憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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219 確認作業は欠かせない

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‥‥‥無事に終え、ディーたちが貰ったのは貴族街の一等地にあるとある邸。
 
 タダで将来の拠点を貰えたのはいいかもしれないが、どんな家なのかしっかりと見ておかねばならないだろう。

 そのため、休日を利用して朝っぱらからその一等地にある邸とやらへ訪れて見たのだが‥‥‥‥


「‥‥‥思いのほか、しっかりしているというか」
「結構、豪勢な邸でござるな」
「予想外、ボロボロとか空き家、そう言う風にも見えない」
「いや、そもそも褒美で出されるような屋敷が最悪の状態とかになっているなど普通はないとは思うのじゃが‥‥‥‥」
「それもそうですわね」

 屋敷の門前まで来たのだが、この時点でしっかりと作られており、隙間から見える邸の大きさもかなりある。

 庭も広く、一部には池のようなものも見えつつ、花が一切ない植えるなどすれば見事な花壇に変貌しそうなものも存在している。

 邸本体も外装はしっかりとしており、流石に新築とまではいかないようだが、それでも綺麗に磨けば輝きそうだ。

「ちょっとだけ手入れが行き届いてなかった感じはするけれども…‥‥外観だけでもなんかすごいな」

 自分に語彙力が無いのが悔やまれるが‥‥‥まぁ、それは仕方がないだろう。

 でも、今まで見てきた貴族の屋敷とかに比べると格段に上なのはよく理解でき、どれだけの費用がかけられて作られたのかはちょっと想像したくない。

「というか、こんな邸をぽんっと褒美に出せるのもすごいような‥‥‥」
「事前調査ですと、数代ほど前の国王の隠居地だったようデス」

 元々は王族用の隠居施設だったそうだが、新しい隠居施設が建築されるとともにここは放置に近い形になっていたらしい。

 一応、王族が使っていた邸というのもあって完全放置ではなく、それなりに外壁の塗装工事などもされていたようだが、綺麗に掃除すれば再び人が住まうことができるようだ。

「造り自体もしっかりしているようデス。普通の住宅などに比べて、丁寧に扱えば数十年以上は確実に持ちますネ」
「そこまでか?」
「エエ。中々腕のいい建築家が立てたのでしょうが…‥‥これはめったにお目にかかれないほどの、業物とでも言うべきものでしょウ」

 ノインが絶賛するのも珍しいが、それだけこの屋敷には価値があるようで、褒美としてもかなりの大当たりを引き当てたようなものらしい。

 大金を積んで狙ったとしても巡り合うことはほとんどないレベルだそうで、補修する必要性もないのだとか。

「あ、でもちょっと構造上の問題というべきか、抜け穴もあるようですね‥‥‥‥王族用でしたし、緊急時の避難通路などが存在しているのでしょウ」
「そっちもきちんと把握しないとな…‥‥」

 抜け穴があるという事は、そちらから面倒な賊などが入ってこないとも限らないし、把握した方が良いだろう。

 場合によっては塞ぎつつ、新しく罠を仕掛けるなど侵入者殺しのトラップもできそうだが…‥‥それはまた後で考えればいい。

 ひとまず今は内部に入ってみると、まずはかなりの御広間が用意されていた。

「普通に晩餐会とか舞踏会とか、そう言うのが開けそうだよなぁ…‥‥流石に王城の規模には負けるかもしれないけどね」
「元々王族用ですし、お披露目会などで使用されていたのでしょウ。ああ、あのシャンデリアなども改造すればあれ一つで十分明かりが取れますね」
「部屋もいくつかあるようだな‥‥‥ああ、馬小屋もあるが、生憎こちらは空か」
「流石にそこは用意されていないと思うぜ?」

 まぁ、レイア自身が馬みたいなものだからな…‥‥ケンタウロスだから違うけど、馬小屋は今のところ特に必要なしかな?

「グゲェ、グゲ」
「部屋数、多い。全部探索、ちょっとしてくる」

 リリスとアナスタシアが探検気分なのか、ワクワクしながら先へ進んでいく。

 俺たちの方も、しっかりと全部屋を把握しつつ‥‥‥個人ごとの部屋に出来そうなところを見ておくべきだろうか?

「というか、屋敷の見取り図とかも一緒に褒賞時に渡されていたけど…‥‥部屋数も多いな。貴族用の宿泊施設だと言われても納得できそうだ」
「とはいえ、人数的にはいくつか無駄になりそうですネ。必要のない部屋は閉ざしておいて、物置にでもしておいた方が良さそうデス」
「しかし、こうも見事な造りなのは良いのじゃが…‥‥見取り図内の部屋のいくつかにちょっと妙なのがあるのは何でじゃろうか?」
「よく見ればそうですわね。調理場や執務室なのはいいですけれども…‥‥ドM部屋って何ですの?」


‥‥‥まぁ、王族にも色々あったというか、タンクマンの職業になっていた人もいたようで、その人専用の部屋が作られていたようである。

 そこは流石に踏み入れてはいけない領域だろうし、後でしっかり内装撤去をしてただの空き部屋にしておこう‥‥‥なんか王族のちょっとした闇を垣間見たような気がするが、気にしない方が良いか。


 とにもかくにも、部屋数はどれだけだとか、屋敷内の明かりはどの様な物があり、どれだけ使用可能かなのかなどのチェックもしつつ、気が付けばお昼時になっていた。

「時間が意外にもかかるなぁ…‥‥卒業後に拠点にするとは言え、こりゃ数日掛けて念入りにやっておかなきゃいけないやつだろ」
「一日で全部を把握しきれないのぅ…‥‥しかもコレ、地下にもいくつか部屋を確認できたのじゃ」

 流石に地下室とは言え、組織の手は入ってなかったのは安心できるところだっただろう。

 あの仮面の組織、隙あらばどこかの地下に存在していてもおかしくないからな…‥‥この屋敷の地下の方も十分に警戒できるようにしておいた方が良い。

「ついでに裏手の方に薬草園も見つけましたわ。ここは流石に手入れ仕切られていないようでしたけれども、数日もあれば復活させられますわね」
「池の方も確認し終えたぜー!地下水を湧き水にして流しているようで、濁ってもなく、でっかい魚とかが泳いでいたぞ!」

 カトレアやティアたちもしっかりと周辺を探索していたようで、それぞれの成果が報告されていく。

 というか、ティア、お前の場合水に潜るから水着を着た選択は良いのだが、乾かないうちにシャツを着こむな。


 何にしても、お昼時なのでお腹もすいてきた頃合い。

 せっかくの調理場の存在を確認したので、昼食をそこでノインに作ってもらい、皆で一旦休憩をすることにしたのであった…‥‥

「というか、本当に広いうというか、一部に仕掛けとかあるな」
「隠し部屋に隠し通路、いざという時の脱出ルートなのでしょうが、覚えきれる人がいるのでしょうカ?」
「一部、ホコリまみれだったし‥‥‥存在を忘れ去られている部分もありそうでありんすな」




‥‥‥その話題に出ていた忘れられている部屋が、実はこの屋敷の中にあった。

 その存在に気が付くまで、あと1時間ほど‥‥‥‥

「っと、食料品がまだ残ってますね…‥‥すごいパンパンに膨らんだ缶詰を発見しまシタ」
「それ絶対に開けたらダメな奴じゃないか?というか、限界ギリギリな感じだな‥‥‥文字もボロボロだけど、えーっとしゅ、『シュー‥‥‥」
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