字を知らないのだろうか?



 皆がそう思いながら、何とか回復して起きてきたところで、デイモンド先生が話し始めた。

「さてと、新たな学期という事になったのだが‥‥‥その説明の前に、一つ重要な知らせが入った」
「え?なんなんですがデイモンド先生?」

 先生のその言葉に、生徒の一人が手を揚げて質問する。

「他国から、この学園の、このクラスに留学生が来ることになったのだ」
「他国からですか?」

 グレイモ王国以外にも、当たり前だが様々な国が存在する。

 だがしかし、どの国からなのかは予想が付かなかった。

「ああ、その国は‥‥‥モーガス帝国だ」


 モーガス帝国、その名を聞き、皆は驚愕した。

 グレイモ王国とは友好関係にある国なのだが、帝国のすさまじさは有名である。

 様々な国々と戦争をそし、どの国が相手でも勝利を収める。

 今はだいぶ平和になって来たということで、政の方に重点が置かれているらしく、治安の向上や教育の更なる高みを目指すことによっての人材育成など、今最も栄えている大国でもあるのだ。


 そして「殲滅王」や「学王」と言う二つ名で有名な皇帝を筆頭として、その子供たちも相当な実力者でもあるそうだ。


「それでだ、その帝国からなんだが‥‥‥魔導書グリモワールを扱う方がいてな、その方がもっと強くなりたいと学ぶために、この学園に留学手続きを行われたらしい」

 先生の口調からなんとなくだが、なにやら地位的にも高そうな人が来るようである。

 基本的にこのグリモワール学園では貴族だろうと平民だろうとほぼ差別なく扱い、ある程度の礼儀は暗黙の了解で守られている。

 だが、やはり他国からの、それも相当な地位が相手となると少々厄介でもあるようだ。


「というわけでだ、その方がもうすでに来ていらっしゃる。入ってきなさい」

 と、どうやらとっくの前に教室前にその留学生とやらが立っていたようで、先生の呼びかけに応じて入って来た。


 すたすたと余裕を持つ歩きだが、なんとなく隙が無い。

 基本的にこの学園は自由服に近いのだが、改造もありだということからか、要所に走行のようなものが張り付けられており、鎧のような感じである。

…‥‥あと、身体つきとしては鍛えているのか引き締まってバランスは良いのだが、何処がとは言わないけど、同年代なはずなのにどう見ても育った部分がある。


 戦闘に対してやりやすいようなのか、ポニーテルのようにきらりと輝く金髪を結っており、その顔立ちは綺麗だが、どこかきりっとした、男装すればそれなりに映えそうなそんな少女が、教室内に入って来たのであった。

「‥‥‥では、自己紹介をどうぞ」

 先生がそう促し、その少女は口を開いた。

「私の名前はレリア=バルモ=モーガス。モーガス帝国の第2王女にしてある戦で『戦姫』の称号で呼ばれ、そして今年に入って叡智の儀式にて、この燃え盛るような赤い魔導書グリモワールを手にした者だ!もう帝国内では学ばせることが無いとお父様からの言葉があったので、より一層己の精進に努めることを目的として、この学園に入学した!別に身分やそう言った者は気にしていないので、どうかこれからよろしく頼む!!」

 威風堂々と彼女は自己紹介し、ぺこりとお辞儀したのであった。


 その堂々たる振る舞いには、第2王女という部分への驚きを無くし、むしろその真面目な空気に皆は驚くのであった。



―――――――
作者です。
ここでひとつ設定としてですが、この作品に限り皇帝の娘を「皇女」ではなく「王女」と扱うことにしたことをお知らせしておきます。
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