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組織との決着で章

226話

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「温泉に呼ぶメンバーをさ、親しい人たちで呼ぶのはわかった」
「うん」
「俺っちもそのメンバーに入れてくれて、正直ありがたいと思う。この間、失恋記録を塗り替えたしな…‥」
「う、うん。…‥‥大丈夫かそれ?」
「ああ、これが傷心旅行にもなるなぁということで感謝するから問題はない……が、一つ言いたい」
「というと?」

「何で男女比率が偏りまくっているんだぁぁぁぁぁ!!しかもほぼお前の女だし、ちょっと空気的に辛いんだが!!」
「いやまぁ、俺、男友達少ないしな…‥」
「あ、なんかごめん……」


 スアーンのツッコミが入ったが、ルースの少し悲しい事実に触れ、スアーンは謝った。

 釈然としていないだろうけれども、ルースの友人関係は少々物寂しかったりする。



 とにもかくにも現在、彼らはエルバディア温泉と呼ばれる所へ向けて移動していた。

 グレイモ王国内で定められている祝日も重なり、そこそこの連休となったのでかなりいい機会だっただろう。

 なお、温泉旅行への費用としては、ルースが全額負担していた。

 一応、卒業後に公爵の位を貰えるとはいえ、まだ一介の学生にすぎないルースだったが…‥‥実は金銭面では稼いでいるのだ。

 と言っても、アルバイト等ではなく、特許費用で多く貯まり過ぎていたから、その消費のためにという事であったが。

 見ない間にたまりにたまっていたせいで、銀行関係の人達から、消費しないとはちきれるからさっさとどうにかしろという目を向けられまくったが…‥‥‥

「‥‥‥暫く見ない間に、まさか特許であそこまで稼いでいたとはなぁ…‥‥最近物量とかも活発だなと思っていたけれど、そう言えばその関係の特許を持っていたことを忘れていたなぁ」
「まぁまぁ、最近だと私もちょっと悪ノリして、やったのもあるから気にしないの!」

 遠い目をしてつぶやくルースに対して、今回同行するアルミアが慰めるように言った。


 アルミアは一応、現段階ではまだ王女だが、ルースと婚姻を結んだ時に王籍を外し、降嫁してくるのは決まっている。

 その姉のルルリアともルースは色々あったが末に婚約をしており、彼女達と交流をしていたのだ。


 その中で、実はルースと同じ転生者であったアルミアと、前世について話し合い、乗っていたうちに少々悪ノリをその場の雰囲気でしてしまい‥‥‥‥新たにいくつかの特許を生み出してしまい、今回の温泉費用に掛かる出費を上回る稼ぎができてしまってもいた。

 まぁ、あった方が便利なものばかりであるが…‥‥まだほかにもアイディアがあるけれども、予想以上の儲けにルースはビビり、封印決定しているものもあるのだった。

……ってあれ?冷静に考えてみれば、そのアルミアとのノリで作ったのも元凶だよね?



 それはともかくとして、現在、先日エルモア先生に相談し決めた場所、エルバディア温泉へ向かっていた。

 向かう方法は毎度おなじみのタキとヴィーラに乗ってであったが、ついでにエルゼとレリアがシーサーペントと火竜を召喚したので、人数オーバーにはならなかった。

 行くメンバーは、ルース、スアーン、エルゼ、レリア、バト、ルルリア、アルミア、ミュル、バルション、リディア、タキ、ヴィーラである。ついでにペット枠でマロもいる。

 エルゼとレリア、バトはいつも通り、バルションとミュルは一応学園の職務があるので仕事を速攻で処理し、リディアはきちんと家の方で話をしていき、ルルリアとアルミアはシスコン王子たちには気が付かれないように来たのである。なんでも、いつの間にか盗撮される可能性があるのだとか…‥


 なお、タキとヴィーラは移動のために来たのだが、今回の温泉発案者のエルモア先生は、あちらは用事があるのだとか言ってこれなかったらしい。



 まぁ、なんにせよ温泉旅行なので皆楽しみである。

 一応、一国の王女だとか、公爵令嬢だとか多いが‥‥‥‥護衛とかはいない。

 というか、襲ってくる者はまずいないはずであろう。



「皆タキたちの背中に乗っているんだけど、こんな集団を襲おうと考える人っているのかなぁ」
「普通はないと思うぞ。国滅ぼしのモンスターがいるし、いざとなれば全員戦闘可能だよな?」

 ルースのつぶやきに対して、スアーンが答えた。

…‥‥全員と言うが、一応リディアだけは、この中で唯一の常識人侯爵令嬢なので戦闘できないけどね。

 それ以外は戦闘可能な事に関しては否定しないが…‥‥‥オーバーキルになるよな。



 何にせよ、温泉へ向けてタキたちの背に乗ってルースたちは旅路を楽しむ。
 
 速度からして、昼頃にはつくし、タキたちの背中の上に載っているとはいえ、移り変わる景色を眺めるのも面白い。

 のんびりとしつつ、久しぶりのまともな休日になっていることに、ルースは安心感を覚えるのであった‥‥‥


…‥‥が、これが嵐の前の静けさであることに気が付くまで、そう長くはかからなかったのだった。
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