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学園最後の夏休みで章

264話

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…‥‥野望というものは、何をきっかけに生まれるのか。

 一案多い理由としては、何かの欲望が原因で生まれるのであろう。

 大金持ちになりたい、偉くなりたい、天才になりたい、無敵になりたい…‥‥様々な欲望が集まって、そしてそれらを一転に集めたものが、野望になるのであろう。

――――――――――――――――

 そして今、ルンブル王国では、野望の火種が着火され、大きな火を灯そうとしていた。

 その野望の炎によって、彼らはありとあらゆる欲望を叶え、そして満たされるはずであった。



 だがしかし、悪しき野望であれば、その火は何かをきっかけに、簡単に消し止められてしまう事があるのだ‥‥‥‥








「ぎやぁぁぁぁぁぁ!?」
「ひぐわぁぁぁぁぁあ!?」
「もげたぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「‥‥‥ふぅ、これで全部であるアルか」

 悲鳴が鳴り響き、ようやく消えたところで、ミュルはそうつぶやき、血に濡れた金棒をどしんっと床に置く。

「何にしても、これで色々な証拠を手に入れたであるなぁ‥‥‥しかし、今更ながらこのような事をするとは思いもしなかったでアル」
「まぁまぁ、いいんじゃないかーしら?こういう裏作業の血なまぐさいことこーそ、大人の立場でもある私たーちがやらなければいけーないでしょう?」
「ま、そうであるアルな」

 バルション学園長の言葉に、ミュルは納得しつつ、その場に散らばった書類などを拾い集め、きちんと保管していく。

「しかし、弱すぎるアル。これでよくもまぁ、クーデターなどを起こそうとしたでアルな」
「弱いからこそ、集団になーるのよ。まともなーらばまーだいいけれども、中には勘違いをすーる、頭の可哀想な方々もでーるのよね」
「おおぅ、割と厳しい意見でアル。しかも耳が痛い話しでアル‥‥‥」

 正論なのだが、元はフェイカー幹部であったミュルにとっても、今はもう亡きその組織の事を言われているようであり、少々耳が痛い。

 けれども気を取り直し、今はこの判明した戦力などを彼女達は根こそぎ奪っていく。

「次は、あーそこね。魔法よりも、物理の方がこーういう時に楽ね」
「後始末にも、困るでアルがな」

 金棒についた血をふき取りつつ、再び狩りに出向くミュル達。

 まずは第1段階、クリアといったところであった‥‥‥‥




――――――――――――――

「たまには、村の中を適当に歩くのも悪くはないな~」

 一方その頃、ルースは故郷の村にて、見回りをしていた。

 平和な村とは言え、ある年の夏に化け物野菜などが出来た事件があったので、再び同じような事が無いように、それなりに警戒しているのだ。


 まぁ、あの化物野菜事件はフェイカーが関わった可能性が大きいのだが、今となってはもう潰れた組織ゆえに、同様の事件が起こるとは考えにくい。

 けれども、収穫しこぼした化け物野菜もある可能性も捨てきれないので、こうやって定期的に見回りをするのも大事な事でもあった。


「しかしなぁ…‥‥久しぶりに完全な一人だけど‥‥‥」

 歩きながら、ふと空を見つめてルースは思う。

 普段はエルゼやレリアたちがいるのだが、彼女達はなにかしらの用事などがあって、今はこの場にはいない。

 一人でいるこの時間は、久しぶりなのだが…‥‥こうも、寂しさを感じさせるものであったのだろうか?


 ややストーカー気質が潜めたものの、そばにいたエルゼ。

 ツッコミ役もこなし、モフ仲間でもあったレリア。

 小さな妖精から大きな妖精女王になったバト。

 その他の皆も色々あったが…‥‥彼女達がいなくなるだけで、やはり物足りなさを感じさせる。


「…‥‥まぁ、こういう時は適当に何かをして気分を紛らわせるか」

 普段使う機会もないが、たまにはやっておこうと思い、精霊状態になって飛び回ることにしたルース。

 この姿であれば、村中を瞬時に見回ることもできるし、精霊の力がやや漏れ出て豊かにもできる。

 色々と良いことづくめでもあり、普段は飛べないような大空も漂うのもいいだろう。


…‥‥けれどもやはり、一人でいる日々はつまらなく、そして切なく、寂しいのだとルースは思うのであった。


「今頃皆、何をしているんだろうか…‥‥流石に、血生臭い事はしていないよね?」

 今まさに、そのような行為を行っている者たちがいるのだが、ルースが知る由もなかったのであった…‥‥

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