憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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317 剛速球はドストレートで

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「‥‥‥‥うん、まぁ、何かやらかすかなとは思っていたが」
「流石ディー君と言うべきか、それとも彼の召喚獣の親戚が驚異的というか‥‥‥」
「どうしたものかと、思いますわね…‥‥」


 ヴィステルダム王国の王城内にて、第1王子ゼノバース第2王子グラディ第1王女ミウはそれぞれ報告書に記された内容に目を通し終えつつ、深い溜息を吐いていた。

 仮面の組織フェイスマスクのが占有したと思われる塔のダンジョンの調査。

 ディーたちに頼み、やってもらったのは良いのだが…‥‥その際に起きた様々な報告内容に、頭が痛くなりそうなのだ。

 なお、同様に見ていたその他の臣下たちは今回、欠席していたりする。理由としては、そろそろ国王が隠居を考えているらしく、この報告に対する対応の仕方などを判断されるらしいが…‥‥それは表向きであり、裏では絶対に内容の面倒さから逃げたのではないかと、三人の思考は一致していた。

「フェイスマスクの占有に、幹部の確認‥‥‥まぁ、ここまでは良いか」
「コアとの一体化に、怪物の製造および塔内での放牧‥‥‥いや、家畜でもあるまいし、失敗作を彷徨わせていたというのはまだ良いかな。組織に関する報告で、ここまでは想定通り」
「後は、ドラゴンらしきモンスターの魔改造に、急きょ作られたヤヴァイ怪物‥‥‥これもまぁ、許容範囲ですわね」

 色々と無茶苦茶な怪物などについての報告が上がるも、これまでの組織の行動に関して振り返ってみれば、ある程度理解はできる。

 だがしかし、問題はその後のことである。

「栄養どころか土地そのものの生命力が喰われかけたり」
「化け物がコアを取り込んでダンジョンの化け物と化したり」
「挙句の果てには、失われた大地の生命を戻すような召喚獣の召喚‥‥‥ぶっ飛んでいるのは変わりませんよね」

 あはははっと乾いた笑いが出た後、再び重いため息が出てしまう。

 知らないうちに世界の危機が迫っていたとか、それを解決しつつも、後始末をしっかりすぎられているというべきか‥‥‥何をどうしたら、こんな奇天烈な報告が出来上がるのかというツッコミを入れたい。

 ついでに、ノインの製造者らしい人も出てきているようでありつつ、こちらはこちらでツッコミどころがあれども、したら過労死しかねないのが目に見えていた。


「‥‥‥何にしてもだ、何かと頭が痛くなりそうだが、結果としてはいい方向へ転んだことだけは、良しとするか」
「相変わらずというか、ディー君たちって斜め上の想像を行くよね‥‥‥」

 ゼノバースの言葉にグラディがそうつぶやき、ミウも納得するように頷く。

 一応、当初の目的であった調査は行われているし、組織の幹部を消したし、土地そのものが失われかけたところで大丈夫なようにしたというので、むしろ大きな成果と言うべきか。

 ただ、その成果が少々どころかかなりやり過ぎているようにも思えるのだが…‥‥功績としては、非常に高く見ていいだろう。

「まぁ、そのあたりはもう‥‥‥父上に投げるか」
「そうだな、何か更に無茶な事をやりかねんが、まだ我々では判断がし辛い」

 王位継承権争いをしているのだが、まだちょっと経験不足であると彼らは自覚している。

 というか、色々とツッコミどころが多い内容では…‥‥ここはもう、年配者に投げつける方が良いだろう。


 だが、それには一つ、問題があった。

「だけど、これだとお父様が何をしでかすかが不明ですよね‥‥‥」
「それもそうか、功績だけを見れば相当な物であり‥‥‥」
「父上からすれば、ここでこっそり何かしでかす機会にもなるのか」

‥‥‥平民であった彼に、爵位を授けてはいるが、今回の件でさらなる褒美と称してのことをやる可能性がある。

 国のために考えるとはいえ、何かこう、やらかされる予感があり、完全に投げつけるわけにもいかないと理解する。

 けれども、結局は父である国王次第なところもあり…‥‥どうなるのかは、完全に予測は出来ない。

「城伯から爵位をさらに上げるか‥‥‥いや、それ以上だと領地を持つが、彼はそれは望まないか」
「お金に関しては…‥‥いや、そちらも十分に手に入れているし、稼ごうと思えば稼げるね」
「となると、後は人なども…‥‥十分すぎる程、足りてますね」

‥‥‥まぁ、褒美を与えるにしてもそれはそれで色々と手が詰まるので、やりようがなかったりする。

 むしろ、どれだけまともな褒賞が与えやすいのかを考えると‥‥‥‥それはそれで、悩みどころにはなる。

「やはり無難なのは…‥‥金かな。授けるにしてもそれなりにはなるだろうし、どうにかなるとは思いたい」
「だが、問題なのはまた増えた召喚獣などに関してか…‥‥また滅茶苦茶なのを呼ぶなぁ」
「豊穣などって、それこそ領地を経営している貴族が欲しがりそうですものね」

 何にしても、その他にもいろいろな問題が見え隠れしているが、この場で話し合っても解決できるようには見えない。

 どうにかしてそのあたりは、自分達の父の采配次第でやってほしいと彼らは思うのであった‥‥‥‥


「‥‥‥王位継承を目指すにあたり、まだ自分が未熟なのを実感させられるな」
「ディー君たちのおかげで胃が鍛えられているような、苛め抜かれているような…‥‥」
「それはもう、どうしようもないわよね。でも、継がなければいいだけの話も気もしますけれども…‥‥そうなると、どうなるのかしら?」








「‥‥‥王城からの褒美に関しては、3日後あたりか…‥色々と考えるのであれば、無理もないかな」

 王城の方から届いた手紙を読み、ディーたちは今、寮の自室にいた。

 何もかも終えた後は、もう間もなく終わる夏季休暇に備えて、何かとやるべきこともある。

 ゆえに、寮に戻って来たのは良いのだが…‥‥目の前のこの状態も、どうしたものかと頭をひねってしまう。

「‥‥‥なるほどニャ、ディーの新しい召喚獣の‥狐の獣人とかではないのかニャ?」
「そうなのだ。わらわはスルーズ、以後お見知りおきを」
「ふふふ、なんか増えてますわねぇ…‥‥」

 にこやかにしつつ、人型になっているスルーズと握手を交えているルナティアにアリス。

 今回の塔のダンジョンの調査時にはここに残ってもらっていたが…‥‥スルーズの紹介をされつつも、こちらに向ける目は少し厳しいものがある。

 どう考えても詳しい説明を求めているというか、何というか…‥‥王城の方に出した報告とはまた別の、報告をここでしないといけなさそうだが…‥‥さて、どうしたものか。

 襲われて反撃したとはいえ、関係的には増えたので…‥‥うん、うまく説明し切れるかどうかが不安である。

 これはこれで、ある意味フェイスマスクよりも手ごわいのではないかと俺は思うのであった‥‥
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