上 下
301 / 373

292 だからこそ予想は出来ていたが

しおりを挟む
 ダンジョンのコアが眠る、ダンジョンの最奥部。

 その位置に、ディーたちはようやくたどり着いていたのだが‥‥‥コアの前には当り前のように、守護者ともいえるダンジョンマスターが立ちふさがっていた。

「…‥‥あれが、ここのコアを守るダンジョンマスターか」

 最奥部というが、下手の大きさは階層の中でも一番大きくて広い。

 そしてそれに見合ったサイズが、ここのダンジョンマスターであった。


「ゴルゴッホォォォォォン!!」

 雄たけびを上げ、激しくドラミングを鳴らすのは巨大なゴリラ。

 いや、見た目こそゴリラだが、その体の筋肉ははち切れそうなまで発達しており、全身からキラキラと光を放ち、異様に目立つ容姿をしていた。

「分析完了。『スパーキングコングファイター』のようですネ」

―――――――――――――
『スパーキングコングファイター』
体内中を強力な電撃が駆け巡っており、電撃の量が凄まじく、体外へ発汗するかのように漏れ出でているモンスター。
強靭な筋肉を持っているのだが、その筋肉の分厚さゆえに、本来は動きが鈍いはずだったが、電撃で無理やり自身を動かすことで素早さを手に入れてしまったパワーファイター。
その筋力は鋼鉄をいともたやすく粉砕し、その素早さは雷のごとく目にもとまらぬ速さである。
そして何よりも…‥‥
―――――――――――――

「ゴルゴッホォォォォン!!」

 俺たちの姿を見るや否や、いきなり敵意剥き出して迫って…‥‥ん?


「ゴルゴッホオオオオオオオオン!!」
「っと!?」

 強烈な勢いで、召喚獣たちを無視して急に俺の方へ突撃して、その拳を振り下ろしてきた。

 慌ててジェットブーツを出して後方へ避けたが、その数秒後には俺のいた場所にでっかいクレータが出来上がった。

「ゴルゴルゴルッホォオォォォォォン!!」
「なんか明らかに、俺に対してだけすっごい敵意むき出しにしているんだが!?」
「スパーキングコングファイターは、自身と同性に対して強い殺意を抱くようデス。異性を求めてさまよう習性もあるようですが‥‥‥あ、これ私たちがいるのも原因ですネ」

 番を捜して彷徨う話もあるモンスターのようだが、とある習性を持っている。

 それは、同性が異性に多く囲まれているのを見ると瞬時に血管がブチ切れ、その中心にいる同性を真っ先に殺害する。

 雌だろうと雄だろうとその習性はどちらも持っているらしく、一説によれば彷徨う身なのに相手がたくさんいる同性がどうしても許せないらしい。

 なので、「ハーレムクラッシャー」などという異名が付いているそうで、一部の界隈ではその働きぶりに声援を送る人たちもいるらしいが…‥‥

「ああ、なるほど、ノインたちに囲まれていたからこそ俺を一番狙う‥‥‥って、それって酷い逆恨みになってないかな!?」
「ゴルゴッホォォォォォン!!」

 自分に相手がいないから、集団に囲まれている同性を許せずに殺しにかかるって、とんでもない逆恨みである。

 というか、ハーレムクラッシャーと言われても、そんなハーレムのような…‥‥いや、改めて考えると、似たような状況なのか?

 ふとそう思ったのだが、そうしている場合ではない。

 全力で物凄い素早さで瞬時に間合いを詰められ、拳を振るわれまくる。

「ゴルッホォン!!ゴルッホォン!!ゴゴルッホォォォン!!」
「めっちゃ素早いうえに、攻撃力が怖すぎるんだが!!全員、一斉攻撃開始!!」
「「「「「了解!!」」」」」


 合図と共に、ルビーの火炎放射やティアの鎖鎌などが襲い掛かったのだが‥‥‥‥次の瞬間、俺たちは目を疑った。


「ゴルホホォォン!!」
「あれぇ!?なんかぴんぴんしているんだけど!?」
「鎖鎌もはじかれたんだぜ!?」
「わたくしの蔓の鞭もはじかれてますわ!!」

 どういう訳か、すべての攻撃が着弾したのに、その攻撃がことごとく通じていない。

「なるほど‥‥‥‥これはちょっと不味いですネ」
「どういうことだ?」
「スパーキングコングファイターは、どうやら異性からの攻撃を受け付けないようデス」

…‥‥ハーレムクラッシャーの異名は伊達ではないのか、どうやらそのような奇妙な特性を持っているらしい。

 メイドゴーレムや剣精霊などというのもいるが、彼女達も女の子だし…‥‥どうやら、召喚獣全員の攻撃は完全に無効化されるらしい。

 つまり、今攻撃可能なのは俺だけである。

「なんだその特性!?」
「絶対に許せない相手がいるからこそ得た特性のようであり、それで相手をするようデス。要は、タイマンを望むのでしょウ」

 酷いというか、何というか、とことん同性のみを滅ぼしたいらしい。

「ついでに、殺戮後はその同性の相手だった者たちを奪い取る習性もあるようデス」
「最悪の限りをつくしているな!?あ、でもそれだったら異性の方には危害を加えられないんじゃ?」
「残念なことに都合が良いというか、相手側の方は私達に通じるようデス」

‥‥‥最悪過ぎるとか、どんな道をたどっていけばそうなるんだろうか。

 というか、その話しがあるという事は、仮に俺が殺されたら、あいつはノインたちを狙うってことになるだろうし‥‥‥攻撃が通じないのに、相手からの攻撃を受けるってのは‥‥‥うん、なんかむかつくな。

「ああもう!!だったら腹くくって俺の方からも戦ってやるよ!!召喚士が前線に出るのは間違っている気がするけどな!!」
「間違っているも何も、ご主人様も結構前に出て戦ってませんカ?」

 うん、それはちょっと思うところがあるから、ツッコミを入れないでほしかった。

 というか、普段ツッコミを入れる方は俺なんだが…‥‥彼女達の方からツッコミを入れられるのはこれいかに。


「ゴルルルッゴッホォォォン!!」

 装備品を付けて俺が出てきたところで、更に殺意を高めた表情になりながら、威嚇のつもりかドラミングを始めるスパーキングコングファイター。

 もしも俺が敗れれば、ノインたちを奴は奪う気なのだろうが…‥‥そんなことはさせない。

「逆恨みのようなやつは、こっちが思いっきり性根を叩き直してやらぁ!!」
「ゴルゴッホォォォン!!」

 俺の叫びに対して、答えるかのように叫ぶゴリラ野郎。

 何にしても、こっちはこっちで引けないし、全力で相手をすることになるのであった‥‥‥‥

しおりを挟む
感想 771

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】妃が毒を盛っている。

ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

処理中です...