憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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359 じっくりしっかり作り上げておきまして

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‥‥‥年月は過ぎゆき、出てくるものもある。

 卒業したとしても、それでもどうしても出てくるのは仕方がない。

「だがしかし、こういうのは初めてだから不安なんだが…‥‥何でこういう時に限って、ノインがこの場にいないのか」
「そりゃ、現在出産中じゃからじゃろ」
「しかも滅多に聴かない絶叫付きでですわね」

 ディーの言葉に対して、冷静にツッコミを入れるゼネやカトレア。

 建国し、国の形をしっかりと整え、さぁこれからようやくちょっとは楽ができそうにと思っていたのだが‥‥‥残念ながら、直ぐにはできなかったらしい。

 いや、嬉しい事が起きるのだから残念という訳でもないのだが、それでもツッコミどころが溢れすぎているのはいかがなものなのか。


「そもそもゴーレムが子供を産むこと自体が、驚愕だと思うのじゃけどな」
「数年前にアップデートをしており、可能になっているからデス。これからの時代、メイドゴーレムと言えどもただ製造されるだけではなく、母となる事も可能なようにして対応できる範囲を増やす必要性があったのデス」

 ゼネの言葉に対して答えるのは、ノインの姉妹機にして母でもあり姉でもあるという異世界のメイド、ワゼ。

 今回のこの国で‥‥‥俺たちが建国した『ムーン王国』の最初の公共施設として出来上がった病院に来てもらって手伝ってもらっているが、今は他の姉妹機たちがノインの出産の手伝いをしているようだ。

 なお、国名に関しては散々悩まされたが、間諜と言えば月夜の中動くイメージもあったのでそこからちょっと考え、安直だがノインのデータに合った月を意味する言葉を国名にしたのである。

「しかし、こうやって実際になって見ると、私の方もドキドキしますね‥‥‥‥データは他の姉妹機でも取れていますが、出産というのはメイドゴーレムにとってかなり命がけでもあるのデス」
「そうなのか?」
「ええ、普通の生身の人間でもそうですが、メイドゴーレムの場合内部構造がより複雑化していますからネ。場合によっては完全にばらさないとダメな可能性もあり、未だに試行錯誤しているのデス」

 それを言われると不安しかないが、今は母子ともに無事であることを祈るしかない。

「うう、あの絶叫を聞くと次の番が怖いわね‥‥‥」
「でも、前例がある方が気が楽になると思うのニャ」

 いまだに部屋から聞こえてくるノインの陣痛に対する絶叫に対して、ミウとルナティアも膨らんだお腹を抱えてそう話し合う。

…‥‥まぁ、普段絶対に聞かないようなノインの声だからなぁ。どれだけの痛みなのか想像がつかないだろう。

「というか、痛みを感じる機能とか切ることができないのか?」
「それも無理デス。感覚が無いとうまく出来ないという報告もあって、結局ここは自力でどうにかこらえるしかないのが現状なのデス」


 はぁっと溜息を吐きながらワゼがそう説明している中で、ふと絶叫が途切れた。

 何か問題でも起きたのか‥‥‥っと、不安に思っていた、その時であった。


『‥‥‥おぎゃああああああああ!!』
「「「「「「!!」」」」」」

 聞こえて来たノインのものではない、産まれた声に俺たちは反応する。

 今すぐにでも飛び込んで確認したいがワゼに止められ、きちんと確認された後…‥‥ようやく室内に入ることが許された。


「ノイン、大丈夫だったか!?赤ちゃんは!?」
「‥‥‥ええ、大丈夫です、ご主人様」

 にっこりと微笑みながら、ベッドから身を起こしてそう答えるノイン。

 そしてその彼女の腕の中には、すやすやと眠る赤子がいた。


「…‥‥良かった、無事に生まれたのか」
「ひやひやさせられたでござるなぁ」

 あまりにも酷い絶叫だったがゆえに不味い事態になっていないかと全員思っていたが、母子ともに元気そうな様子に安堵の域を吐く。

 というか、さっきまで産まれて泣いていた赤子だったのに、母親となったノインの腕の中で既に寝ているのも驚かされるだろう。図太いというかなんというか、母親に抱かれると安心するのか。

「というか、この場合赤子って種族とかどうなっているんだ?メイドゴーレムと人間の間なのだが‥‥‥」
「遺伝子検査を行いましたが、ハーフ‥‥‥という訳でもないようデス。きちんとした人間の赤子として生まれていマス。おめでとう、元気な女の子ですネ」

 初の赤子は娘だったようだが、すやすやと眠る様子に癒される。

 結構酷い絶叫の中でも、無事に生まれてきてくれた新しい命。

「あの、ご主人様…‥‥感動なさるのも良いのですが、忘れてないでしょうカ?」
「え?何を?」

 もうこうやって一児の母にもなったんだし、ご主人様と呼ばなくてもいいとは思うのだが、未だにそう呼びながらもノインが口にする。

「‥‥‥この子の、名前を付けて欲しいのデス」
「ああ、そう言えばそうだった」

 生まれてすぐに名前を付けようと思っていたのに、何で忘れていたのやら。

 安心していたせいで、そこが頭から抜け落ちかけるところであった。

「こういう時に召喚獣だったらすぐに頭の中に出るけど、我が子だとそうもいかないし滅茶苦茶悩まされたからね。とは言え、決定しているよ」
「というと、どの様な名前デス?」
「『ニノ』。この子の名前はニノだよ」

 すやすやと眠る赤子を抱かせてもらい、微笑みながらそう俺は口にする。

 この国の第1王女とも言えるかもしれないが、そんな事は関係なく授かった大事な最初の子供。

 これからまだまだ生まれるであろうこの子の兄弟たちにとっていいお姉ちゃんになってくれるように、健やかに成長してくれるように祈りつつ、産まれた娘の温かさを感じ取るのであった‥‥‥‥

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