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331 説明と言うのは、口頭でも難しいもの
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‥‥‥ヴィステルダム王国の辺境地にある田舎のヌルングルス村。
ディーの故郷でもあり、その実家内にて…‥‥彼の妹であるセラは、情報過多で倒れていた。
「‥‥‥に、兄ちゃん‥‥‥本当に何を、やらかしてー‥」
「あらあら、大変。ベッドでゆっくり寝て、頭の整理をしないといけないわ」
きゅるるぅっと目を回し、倒れていたセラを抱え、母は彼女の部屋へ運び、ベッドに寝かせる。
そしてある程度経ったところで、ようやくセラは気を取り直しつつ、横になりながらディーから届いた手紙を改めて読んだ。
内容によれば、何やら怪しげな組織を潰し、国王から褒賞を貰ったという事。
しかも、卒業後には以前からの夢でもあった諜報としての仕事が確定しているようで、しかも他国から頼られるようなものであるというのは、セラにとっても驚くべきことであり、兄の大きな出世と言えるので喜ばしいのである。
だがしかし、その褒美のついでに出てきたような内容…‥‥国王の娘が嫁に出されてきたという点に驚愕させられる。
「‥‥‥そもそも兄ちゃん、既にノインさんに、カトレア、ルビー…‥‥いや、もっとたくさんいるのに‥‥‥なんでこんなに、嫁が増えるのー!!お兄ちゃん、何股もかけている最低男じゃないけど、それでも受け入れがたいの――――!!」
自分の兄が、多くの嫁を持つことになったという事には、どうツッコめばいいのだろうか?
色々と知っている女性の顔を思い浮かべては、それらがディーの元に集いっている光景を考え、妹と言う立場としては色々と複雑な気持ちを抱く。
兄が立派になるのは良いのだが、義姉と言う方々が増えるのはいかがなものだろうか?
召喚獣たちと言う立場もいるけれども、中には王女とか…‥‥‥どこまで手が伸びるのか、色々と言いたい。
「‥‥‥‥ううっ、これも兄ちゃんをしっかり見ていなかった、自分が悪いのー‥‥?」
「いえいえ、あなたは悪くないし、誰も悪くはないわよ?」
「お母さん‥‥‥」
自分の責任かもしれないという自責の念を抱く中で、セラのところに母が戻って来た。
その手には彼女の大好物の料理が用意されており、どうやら目覚める頃合いを見計らって作っていたらしい。
「そもそも、お父さんのとんでもなさを考えると、あの子がとんでもないことになるのは分かっていたのよねぇ‥‥‥大物になるというか、何と言うか…‥‥ふふふ、こうも盛大にやるのは予想以上だけれどもね」
「お父さんのとんでもなさ?」
「出会いからツッコミ満載なのは、お父さん譲りでしょ?」
…‥‥母のその言葉に、どうなのかと考え、不思議とセラは納得した。
今でこそ、この村に根を下ろしてはいるのだが、かつて母と父は世界を旅していた。
調理人としての腕も磨きつつ、世界各国を巡ってゆく度は波乱万丈であり、なにかと心休まるようなときは少なかったらしい。
と言うのも、今は亡き父は何処かで何時無くなってもおかしくないような騒動ばかりに巻き込まれていたそうで、ある時は大鮫に喰われかけ、またある時は怪鳥に連れ去られ、はたまたあるときは生贄や依り代とかいうものにされかけるなど、何かとあったようなのだ。
珍道中と言うべきか、ほぼ100%父のせいでの騒動だというべきものが多いらしいが‥‥‥だからこそ、そんなとんでもないことに巻き込まれまくった父の血を、ディーが引いていると言われると、納得できる。
「‥‥あの父にして、あの兄ちゃん‥‥‥‥うん、何だろう、物凄く分かるような気がする」
「ええ、そうねぇ。お父さんもかつてはモテモテだったし、ある意味血を引いているわね」
とはいえ、母一人を選んだ父を考えると、ある意味兄よりも立派ではないだろうか?
死因は少々アレだったとはいえ‥‥‥‥誠実と言えばそうなのかもしれない。
でも、兄は兄でしっかりとしているし、不誠実と言う訳でもない。
全員をまんべんなく愛すると言えば、そうするだろうと思えるのだ。
そう考えると、数の多さにどうしたものかと悩んでいた頭も整理され、ようやく落ち着いて受け入れることができたのであった‥‥‥‥
「‥‥‥そもそもお父さん自体、何者だったのかと言うのが気になるのー」
「うーん…‥‥それが謎だったりするのよ。あの人、自分の出生自体はかたくなに明かさなかったし‥‥‥案外、どこかの国から逃げて来た王様だと言われても納得するわ」
「…‥‥それはないかも。そうだったら、私達今頃王女と、お母さんは王妃だもの」
「ふふふ、そうねぇ」
にこやかに笑いあう母と娘。
とは言え、ディーが色々やった現状を間近で見る日は近付いており、心構えをしておいた方がいいだろう。
「でも、それでもいいの。子供は元気なのが、一番なのだから…‥‥ああ、孫ができたら、それはそれで良いのにねぇ」
「それだと、叔母ちゃんになるの…‥‥兄ちゃん、節操はちゃんとしてほしい…‥‥」
「へっくしょい!!‥‥‥うう、なんかくしゃみが出たな」
「ご主人様は風邪ではないようですし、噂ではないでしょうか?」
ディーの故郷でもあり、その実家内にて…‥‥彼の妹であるセラは、情報過多で倒れていた。
「‥‥‥に、兄ちゃん‥‥‥本当に何を、やらかしてー‥」
「あらあら、大変。ベッドでゆっくり寝て、頭の整理をしないといけないわ」
きゅるるぅっと目を回し、倒れていたセラを抱え、母は彼女の部屋へ運び、ベッドに寝かせる。
そしてある程度経ったところで、ようやくセラは気を取り直しつつ、横になりながらディーから届いた手紙を改めて読んだ。
内容によれば、何やら怪しげな組織を潰し、国王から褒賞を貰ったという事。
しかも、卒業後には以前からの夢でもあった諜報としての仕事が確定しているようで、しかも他国から頼られるようなものであるというのは、セラにとっても驚くべきことであり、兄の大きな出世と言えるので喜ばしいのである。
だがしかし、その褒美のついでに出てきたような内容…‥‥国王の娘が嫁に出されてきたという点に驚愕させられる。
「‥‥‥そもそも兄ちゃん、既にノインさんに、カトレア、ルビー…‥‥いや、もっとたくさんいるのに‥‥‥なんでこんなに、嫁が増えるのー!!お兄ちゃん、何股もかけている最低男じゃないけど、それでも受け入れがたいの――――!!」
自分の兄が、多くの嫁を持つことになったという事には、どうツッコめばいいのだろうか?
色々と知っている女性の顔を思い浮かべては、それらがディーの元に集いっている光景を考え、妹と言う立場としては色々と複雑な気持ちを抱く。
兄が立派になるのは良いのだが、義姉と言う方々が増えるのはいかがなものだろうか?
召喚獣たちと言う立場もいるけれども、中には王女とか…‥‥‥どこまで手が伸びるのか、色々と言いたい。
「‥‥‥‥ううっ、これも兄ちゃんをしっかり見ていなかった、自分が悪いのー‥‥?」
「いえいえ、あなたは悪くないし、誰も悪くはないわよ?」
「お母さん‥‥‥」
自分の責任かもしれないという自責の念を抱く中で、セラのところに母が戻って来た。
その手には彼女の大好物の料理が用意されており、どうやら目覚める頃合いを見計らって作っていたらしい。
「そもそも、お父さんのとんでもなさを考えると、あの子がとんでもないことになるのは分かっていたのよねぇ‥‥‥大物になるというか、何と言うか…‥‥ふふふ、こうも盛大にやるのは予想以上だけれどもね」
「お父さんのとんでもなさ?」
「出会いからツッコミ満載なのは、お父さん譲りでしょ?」
…‥‥母のその言葉に、どうなのかと考え、不思議とセラは納得した。
今でこそ、この村に根を下ろしてはいるのだが、かつて母と父は世界を旅していた。
調理人としての腕も磨きつつ、世界各国を巡ってゆく度は波乱万丈であり、なにかと心休まるようなときは少なかったらしい。
と言うのも、今は亡き父は何処かで何時無くなってもおかしくないような騒動ばかりに巻き込まれていたそうで、ある時は大鮫に喰われかけ、またある時は怪鳥に連れ去られ、はたまたあるときは生贄や依り代とかいうものにされかけるなど、何かとあったようなのだ。
珍道中と言うべきか、ほぼ100%父のせいでの騒動だというべきものが多いらしいが‥‥‥だからこそ、そんなとんでもないことに巻き込まれまくった父の血を、ディーが引いていると言われると、納得できる。
「‥‥あの父にして、あの兄ちゃん‥‥‥‥うん、何だろう、物凄く分かるような気がする」
「ええ、そうねぇ。お父さんもかつてはモテモテだったし、ある意味血を引いているわね」
とはいえ、母一人を選んだ父を考えると、ある意味兄よりも立派ではないだろうか?
死因は少々アレだったとはいえ‥‥‥‥誠実と言えばそうなのかもしれない。
でも、兄は兄でしっかりとしているし、不誠実と言う訳でもない。
全員をまんべんなく愛すると言えば、そうするだろうと思えるのだ。
そう考えると、数の多さにどうしたものかと悩んでいた頭も整理され、ようやく落ち着いて受け入れることができたのであった‥‥‥‥
「‥‥‥そもそもお父さん自体、何者だったのかと言うのが気になるのー」
「うーん…‥‥それが謎だったりするのよ。あの人、自分の出生自体はかたくなに明かさなかったし‥‥‥案外、どこかの国から逃げて来た王様だと言われても納得するわ」
「…‥‥それはないかも。そうだったら、私達今頃王女と、お母さんは王妃だもの」
「ふふふ、そうねぇ」
にこやかに笑いあう母と娘。
とは言え、ディーが色々やった現状を間近で見る日は近付いており、心構えをしておいた方がいいだろう。
「でも、それでもいいの。子供は元気なのが、一番なのだから…‥‥ああ、孫ができたら、それはそれで良いのにねぇ」
「それだと、叔母ちゃんになるの…‥‥兄ちゃん、節操はちゃんとしてほしい…‥‥」
「へっくしょい!!‥‥‥うう、なんかくしゃみが出たな」
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