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組織との決着で章

212話

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「…‥‥はい、ここはこの領地なので、差し引いて80点ですわね」
「うわぁ‥‥‥完璧だと思ったのに、間違いだったか‥‥‥」

 グリモワール学園の一室にて、ルースは本日、ある補習を受けていた。

 卒業後に公爵としての位を持つのだが、ルース自身は元々平民。

 ゆえに、貴族としての教育を、卒業まではもう勉強量も少ないので今年度一杯をかけて詰め込まれることになり、その為の教育を放課後に受講することになったのである。

 とはいえ、一応バルション学園長との魔導書グリモワールでの戦闘訓練などもあるので、補習を受ける日はさほど多くはなかった。



「にしても、あの時の貴方が、まさか公爵家の位になるとは思いもしませんでしたわね」
「まぁ、あれから結構経ったとはいえ、当時は俺も思っていなかったからなぁ‥‥‥」


 目の前にいる補習担当として、臨時的に貴族教育をしてくれる少女のつぶやきに対して、ルースはそう返答した。

「というか、この教えてもらっている貴族の領地とか、関係が年ごとに代わっているのは覚えるにあたってかなり辛いんだけど」
「それは仕方がない事ですわよ。毎年何かしらの事をやらかしてしまう者もいますし、フェイカー関連で繋がりが発覚した者もいて、潰したり蟄居させて譲らせたりして、多く変わってしまったのですわ」

 ルースの言葉に対して、少女は…‥‥エーズデバランド侯爵家の令嬢、リディア=バルモ=エーズデバランドはそう答えるのであった。


 リディア令嬢は、以前ある貴族の婚約者でもあり、その婚約騒動に巻き込まれてその相手とルースが決闘をする羽目になったという騒動にて関わりがあった。

 そして今回、この貴族教育を施してもらうためにも、こういった物事に関しては明らかに常識人であったがゆえに頼みこみ、この補習の講師をしてもらっているのである。


 侯爵家の令嬢を教師のように扱っていいのかという疑問がでそうだが、彼女は前のその騒動にて関係を持っていたので特に不都合もなかったし‥‥‥‥


「…‥‥一応、常識人枠として放り込まれたけれども、お父様が公爵となる者とのつながりを持てるのであればと盛大に喜んで送り出してくださったのですわ」
「まぁ、一応まだ年若き少女と公爵家となる男とのこういう繋がりは絶対にいろいろ言われるのは目に見えているしね…‥‥いっその事、婚約してしまうのが早かったけれど、良かったのか?」
「大丈夫ですわ。政略的なものを持つ面では、王女様方……いえ、もう降格されるのでどういえば良いのかわかりませんがあの方たちとも同じですしね」

 そう言いながらも、特徴的な金髪ドリルの先が少しほつれていたの気が付き、整えながらリディアはそう言ったのであった。


…‥‥正直言って、エルゼ達の後に新たに婚約者が追加されるとはルースは思っていなかった。

 一応、以前出会った時もきちんと貴族らしさもあったし、教師としては最適かもしれないと思っていたとはいえ…‥‥ほぼ政略的な形で婚約となってしまったのである。


 まぁ、エルゼ達とか色々受けているだけに今さらという感じもあったが、リディアはある重要な麺でも必要だった。


「一番、常識人という感覚があるから物凄く助かるんだよなぁ‥‥‥‥」


 ルルリアとアルミアは王女ゆえに王族としてきちんと教養を受けていたが、ルーレア皇妃から教わったらしい武術を活かして裏路地で悪漢共を叩きのめすような行為をしていたし、

 レリアもモーガス帝国の王女とは言え、戦姫という名が付けられるほど研鑽して、戦う方が好きだったり、

 エルゼは公爵家の3女だから一番貴族らしいと思いきや、昔から村によく遊びに来たり、ストーカー行為をしたりして貴族の令嬢として怪しいところがあったり、


 バト、タキ、ヴィーラ、ミュルに関しては、あちらはそもそも貴族でもない。


 バルション学園長は、グリモワール学園の学園長という立場故に中々高い地位を確立しているそうなのだが、貴族というくくりには入らないそうなので、リディアという貴族として最も常識人な人がいる方が、ルースにとってはありがたかったのである。

 というか、一応貴族でもある人たちが個性的過ぎたというのもある。



 ゆえに、貴族の中でもそこそこな侯爵家という地位の令嬢であり、以前もあっているので面識もあり、元婚約者をふっ飛ばしたという事もあるので、婚約そのものにはルースは反対ではなかったのであった。

 なお、そのリディアの元婚約者であるソークジだが、最近情報が入って来た。

 
 フェイカーとの関与を徹底的に調べ上げられ、その過程で色々な犯罪行為が出てきて、貴族としての地位も奪われたソークジは現在、あの取りまきたちと共に犯罪者として働く鉱山に…‥‥という訳ではないらしい。

 なんでも当初は鉱山送りにされ、強制労働をしていたらしく、ある日屑みたいな無駄なプライドを爆発させて、反乱を起こしたそうである。

 そして、結局は兵士たちが動員されて、反乱そのものは収束したのだが、ソークジだけは取りまきたちを置いて逃亡したそうなのだ。



…‥‥その後、どこをどう向かったのかはわかっていない。

 ただ先日、末路が判明した。


 来年には卒業を控え、公爵家との地位を貰うのだが、結婚式などに関しては反魔導書グリモワール組織フェイカーを潰してからだとルースは考えている。

 ゆえに、全力で潰すためにありとあらゆる情報を得て徹底的にフェイカーに関してのことを逃さないようにしていたのだが‥‥‥‥


 ある日、山奥にフェイカーの保有する研究所らしきものを発見し、制圧に乗り出した。

 そして、無事に中にいた研究員たちなどを捕えることはできたのだが、そこに一体の怪物がいた。

 それを創り出すために、どうやら人間が素材として扱われるという人道的にも許されないことが判明したのだが‥‥‥その材料が、どうもソークジだったようなのだ。

 というか、顔があってそれが本人そのものであった。


 さまよっていたらフェイカーに捕獲され、いなくなっても大丈夫な奴だと判断されたらしい。

 記録と捕えた研究員たちによれば超絶筋肉ダルマとか言う訳の分からない怪物になるはずだったそうだが、思った以上に素材としたソークジがダメダメすぎて、使えない、ただひたすら精神的にいやになるようなうなり声をあげる怪物になってしまったそうだ。


 一応、失敗作とはいえ、せっかく作りだしたのだし何とかしようと研究員たちは頑張って利用方法を考えたり、改良を施したりしてみたが、ことごとく失敗。

 しかも、処分しようにも生命力だけは異常に高く、様々な処分方法が試されたが全部生き延びたそうだ。

 その強靭な生命力を解き明かそうとしたが、流石にフェイカーといってもその技術では解析できない反中にあったそうで、断念。

 結果、放置されていたようなのであった。



…‥‥まぁ、いかに元がキングオブ屑だとしても、このまま放置という訳にもいかなかったので、ルースは自ら手を下した。

 フェイカ―の怪物を消滅させることができる、あの力で消し飛ばしたのである。

 その時に、あのソークジの顔は安らかになっていたが…‥‥昇天したのだろうか。




 とにもかくにも、そんなことがあったけれども、もうどうでもよかった。

 今はとりあえず‥‥‥‥

「さてさて、次は各貴族名鑑1000人暗記を始めるのですわ」
「人数多くないかな?」

 貴族教育をしっかりと受けなければいけないのであった。

 リディア、常識人だったけれども教育方針がスパルタだったよ‥‥‥‥
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