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261 砂糖菓子というのはこういうものなのかと

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「あははは~!!おいかけてくださーい!!」
「まてまて~~!!」

 にこやかに笑いあいながら、浜辺を駆け抜ける男女。

 絵面としては歳の離れた仲のいい兄妹に見えなくもないのだが…‥‥問題しかないような気がする。


「‥‥‥合宿中に、ラブラブさを見せ付けるバカップルがいるのもどうなんだろうなぁ」
「とはいえ、そのおかげであちらの方で苦いお菓子や飲み物が売れているようですけれどネ」

 笑いあうエルディムとハルモニアを見ながら俺たちはそうつぶやくが‥‥‥まぁ、売れる理由は良く分かる。

 というのも、狂愛だとかまともじゃないものを見ていたせいであまり考えていなかったのだが、本来の物凄く互いを思いあうような甘い関係とはああいう者たちを指すに違いないと思えるような状態だからだ。

 気力を失っていた少女に、一国の王子が駆け付け元気を与え、互に愛し合う‥‥‥ある意味定番ラブストーリでもあるだろう。


 だがしかし、そのラブも濃ければ周囲へ糖分を排出しまくり、甘ったるさにそれ以外のものを求める者が出てしまうのは避けられないことなのだろうか。

「元気になったのは良い事のはずなのに、遠方から見ている男子・女性陣の怨嗟か嫉妬、その他諸々の闇に入りそうな感情が溢れているのもなぁ‥‥‥」
「まぁ、愚弟というべきながらも、女子たちから見れば相手としては悪くもないんだと思うよ」

 そう言いながら、恐ろしく苦いのにこの状況だと丁度良くなってしまう飲み物を飲みつつ、グラディがそうつぶやいた。

 言われてみると、異性の立場であれば、第3王子はそこまで悪くない相手なのかもしれない。

 第1王子ゼノバース第2王子グラディには婚約者がいるそうだが、どうやら第3王子エルディムにはその話はなく、相手がいない状態。

 なので、性癖に対して物凄く目をそらし過ぎて首を360℃以上回転させる勢いで無視さえすれば、王子という立場などを考えると女性陣には相手として良い感じがするのだろう。

 だがしかし、現在亡命手続き中の情報漏れを防ぐために最小限にしたとはいえ、他人から見ればどこのぽっと出なのかもわからない少女と仲睦まじくしている姿に嫉妬を覚えるようだ。

 男性陣の方は、こちらはこちらで相手がいないが故の悲しみなどもあふれているのであろうが‥‥‥それはそれで気にしない方が良いと思うのであった。


「にしても、出会って数日でもうすでにバカップルぶりが良く伝わるというか‥‥‥王家の立場としては、このまま婚約関係にさせて良いと思うのか?」
「うーん、本当はちょっと良くないというか、色々と思うところがあるんだけどねー」


‥‥‥ハルモニアは小さい少女だが、それは今の話。

 もともとエルディムは小さい子好きを拗らせまくった性癖をしているので、今の姿でストライクゾーンだからこそ熱愛になったのだろうが‥‥‥これが将来どうなるのかが分からない。

 人という者は成長するし、ハルモニアだって今の小さい少女の姿ではなくなるだろうし‥‥‥その時に、彼がどう対応するのか、予測しづらいのだ。

「性癖適合範囲から外れた場合、果たして婚約を無しにするのか、それとも普通にそのままありになるのか‥‥‥ちょっと気になるな」
「人の趣味嗜好というものは変化も大きいですし、どうなっていくのか現時点では不明デス」
「出来れば、兄という立場としてはあのまま成長に慣れて、変な性癖を消してくれれば良いなぁと思うんだけど‥‥‥」
「場合によっては、両思いは変わらずに婚約関係は継続しつつも、性癖がそのままという可能性もあるからな」

 ゼノバースの言葉に、全員同意する。

 人の色恋沙汰、性癖なんぞは考えても予想は付けにくいからなぁ…‥‥考えるだけ無駄なのかもしれない。

 そう考えると、今はとりあえず、甘いバカップルとしてひと夏を過ごさせる方が良いだろうと俺たちはそう思うのであった。


「…‥‥とは言え、結構甘いよなぁ‥‥人ってカップルになると、あんな感じになるのか?」
「そのあたりは不明ですネ。個人差がかなりあると思われマス」

 当事者たちには良いんだろうけど、周囲から見ると甘ったるいんだよなぁ…‥‥相手がいると、人って皆バカップルになるのかと疑問を抱いてしまう。

 流石に全部の人が全部バカップルになるわけではないんだろうけれども‥‥‥そうなった時に甘い物を打ち消すものが不足しそうだ。

「まぁ、本当に愛し合う関係とかにならないと、わからないものか。‥‥‥仮に、俺に彼女が出来た場合もああいう感じにはなるのかな?」
「「「「…‥‥」」」」」
「ん?」

 ふと思って、ぼそっとつぶやいた言葉ではあったが‥‥‥何か一瞬、全員の目がこっちを向いた気がする。

「‥‥‥ご主人様はどうなのかと思いますが、多分大丈夫でしょウ」
「そうか?」
「ハイ。ですが、できればその話題はもうちょっと待ってほしいとも思えますネ」

 黙りこくった空気の中、ノインがそう答えてきたが…‥‥俺は今、何か変な事を言っただろうか?

 疑問に思うも、その後は特に変わりもなかったので、やらかしたわけでもないと思うのであった。


「ディー君って天然ボケなの?」
「いきなり何を言うんだよグラディ」
「いや、流石にお前のその発言は、色々と思うのだが…‥」

 なにやら王子たちに言われるのだが、天然ボケって何だよ。











‥‥‥ややその場の空気が微妙になりつつも、戻り始めていた丁度その頃。

 沖合の方には、船が迫ってきていた。


「‥‥‥もう間もなく、目的地の浜辺につくでしょうが…‥‥父上、本当にそこで良いのでしょうか?港町の方へ、今から進路を変更できますが‥‥‥」
「いや、進路このまま、目的を変えるな。情報によればそこに今いるだろうし、残り時間としては少ないだろうが、十分に足りるはずだ」

 グレイの問いかけに対して、そう返答する海洋王国国王。

 まだまだ見えない浜辺の方角に目をそらさずに向け、凝視するかのように彼方を見る。


 変わることないその指示に従いつつ、船員たちへ彼女は通達する。

「とはいえ、一体何を目的にして‥‥‥‥いや、そう言えば‥」

 国王の考えが分からないので、一旦落ち着いて推測するためにも海を眺めるグレイ。

 そんな中で、ふとこの海域がどこなのか思い出す。


「‥‥‥この辺りは、先日命じられて船を沈めた場所ではあったが‥‥‥そう言えば、救助が来ていたな」

 漂流船を轟沈させた場所近くという事に彼女は気が付き、その時に来ていた救助隊(?)のような者達の事を考える。

 考えて見れば、あの海域にわざわざやって来て、鎮める予定だった船の船員たちを救助して行った者たちは‥‥‥

「人ならざる姿ばかりだったような、それでいて女性でもあったような‥‥‥‥まさか!?」

 姿を思い出し、ある可能性に気が付いたグレイ。

「よく考えると、この海域から近い陸地も目的地の浜辺に当たるだろうし、相手の姿や性別なども考えると出航前に父が述べていた『人ならざる者なら大丈夫だろう』という言葉に当てはまるような‥‥‥!?」

 気が付いたとはいえ、できれば当たってほしくないと彼女は思う。

 何しろ、命令とは言え、認められずとも血の繋がった妹を救助した相手だろうし、そんな相手を父が求めているのであれば、色々と不味いことになると予想が付くのだ。


 だが、それでも国王を止める立場にもなれず、なすがままに行くしかない。

「本当に、何を考えているんだ父上は…‥‥」

 とにもかくにも、今は命じられるままに船を進ませつつも、海洋王国国王である父の動向に対してどう動くべきなのかと悩み始めるのであった‥‥‥‥

 

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