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貴族問題で章

閑話 迫りくるその時

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「さてと‥‥‥‥いよいよか」

 もう間もなく春が訪れようとしている晩、誰も知らないような場所に集まっている者たちがいた。

「組織内の不安分子、整理完了したぜぇ。これでようやく、春から活動再開…‥‥いや、むしろ一気に推し進めることが可能になったはずだぜ」
「ふむ、ようやく終わったか‥‥‥‥思った以上に長引いたな」
「まぁ、予定内ではないか?」

 彼らは反魔導書グリモワール組織フェイカーの幹部たち。

 冬の間、組織内の相当を行っていたために、一時的に活動を休止して掃除していたのである。

 ついでに、その掃除は粛清の意味も込められており、幾人かの組織内の人物が材料として扱われもしたが…‥‥許容範囲内。



 そしてようやく掃除をし終え、ついに活動再開となったのである。


「情報によれば、組織が動いていない間にずいぶんと色々あったようだ」
「ああ、そう言えば都市メルドランで、我が組織において最大の障害となりうる人物が決闘に巻き込まれたらしいぞ」
「その情報は既に入手済みだ。なんでもこの国の王女を賭けた感じだったらしいな」
「…‥‥色々と巻き込まれているようだし、我々が手を下さずともどこかでやられそうな気もするがな」


 とにもかくにも、フェイカーがようやく活動再開できるという事は、再びグレイモ王国へ牙をむく用意ができたという事である。

 いや、牙をむくどころか‥‥‥決戦準備すら整い、何時でも国を滅ぼすことが可能であった。


「だが、それでも準備は不十分かもしれぬな‥‥‥」
「ああ、今まで何度もこの組織と対立し、退けた人物がいるからな」

 幹部たちの同じ認識としてあるのは、ルースの存在。

 完全に敵対している存在として認識し、これまで何度も戦闘を繰り広げてきたことがあったが…‥‥どれもこれもルースの勝利ばかりなのである。

 
 ゆえに、このまま攻めたとしても‥‥‥‥どこかでルースと戦闘となり、組織側の敗北となる可能性が見えていた。

「引き入れたいところだが、生憎不可能のようだ」
「公爵の位を卒業時にもらうことが決定したし、妾と称して暗殺者を送り込むのではだめか?」
「その方法はおそらく無理であろう。奴の周囲の女性関係を調べて見たが…‥‥なんだこれは」

 溜息を吐きつつ、収集できた情報を開示し、その場に居た全員はそれを見て驚きつつ、溜息を吐いた。


「国滅ぼしのモンスター2体、魔導書グリモワール持ち3名、うち一名がこの国の魔導書グリモワール持ちの中で最強クラスのバルション学園長か‥‥‥」
「他の魔導書グリモワール持ちもどうやら召喚魔法でモンスターを呼べるようだが、こちらもすごいクラスの奴らのようだなぁ」
「他にもいろいろあるようだけど…‥‥一つ思ったことがあるのだが、発言良いか?」
「なんだ?」
「これってさ、この組織の者たちで国を滅ぼすよりもさ、このルースをグレイモ王国と対立させて戦闘させたほうが明らかに効率が良くないか?どう考えても過剰戦力が集中し過ぎだろう」
「「…‥‥そうだよな」」

 その場に居た全員は、その発言に深く同意した。

 フェイカーの総力を使って国を滅ぼすために動くよりも、なんとか誘導してルースを国と達律せざるを得ない状況にしたほうが、はるかに楽ではないかと思えたのである。

 というか、そもそもフェイカーの持つ目的の中で、一番大きいのはグレイモ王国の滅亡でもあるからして…‥‥なにも総力戦を仕掛けずとも、今までのように工作した方が良いような気もしたのであった。




「まぁ、王女が王籍を抜かれ降格して嫁いでくる時点で国との対立をさせるのは難しそうな気もするがな‥‥‥」
「ああ、その通りだよな」

 はぁ、と溜息を吐きつつも、今後の行動指針を彼らは定めていく。

 ルースの対策も考えつつ、やはり避けられない全面戦争というべき状況に備え、いかにして対応していくかを話し合い、そして夜は更けていった。





 もう間もなく迫りくる、全面決戦。

 勝つのは組織か、それとも国か。

 いずれにせよ、平穏に暮らしたいと考えているルースの望みを思いっきり粉砕する形で、事態は動いているのであった…‥‥‥


「いっその事さ、グレイモ国内で思い切り馬鹿をやらかす貴族を探して、そいつらを利用したほうがいいような気がしてきたぞ」
「うーむ…‥‥確かにそうした方が良いかもな」
「都合のいいことに、馬鹿をやってくれそうな人が色々といる様なんだよねぇ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべつつも、時間が過ぎていく。

 果たして、この先どうなるのかは…‥‥‥まだ誰もわからないのである。
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