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242 対策に対しての対策のいたちごっこは避けたいもので

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‥‥‥深夜、誰もが眠りについて夢を見ている頃合い。

 こういう時こそ、何かしでかされる可能性が大きいのが分かっているので、ディーたちは寝ずに警戒を行っていた。

 就寝時間ゆえに、他の生徒たちが眠る宿屋内で何かやらかしてもいけないので、宿の外に出て屋根の上に乗って周囲を見渡しつつ、何者も寄ってこないことを確認しておく。

「まぁ、眠くならないように眠気覚ましの薬とかがあるのは良いが‥‥‥‥暑いな」
「蒸しているというか、スッキリしません夜ですネ」

 普通、夜中は冷えてきそうなものなのだが…‥‥どうも今晩は風の通りも悪いのか、全体的に蒸している感じがする。

「氷、用意済み。これである程度マシになるはず」

 アナスタシアが氷を作り出し、そっと冷風を吹雪かせて吹き飛ばすが‥‥‥それでも、湿気がまとわりつくのは嫌だろう。

「明日の海で、スッキリ洗い流せればいいが…‥‥去年はこうでもなかったはずだよな?」
「すでに仕掛けられている可能性もありますし、センサー感度を上げて警戒しておきマス」

 うにょんうにょんっとノインのアホ毛がうねうねと動き、周囲の動きを探っていく。

 屋根の上から見ても、見えぬ地上部分はあるが…‥‥そちらは今、レイアが駆け抜けて確認中だ。

「こっちの方で、動きはまだ見えないようだが‥‥‥こうなると、あっちの方に動きがあっても良いか。いや、あったらよくないが…‥‥」
ある報告・・・・は来ましたので、今晩動きがあってもおかしくありませんからね」
「わっちも聞いたでありんすけど、その報告はいかがなものかと思うでありんすよ」

 就寝時間前に来た報告だったが…‥‥それから察するに、今晩動いてもおかしくない状況。

「というか、なんでそんなものがあったのかと言いたいが…‥‥できれば無事に朝日を拝みたいなぁ」

 そうつぶやき、俺はゼネたちが宿泊している方へ目を向けるのであった‥‥









「‥‥‥動きとかそう言うの以前に、これが一番ヤヴァイと思うのじゃが」
「気が付いてよかったでござるが…‥‥」
「これって映像記録の魔道具だろ?風呂場にこれだけあるのが驚きだぜ」

‥‥‥ディーたちが思っていた丁度その頃、宿泊部屋にてゼネたちは発見したとある物を確認していた。

 風呂場でティアが泳ぎつつ、尻尾でうっかりルンをふっ飛ばして壁に突き刺さって見つけてしまった、大量の魔道具。

 ちょっと探ってみれば、どうやら姿を記録するための道具のようであり、改めて確認すると大量に設置されていたのだ。

「細かい木の隙間に、目立たないように設置されてましたわね…‥‥しかもこれ、中身を見ればわたくしたちではなくゼネのみ記録してますわね」
「人物/特定撮影/他除外…‥‥‥徹底している」
「徹底してほしくなかったのじゃが…‥‥まぁ、これがある時点で、既に動いて来たじゃろうな」

 全部取り外し、丁寧に中身を削除して言ったのだが、問題はこれが設置されていたという事実。

 事前に宿泊を取る際にある程度は確認していたはずなのだが…‥‥それなのに、これらが仕掛けられていたのだ。

「というか、よくもまぁこれだけ用意するぜ…‥‥確か、一旦ノインがこっち側に来て、調べたら相当な値段がするはずだろ?}
「そのようじゃな…‥‥しかも、一度確認しにノインが来て調べたところじゃと、技術が詰め込まれているようで、立体化もできるようじゃが‥‥‥‥なんでそんな物があるのじゃと言いたい」

‥‥‥これで記録して、我慢でもする気だったのだろうか?

 いや、それだけであの妹たちが済むはずはないと、ゼネは長年の経験から理解していた。

 映像を記録して楽しむだけではなく、それができなくなったのであればその他にも様々な手がやってくるはず。

「‥‥‥何にしても、寝ずに警戒したほうが良さそうじゃな…‥‥幸い、今の儂は特に眠る必要もないし、朝日が上がっても警戒しておくかのぅ‥‥‥‥」
「夜中だけど、バリバリ起きるぜ!」
「拙者は空から見まわるとするでござるかな。陸空はこれで良いとして…‥‥」
「地下から来る可能性もありますし…‥‥根を張って、入り込めないようにして置きますわね」

 そう言い、カトレアの木の椅子の音がずぶりと床下に沈みこんでゆく。

 空・地上・地下…‥‥何処から来ても、どんとこいと言えるほど、念入りに対策をして置く。

 万全の態勢にして置きつつ、彼女達は警戒を怠らないのであった‥‥‥‥

「‥‥‥にしても、この国の地面は中々良い感じですわね。ガランドゥ王国の腐っていた地よりも楽に根を張りやすいですわ」
「そこまででござるか?」
「あれと比べれば、100万倍は良い感じですわよ」












…‥‥空からも地下からも、上下ともに警戒を怠らないディーたち。

 けれども、その動きは既に読まれていた。

 いや、読まれていたというよりも、予測しやすいのだ。

「…‥‥うん、お姉様のために、警戒レベルを上げて寝ずにやる部分は感心しますね」
「けれどもけれどもけれども、その程度では不十分なんですよね」

 にこやかに会話しつつ、彼女達は蠢いていく。



 何も、襲撃というのは自らが動きまくって向かうだけではない。

 そして、獲物を狙うとは言っても一直線にそれのみを狙う訳ではない。

「ああ、ああ、ああ、お姉様を近くで感じ取るチャンスですけれども、今はもうちょっと待つのです」
「そうそう、できる限り、接触する機会を得られても、それらを我慢した後の一杯が、一番いいですものね」

 ふふふっと溢れ出す欲望を抑えて笑いあいつつ、彼女達は行動を起こしていく。

「警戒すればするほど、周囲を確認していくのは良い…‥‥けれども、その警戒には隙間も多くあるのです」
「ええ、ええ、ええ、ええ、自分達に向かうと思っているからこそ、それ以外の方向性には弱くもあるのですよね」
「とはいえ、こういう形で利用するのもなんですが‥‥‥でも、お姉様の幸せも考えると良いかもしれません」
「そうよそうよ、全ては我らがお姉様のために‥‥‥じっくり、進めていきましょう」

‥‥‥ジワリ、ジワリと湿気よりも粘質に、そしてより一層濃厚に迫りくるゼネの妹たち。

 この動きに対してディーたちは警戒しているようだが、その警戒を読んでこその行動を行っていく。

「では、今宵この時から堂々としていきましょう…‥‥ふふふふふふ」

 さぁ、夜の騒動の開始である…‥‥‥‥!!

 

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