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学園最後の夏休みで章
249話
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……時期的に、もうそろそろルースの下へ集合する時が近づき、レリアは荷物をまとめていた。
「ふぅ、こんなものかな?」
ある程度荷づくりが出来たところで、レリアは一旦休憩し、一息を突くために窓辺に腰かけ、窓の外を見た。
夏になったということで、多少日光がギラギラと照り付けてはいるものの、王城内はマジックアイテムなどが施されているので涼しいものである。
とは言え、さすがに全部は補いきれず、訓練場の方へ目を向けていれば、今日もルーレア皇妃に打ち上げられて宙を舞う兵士たちは厚さを逃れるために、鎧を一部脱いでいた。
まぁ、鎧を着こんでいたら中が熱くなるのが目に見えているので、特に問題はないはず…‥‥なのだが、防御力が落ちることを恐れているのか、中には真面目に全身をキチンと鎧で固めている者もいたのであった。
そんな中で、平然と真紅の鎧をキチンと着ているルーレア皇妃は流石と言うべきなのであろうか?
何にせよ、今日も平穏そうに過ごせそうだと思っていた中で…‥‥その平穏は割とあっさりと敗れた。
ズッガァァァァァン!!
「!?」
突然響く轟音に、レリアはその音がした方向を確認し、念のために魔導書を顕現させ、その現場へ向かった。
「敵襲かあぁぁぁぁぁ!?」
「いや、違うぞ!!一応敵ではない!!」
「一応ってどういうことだ!?」
「あの方だ!!あの方が・・・・・!!」
なにやら慌しい伝令が下る中、その音がしたところにレリアが駆けつけて見れば…‥‥
「おーっほっほっほっほっほっほ!!久しぶりですわね、王城の皆様!!」
そこにいたのは、高笑いをしつつも、まだ幼い子を抱えた女性。
けれども、確かに敵ではなく…‥‥いや、ある意味質が悪いというか、何と言うか…‥‥
「な、何をしているのですかハルート姉上!!」
「あら、久しぶりね、我が妹レリアよ!!」
レリアの姿を見て、駆け寄ってきたその女性……元モーガス帝国の第1王女にして、ある国に嫁いだレリアの姉、ハルートはそのまま勢いに乗って抱きしめてきた。
「何をって決まっているじゃない!!ちょっとばかり実家に帰って来ただけですわよ!ついでに私が生んだ息子の自慢もあるのですわ!」
「じ、実家にって…‥‥姉上の夫は?」
レリアの姉、ハルートはこれでも既婚者。
他国へ嫁ぎ、今もなおラブラブな生活を送っていると手紙で呼んだことがあったのだが……
「ああ、それはね、今回の私の実家へ帰ることに関係があるのですわ。それでちょっと、お父様の方へ話しを通さなければいけないので……」
どうやら意外にも、なにやら深刻そうな話があるらしい。
城門をぶち破って、少々被害を出した姉とは言え、とりあずはその言うとおりに二人は皇帝の下へ向かうのであった。
なお、城門をぶち破った理由としては、開門まで待てなかったからである。
「…‥‥なるほど。久し振りに帰って来たと思ったら、戦争が始まっていたのか」
「ええ、そうなのよねお父様もとい皇帝陛下。今、わたくしの嫁ぎ先であるメルディ王国にちょっと戦争を吹っ掛けてきた方々がいるのですわ」
かくかくしかじかと皇帝……彼女達の父に事情を話すハルート。
いわく、彼女の嫁ぎ先であるメルディ王国に宣戦布告をしてきた者たちがいて、その対応に追われているらしい。
だがしかし、なぜメルディが帝国へ帰還させられたかと言うと……
「わたくしが戦場へ出ると、国の子供たちの情操教育によくないらしくて、一応安全のために、この機会に故郷である帝国に帰って来たのですわ」
はぁっと溜息を吐きながらも、ハルートは抱えている息子をあやしながらそう話したのであった。
……実は彼女、この親にしてこの子ありと言うように、ルーレア皇妃の娘と言うべきか、非常に強い。
まぁ、流石にレリアとは異なり、魔導書を得ることができなかったのだが、それでも彼女にはある才能があった。
それが、体術関係……いや、正しく言えば人間武器の扱いである。
戦場にて、敵をつかみ、敵そのものを武器と化して狂戦士のごとく暴れまくるということであった。
その様子は、敵を使って敵を殴り倒し、血が飛びちり、しかもどうやってかその掴んだ敵で切断・爆発・締め上げなどを行い、ほぼお見せできない状態にしてしまうのである。
付いた名としては、人の身でありながら、悪魔以上の所業をやらかす……『ヒューマンデーモン』とされ、その名を聞くだけで知っている者は自分が武器にされないか冷や汗を流し、一部にはむしろ自身を扱ってほしいと懇願する者もいるのである。
そして、彼女が戦場に出れば、敵も味方もその様子でドン引きし、戦闘どころではないお見せできない状態と化すので、彼女の夫は戦場に出さないためにも、帝国への帰省を勧めたのであった。
なお、この件に関して、ハルートの夫であるメルディ王国の国王は、その英断から支持率が上がっていた。
……流石に敵に同情の念を抱きたくないので、いないほうがまだよかったのだ。
いや、一応ハルートが嫌われているわけではないが、単に戦場に来て欲しくないだけなのである。
そんなわけで、ハルートが戦場へ出陣するようなことが無いように、メルディ王国が必死に頑張っている間に、彼女は帝国へ帰省に来たのであった。
「あらあら、ちょっともったいないわねぇ・・・・ねぇ、貴方、私が可愛い娘の国を守るために、向かったらだめかしらね?」
「お母様、それはズルイですわ!!わたくしだって、戦場に出たかったのよ!!」
「姉上、母上……戦場はそうホイホイと出るものではありませんよ」
ルーレア皇妃とハルートの会話に、レリアは呆れたように言う。
「その通りだ。確かにメルディ王国とは友好関係にあるゆえに、戦場に救援を向かわしたいところであるが、今はまだ、お前たちが出るほどでもない」
威厳ある声で、皇帝はそう皆に話し、とりあえず皇妃たちはおとなしく城に籠ることにしたのであった。
(正直なところ、勝手に出向かれて敵国が完全に潰されると、賠償金などで問題がなぁ・・・・・)
内心、そう思っていた皇帝。
その判断は間違いではなく、後にメルディ王国の国王から、感謝の手紙が届くのであった……
「ふぅ、こんなものかな?」
ある程度荷づくりが出来たところで、レリアは一旦休憩し、一息を突くために窓辺に腰かけ、窓の外を見た。
夏になったということで、多少日光がギラギラと照り付けてはいるものの、王城内はマジックアイテムなどが施されているので涼しいものである。
とは言え、さすがに全部は補いきれず、訓練場の方へ目を向けていれば、今日もルーレア皇妃に打ち上げられて宙を舞う兵士たちは厚さを逃れるために、鎧を一部脱いでいた。
まぁ、鎧を着こんでいたら中が熱くなるのが目に見えているので、特に問題はないはず…‥‥なのだが、防御力が落ちることを恐れているのか、中には真面目に全身をキチンと鎧で固めている者もいたのであった。
そんな中で、平然と真紅の鎧をキチンと着ているルーレア皇妃は流石と言うべきなのであろうか?
何にせよ、今日も平穏そうに過ごせそうだと思っていた中で…‥‥その平穏は割とあっさりと敗れた。
ズッガァァァァァン!!
「!?」
突然響く轟音に、レリアはその音がした方向を確認し、念のために魔導書を顕現させ、その現場へ向かった。
「敵襲かあぁぁぁぁぁ!?」
「いや、違うぞ!!一応敵ではない!!」
「一応ってどういうことだ!?」
「あの方だ!!あの方が・・・・・!!」
なにやら慌しい伝令が下る中、その音がしたところにレリアが駆けつけて見れば…‥‥
「おーっほっほっほっほっほっほ!!久しぶりですわね、王城の皆様!!」
そこにいたのは、高笑いをしつつも、まだ幼い子を抱えた女性。
けれども、確かに敵ではなく…‥‥いや、ある意味質が悪いというか、何と言うか…‥‥
「な、何をしているのですかハルート姉上!!」
「あら、久しぶりね、我が妹レリアよ!!」
レリアの姿を見て、駆け寄ってきたその女性……元モーガス帝国の第1王女にして、ある国に嫁いだレリアの姉、ハルートはそのまま勢いに乗って抱きしめてきた。
「何をって決まっているじゃない!!ちょっとばかり実家に帰って来ただけですわよ!ついでに私が生んだ息子の自慢もあるのですわ!」
「じ、実家にって…‥‥姉上の夫は?」
レリアの姉、ハルートはこれでも既婚者。
他国へ嫁ぎ、今もなおラブラブな生活を送っていると手紙で呼んだことがあったのだが……
「ああ、それはね、今回の私の実家へ帰ることに関係があるのですわ。それでちょっと、お父様の方へ話しを通さなければいけないので……」
どうやら意外にも、なにやら深刻そうな話があるらしい。
城門をぶち破って、少々被害を出した姉とは言え、とりあずはその言うとおりに二人は皇帝の下へ向かうのであった。
なお、城門をぶち破った理由としては、開門まで待てなかったからである。
「…‥‥なるほど。久し振りに帰って来たと思ったら、戦争が始まっていたのか」
「ええ、そうなのよねお父様もとい皇帝陛下。今、わたくしの嫁ぎ先であるメルディ王国にちょっと戦争を吹っ掛けてきた方々がいるのですわ」
かくかくしかじかと皇帝……彼女達の父に事情を話すハルート。
いわく、彼女の嫁ぎ先であるメルディ王国に宣戦布告をしてきた者たちがいて、その対応に追われているらしい。
だがしかし、なぜメルディが帝国へ帰還させられたかと言うと……
「わたくしが戦場へ出ると、国の子供たちの情操教育によくないらしくて、一応安全のために、この機会に故郷である帝国に帰って来たのですわ」
はぁっと溜息を吐きながらも、ハルートは抱えている息子をあやしながらそう話したのであった。
……実は彼女、この親にしてこの子ありと言うように、ルーレア皇妃の娘と言うべきか、非常に強い。
まぁ、流石にレリアとは異なり、魔導書を得ることができなかったのだが、それでも彼女にはある才能があった。
それが、体術関係……いや、正しく言えば人間武器の扱いである。
戦場にて、敵をつかみ、敵そのものを武器と化して狂戦士のごとく暴れまくるということであった。
その様子は、敵を使って敵を殴り倒し、血が飛びちり、しかもどうやってかその掴んだ敵で切断・爆発・締め上げなどを行い、ほぼお見せできない状態にしてしまうのである。
付いた名としては、人の身でありながら、悪魔以上の所業をやらかす……『ヒューマンデーモン』とされ、その名を聞くだけで知っている者は自分が武器にされないか冷や汗を流し、一部にはむしろ自身を扱ってほしいと懇願する者もいるのである。
そして、彼女が戦場に出れば、敵も味方もその様子でドン引きし、戦闘どころではないお見せできない状態と化すので、彼女の夫は戦場に出さないためにも、帝国への帰省を勧めたのであった。
なお、この件に関して、ハルートの夫であるメルディ王国の国王は、その英断から支持率が上がっていた。
……流石に敵に同情の念を抱きたくないので、いないほうがまだよかったのだ。
いや、一応ハルートが嫌われているわけではないが、単に戦場に来て欲しくないだけなのである。
そんなわけで、ハルートが戦場へ出陣するようなことが無いように、メルディ王国が必死に頑張っている間に、彼女は帝国へ帰省に来たのであった。
「あらあら、ちょっともったいないわねぇ・・・・ねぇ、貴方、私が可愛い娘の国を守るために、向かったらだめかしらね?」
「お母様、それはズルイですわ!!わたくしだって、戦場に出たかったのよ!!」
「姉上、母上……戦場はそうホイホイと出るものではありませんよ」
ルーレア皇妃とハルートの会話に、レリアは呆れたように言う。
「その通りだ。確かにメルディ王国とは友好関係にあるゆえに、戦場に救援を向かわしたいところであるが、今はまだ、お前たちが出るほどでもない」
威厳ある声で、皇帝はそう皆に話し、とりあえず皇妃たちはおとなしく城に籠ることにしたのであった。
(正直なところ、勝手に出向かれて敵国が完全に潰されると、賠償金などで問題がなぁ・・・・・)
内心、そう思っていた皇帝。
その判断は間違いではなく、後にメルディ王国の国王から、感謝の手紙が届くのであった……
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