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256 全力で遊び全力で休み

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‥‥‥初日の半日と、最終日の全部にしかない臨海合宿の遊べる時間。

 なので、数少ない海での時間を楽しむために、全力を尽くすだろう。

 まぁ、その遊びの最中でも、やり過ぎるとヤヴァイのもあるが‥‥‥‥




ドッゴォォォォォォン!!
バッゴォォォォォン!!
「‥‥‥中々決まらないデス」
「うーん、防がれてしまいますわね‥‥‥」

‥‥‥砂浜にて行われている、ビーチバレー。

 使用されているボールはノイン御手製の特殊素材で出来ているそうだが、それでないと通常のボールは瞬時にはじけ飛ぶこと間違い無しな、激しい争いが行われていた。

「そーれでござるぅ!!」
「っと、上に飛ばしマス!!」

 ルビーの思いっきりはたいた燃えるボールに対して、ノインが腕を変形させて弾き、宙に浮きあがらせる。

「良し/叩く!!」
「させませんわ!!」

 その宙に舞ったボールに対して、剣の姿のままルンがアタックを仕掛けるも、カトレアが木の根を伸ばして直ぐに防御をしてしまう。

 ボールが吹っ飛ぶたびに衝撃波が発生し、なんとか防御をかいくぐって地面に付けば砂浜が吹っ飛び、凄まじく荒いビーチボール現場。


 なんというか、普段の喧嘩の延長線上に遊びを設けてある程度の加減を楽しんではいるようだが‥‥‥いや、加減してないな、アレ。

「遊びに全力投球というか、凄まじいな」
「合法的にふっ飛ばせる可能性がある機会じゃし、こういう時に全力を出すのじゃろう」

 装備品の中で、透明な盾を取り出して俺は身を守りながらつぶやき、隣で砂のお城を作っているゼネがそう答える。

「全力、遊ぶ、楽しい。でも、あれやりすぎ」
「グゲェグゲェ」

 一緒に作っているアナスタシアとリリスがうんうんと頷くが‥‥‥この砂の城作りも大概だとは思う。

 氷や宝石で補強と装飾を兼ねているからなぁ‥‥‥何気に芸術点が高いというか、何と言うか。

「というか、レイアとティア、リザは遠泳したしなぁ‥‥‥皆、海ではしゃぎすぎているような気がしなくもない」
「そうニャねぇ。まぁ、こちらは巻き込まれないようにすればいい話しニャ」
「っと、こっちに綺麗な貝殻見つけましたわ」

 貝殻拾いをしながら返答するルナティアにアリス。

 あの荒れ狂うビーチバレーに比べれば、こちらの平和がどれだけありがたいのかよく分かるのであった‥‥‥


「にしても、ルビーにルンは普通にチームに加わっているだけで全力を出しまくる必要が無いのになぁ‥‥‥まぁ、楽しんでいるから良いけど、互いに飛べる利点を生かして高い所から勢いよくボールを落とすとか、結構ヤヴァイ戦法を編み出したな」
「まぁ、海上を飛行しているのも飽きて、体を動かす遊びの方に興味を引かれたのじゃろう。しかし、凄まじいのぅ…‥‥」












「‥‥‥んー、中々遠くまで泳いでしまったでありんすけれど、これ戻れるでありんすかね?」

 砂浜の方で凄まじい争いが起きている一方、沖合の方でリザはそうつぶやいた。

「大丈夫だぜ!故郷ともいえる海を泳いでいるだけに、経路はしっかりと覚えているし、いざとなれば我が君に召喚してもらえば問題ないしな!」
「召喚されなかった時だと問題になるとは思うが…‥‥まぁ、念のために方位磁石を貰って来たし、方向さえ間違えなければ大丈夫だろう」

 ざぶざぶと海での本領を発揮して泳ぐティアに対して、レイアはそう答える。

 彼女の場合はケンタウロスなので、泳ぐというよりも水中歩行ぐらいしかできず、本来であれば遠泳は不得意である。

 だがしかし、今回はノインから海用のスクリューなどを貰い、それを馬の下半身の両脇にセットし、補助して動けるので問題はない。

 むしろ、水中を歩くために使う筋肉は普段以上に使役するので、中々良いトレーニングにはなっていた。

「にしても、リザの方もすごい泳ぎ方だな…‥‥蛇行ってそう言う風に泳げるのか?」
「そうでありんすねぇ。まぁ、元々わっちは浸かっている液体を酒に換える能力があるでありんすし、溺れないように元々泳げるようになっていると思えるでありんすよ」

 くねくねと蛇の下半身を動かしつつ、器用に泳ぐリザ。

 なんというか、ある意味見た目的には人魚に近いが…‥‥色々と惜しいような気もする光景ではあった。

「というか、人魚だったら自分が一番それに当てはまるのでは?」
「ティアの場合サメにしか見えん」
「背びれが出てきて迫ってきたら、なんか怖いでありんすしなぁ…‥‥」


 とにもかくにも、遠泳を楽しむのは良いのだがちょっと遠くへ出過ぎたような気がしてきた彼女たち。

 戻る分の体力配分を考えるとそろそろ引き返せばいいかなと思っていた‥‥‥‥その時であった。

「ん?なんだぜあれ?」
「どうしたでありんすか?」
「あっちの方に、船っぽいのがあるぜ」

 ティアがふと気が付き、その視線を彼女達が追って見れば、確かに何かの船がある光景が見て取れた。

 帆船のようだが、少々動きが変なようにも見える。

「‥‥‥なんでありんすかね?船ってあそこまで動きが鈍いものでありんすか?」
「風に吹かれるままのような…‥‥様子が変に見えるな」

 奇妙な動きというか、漂流船にも見えなくはない。

 一応、海賊とかそう言う類も海上には存在するが‥‥‥‥それらではないような気がする。

「‥‥‥ちょっと潜って、こっそり近づいて見るぜ!」
「んー、迂闊に近寄らないほうがいいような…‥‥」
「そうでありんすねぇ、いかにも怪しい船は避けた方が良いでありんすよ」

 ティアが興味を持ったようだが、レイアもリザも乗り気ではない。

 というか、彼女達の場合はティアよりも潜るのにそこまで適してないのもあるのだが‥‥‥お構いなしに、一旦ティアだけが近寄って見ることにした。





「‥‥‥ほー、なんか嵐に出も巻き込まれたのか、立派なはずなのにボロボロなのがもったいない感じがするぜ」


 すすいぃーっと水中から船の竜骨などを覗き見るが、どうやら漂流船のようだ。

 建造されてそこまでの年月は経ていないようだが、嵐にでも巻き込まれたのか、ボロボロなのがうかがえる。


「舵の方は‥‥‥ああ、これはダメな奴だぜ。これじゃ、まともな操船ができそうにない感じだな…‥‥」

 航行に必要と思われる舵の部分が完全に壊れており、操船が出来ない状態。

 まぁ、帆の部分だけを見ればまだ風次第で動けるようだが…‥‥それでも、自由に航行できるかと言われれば、首を横に振るしかできない状態である。

 

「まぁ、漂流船なら何か残ってないかなー?」

 そう思いつつ、海上に顔を出して観察すれば‥‥‥ふと、影が見えた。


「ん?」

 視線も感じたのでよく見れば、どうやらまだ生きた人間がいたらしい。

 やせ細っているようで、そろそろ餓死するのではないかと思える頃合いの人間が驚愕した顔で見ていた。

「な、なんか出たでやんすぅぅぃ!!」
「何が出たんだー!!」

「‥‥‥何だぜ、あの喋りかた?」

 やせ細っているのにどこから出たんだと言えるような大声を出した相手に対して、船の中から別のものの声が聞こえてきた。

 どうやら複数人の乗組員がいるようで、生存してはいるらしい。

「大変でやんやんすやんすやんす!!海からサメが女の生首を海上に出してひょこっと出たでやんすよぉォォ!!」
「サメだとぉぉ!!というか聞く感じじゃ、人食いザメじゃねぇかぁぁぁぁあぁ!!」
「この船の血の臭いでも嗅ぎ取ってきたのでやんすかねぇぇぇ!?」

「‥‥‥‥」

 叫んでいるのでその会話内容が聞こえるのが良いが、そんな言われ方には複雑な心を抱くティア。

 いや、確かに彼女はハイガドロンというサメのモンスターであったが、今はマリンデビル‥‥‥サメからちょっとレベルアップしたようなモンスターではあるのだが…‥‥表現的には間違ってないだろう。

「‥‥‥んー、人食いザメじゃないんだけど‥‥‥ちょっと話を聞いて見るか?」

 そう思い、彼女は背負っていた鎖鎌を手に取り、振り回す。

「よっと!!」

 そのまま勢いよく鎌を振り上げて飛ばし、船の甲板辺りへ突き刺した。


ザッグゥゥゥゥン!!

「ひぇぇぇぇぇ!!なんか凶器が刺さってきたでやんすぅぅぅ!!」
「最近のサメは武器でも扱うのかぁぁぁぁぁ!!」

「あ、もしかして余計に恐怖を増させてしまった?」

 何にしても、鎖を伝って船壁をびたんびたんと勢いよく上っていく。


「なんか叫んでいるようだけど、それに文句を言いに来たぜ!!自分はサメじゃなくてマリンデビルだぜ!!」
「「サメが何か来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 堂々と乗り込んで種族名を名乗って見たが、どうやら相手をパニックへ陥れるだけのようであった…‥


「‥‥何か、騒がしくなってないか?」
「騒ぎを起こして、大きくしちゃったようでありんすねぇ…‥‥」
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