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夏も過ぎ去り、最後の学園生活で章

273話

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……休日、ルースたちは各地へ出向いていた。

 その理由は、液体人間を元に戻すための錬金術とやらで、必要になる材料を集めるためである。

 液体人間自体は、その構成要素は全て人間からできているので、人間をつくるだけの材料で言えばさほど量は必要としない。

 ただ、骨などの強度を戻したり、神経系の一部の改善などを考えるのであれば、必要な材料にちょっと貴重なものが増えたりするのだ。




 とは言え、タキたちが帰還したことにより、彼女達に手伝ってもらうことで、広範囲を移動しやすく、さほど材料を集めるのに支障はなかった。

 各地の材料を集めるために、野を越え山越え、谷越え、空を切り裂き、大地を掘り進む。


 野も山もタキに乗ればあっという間に駆け抜けられるし、空は精霊状態になって飛翔するか、バト達妖精部隊に任せたりすることが出来る。

 大地を掘る事に関しては、スアーンがいたほうが良かったかもしれないが、ヴィーラが元々穴掘りが得意だったので、問題なかった。


「そう考えると、スアーンは必要なのだろうか‥‥‥」
【そレ、考えタらだめな奴だト思う】
「あたしの水魔法で普通に掘る事もできるし…‥‥下僕、もしかしてほぼ必要性皆無‥‥‥」
【だかラだめだと…‥‥フォローできナいな】

 何にしても、休日が1日潰れる程度で、あっという間に材料は集まってしまった。



「エルモア先生、これで材料は全部のはずです」
「ふむ、マンドラゴラに水銀、血に‥‥‥ちょっと待て、この血は誰のかな?」
「それは医療機関から購入しました」
「輸血用のものですわ」
「なるほどな」


 何にしても、最終的に必要な材料がそろったことを確認し終え、いよいよ錬金術の作業に入る事になった。

 液体人間を元の人間に戻すのだが、エルモア先生はこの錬金術は専門外のために、少々不安が残るらしい。

 けれども、ここまで集めたのでその努力に報いるために、確実に成功するように計算した錬成方法を出したようだ。


「先に言っておくが、これはホムンクルスという人工生命体を作る作業に似て異なる物らしいな。錬金術で、自身を材料にして失敗した者が、元の身体に戻るために創り上げたとされるものを参考にしているのだ」
「その失敗したっていうのが気になるような‥‥‥」
「その人、本当に戻れたのか?」
「間違いないな。そもそも、戻れない時点で記録がないだろうな」
「「なるほど」」


 納得しつつ、準備が進められていく。

 魔法とは異なる分野で有り、どちらかと言えば科学に近い分野。

 魔法陣とかは特になく、集めてきた材料でまずは全体の形を作り、液体人間をそれに流し込む。

 次に、骨などの元になるような材料を作り上げ、並べ、綺麗に整える。


「右修正3度、上下2センチ修正・・・一ミリでもずれたら、最悪の場合じゅるっぱんとなるらしいから、注意しないといけないそうだな」
「じゅるっぱんって、何だろうその擬音」
―――――気ニナルヨ。


 何にしても、着々と準備が進められ、いよいよ最終段階へと移る。


「あとは、ここに電気的刺激を与えるそうだが…‥‥錬金術だと、雷を利用したそうだが、今日は快晴だな」
「となると、ここは魔法で補えば良いのか?」
「そういう事になるな」

 
 ルースの複合魔法で、小さな雷雲を発生させ、電気をためていく。

 ある程度貯まったところで、合図と共に一気に放出し、落とすのだが…‥‥これで本当にうまくいくのか、その場にいる全員が不安になる。

 


 でも、やらないと結果は分からないし、出来るできないではなく、成し遂げるしかないのだ。


「それじゃ、合図を頼みます」
「ああ、あと10秒…‥‥5秒……3,2,1‥‥‥今だ!!」

 合図が成され、ルースは雷を落とした。

 蓄えられた膨大な電流が一気に落とされ、あらかじめ誘導するために作られた道を通っていく。

 そして、目的地へと到達し、その場所が一気に電撃による閃光で白くなり、次の瞬間……




ドンゴロガッゴォォォォォォォン!!

 一気に爆音を鳴り響かせ、強い衝撃波が発生した。

 まさかの衝撃波に素早くルースたちは対応し、それぞれで防御する。




……それから数分後、立ち込めたほこりなどの煙が晴れ、結果がルースたちの目の前に出された。

 最後の爆音は予想外であったが…‥‥果たしてうまくいったのか。

 

 全員がごくりと緊張のあまり唾をのみ、その一点を集中して見つめる。

 そして、そこに現れたのは‥‥‥‥


「…‥‥!!」

「あ!!ルース君は見ちゃダメぇぇぇぇぇ!!」
ぶすっ
「いっだぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!?」

 どうやら成功したらしく、一人の少女が立っていた。

 だが、流石に錬成はできても服までは手が回らなかったようで、見には何もつけていなかった。

 そして思わず、その事実に素早く気が付いたミモザがルースに強烈な目つぶしを食らわせ、まともに見えるようになるまで少々時間がとられるのであった…‥‥



 
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