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296 少し早いけれども
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…‥‥ディーたちの夏季休暇もはまだまだ残ってはいる。
なので、ギリギリまで村に留まって楽しんでいるのもできるのだが、その最中に面倒事は片付けたくもなる。
「だからこそ、このダンジョンに来たけれども‥‥‥一応、正確な位置とかは把握できているのか?」
「難しいですわねぇ、ダンジョン内に草木を生やそうにも、生えない土地がありますわね」
「死霊の類とかもいないようじゃし、ピンポイントは難しいじゃろう」
「ですが、これまでのダンジョンデータから、大体の予測が可能デス」
面倒事‥‥‥以前、挑んで失敗していたダンジョンへのリベンジ。
いや、今回は一応国からの許可を得た消滅作戦なので、リベンジというよりも徹底的に消し飛ばすだけの作業ではある。
とはいえ、情報を集めてもすぐに消滅させるとはいかず、そのための準備を行うには少し広い場所が必要らしいので、ちょうど近くにあった学園へ俺たちは戻って来た。
なお、まだ夏季休暇中という事で生徒たちの姿はあまりおらず、閑散とした雰囲気がある。
流石にこの時期は大半の生徒が自分たちの故郷へ帰還しており、留学生たちも普通は一時帰国しているはずだが…‥‥
「しかし、学園の運動場で大きなものを組み立てているのを見た時には何かなと思ったけれども、ディーたちだったのかニャ‥‥‥」
「どう考えても、とんでもないものを作製していないかしら?」
「まぁ、ノイン考案のダンジョン消滅装置だからな‥‥‥」
何故だか残っていたルナティアとアリスが、俺たちの作業に気が付いたようで、近くに寄って来た。
そう、今全員で集めた情報を元に作っているのは、ダンジョン消滅装置。
全てではなく、あの失敗したダンジョンの身を破壊し尽くして消し飛ばす代物であり、使用後は自己消滅するようになっている。
残しておいても使う機会はそうないだろうし、誰かに解析されて兵器転用されても困るので、使ったらすぐに駄目になるようにしているのだ。
「まぁ、厳密には使用するエネルギーの大きさ的に、反動に耐えきれないだけですけれどネ。一発放てばそれだけで自己崩壊してしまうだけデス」
「どれだけ強力な奴なんだよこれ…‥‥」
「なんというか、休暇中に会えるとは思ってなかったけど、全然変わってない無茶苦茶さニャ」
「あのメイド、本当に大丈夫な人なの?」
ルナティアとアリスが呆れたように口にするが、それはもう慣れた。
彼女の無茶苦茶さというか、技術力のおかしさは、姉妹機に出会った時点でもう予想不可能だと悟ったからね‥‥‥確か、ワゼさんだと大きな要塞をこんなものは使わずに消し飛ばしていたし、元となったほうがどれだけヤヴァイのか十分に身に染みている。
「‥‥‥ディー、なんか遠い目をしているけど大丈夫かニャ?」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっとノインの姉妹機の方がこれ以上におかしいレベルだったから、それと比較すればまだ大丈夫だ」
「あのメイドの姉妹機って…‥‥想像したくないかも」
しないほうがいいだろう。あれはもう、ヒトの想像力を破壊する類なのだから。
知らないほうがいい事も、世の中にはあると教えてくれるのだから。
とにもかくにも、ちょっとノインの姉妹機について思い出しつつも、作業は割とスムーズに進み、半刻ほどであっさりと装置が完成した。
「‥‥‥ふぅ、アップデートデータにあった装置をだいぶ縮小したものですが、これで十分稼働できそうですネ」
「え?だいぶ縮小ってことは、これにまだ元となる物があったのか?」
「ハイ。私の姉さんのデータからもらったものでして、そちらの方がもっと強力なのデス。とは言え、ダンジョンだけではなく何もかも消し飛ばすので、これでも一億分の一ぐらいに抑えたのデス」
「「「…‥‥」」」
ノインのその言葉に、俺やルナティアたちも思考を放棄したくなった。
という彼女達も、今のでノインの姉妹機がどれだけヤヴァイ存在なのか、嫌でも理解できたらしい。
「…‥‥えっと、ディー。心が疲れたなら、相談に乗ってあげるのニャ」
「ええ、そうしたほうがいいわよ。あなた一人で抱え込むのは、本当に大変そうだもの‥‥‥」
「‥‥機会があれば、そうさせてもらうかも」
…‥‥物凄く同情した目を向けられ、その心の優しさにちょっと涙が出そうであった。
俺、心疲れているのかなぁ…‥‥
とにもかくにも、ダンジョン消滅装置が完成した後は、リリスの箱の中に入れて運ぶことにした。
毎回彼女に頼んで思うのだが、あの大きなサイズとかでも普通に収納できるのは結構凄い事のような気がする。
まぁ、そのあたりを突っ込んだところで、どうなっているのか調べてもキリがなさそうなのでツッコミを放棄する。
「さてと、またあのダンジョン前に移動して…‥‥これで完全消滅させれば今日のところはそれで終わりか」
「後にできた大穴は、王子たちの回答で再利用するとありましたからネ。できるだけ周囲に被害を及ばせないように、綺麗にその指定範囲のみを破壊できるようにして置きますカ」
「あれ?この作業を終えたらもう帰っちゃうのかニャ?」
「ああ、まだ休暇でもあるし、村にさっさと戻ろうかと思っているけど…‥‥どうしようかな」
ルナティアの言葉に、ふと俺は考えこんだ。
作業を終えたら村に戻ってのんびりとしたいが、休暇中とはいえせっかく学園まで戻って来たんだ。
こっちの方が店などが合って様々な品もあるし…‥‥いくつかお土産も買って帰ったほうがいいかな?
作業を終えたら疲れているだろうし、一晩ゆっくりと止まってから明日に土産の購入などもできるだろう。
「‥‥‥そうだな、一泊ぐらいは寮にしようかな。宿をとる意味も無いしね」
「それなら寮で待っているのニャ。作業中は危ないから離れておくけど、どういう風になっているのか聞きたいからニャね」
「それじゃ、頑張って破壊してきてねー」
「ああ、やってくるよ」
俺の回答に対して、ルナティとアリスがにこやかに応援の声をくれた。
作業的にはダンジョンを潰すだけのものだし…‥‥疲れとかが特になければ、色々と話して楽しみ合うのもいいかもしれない。
そう思いながら、俺たちはダンジョンを潰すために向かうのであった…‥‥
「‥‥‥しかしな、これで本当に消滅できるのか?」
「可能なはずデス。時間経過ごとに内部構造の変化をするダンジョンでしたが、範囲をまとめて消し飛ばせば損な物も関係ないはずデス」
「普通に考えると恐ろしい物を作り上げているのじゃがなぁ…‥‥なんか可能じゃろうなぁと思ってしまうのはどうなんじゃろうか」
…‥‥ある意味、俺たちはノインの常軌を逸脱した能力に慣れ過ぎたのかもしれない。毒されているというか、もうこれが平常運転というか…‥‥浸食されているような現状がちょっと怖くなった。
「‥‥‥寮に、一夜は過ごすようニャ」
「‥‥‥ええ、言質は取っていたわよ」
ディーたちがダンジョンへ歩みだして去った後、その場でルナティとアリスはこっそり話し合っていた。
「先日の荷物のタイミング、帰還してきた都合、もしかしてこれが想定されていた可能性もあるのニャ」
「しかも今なら、寮にそんなに人はいないし…‥‥やるなら、今しかないのでは?」
「でもそれだったら、ノインさんとかにきちんと話をしたほうがいいかもニャ」
「それもそうね。でも、これが数少ない機会なのは間違いないし…‥‥やってみましょう」
ふふふふっと、互に覚悟を心に決め、笑いあう二人。
そしてそんな二人に対して、実は密かにノインたちもどういうことを考えていたのか理解しており、帰還後に寮の女湯でひっそりと話し合って合意を得る。
何も知らないのは、ディーだけであった‥‥‥‥
「‥‥‥あれ、何だろう。今すっごい寒気がしたような」
「夏風邪ですカ?しかし、ご主人様の体調状態は良好なままデス」
「そうなのか?‥‥‥にしてはこう、なんか言いようのないような悪寒があったというか」
‥‥‥長く騒動にさらされていた分、勘は冴えていただろう。だがしかし、その勘の原因をよく理解できていないのは、鈍感と言うべきか…‥‥
「‥‥‥ええ、ひと夏の思い出にもなるでしょウ」
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も言ってないデス」
なので、ギリギリまで村に留まって楽しんでいるのもできるのだが、その最中に面倒事は片付けたくもなる。
「だからこそ、このダンジョンに来たけれども‥‥‥一応、正確な位置とかは把握できているのか?」
「難しいですわねぇ、ダンジョン内に草木を生やそうにも、生えない土地がありますわね」
「死霊の類とかもいないようじゃし、ピンポイントは難しいじゃろう」
「ですが、これまでのダンジョンデータから、大体の予測が可能デス」
面倒事‥‥‥以前、挑んで失敗していたダンジョンへのリベンジ。
いや、今回は一応国からの許可を得た消滅作戦なので、リベンジというよりも徹底的に消し飛ばすだけの作業ではある。
とはいえ、情報を集めてもすぐに消滅させるとはいかず、そのための準備を行うには少し広い場所が必要らしいので、ちょうど近くにあった学園へ俺たちは戻って来た。
なお、まだ夏季休暇中という事で生徒たちの姿はあまりおらず、閑散とした雰囲気がある。
流石にこの時期は大半の生徒が自分たちの故郷へ帰還しており、留学生たちも普通は一時帰国しているはずだが…‥‥
「しかし、学園の運動場で大きなものを組み立てているのを見た時には何かなと思ったけれども、ディーたちだったのかニャ‥‥‥」
「どう考えても、とんでもないものを作製していないかしら?」
「まぁ、ノイン考案のダンジョン消滅装置だからな‥‥‥」
何故だか残っていたルナティアとアリスが、俺たちの作業に気が付いたようで、近くに寄って来た。
そう、今全員で集めた情報を元に作っているのは、ダンジョン消滅装置。
全てではなく、あの失敗したダンジョンの身を破壊し尽くして消し飛ばす代物であり、使用後は自己消滅するようになっている。
残しておいても使う機会はそうないだろうし、誰かに解析されて兵器転用されても困るので、使ったらすぐに駄目になるようにしているのだ。
「まぁ、厳密には使用するエネルギーの大きさ的に、反動に耐えきれないだけですけれどネ。一発放てばそれだけで自己崩壊してしまうだけデス」
「どれだけ強力な奴なんだよこれ…‥‥」
「なんというか、休暇中に会えるとは思ってなかったけど、全然変わってない無茶苦茶さニャ」
「あのメイド、本当に大丈夫な人なの?」
ルナティアとアリスが呆れたように口にするが、それはもう慣れた。
彼女の無茶苦茶さというか、技術力のおかしさは、姉妹機に出会った時点でもう予想不可能だと悟ったからね‥‥‥確か、ワゼさんだと大きな要塞をこんなものは使わずに消し飛ばしていたし、元となったほうがどれだけヤヴァイのか十分に身に染みている。
「‥‥‥ディー、なんか遠い目をしているけど大丈夫かニャ?」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっとノインの姉妹機の方がこれ以上におかしいレベルだったから、それと比較すればまだ大丈夫だ」
「あのメイドの姉妹機って…‥‥想像したくないかも」
しないほうがいいだろう。あれはもう、ヒトの想像力を破壊する類なのだから。
知らないほうがいい事も、世の中にはあると教えてくれるのだから。
とにもかくにも、ちょっとノインの姉妹機について思い出しつつも、作業は割とスムーズに進み、半刻ほどであっさりと装置が完成した。
「‥‥‥ふぅ、アップデートデータにあった装置をだいぶ縮小したものですが、これで十分稼働できそうですネ」
「え?だいぶ縮小ってことは、これにまだ元となる物があったのか?」
「ハイ。私の姉さんのデータからもらったものでして、そちらの方がもっと強力なのデス。とは言え、ダンジョンだけではなく何もかも消し飛ばすので、これでも一億分の一ぐらいに抑えたのデス」
「「「…‥‥」」」
ノインのその言葉に、俺やルナティアたちも思考を放棄したくなった。
という彼女達も、今のでノインの姉妹機がどれだけヤヴァイ存在なのか、嫌でも理解できたらしい。
「…‥‥えっと、ディー。心が疲れたなら、相談に乗ってあげるのニャ」
「ええ、そうしたほうがいいわよ。あなた一人で抱え込むのは、本当に大変そうだもの‥‥‥」
「‥‥機会があれば、そうさせてもらうかも」
…‥‥物凄く同情した目を向けられ、その心の優しさにちょっと涙が出そうであった。
俺、心疲れているのかなぁ…‥‥
とにもかくにも、ダンジョン消滅装置が完成した後は、リリスの箱の中に入れて運ぶことにした。
毎回彼女に頼んで思うのだが、あの大きなサイズとかでも普通に収納できるのは結構凄い事のような気がする。
まぁ、そのあたりを突っ込んだところで、どうなっているのか調べてもキリがなさそうなのでツッコミを放棄する。
「さてと、またあのダンジョン前に移動して…‥‥これで完全消滅させれば今日のところはそれで終わりか」
「後にできた大穴は、王子たちの回答で再利用するとありましたからネ。できるだけ周囲に被害を及ばせないように、綺麗にその指定範囲のみを破壊できるようにして置きますカ」
「あれ?この作業を終えたらもう帰っちゃうのかニャ?」
「ああ、まだ休暇でもあるし、村にさっさと戻ろうかと思っているけど…‥‥どうしようかな」
ルナティアの言葉に、ふと俺は考えこんだ。
作業を終えたら村に戻ってのんびりとしたいが、休暇中とはいえせっかく学園まで戻って来たんだ。
こっちの方が店などが合って様々な品もあるし…‥‥いくつかお土産も買って帰ったほうがいいかな?
作業を終えたら疲れているだろうし、一晩ゆっくりと止まってから明日に土産の購入などもできるだろう。
「‥‥‥そうだな、一泊ぐらいは寮にしようかな。宿をとる意味も無いしね」
「それなら寮で待っているのニャ。作業中は危ないから離れておくけど、どういう風になっているのか聞きたいからニャね」
「それじゃ、頑張って破壊してきてねー」
「ああ、やってくるよ」
俺の回答に対して、ルナティとアリスがにこやかに応援の声をくれた。
作業的にはダンジョンを潰すだけのものだし…‥‥疲れとかが特になければ、色々と話して楽しみ合うのもいいかもしれない。
そう思いながら、俺たちはダンジョンを潰すために向かうのであった…‥‥
「‥‥‥しかしな、これで本当に消滅できるのか?」
「可能なはずデス。時間経過ごとに内部構造の変化をするダンジョンでしたが、範囲をまとめて消し飛ばせば損な物も関係ないはずデス」
「普通に考えると恐ろしい物を作り上げているのじゃがなぁ…‥‥なんか可能じゃろうなぁと思ってしまうのはどうなんじゃろうか」
…‥‥ある意味、俺たちはノインの常軌を逸脱した能力に慣れ過ぎたのかもしれない。毒されているというか、もうこれが平常運転というか…‥‥浸食されているような現状がちょっと怖くなった。
「‥‥‥寮に、一夜は過ごすようニャ」
「‥‥‥ええ、言質は取っていたわよ」
ディーたちがダンジョンへ歩みだして去った後、その場でルナティとアリスはこっそり話し合っていた。
「先日の荷物のタイミング、帰還してきた都合、もしかしてこれが想定されていた可能性もあるのニャ」
「しかも今なら、寮にそんなに人はいないし…‥‥やるなら、今しかないのでは?」
「でもそれだったら、ノインさんとかにきちんと話をしたほうがいいかもニャ」
「それもそうね。でも、これが数少ない機会なのは間違いないし…‥‥やってみましょう」
ふふふふっと、互に覚悟を心に決め、笑いあう二人。
そしてそんな二人に対して、実は密かにノインたちもどういうことを考えていたのか理解しており、帰還後に寮の女湯でひっそりと話し合って合意を得る。
何も知らないのは、ディーだけであった‥‥‥‥
「‥‥‥あれ、何だろう。今すっごい寒気がしたような」
「夏風邪ですカ?しかし、ご主人様の体調状態は良好なままデス」
「そうなのか?‥‥‥にしてはこう、なんか言いようのないような悪寒があったというか」
‥‥‥長く騒動にさらされていた分、勘は冴えていただろう。だがしかし、その勘の原因をよく理解できていないのは、鈍感と言うべきか…‥‥
「‥‥‥ええ、ひと夏の思い出にもなるでしょウ」
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