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組織との決着で章

220話

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「へぇい!そこの彼女!!俺様たちとちょーっと遊びに行かないかぁい?」
【断るのじゃよ。今はそんなことをする暇もないしのぅ】

「ああ、運命の人だ!!銅貨結婚を前提したお付き合いを!!」
【既に予約済みじゃから去るのじゃ】

「うっひょぅ!!ねぇねぇそこのねーちゃん!!あんたならこの店の看板娘にふさわしいぜー!」
【娘という年でもないんじゃがな。お断りじゃ】

「その切れ目、冷たいいでたち!!どうかわたしめの、いやこの卑しい犬であるこの体を盛大にいたぶってください!!」
【その手の店へ行くのじゃ】



…‥‥道行く人たちに声をかけられながら、タキは冷たくあしらう。
 
 現在、ルースたちはバハーム王国内に入り、歪みとやらがあるらしい場所を目指し、とりあえず国内に入って目立たないようにということで、タキが人の姿を取ったのだが‥‥‥‥慣れというもので忘れていた。

 普段、狐の姿でいたり、エルゼ達と共に居たりして忘れていたが、タキの人型の容姿ってかなりの美女でもあるんだった。

 考えてみれば、都市メルドランだとエルゼやレリア、バトにヴィーラといった面子もいるし、あの都市の人達であれば目が肥えていたのかもしれないが…‥‥そんなに目が肥えていない、つい最近までは荒れていたらしいバハーム王国内だと、タキの容姿は相当目立つのであろう。

 わからなくもないが、それにしては声をかける人が多いような…‥‥そう言えば、この国の先代国王はかなりの女好きだったという話があるのだが、まさか国民全体がそうなのではなかろうか。




 とにもかくにも、道行くたびにこれでは色々と面倒である。

「タキ、うっとおしいなら一旦送還して帰るか?召喚すれば呼び出せるし…‥‥」
【いや、別に良いのじゃよ。こういう類の輩たちはあしらえば済む話じゃし、襲ってきたら正当防衛という名の下で社会的に抹殺できるしのぅ。…‥‥それに召喚主殿、お主との二人きりの珍しい道中じゃし、楽しみたいのじゃ】

 タキに提案したルースであったが、当の本人はさほど気にしていないらしい。

【ま、昔飼ってくれた遊女たちを見ておるし、どこをどうすればしつこい馬鹿をごりっと潰せるのか知っておるしのぅ】
「ごりっと潰すって何を?」

 さらっと放たれた恐怖の予感しか感じさせない言葉を聞き、自然とルースは後ずさるのであった。







 とにもかくにも、今目指すのは歪みとやらの場所。

 魔導書グリモワールからは大雑把な事しか言われていないので探すのは大変かもしれないと思ったが、幸いなことにタキはその歪みとやらの気配ならば分かるらしい。

【とはいえ、我も大雑把にしかわからぬからのぅ…‥‥しかし、妙じゃな】

 首を傾げつつ、神妙な顔つきでタキはそうつぶやいた。

「妙って何が?」
【いや、歪みとやらの気配は分かることは分かるのじゃが…‥‥】


 ちらっと周囲を見渡し、タキは何かを確認する。


【…‥‥召喚主殿、気が付いたかぅ?】

 その顔は真剣そのものであり、ふざけた様子もない。

 そのタキの様子を見て、ルースは改めて自然な振りをして周囲を見渡し…‥‥タキの言おうとしていることに気が付いた。


 ここに来てから道行く人たちを見ているのだが、その顔触れがどうもおかしい。

 皆は普通にあちこちへ行っているように見えるのだが、中には同じ道を何度も往復している人などもおり、皆見たようなものばかりなのだ。


「…‥‥付けられているとかじゃなさそうだな。皆『同じ場所を』往復している」
【その通りじゃ。我らはここに来たばかりじゃから特に何も影響を受けていなさそうじゃが、この国におるやつら、皆その歪みとやらの影響を受けているのかもしれぬ。それも、気が付かぬうちにな‥‥‥】

 周囲を見渡せば、確かに人はあちこち歩いて通り過ぎていく。

 だが、また歩いていくと同じような人とすれ違い、同じような行為を繰り返している。

 別人という訳でもないし、全員がグルという訳でもなく、その自然な行動に疑問を抱いていない。



…‥‥どうやら、この国全体で人の行動が、全て同じ事の繰り返しが起きているようであった。

「…‥‥これってさ、下手すると俺たちも同じことの繰り返しに巻き込まれるような気がするのだが」
【可能性はあるのぅ】

 そうなると絶対に不味い事態となる。

 まるで時を繰り返す監獄のような状態になっているこの場の一部になってしまったら…‥‥逃れられない可能性が大きい。

 日帰りで解決しようと思っていたのだが、どうやら相当面倒なことに巻き込まれてしまったのだと、ルースたちは気が付くのであった‥‥‥‥。
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