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349 分かっているはずではあったが、だれも止めようが無かった
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‥‥‥人は言う。前々からあの人はああいう事をするのだから、事前に予想しておけと。
別の日とは言う。分かっているのであれば、むしろやらせないように動いた方が良いと。
様々な意見が出るかもしれないが、人が人を真に理解することができない。
だからこそ人は互に違いを見出しつつ、相手の個性も受け入れたりして動けるのだが…‥‥この現状は、その許容の範囲を超えたと言って良いだろう。
「‥‥‥あの、陛下。今何と」
「ふむ、突然のことで聞えなかったのか?無理もないだろう」
亡者大量出現世界危機騒動も終息し、様々な工作もしていたはずではあったが…‥‥ディーたちは今、目の前の国王が言った言葉の内容に驚愕していた。
本日はその騒動を乗り切りつつ、原因などはうまく隠された形で式典が行われており、それに出席をしていた。
その中で、騒動中にあちこちで市民たちの避難や救護、亡者たちへの勇敢な挑戦などをしていた騎士や衛兵たちに褒美を授けられている場面がありつつ、ディーたちも表彰されていた。
元凶をしっかりと潰しつつ、大群の中を突き進む姿なども目撃され、その働きぶりが評価されたことがあったのだろうが…‥‥それを考慮しても、目の前の国王の口から出てきた内容が釣りあるのかどうかという疑問がある。
「仕方がない、もう一度言うぞ…‥‥ディーよ、余はそろそろ後を息子たちへ継ぎ、退任する予定だ。ゆえに、今後の式典などは息子たちが代表として出るのだが…‥‥余としては、最後に大きな花を咲かせたい。そのためにはどうしたらいいのかと考えた末に…‥‥この場で宣言することにしたのだ」
こほんっと咳ばらいをしつつ、堂々たる振る舞いで目の前の国王は口を開く。
「今回の騒動は、とある一国が引き起こしたものであるという調査は付いており、騒動の最中で潰れてしまったという情報がある。とは言え、そこに国があったという事実は失せきれず‥‥‥かと言って放置し切るわけにもいかないだろう。組織の騒動で各国が協力し合ったとはいえ、やはり国を富ませるためには領土を広げたいと思ったりする者はでるからな」
そう言いながら国王はディーの方へ目を向ける。
「そこでだ、いらぬ争いが起きぬようにと思い、各国と秘密裏に話し合っていたのだが…‥‥その国の跡地を、ディー、お主に任せようと思う。城伯の地位にあり、土地を持たぬ貴族としての自由を持たせてはいたのだが‥‥‥それでもやはり、しっかりとした居城が欲しくなるだろうと思ってな」
「それって、つまり?」
「簡単な話だ。お前をその国の国王として、任命する」
「「「「‥‥‥はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」
あっさりと言ってみせた国王に対して、ようやく何を言われたのか、どの様な事態になっているのか理解していた全員は思わずそう叫んでしまった。
この国王、引退前にとんでもない決定をやりやがったと、皆の心はそう一致しつつ‥‥‥
「いやいやちょっと待ってください、国王陛下!!どこをどう考えれば、一介の貴族にすぎないこの身に対して、『国王として任命する』という決断が出るのですか!?」
「どこをどうと言われても、それが話し合いで決まっただけだ。各国の代表たちも話し合い、納得した事でもあるからな。何も一人で出した決断ではない。勝手に出せばどうなるのかは、十分学んでいるからな!!」
いや、その生み出した結果に関しては、何も学んでいないのでは?
そう皆の心は一つになって思ったのだが、国王の決定を覆すことはできなかったのであった‥‥‥
「‥‥‥お兄ちゃんが、一国の国王に!?国王陛下、本気で頭沸いているの!?」
「あらあら、すごいことねぇ。流石、息子なだけに想定外の事態を引き寄せるわねぇ」
「それさっきあたしの方にも、森林国から知らされてきたけど…‥‥どうしてそうなったのニャ!?」
「こっちも、来たのよね…‥‥ああ、姫という立場が空気だったのに、なんでまた、そんな事になったのよ」
「王位継承争いから抜けたと思ったら、まさかの新しい王家に嫁ぐ身へ‥‥‥どうなっているのよと言いたいけれども、お父様のとんでもなさを止めきれなかったのよね‥‥‥」
‥‥‥とんでもない話に驚きつつ、邸へ俺たちは戻って来た。
そこに集まっていた母さんや妹、ルナティアやアリスも交え、ミウも事情説明のためにやって来てくれたのだが‥‥‥今回出た話に対して、それぞれ驚きようが異なっていた。
とは言え、全員一致して驚くのは、俺がまさかの一国の主にされた件であろう。
つい先日、各国共同の諜報になることが決まったはずだったが…‥‥そこからどこをどうしたら、こうなるのかが本当にわからない。
「でも、無茶な話しという訳ではないのデス。色々と改変し、あちこちでいらない記録なども消しましたが‥‥‥ご主人様が国を持ってもおかしくないのですよネ」
「むしろ、それは先祖が持つべき様な…‥‥いや、でも本当にどうしてこうなった」
流石に諜報のこともあって、精々大金を貰える程度か、はたまたはちょっとだけ爵位上昇とか言う面倒さがあるかと思う程度だったのに…‥‥最後まで、あの国王は油断できなかった。
というか、何をどうしてそんな結論を出せたのか…‥‥本当に理解できない。
「一応、諜報としての仕事はできるらしいけれども、一国の主になっているのは変わらないらしいからね‥‥‥本当になんで、こうなったのか‥‥‥」
遠い目をしてしまうが、全員同情した目を向けるだけ。
いやまぁ、俺の位が向上するならば、他の皆も連帯責任のごとく押し上げられるからね‥‥‥なんかこう、どうしようもないことに対して、諦めるしかないという想いしかない。
世捨て人にでもなって、この俗世間から逃亡してしまおうかと思わず考えたくもなったが、事態は既になぁなぁで済ませられない残酷なことになっているので、現実の厳しさを思いっきり身に沁みさせられるのであった‥‥‥‥
別の日とは言う。分かっているのであれば、むしろやらせないように動いた方が良いと。
様々な意見が出るかもしれないが、人が人を真に理解することができない。
だからこそ人は互に違いを見出しつつ、相手の個性も受け入れたりして動けるのだが…‥‥この現状は、その許容の範囲を超えたと言って良いだろう。
「‥‥‥あの、陛下。今何と」
「ふむ、突然のことで聞えなかったのか?無理もないだろう」
亡者大量出現世界危機騒動も終息し、様々な工作もしていたはずではあったが…‥‥ディーたちは今、目の前の国王が言った言葉の内容に驚愕していた。
本日はその騒動を乗り切りつつ、原因などはうまく隠された形で式典が行われており、それに出席をしていた。
その中で、騒動中にあちこちで市民たちの避難や救護、亡者たちへの勇敢な挑戦などをしていた騎士や衛兵たちに褒美を授けられている場面がありつつ、ディーたちも表彰されていた。
元凶をしっかりと潰しつつ、大群の中を突き進む姿なども目撃され、その働きぶりが評価されたことがあったのだろうが…‥‥それを考慮しても、目の前の国王の口から出てきた内容が釣りあるのかどうかという疑問がある。
「仕方がない、もう一度言うぞ…‥‥ディーよ、余はそろそろ後を息子たちへ継ぎ、退任する予定だ。ゆえに、今後の式典などは息子たちが代表として出るのだが…‥‥余としては、最後に大きな花を咲かせたい。そのためにはどうしたらいいのかと考えた末に…‥‥この場で宣言することにしたのだ」
こほんっと咳ばらいをしつつ、堂々たる振る舞いで目の前の国王は口を開く。
「今回の騒動は、とある一国が引き起こしたものであるという調査は付いており、騒動の最中で潰れてしまったという情報がある。とは言え、そこに国があったという事実は失せきれず‥‥‥かと言って放置し切るわけにもいかないだろう。組織の騒動で各国が協力し合ったとはいえ、やはり国を富ませるためには領土を広げたいと思ったりする者はでるからな」
そう言いながら国王はディーの方へ目を向ける。
「そこでだ、いらぬ争いが起きぬようにと思い、各国と秘密裏に話し合っていたのだが…‥‥その国の跡地を、ディー、お主に任せようと思う。城伯の地位にあり、土地を持たぬ貴族としての自由を持たせてはいたのだが‥‥‥それでもやはり、しっかりとした居城が欲しくなるだろうと思ってな」
「それって、つまり?」
「簡単な話だ。お前をその国の国王として、任命する」
「「「「‥‥‥はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」
あっさりと言ってみせた国王に対して、ようやく何を言われたのか、どの様な事態になっているのか理解していた全員は思わずそう叫んでしまった。
この国王、引退前にとんでもない決定をやりやがったと、皆の心はそう一致しつつ‥‥‥
「いやいやちょっと待ってください、国王陛下!!どこをどう考えれば、一介の貴族にすぎないこの身に対して、『国王として任命する』という決断が出るのですか!?」
「どこをどうと言われても、それが話し合いで決まっただけだ。各国の代表たちも話し合い、納得した事でもあるからな。何も一人で出した決断ではない。勝手に出せばどうなるのかは、十分学んでいるからな!!」
いや、その生み出した結果に関しては、何も学んでいないのでは?
そう皆の心は一つになって思ったのだが、国王の決定を覆すことはできなかったのであった‥‥‥
「‥‥‥お兄ちゃんが、一国の国王に!?国王陛下、本気で頭沸いているの!?」
「あらあら、すごいことねぇ。流石、息子なだけに想定外の事態を引き寄せるわねぇ」
「それさっきあたしの方にも、森林国から知らされてきたけど…‥‥どうしてそうなったのニャ!?」
「こっちも、来たのよね…‥‥ああ、姫という立場が空気だったのに、なんでまた、そんな事になったのよ」
「王位継承争いから抜けたと思ったら、まさかの新しい王家に嫁ぐ身へ‥‥‥どうなっているのよと言いたいけれども、お父様のとんでもなさを止めきれなかったのよね‥‥‥」
‥‥‥とんでもない話に驚きつつ、邸へ俺たちは戻って来た。
そこに集まっていた母さんや妹、ルナティアやアリスも交え、ミウも事情説明のためにやって来てくれたのだが‥‥‥今回出た話に対して、それぞれ驚きようが異なっていた。
とは言え、全員一致して驚くのは、俺がまさかの一国の主にされた件であろう。
つい先日、各国共同の諜報になることが決まったはずだったが…‥‥そこからどこをどうしたら、こうなるのかが本当にわからない。
「でも、無茶な話しという訳ではないのデス。色々と改変し、あちこちでいらない記録なども消しましたが‥‥‥ご主人様が国を持ってもおかしくないのですよネ」
「むしろ、それは先祖が持つべき様な…‥‥いや、でも本当にどうしてこうなった」
流石に諜報のこともあって、精々大金を貰える程度か、はたまたはちょっとだけ爵位上昇とか言う面倒さがあるかと思う程度だったのに…‥‥最後まで、あの国王は油断できなかった。
というか、何をどうしてそんな結論を出せたのか…‥‥本当に理解できない。
「一応、諜報としての仕事はできるらしいけれども、一国の主になっているのは変わらないらしいからね‥‥‥本当になんで、こうなったのか‥‥‥」
遠い目をしてしまうが、全員同情した目を向けるだけ。
いやまぁ、俺の位が向上するならば、他の皆も連帯責任のごとく押し上げられるからね‥‥‥なんかこう、どうしようもないことに対して、諦めるしかないという想いしかない。
世捨て人にでもなって、この俗世間から逃亡してしまおうかと思わず考えたくもなったが、事態は既になぁなぁで済ませられない残酷なことになっているので、現実の厳しさを思いっきり身に沁みさせられるのであった‥‥‥‥
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