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249 割と細かいというか、そこまでどうやっていたのかというか

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「‥‥‥良し、後はこの道を真っ直ぐ駆け抜けるだけじゃな」
「分かったぞ」

 リリスの箱の中からゼネが指示を出しつつ、箱を背負ってレイアが一気に駆け抜ける。

 この奇妙な空間の床が疲労を積み重ねる類の歩きにくい場所とは言え、その手はレイアには通用しない。

 それどころか、違和感ある弾力すらも利用して、反発力によって駆け抜ける速度を向上させる。

「むしろ、こっちの方が平地で走るよりも早いかもしれないが…‥‥っと、見えてきたぞ!!」

 レイアがそうつぶやきつつ、口にしたその言葉に箱の隙間から覗いてみれば、奇妙な空間に一点だけ輝く、綺麗な光があった。

「ゼネ、あそこが出口か?」
「間違いないはずじゃ。まぁ、確認しようにも今外で引きずられているやつを見る必要があるのじゃが…‥‥そこまでしなくとも、あそこに向かえば良いだけじゃな」

 その光の場所こそが、この空間から脱出するための出口であり、出る場所は神聖国内のとある神殿内部らしい。

 とはいえ、脱出したその先にゼネの妹たちが待ち受けて何かを仕掛けようとしている可能性があるので、それの対策を取らなければいけないが‥‥‥

「妙な事をされる前に、脱出と同時に全員箱から出て一斉広範囲攻撃を放て。何かをしでかすのであれば、無理やり強行突破だ」
「了解デス」
「まぁ、そっちの方が早いですものね」
「ふっ飛ばす程度に抑えつつでござるよね?」
「本気でやったら、シャレにならないと思えるからのぅ…‥‥」

 一応、威力自体は控えめではあるが、周囲一帯を軽く吹っ飛ばせる程度にしてもらう。

 それだけの力で無理やり突き進めば、相手が何をしようともやる前にふっ飛ばせるからな。

「氷結、氷の世界、それで楽勝」
「まぁ、わっちはろくな広範囲攻撃はないので、精々ツボ押し制圧ぐらいでありんすけどね」
「とはいえ、鎖鎌で一気に刈り取ってもいけそうだぜ」
「流石に/ソレ/アウトかも?」

 何にしても、ふっ飛ばすのであればそのぐらいの威力があった方が良いだろう。

 何しろ、待ち受けている可能性があるのはゼネの妹たちであり、あの狂愛の怪物に変貌できる者たちでもあるのだから。

「オーバーキルというレベルになりそうなんだけど…‥‥そこまでする相手かニャ?」
「例えるのであれば、組織フェイスマスクをより濃厚にした感じかな」
「分かりやすいような、そうではないような‥‥‥けれども、この空間を作り出す時点で大体納得できますわね」

 ルナティアとアリスが疑問に思ったようだが、この例えの前に納得したらしい。

 まぁ、二人とも何かと組織の被害に遭っているからこそ、濃厚にした感じと言えばそれだけでどれだけ面倒そうで大変そうな相手なのか分かったようだけどな…‥‥考えると、この二人も何かと接点あるな。

 とにもかくにも、光に向けてレイアが駆け抜け、俺たちは箱から飛び出て周囲をふっ飛ばす用意をして置く。

「とはいえ、あたしの方は弓矢をノインさんから手渡されたのは良いけどニャ‥‥‥なんかトンデモナイ弓矢を渡されたような気がするのは気のせいかニャ?」
「大丈夫デス。それは単純に、一本の矢を一度放てば5本分に分裂する弓なだけデス」
「いや、それのどこが大丈夫なんだろうか」

 なお、その弓矢自体は元々俺への装備品に入れる予定はあったようだが、一応武器の類にもなるルンがいるので没になり、眠っていたそうな。

 まぁ、ルンのように自由気ままに飛んで動ける剣があれば、弓を持つ必要性もないからな‥‥‥

「こっちは、ピヨヨちゃんにこれを聞かせて真似した音源を出せばいいだけなのよね?」
「ピィ?」
「ええ、そちらの方にはヘッドフォン(小型サイズ)で聞かせましたが、特殊音波兵器デス。一応、私たちには効果はないですが、真正面から人間が浴びれば鼓膜が破れる類のヤヴァイやつを用意しまシタ」

 アリスの方は、彼女の召喚獣である小鳥に音を聞かせていたが…‥‥なんかトンデモナイ音響兵器を生もうとしてないかな?

 今回に限っての音という訳ではなく、いざという時の彼女の護身にもなると説明したら、ピヨヨの方も納得していたが…‥‥今俺は、何かを野放しにしてしまった気がする。


 一応、彼女達の方は信頼はしているので、そうそう変な事はしないだろう。

 あとで盛大にやらかしかねない危険性をはらんでいるが、使えるものなら使った方が良いだろうし、俺たちと一緒にこの空間に引き込まれてしまったという事は、彼女達も何らかの理由で狙われている可能性があるし…‥‥念には念を押して準備をしておくべきか。



「マイロード、この速度であと10秒で到達だ!!」
「っと、考えている場合じゃなかったな」

 レイアの駆け抜ける速度が速く、既に出口が見えてきている。

 彼女の方も攻撃用意ができているようで、槍を構え済み。

 そして箱の内部を見渡せば、全員攻撃態勢に移れていた。

「それじゃ、ツッコむと同時に攻撃展開用意!!」
「「「「了解!!」」」」

 合図と共に、箱から一斉に飛び出せるようにして、光の中へ突っ込んでいく。

 そして、その光を抜けた先には神殿の内部と思われる場所があり‥‥‥‥その先には、予想していたとおりというべきか、相手の方も何か対策を立てている可能性があるが、色々な物を構えた人たちがいたが、直ぐに何者かは判別できる。

「思った通りじゃな、全員敵じゃ!!」
「それじゃ、一斉展開!!」

 素早く見渡し、関係者しかいないことをゼネが確認し、それを合図に俺たちは一気にリリスの箱から飛び出した。

「続けて攻撃開始ぃ!!」

 俺のほうは装備品の一つ、ミサイルポッドを展開して小型ミサイルとやらを連射し、彼女達も熱線や冷凍光線、電撃に宝石と、一気に攻撃をかけ、周囲が一瞬のうちに着弾や蒸発などによって生じた煙に包まれる。

 そして、煙によって目がくらむ前にジェットブーツを起動させ、ヘルメットを付けて天井にぶっ飛んで頭突きをして、そのまま宙に突き進む。

ドッゴォォォォォォン!!

 無理やりな強行突破法だが、ノイン御手製透明ヘルメットのおかげでダメージはなく、まだ夜空な大空へ、俺は飛んだ。

 下を見れば天井が崩れかけているが、それはそれで想定通り。

「からの、『召喚、ノイン、カトレア、ルビー、ゼネ、リリス、リザ、アナスタシア、レイア、ティア、ルン』!!」

 天井が崩れ切る前に全員を空中で召喚して、宙に素早く彼女達が現れる。

 ルナティアとアリスの二人は召喚獣ではないが、攻撃と同時に再びリリスの中に入るように言っておいたので、箱の中を見れば彼女達がいたことを確認できた。

「あとはノイン、このまま落下防止用の道具を!!」
「了解デス!」

 ジャキッと腕を変形させ、細長い筒に彼女は切り替え、地面に向けて狙いを定めた。

「『緊急落下時用着弾クッション』発射デス!」

 バァン!!っという音と共に、崩れ切ったがれきの上に小さな弾が着弾したかと思った次の瞬間、ボンッと音を立てて膨らみ、雲のようなものが出来上がる。

 そしてその上に、全員ぼすんっと着地し、誰一人怪我することなく脱出に成功したことを確信するのであった…‥‥


「っと、脱出できたことに安堵の息を吐くのは、まだ早いのじゃ」
「ああ、まだゼネの妹たちが残っているからな」

 崩れ去った神殿だが、一応瓦礫の下の輩は全員生きている。

 一斉攻撃でふっ飛ばしたとは言え、即死しないように全員気を配りつつ、今のクッションに紛れて治療薬を捲いたからな‥‥‥ただし、即効性はあれども代償に物凄く眠くなるやつである。

 なので、生き延びているだろうが直ぐには起床しないだろうし、このまま放置しても問題はない。

 問題があるのは、あの場には全員がおらず…‥‥そもそもの元凶と考えられるゼネの妹の姿が無かったということぐらいだ。



 だからこそ、また同様の手口を使用される前に、こっちから強襲する。

 相手はこの国のトップらしいが‥‥‥‥そんな事、今更構うものではない。

「そもそも、一応ガランドゥ王国の王女に、森林国の留学生を巻き込んでいる時点で国際問題ものだからな…‥‥きちんと、そのあたりの話も付けないとな」
「ええ、そうですね」
「なんかもう、吹っ切れて色々飛ばした方が良いかと思えてしまうのニャ」

 この件で彼女達も思うところはあるらしく、騒動の最後までついてきてくれそうだ。

 とにもかくにも、まだ夜中のようだが…‥‥朝日が昇るまでには解決してやろうと俺は思うのであった…‥‥



‥‥‥まぁ、そもそも臨海合宿での移動もあるし、さっさと宿に戻りたいという思いもあるがな。

 ぐっすり眠れない一夜を過ごさせられている分、大暴れしてやりたいからな…‥‥‥








「…‥‥ええ、まだまだ想定内ね」

 映し出されたその映像を見て、別の神殿内の奥深くにて、彼女はそうつぶやく。

 彼女‥‥‥ゼネの妹にとっては、この程度はまだ計算内。

 もうちょっとできれば、あの空間で迷ってもらえればそれはそれでいい展開が出来たと思ったが、どうやらそうは問屋は卸してくれないようだ。

 けれども、この程度の脱出を行うことぐらいは計算済み。

 そもそも、彼女はゼネの妹であり、姉がどういう反応をするぐらいはある程度理解しており…‥‥あの場で大人しく、流されるままになってくれないことなんぞ、当の前に理解している。

「でもでも…‥‥これもお姉様のため。ああ、拒絶されながらもその反応は良い物ですし‥‥‥まんざらではないと分かりつつも、それでもどこか心で受け入れていない分がある顔なのも良いですわねぇ」

 空間内での記録を確認し、そう彼女はつぶやく。

 そしてそれと同時に、その場から立ち上がり、最終段階へ動こうとしている状況に思わず笑みを浮かべる。

「さぁさぁさぁ、お姉様とその仲間たち、早くここに来て欲しいですねぇ。お姉様成分が補充できるので、どう転ぼうとも損はないですものね」
「ええ、ええ、ええ、その通り。お姉様がここに来訪してくだされば、その時点で勝っているも同然」
「いえ、そもそも勝敗のある勝負でもなく、敵対しての奇襲でもなく、これもすべては私たちがお姉様への愛を爆発させたが故」
「あの狂愛の怪物になり果てた私たちに魅せた、お姉様の愛が、そもそも引き起こしてくれたこと」
「「「「「あああ、ああああああ、ああああ!!早くお姉様が来ないかなぁぁぁ?」」」」」

‥‥‥もしも常人がこの光景を見れば、ただの少女たちがお茶会の場で人を楽しみに待っているだけにしか見えないだろう。

 けれども、常人でなければその異様な雰囲気に気が付くはずだ。

 そのすべての行動が、そもそもねじれにねじれまくった彼女達の愛で動いていることを。

 楽しいお茶会とかではなく、ドロドロとした混沌の世界がそこに広がっていることを。

「ああ、そう言えばお姉様方は既に浴びており、時間待ちでしたわね」
「でも、その前にけりをつけようと動いているようですけれども…‥‥」
「そうする前に、こちらも情報を得ていますし、活かしましょう。特に、あの召喚士に対しての現状一番有効な手段も入手済みですものねぇ」

 何にしても、現状彼女達の思惑通りにディーたちは動いているに過ぎなかったのであった…‥‥‥

「何だろう、今悪寒がしたような」
「儂もしたんじゃが。いや、疑問に思うまでもないじゃろうなぁ‥‥‥‥」
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