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学園1年目
16話
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ドォォォン!!
ドォォォォン!!
ズドォォォォォォン!!
「‥‥‥派手な音の割には、次々と壁ができるだけという地味な絵面だよな」
「その通りだぜ全く。…‥‥くそうぅ!!これで赤い魔導書だったら火柱とかが出来て、派手にできるのになぁぁぁ!!」
「複合魔法で混ぜてみるか?溶岩が噴き出るらしいのはあるのだが‥‥‥」
「いやいやいや!!それはあかんやつだろ!!」
ルースの提案に、余りも物騒な代物だったので流石にまずいと、茶色の魔導書を持った同級生は慌てて止めさせた。
彼の名前はスアーン=ラング。ルースと同じくバルスト村出身であり、友人である。
少々ふざけるところはあるのだが、そのおふざけに便乗して脅せばあっという間に前言撤回してくれる、いじりがいのありそうなやつである。
そして、実は‥‥‥
「何をやっているのかしら、ルース君に…‥‥確か下僕一号」
「まだそれを撤回してくれないのかよ!!というか忘れていた感じがあるな!!…‥‥いくらあれで俺っちが負けたとはいえ、流石にそろそろやめてほ、」
「男は二言を言わないし、ずっとそのままでいると言ったでしょう?」
「は、はいぃぃぃい!!」
「‥‥エルゼ、そろそろやめてやれよ」
「いやね。ルース君を一度傷つけたその罪は重いのよねぇ」
くすくすと笑うエルゼ。
トラウマを刺激されたかのように青ざめるスアーンを見て、ルースは彼を気の毒に思った。
‥‥‥かつてスアーンは村での、わかりやすく言うのであればガキ大将であった。
今はだいぶ痩せて、健康的な猿のような見た目とはいえ、幼い時は村で一番のガキ大将で太っていた。
例えで言うなればジャ○アンを少し小さくした感じだっただろうか。だんご鼻ではなく、かなりとがった鼻ではあるが。
一応貴族とかではなく、太っていた理由が村の子供たちからお菓子を奪っていたからである。
そんな彼がガキ大将だったころはは横暴で、あちこちに乱暴を働いていたが‥‥‥あることがきっかけで改心した。
その理由が、5歳ごろのルースを傷つけたときである。
その当時は、ルースはエルゼと出会ってから1周年記念とか言われて、やや強制的だが遊びに来るように招待状をもらい、当時公爵家でエルゼがねだって貸家にしてもらった村の中にある家へ向かっていた時であった。
その時に、スアーンに絡まれ、そして何かで機嫌を損ねて石を投げられ怪我したのである。
今になってルースが思い返してみれば、おそらくスアーンはエルゼがちょっと好きだったようで、その相手にいつもルースがいたことが不満だったのだろうが‥‥‥それが、スアーンの間違いの元であったのだろう。
やって来たルースが傷だらけなのを見てエルゼが絶叫し、慌てて医者を呼んできて、大袈裟とも言えるレベルまで手当をしてくれた。
それだけであるならば、ルースはエルゼに感謝するだけで良かっただろう。
だがしかし、その当時からすでにストーカーの鬼の気質を見せていたエルゼは、ルースを傷つけた相手に激怒した。
相手はわかっているので、復讐をすぐに考えたそうだ。
だがしかし、そこで大人の力を使うのも、家の権力を使うのも間違っているとエルゼは思ったようで、自分の力だけで成敗することに決めたのだ。
‥‥‥どのように成敗したのかは、あえてスアーンの尊重をして話したくない。
ただ言えるのは、それほどまでに悲惨であり、本当に5歳児だったのかと言えるレベルの復讐劇で、周囲はドン引きで、その光景を見ていた当時のスアーンの取りまきの中に漏らした子供が何人いたのやら…‥‥
後日、スアーンは平謝りの涙ながらの土下座で、今までいじめた相手などにもまとめてしていき、そして改心して良い友人となった。
だがしかし、その当時のトラウマ故か、未だにエルゼには頭が上がらない。
そして、その時にエルゼから名付けられていたのが下僕一号という名前であり、今もなおエルゼは言い直す気はないようである。
そんなこんなで月日は経ち、あの叡智の儀式を彼が受けたときに、茶色の魔導書を手に入れ、スアーンは土などに関する力を手に入れたのであった。
そして本日の授業は、魔導書を使用して壁を作るという授業である。
ただ創るのではなく、授業で指定された範囲や大きさ、強度などを考えなければいかず、その授業の地味さに彼は不満を持っているようであった。
「大体これぐらいで文句を言うなよスアーン。俺なんて複合魔法で大量の壁を作らされるんだぞ」
「うっ‥‥‥なんかすまんな。黄金の魔導書を持っているお前の場合、そうしなければいけないのかよ」
学園長が圧力をかけてる可能性もあるのだが…‥‥相当大変である。
他の生徒たちであれば、その彼らが持つ魔導書に対応したものでやるだけで良かった。
だがしかし、ルースの場合はそれらを組み合わせて使用することが可能であり、組み合わせ次第で様々な物が作れるのである。
複合魔法で、現在可能なのは2種類まで。土や水、木や土と言った物ならまだ組み合わせやすいのでいいだろう。
だがしかし、炎や水、光と闇と言った、調節を間違えれば即崩れる様な物もしなければいけないのだ。
特に炎と木が一番難しい。
緑色の魔導書で扱える、大木や蔦などで形成する「ウッドウォール」。
赤色の魔導書で扱える、文字通り燃え盛る炎の壁「ファイヤウォール」。
その2種類の魔法を組み合わせての壁を作る魔法なのだが‥‥‥どうやっても木や蔦が燃えてしまう。
下手すりゃ大きな業火の壁となり、どうも相性が悪い魔法のようであった。
「他にも水と氷だと表面から凍結するか、内部から凍結するし、闇と炎だと、どこか中二病のようなものが出来るしなぁ‥‥‥」
「かっこいいと思うけどな?黒い炎に呑まれていく魔法と言えばいいじゃん」
‥‥‥後々絶対に後悔しそうである。黒歴史とならないように注意しなければならない。
バルション学園長にそんなことで隙を見せたら、確実にそれをネタにされて…‥‥恐怖しかないであろう。
何にせよ、魔法の意外なコントロールの微調整の難しさを、その日皆は実感した。
大きすぎたり、小さすぎたり、もろすぎたり、逆に硬すぎたりなどと様々な苦労があったからである。
というか、黄色や白色の魔導書を扱う人の場合、出来るのが電撃や光の壁だから‥‥‥強度とかどうなのだろうか?そのあたりが今一つつかめない。
ついでに言うなれば、エルゼはこの手の事に関してなら得意分野のようで、あっという間に水の壁や氷の壁などを指定通りに作り上げることができていた。
「ふふふふ、これでルース君を閉じ込めて一生…‥‥なんてこともできそうね」
「ひっつ!?」
どうしよう、壁を確実に破壊できるような魔法の練習もしたほうが良いと勘が警鐘を鳴らすのだが。
いつの日か、ほんとにやられかねないような気がして、ルースは悪寒を抱く。
「‥‥‥どんまいルース」
その悪寒におびえるルースを、事情を知っており、なおかつエルゼの恐怖を味わったことのあるスアーンは、その肩を叩こうとして…‥‥
「『アイスボックス』!」
ガチィン!!
‥‥‥手が届く前に、エルゼの手によって氷の壁で囲まれたのであった。
「おいエルゼ!?あいつは今俺を励まそうとしただけなんだけど!?」
「あ、ついルース君に危害を喰わえるのかと思ってやっちゃった☆」
てへっ、とごまかすように舌を出して笑うエルゼ。
「だってねぇー、昔ルース君を傷つけてもいるし、油断したらやられちゃうよ?」
「いやいやいや!?理由になっていないからな!!」
というか、殺意を100%感じたのだが、表面上は笑っていても、未だに彼を許す気はないのだろうか?
とにもかくにも、火や水で氷を溶かし、ルースはなんとかスアーンを救出するのであった。
‥‥‥そろそろ、友人も守る方法を模索したほうが良いかもしれない。
「学園長、ご報告が」
「おおーっつ?なんだーね?」
その頃、学園長室にて教員からバルション学園長は報告を受けていた。
「先日、どうやら学園からは少し遠いですが、ある村が盗賊の襲撃にあったという事です」
「ふーむ、でも学園に早々やってこないと思うけどねー?」
距離があるとはいえ、学園にその盗賊がやってこない可能性はないという連絡だったが、学園長は首を傾げた。
実はこのグリモワール学園は、この国での魔導書を得た者たちの教育機関であるがゆえに、学園そのものが重要視されていて、警備等は厳重なのである。
その為、例え盗賊が訪れたとしても早期発見・早期撃退が可能なはずであった。
「ですが、どうやらその盗賊は普通とは違うようなんですよ」
「といーうと?」
「報告によると、闇の魔法によるもののような形跡や、ヌルヌルした液体が散らばっていたり、人体が綺麗に切断されていたりなど…‥‥盗賊というよりも、はるかに危険な人物がうろついている可能性があるようです」
「‥‥‥なるほど」
報告を聞き、事の深刻さが分かったのか学園長はふざけていた声から、真面目な声になった。
「魔導書を使った犯罪かもしれないけど‥‥‥盗賊に紛れ込んでいるにしてはおかしいか。資料を見る限り、金銭とかよりも殺人を楽しんでいる傾向にあるようだし‥‥‥」
再び資料を見直し、学園長はその細かな報告を呼んで、対抗策を練る。
「ふむ、確かにこれは金銭を求める盗賊と言うよりも、殺人快楽者で魔導書を悪用する輩と考えたほうが良いかもね。痕跡から実行犯は1~3人ほど。黒色や水色の魔導書所持の可能性があるけど…‥‥場合によっては違うかもしれないな」
「違うというと?」
「ヌメヌメした液体‥‥‥水魔法や闇魔法でも生成可能かもしれないけど、ちょっとこれが気になるな。遺体の切断面が濡れていたことからそれによる切断だったのかもしれないけど、そこまでの切れ味があったのかどうか…‥‥もしかしたら‥‥‥」
いやな予感をバルション学園長は感じつつ、学園及びその周囲の都市全体の警戒レベルを上げるように彼女は命じた。
「‥‥‥20年前の事件が再び起きるのかもね」
ふと、バルション学園長は思い出してつぶやき、当時のようなことが起きる可能性を考えると、厳しい表情になるのであった。
ドォォォォン!!
ズドォォォォォォン!!
「‥‥‥派手な音の割には、次々と壁ができるだけという地味な絵面だよな」
「その通りだぜ全く。…‥‥くそうぅ!!これで赤い魔導書だったら火柱とかが出来て、派手にできるのになぁぁぁ!!」
「複合魔法で混ぜてみるか?溶岩が噴き出るらしいのはあるのだが‥‥‥」
「いやいやいや!!それはあかんやつだろ!!」
ルースの提案に、余りも物騒な代物だったので流石にまずいと、茶色の魔導書を持った同級生は慌てて止めさせた。
彼の名前はスアーン=ラング。ルースと同じくバルスト村出身であり、友人である。
少々ふざけるところはあるのだが、そのおふざけに便乗して脅せばあっという間に前言撤回してくれる、いじりがいのありそうなやつである。
そして、実は‥‥‥
「何をやっているのかしら、ルース君に…‥‥確か下僕一号」
「まだそれを撤回してくれないのかよ!!というか忘れていた感じがあるな!!…‥‥いくらあれで俺っちが負けたとはいえ、流石にそろそろやめてほ、」
「男は二言を言わないし、ずっとそのままでいると言ったでしょう?」
「は、はいぃぃぃい!!」
「‥‥エルゼ、そろそろやめてやれよ」
「いやね。ルース君を一度傷つけたその罪は重いのよねぇ」
くすくすと笑うエルゼ。
トラウマを刺激されたかのように青ざめるスアーンを見て、ルースは彼を気の毒に思った。
‥‥‥かつてスアーンは村での、わかりやすく言うのであればガキ大将であった。
今はだいぶ痩せて、健康的な猿のような見た目とはいえ、幼い時は村で一番のガキ大将で太っていた。
例えで言うなればジャ○アンを少し小さくした感じだっただろうか。だんご鼻ではなく、かなりとがった鼻ではあるが。
一応貴族とかではなく、太っていた理由が村の子供たちからお菓子を奪っていたからである。
そんな彼がガキ大将だったころはは横暴で、あちこちに乱暴を働いていたが‥‥‥あることがきっかけで改心した。
その理由が、5歳ごろのルースを傷つけたときである。
その当時は、ルースはエルゼと出会ってから1周年記念とか言われて、やや強制的だが遊びに来るように招待状をもらい、当時公爵家でエルゼがねだって貸家にしてもらった村の中にある家へ向かっていた時であった。
その時に、スアーンに絡まれ、そして何かで機嫌を損ねて石を投げられ怪我したのである。
今になってルースが思い返してみれば、おそらくスアーンはエルゼがちょっと好きだったようで、その相手にいつもルースがいたことが不満だったのだろうが‥‥‥それが、スアーンの間違いの元であったのだろう。
やって来たルースが傷だらけなのを見てエルゼが絶叫し、慌てて医者を呼んできて、大袈裟とも言えるレベルまで手当をしてくれた。
それだけであるならば、ルースはエルゼに感謝するだけで良かっただろう。
だがしかし、その当時からすでにストーカーの鬼の気質を見せていたエルゼは、ルースを傷つけた相手に激怒した。
相手はわかっているので、復讐をすぐに考えたそうだ。
だがしかし、そこで大人の力を使うのも、家の権力を使うのも間違っているとエルゼは思ったようで、自分の力だけで成敗することに決めたのだ。
‥‥‥どのように成敗したのかは、あえてスアーンの尊重をして話したくない。
ただ言えるのは、それほどまでに悲惨であり、本当に5歳児だったのかと言えるレベルの復讐劇で、周囲はドン引きで、その光景を見ていた当時のスアーンの取りまきの中に漏らした子供が何人いたのやら…‥‥
後日、スアーンは平謝りの涙ながらの土下座で、今までいじめた相手などにもまとめてしていき、そして改心して良い友人となった。
だがしかし、その当時のトラウマ故か、未だにエルゼには頭が上がらない。
そして、その時にエルゼから名付けられていたのが下僕一号という名前であり、今もなおエルゼは言い直す気はないようである。
そんなこんなで月日は経ち、あの叡智の儀式を彼が受けたときに、茶色の魔導書を手に入れ、スアーンは土などに関する力を手に入れたのであった。
そして本日の授業は、魔導書を使用して壁を作るという授業である。
ただ創るのではなく、授業で指定された範囲や大きさ、強度などを考えなければいかず、その授業の地味さに彼は不満を持っているようであった。
「大体これぐらいで文句を言うなよスアーン。俺なんて複合魔法で大量の壁を作らされるんだぞ」
「うっ‥‥‥なんかすまんな。黄金の魔導書を持っているお前の場合、そうしなければいけないのかよ」
学園長が圧力をかけてる可能性もあるのだが…‥‥相当大変である。
他の生徒たちであれば、その彼らが持つ魔導書に対応したものでやるだけで良かった。
だがしかし、ルースの場合はそれらを組み合わせて使用することが可能であり、組み合わせ次第で様々な物が作れるのである。
複合魔法で、現在可能なのは2種類まで。土や水、木や土と言った物ならまだ組み合わせやすいのでいいだろう。
だがしかし、炎や水、光と闇と言った、調節を間違えれば即崩れる様な物もしなければいけないのだ。
特に炎と木が一番難しい。
緑色の魔導書で扱える、大木や蔦などで形成する「ウッドウォール」。
赤色の魔導書で扱える、文字通り燃え盛る炎の壁「ファイヤウォール」。
その2種類の魔法を組み合わせての壁を作る魔法なのだが‥‥‥どうやっても木や蔦が燃えてしまう。
下手すりゃ大きな業火の壁となり、どうも相性が悪い魔法のようであった。
「他にも水と氷だと表面から凍結するか、内部から凍結するし、闇と炎だと、どこか中二病のようなものが出来るしなぁ‥‥‥」
「かっこいいと思うけどな?黒い炎に呑まれていく魔法と言えばいいじゃん」
‥‥‥後々絶対に後悔しそうである。黒歴史とならないように注意しなければならない。
バルション学園長にそんなことで隙を見せたら、確実にそれをネタにされて…‥‥恐怖しかないであろう。
何にせよ、魔法の意外なコントロールの微調整の難しさを、その日皆は実感した。
大きすぎたり、小さすぎたり、もろすぎたり、逆に硬すぎたりなどと様々な苦労があったからである。
というか、黄色や白色の魔導書を扱う人の場合、出来るのが電撃や光の壁だから‥‥‥強度とかどうなのだろうか?そのあたりが今一つつかめない。
ついでに言うなれば、エルゼはこの手の事に関してなら得意分野のようで、あっという間に水の壁や氷の壁などを指定通りに作り上げることができていた。
「ふふふふ、これでルース君を閉じ込めて一生…‥‥なんてこともできそうね」
「ひっつ!?」
どうしよう、壁を確実に破壊できるような魔法の練習もしたほうが良いと勘が警鐘を鳴らすのだが。
いつの日か、ほんとにやられかねないような気がして、ルースは悪寒を抱く。
「‥‥‥どんまいルース」
その悪寒におびえるルースを、事情を知っており、なおかつエルゼの恐怖を味わったことのあるスアーンは、その肩を叩こうとして…‥‥
「『アイスボックス』!」
ガチィン!!
‥‥‥手が届く前に、エルゼの手によって氷の壁で囲まれたのであった。
「おいエルゼ!?あいつは今俺を励まそうとしただけなんだけど!?」
「あ、ついルース君に危害を喰わえるのかと思ってやっちゃった☆」
てへっ、とごまかすように舌を出して笑うエルゼ。
「だってねぇー、昔ルース君を傷つけてもいるし、油断したらやられちゃうよ?」
「いやいやいや!?理由になっていないからな!!」
というか、殺意を100%感じたのだが、表面上は笑っていても、未だに彼を許す気はないのだろうか?
とにもかくにも、火や水で氷を溶かし、ルースはなんとかスアーンを救出するのであった。
‥‥‥そろそろ、友人も守る方法を模索したほうが良いかもしれない。
「学園長、ご報告が」
「おおーっつ?なんだーね?」
その頃、学園長室にて教員からバルション学園長は報告を受けていた。
「先日、どうやら学園からは少し遠いですが、ある村が盗賊の襲撃にあったという事です」
「ふーむ、でも学園に早々やってこないと思うけどねー?」
距離があるとはいえ、学園にその盗賊がやってこない可能性はないという連絡だったが、学園長は首を傾げた。
実はこのグリモワール学園は、この国での魔導書を得た者たちの教育機関であるがゆえに、学園そのものが重要視されていて、警備等は厳重なのである。
その為、例え盗賊が訪れたとしても早期発見・早期撃退が可能なはずであった。
「ですが、どうやらその盗賊は普通とは違うようなんですよ」
「といーうと?」
「報告によると、闇の魔法によるもののような形跡や、ヌルヌルした液体が散らばっていたり、人体が綺麗に切断されていたりなど…‥‥盗賊というよりも、はるかに危険な人物がうろついている可能性があるようです」
「‥‥‥なるほど」
報告を聞き、事の深刻さが分かったのか学園長はふざけていた声から、真面目な声になった。
「魔導書を使った犯罪かもしれないけど‥‥‥盗賊に紛れ込んでいるにしてはおかしいか。資料を見る限り、金銭とかよりも殺人を楽しんでいる傾向にあるようだし‥‥‥」
再び資料を見直し、学園長はその細かな報告を呼んで、対抗策を練る。
「ふむ、確かにこれは金銭を求める盗賊と言うよりも、殺人快楽者で魔導書を悪用する輩と考えたほうが良いかもね。痕跡から実行犯は1~3人ほど。黒色や水色の魔導書所持の可能性があるけど…‥‥場合によっては違うかもしれないな」
「違うというと?」
「ヌメヌメした液体‥‥‥水魔法や闇魔法でも生成可能かもしれないけど、ちょっとこれが気になるな。遺体の切断面が濡れていたことからそれによる切断だったのかもしれないけど、そこまでの切れ味があったのかどうか…‥‥もしかしたら‥‥‥」
いやな予感をバルション学園長は感じつつ、学園及びその周囲の都市全体の警戒レベルを上げるように彼女は命じた。
「‥‥‥20年前の事件が再び起きるのかもね」
ふと、バルション学園長は思い出してつぶやき、当時のようなことが起きる可能性を考えると、厳しい表情になるのであった。
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