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夏も過ぎ去り、最後の学園生活で章
274話
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……錬金術で液体人間が人間の少女として再構成されてから数日が経過した。
「うーっ!!マロ、待ってー!」
【ピギャ~ス♪】
そう声を出すが、コロコロと転がるマロは適当に返答し、捕まる気配を見せない。
声を出しているのは、ワンピースを着た少女‥‥‥そう、元液体人間である。
人間に戻ったとはいえ、元は孤児院にいた孤児。
引き取る両親もおらず、とはいえ見た目の年齢的に幼いので、今はひとまず発見者であるルースたちが仮の里親として、彼女を預かっていた。
元々の名前が分かればよかったのだが、残念ながら液体人間になった時から時間が経ち過ぎたせいか、その記憶が欠落していたようで、改めて名前を付けた。
新しい名前は『クリス』。錬金術で生み出される生命体の一つ、ホムンクルスから少々もじってつけた名前である。
年相応の幼い少女のようであり、マロと戯れる姿はものすごく和まされる。
「まぁ、一応里親として引き取ったけれど……将来的には養子にしたほうが良いのかな?」
「それも良いわね。ちょっと早すぎる子供という事になるけれども、悪くないですわ」
キャッキャと遊び、戯れているクリスを見ながらつぶやくルースに対して、エルゼがそう答える。
液体人間を見つけたのはルースたちであり、自分たちで彼女を育てたほうが良いと、皆の意見が一致しており、来年度‥‥‥もうじきくる冬を越し、春の卒業後に行われる爵位授与及び結婚式後に、クリスを養子に向かえることになった。
今はまだ、ルースたちは仮の保護者という事だが、きちんと手順を踏んで養子にできるだろう。
クリスの方も納得しており、早く「お母さん」「お父さん」と呼ぶのを楽しみにすると、言ってくれた。
【ピッギャス~♪】
「よし、捕まえたー!」
と、そうこうしているうちにようやくマロに追いついたのか、ぎゅっと抱きしめてクリスは叫んでいた。
達成感が全身からあふれるようで、思わず皆で拍手をする。
「ところでさ、さっきからあえて言わないようにしていたけれど…‥‥クリス、ちょっと速くない?」
【それ、指摘するまでもないのぅ……】
・・・どうも錬金術で人間に戻ったのは良いのだが、完全に人間とまではいかなかったらしい。
というのも、どうやらルースの作った雷による電気的刺激の中に精霊の力が色々と混じったらしく、また集めていた材料の中にも色々とあったせいか、互に作用しあい、少々人間からずれてしまったようだ。
まぁ、精々身体能力が同年代の常人の3.5倍ほど高く、目からビームが放てる程度であり、それ以外は普通の少女と変わらないので、最悪な事態…‥‥未知の化け物が産まれるなんてことは避けられたから良い方であろう。
【ピッギャァァァ!!】
「あははは!!空の旅だよマロー!!」
「‥‥‥なんか空飛んでいるなぁ」
「あれ間違いなく、ルースの精霊状態である飛行能力を持っているよね」
「あれは羨ましいな‥‥‥」
精霊状態のルースと同じような飛行方法でクリスが飛び、その様をルースたちは微笑ましく思いつつ、のんびりと眺めるのであった。
……ただ、この時ルースたちは知らなかった。
この飛行能力とか、その他諸々人間ではありえない力を手に入れてしまったクリスが、少々調子に乗ってしまう事を。
良い子だったおかげで、悪い事には使用しないのだが…‥‥色々と目立つというか、密かな有名人と化してしまうのだが、それは後のお話……
「うーっ!!マロ、待ってー!」
【ピギャ~ス♪】
そう声を出すが、コロコロと転がるマロは適当に返答し、捕まる気配を見せない。
声を出しているのは、ワンピースを着た少女‥‥‥そう、元液体人間である。
人間に戻ったとはいえ、元は孤児院にいた孤児。
引き取る両親もおらず、とはいえ見た目の年齢的に幼いので、今はひとまず発見者であるルースたちが仮の里親として、彼女を預かっていた。
元々の名前が分かればよかったのだが、残念ながら液体人間になった時から時間が経ち過ぎたせいか、その記憶が欠落していたようで、改めて名前を付けた。
新しい名前は『クリス』。錬金術で生み出される生命体の一つ、ホムンクルスから少々もじってつけた名前である。
年相応の幼い少女のようであり、マロと戯れる姿はものすごく和まされる。
「まぁ、一応里親として引き取ったけれど……将来的には養子にしたほうが良いのかな?」
「それも良いわね。ちょっと早すぎる子供という事になるけれども、悪くないですわ」
キャッキャと遊び、戯れているクリスを見ながらつぶやくルースに対して、エルゼがそう答える。
液体人間を見つけたのはルースたちであり、自分たちで彼女を育てたほうが良いと、皆の意見が一致しており、来年度‥‥‥もうじきくる冬を越し、春の卒業後に行われる爵位授与及び結婚式後に、クリスを養子に向かえることになった。
今はまだ、ルースたちは仮の保護者という事だが、きちんと手順を踏んで養子にできるだろう。
クリスの方も納得しており、早く「お母さん」「お父さん」と呼ぶのを楽しみにすると、言ってくれた。
【ピッギャス~♪】
「よし、捕まえたー!」
と、そうこうしているうちにようやくマロに追いついたのか、ぎゅっと抱きしめてクリスは叫んでいた。
達成感が全身からあふれるようで、思わず皆で拍手をする。
「ところでさ、さっきからあえて言わないようにしていたけれど…‥‥クリス、ちょっと速くない?」
【それ、指摘するまでもないのぅ……】
・・・どうも錬金術で人間に戻ったのは良いのだが、完全に人間とまではいかなかったらしい。
というのも、どうやらルースの作った雷による電気的刺激の中に精霊の力が色々と混じったらしく、また集めていた材料の中にも色々とあったせいか、互に作用しあい、少々人間からずれてしまったようだ。
まぁ、精々身体能力が同年代の常人の3.5倍ほど高く、目からビームが放てる程度であり、それ以外は普通の少女と変わらないので、最悪な事態…‥‥未知の化け物が産まれるなんてことは避けられたから良い方であろう。
【ピッギャァァァ!!】
「あははは!!空の旅だよマロー!!」
「‥‥‥なんか空飛んでいるなぁ」
「あれ間違いなく、ルースの精霊状態である飛行能力を持っているよね」
「あれは羨ましいな‥‥‥」
精霊状態のルースと同じような飛行方法でクリスが飛び、その様をルースたちは微笑ましく思いつつ、のんびりと眺めるのであった。
……ただ、この時ルースたちは知らなかった。
この飛行能力とか、その他諸々人間ではありえない力を手に入れてしまったクリスが、少々調子に乗ってしまう事を。
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