上 下
334 / 339
卒業近いのになぜこうなるので章

295話

しおりを挟む
‥‥‥冬も過ぎ、春風が吹いていく。

 寒い季節の中でフワフワだったマロが換羽でさらさらモコモコへと変化するという様子を見せつつ、間もなくグリモワール学園の卒業式が迫りくる。

「気のせいかしら?サイズが最初はお手軽サイズでしたのに、今は女狐の元の大きな狐姿よりも巨大化してないかしら?」
「‥‥‥あれぇ?」
 
 エルゼのその言葉に、マロの変化に対して気が付くが‥‥‥まぁ、今さら感があるだろう。

 元はコカトリスで石化ブレスを吐くモチクッションだったのに、黄金化させる上にコロコロ転がって移動するとか‥‥‥うん、なんか変な方向へ成長しているのは間違いない。

 先日もやらかしているし、どう変化しても驚くこともないだろう。




 とにもかくにも、卒業式の準備も並行しつつ‥‥‥ルースはある事実が発覚したことに気が付き、その件に関して確実に情報を得ている3名と話し合うことにした。


「‥‥‥領地予定地とか、改めて確認したんだけど‥‥‥ルルリア、アルミア、レリア、国王陛下からの説明もないのに、何で領地の範囲が広がっているんだ?」
「その、ですね‥‥」
「卒業前に、掃除をして…‥」
「結果として、潰れたところがまた出たから、それを押しつけられてしまった‥‥‥感じかな?」

 ルースの質問に対して、3人はそう答えた。





‥‥‥卒業後に、公爵の爵位を受け、その治める予定の領地は既に確認していた。

 だが、つい数日前に、ふと改めてその範囲を確認し直し、バトの妖精部隊を動員して再確認したところ…‥‥いつの間にか、公爵領予定地の範囲が増加していたのである。

 このグレイモ王国の分も分かるが、レリアの故郷であるモーガス帝国からも何故か領地が分配され、統合されており、その事情を聴くために、それぞれの王女でもある彼女達に対して尋ねたところ‥‥‥どうも、今もなお湧き出るような輩共が原因らしかった。

「‥‥‥まだいるのかよ、そういう輩」
「ああ、元々平民のルースを、公爵のくらいに挙げるのは反対だと今でもまだしつこく言う輩がいたようでな…‥」
「それをお父様たちが共同で調べ上げ」
「ついでに師匠ルーレア皇妃が嗅ぎつけて突撃して、いくつかが相当やらかす前だったのが判明して、全て潰れて‥」
「その領地を、押しつける形で統合したわけか‥‥‥」

‥‥‥納得はできるが…‥あの皇妃、増殖帝国騒動の時に大けがを負っていたはずなのに、既に回復し切ったようで、現在はその突撃された者たちが治療中の身らしい。

 うん、まぁ相手の自業自得なのは別に良いのだが、そのせいで領地が増加するのはどうなのだろうか?

 他の貴族にとっては、収益を稼げることを考えると良い事なのかもしれないが、貴族初心者というべき身では、少々荷が重いように思える。

―――――大丈夫、全部見レル。
「バト‥‥‥確かに、妖精部隊がいれば、細部まで確認はできるか」

 そこは皆に手助けをしてもらい、慣れるしかないか。

 仕方がない事だと諦め、現実を受け入れよう。


「あれ?でも何も、全部俺のところへ統括する必要ないよね?他の貴族家とかに与えれば良い話しなんじゃ?」
「それなんだけどな、与えられそうな家は全部断られた」
「これはこれで嫌味を含んだものがあるらしいですわ」
「『若い貴族がどれだけ動けるのか』というのを見たいだけのようなの」

‥‥‥要は、平民から貴族になり上がった者に対しての軽いジャブというべきか、貴族としての現実を見せる意味があるようだ。

 確かに普通であれば苦労するどころか、領地を潰しかねないかもしれないが…‥‥いや、力を借りれても十分できるかもまだわからない。

 ある意味他の貴族家からの挑戦のような物として、受け止めれば良いだろう。

 ならば、受けるよりほかはあるまい。


「まぁ、フェイカーを相手にするよりかは、かなり楽と言えば楽だな‥‥‥」

 あの組織の方が、よっぽど大変だったからなぁ…‥‥


‥‥‥少々遠い目になりながらも、ルースは増えた領地に対しての卒業後の計画を練り始める。

 公爵となる事を踏まえ、それに恥じぬように一生懸命できることはやりつくすのみである。




 とはいえ、まだ不安の種は残っている。

 いくら潰しても潰しても、やはりというか、雑草のごとく良からぬ者たちはいつの間にか生えて、害をなそうとしてくるのだ。

 その対策を考えつつ、バトに念のためにそう言う輩が育っていないか、確認作業を取らせ始めるのであった‥‥‥‥




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーで成り上がる~

うみ
ファンタジー
 港で荷物の上げ下ろしをしてささやかに暮らしていたウィレムは、大商会のぼんくら息子に絡まれていた少女を救ったことで仕事を干され、街から出るしか道が無くなる。  魔の森で一人サバイバル生活をしながら、レベルとスキル熟練度を上げたウィレムだったが、外れスキル「トレース」がとんでもないスキルに変貌したのだった。  どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまうのだ。  三年の月日が経ち、修行を終えたウィレムのレベルは熟練冒険者を凌ぐほどになっていた。  街に戻り冒険者として名声を稼ぎながら、彼は仕事を首にされてから決意していたことを実行に移す。    それは、自分を追い出した奴らを見返し、街一番まで成り上がる――ということだった。    ※なろうにも投稿してます。 ※間違えた話を投稿してしまいました! 現在修正中です。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

処理中です...