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226 芸術ってなんだろうかと思う時も

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「…‥‥何で面倒事が舞い込むのかと思う時がある」
「うん」
「それで、どうにかしたいと思っても…‥‥流されているのはなんでだろうなぁ」
「うーん?分からないニャ」
「それもそうだよなぁ」

 本日はスッキリとした青空で、ぽかぽか陽気という中々良い具合の日。

 こういう時に、木蔭で風にちょっと吹かれて昼寝するのが最高なんだろうなぁと思うのだが…‥‥‥

「何故、こうも商人風の格好して向かわなければいけないのだろうか」
「そりゃ怪しまれるからだと思うニャ。…‥‥まぁ、あたしも何で巻き添えにされたのかと問いたいけどニャ」

 荷馬車の中にある席に座りながらそうつぶやくと、隣で話を聞いていたルナティアがそう返答する。





‥‥‥現在、俺たちは学園に国からの特別休暇届けを出して、ガランドゥ王国へ向けて進んでいた。

 組織の手の物がいるのか、はたまたは何か別の異常があるのかは不明だが、ガランドゥ王国での異変を調査するために向かわされたのである。

 この件に関しては、最初は帝国の女帝からの手紙に関して国の方へ相談し、王子たちや国王も交えて話し合いをしていたのだが…‥‥結果として、俺たちは向かう羽目になった。

 まぁ、学業に関しては行く前にある程度国外でもできる分の学習教材を貰っておきつつ、長時間の補習ではなく短時間の補習もできるようにしてもらったが‥‥‥‥何故、この件に関してまったく関係の無い彼女ルナティアまで一緒にいるのだろうか?

「仕方が無い事ですからネ。仮に組織の輩がいた場合、集団で行動していましたら目立ちますし‥‥‥できるだけ、見かけだけ小規模編成のほうが良いと判断されましたからネ。それから考えて、以前の怪物騒動で共に行動していたルナティアさんに白羽の矢が立ってしまったのデス」
「そうなんだよニャねぇ。あたしも一応森林国の留学生で、他国の者何ニャけど…‥‥」

 より関係ない所の留学生を巻き込んでいいのかと言いたいが、彼女としては別に悪くもないらしい。

 ついでに森林国の方へ急ぎの手紙などで確認したところ、そちらでも問題ないそうだ。

 というのも、森林国でも組織による怪物騒動があり、あの怪物を作り出した組織へ直接手を下せそうなのが良いのだとか。

「猫の獣人、なめるんじゃないニャ。恨み言はばっちり百万倍返しをしておくのニャ!!」
「分かるけど、相当恨んでいるな…‥‥」

 しゅしゅっとシャドーボクシングのように手を突き出し、気合いを入れるルナティア。

 だがしかし、彼女の職業は弓兵なので弓矢メインの戦いであり、殴ることはないとは思うのだが…‥‥

「あ、もしも殴る予定がありましたら、ご主人様のガントレットのサイズダウン版をお貸ししますヨ?」
「お願いするニャ」

…‥‥殴られた相手が確実に複雑どころか粉砕骨折しそうな気がしてきた。というか、召喚獣たちと仲が良いよな。

 


 とにもかくにも、引き受けたからにはしっかりと任務を遂行しなければならない。

 将来の諜報としての予行練習みたいなものだと割り切っておいて、向かうにしても素のままでは色々不味い。

 仮に、組織の手が入っていた場合、俺たちと何度もぶつかり合っているからこそ、見ただけですぐに対応されてしまう可能性があったので、変装して向う。
 
 国に潜り込むのはいいが、自然に潜り込めそうなのは何かと考えた結果、選んだのは商人の変装。

 荷馬車を用意し、適当な商売道具になり得そうな品々を並べ、馬に関しては…‥‥

「というか、これでごまかせるのだろうか‥‥‥‥あとこの被り物が、結構蒸れるんだがマイロード」
「喋る馬な時点でアウトな気がするのニャ」

 馬を借りて向かうのも良いが、臨機応変に対応するには何かひと工夫が必要。

 そこで考えた結果、ケンタウロスであるレイアに牽引してもらいつつ、上半身の人部分を隠す、見た目が完全に馬に見える馬の被り物を着用してもらったが‥‥‥うん、まぁ、多少でかい馬と言えば多分ごまかせると思う。

 とはいえ、ちょっとリアルな見た目にこだわったせいか、少々通気性が悪いようだ。‥‥‥休憩時に脱いでもらおうかな。

 商人風な格好をする俺たちの方は、ささっと鬘やノイン御手製超極薄皮膚スーツとやらを着用したら‥‥‥あっと言う間に、別人の姿になっていた。

「というか、極薄スーツじゃなくても、普通に化粧とかでごまかせそうな‥‥‥」
「雨など降って、落ちる可能性がありましたからネ」

 まぁ、確かに天候とかも予想し切れないこともあるだろうし、万が一のことも考えられる。

 一応、超極薄スーツとなっているらしいが、それなりに防護服としての機能もあるらしいので、ある程度の安全も保障されると考えれば別に良いか。

 しいて言うのであれば…‥‥

「これ、ゼネの幻術だけでもごまかせそうな気がするんだがなぁ」
「対策取られている可能性もあるからのぅ。儂の幻術も、万能って訳でもないのじゃ」

 それもそうかと思いつつ、荷馬車をガランドゥ王国へ向けて進め始める。

 設定的には宝石商人ということにして、宝石をリリスが作ってそれを箱詰めし、検査されても大丈夫なようにしているが…‥‥

「出来れば、ただの集団突発性健忘症が発生するだけのなんでもない国だと良いんだけどなぁ」
「その可能性はないでしょうし、人為的なことが行われていると思いますので、調査をがんばりましょウ」

 何にしても、面倒事をさっさと片付けてしまえば万事解決樽と思いながら、俺たちは向かうのであった。

「ところでリリスの宝石って、顕現制限時間無かったっけ?」
「グゲェグゲェ」
「鍛錬の結果、数日間は確実に出しっぱなし可能になったようですネ」
「鍛錬/実体化時間/長時間化の良い例。見習いたい」

…‥‥でもこれ、仮に売ったら下手すると詐欺にならないかな?いやまぁ、あくまでも商人のフリして入国するだけだから、商売するわけでもないのだが‥‥‥










‥‥‥ガランドゥ王国へディーたちが進路を取って向かっている丁度その頃。

 その王国の中心部に位置する王城では今、国王がある者と対面していた。

「…‥‥具合はどうでございましょうか、陛下?」
「-----」

 その者がそう問いかけると、国王は無言で言葉を返す。

 矛盾しているような言い方だが、確かに無言でありながらも国王の言葉はその空気の重みにのっており、何を言いたいのかすぐに理解させられる。

「そうですかそうですか、ご満足をされていらっしゃるのですね」
「-----」

 にこやかな声でそう口にすれば、国王は返答し、会話がきちんと成り立っている。

 見る者が見れば、たった一人が無言の相手に一方的に語りかけているようにしか見えないのだが、それでも会話が成り立っているのは不思議な光景だろう。

「それならば、次の段階へ移りましょう。ええ、ここまでできたのであれば、まだまだやれることは多いですからねぇ。国王陛下が芸術を永遠に・・・楽しむためにも、時間がそうあるとも限りませんからね」
「-----」

 その言葉に対して、国王が無言で返すと、その者は満足そうにうなずく。

「ではでは、また手術室へどうぞ!さぁ、次はもっと素晴らしい状態になってますよぉ!」


…‥‥そう言うと、国王はその場から移動し、部屋へ向かっていく。

 既に何度も繰り返し、慣れたからこそ無駄のない動きだろう。

 その状態に満足しつつも、その者は国王に続けて共に入っていくのであった…‥‥
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