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218 いい仕事にはいい仕事で

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……仮面の組織の者たちの捕縛を終えて1週間後。

 様々な情報やそれらの信憑性を確かめる検証が行われていたようだが、本日ようやく褒賞が渡される日となった。

 王城内で開かれ、作戦に関わった者たちが得た功績によって、各自に褒賞が渡される。

 ある者は報奨金、またある者は土地に地位など、今回の作戦によって得られた者は多いようだ。

 そしてしっかりと、ディーたちが押し付けた功績が混ざっている者たちもおり、少々戸惑っているような部分が見受けられるが、それでも受け取らせつつ…‥‥



「‥‥‥では次に、ディー・フォン・ゼロス城伯よ、前に出よ」
「はっ」

 名前を呼ばれ、褒賞を渡される場へ俺は出る。

 会場内では、またあの者かとか今回も何かやったのかとかいう視線を感じたり声が聞こえたりするが、それは気にしない。

 国王の前に跪き、大人しくその褒賞の時まで待てばいいだけの話だ。

「城伯よ、半年ほど前になるがあの時からまた功績も積み重ねたようであり、その功績の数々は‥‥‥」


 つらつらつらと、今回の褒賞を与える理由を国王は述べていくが、その内容を聞いていると自分でも色々とツッコミ入れたい気分になる。

 それもそうだろう。組織の研究所発見や、証拠の隠蔽されている現状、大公爵家の息子入れ替わり事件‥‥‥様々な事件に巻き込まれまくっていたのだから。

 というか、研究所の方に関しては攫われて薬を投与されて危く亡き者になりかけた経緯もあるし、こうして思い返させられるとよく俺は生き残っていたなと思えてしまう。

‥‥‥まぁ、後遺症で白髪であり、瞳が真っ赤に染まった程度で済んでいるのも幸運なのかもしれない。その容姿の変貌のせいで、なんか最近『美女召喚の召喚士』などという噂から『学園の白いインキュバス』なんて言われているらしいけれどな。何故インキュバス‥‥‥‥


 それはともかくとして、その他にも激臭の怪物に狂愛の怪物‥‥‥いや、後者はゼネの妹だったしそれは組織関連ではないとは思いたいが、なんとか生きていることだけでも幸運だろう。


「---であるからして、これほどまでの功績も積み重ねつつ、今回の作戦でも功績を立てている…‥‥まぁ、補助の役目が目立っていたようで、実際の捕縛平均数は他の者よりも少ないが‥‥‥」
(ん?)

 なんか気が付いたら今回の作戦部分まで来たが…‥‥何やら嫌な予感しかしないような。

「‥‥その捕縛のための補助が無ければ、より多くを取り逃していた可能性があるだろう。そしてその逃げた者たちがより大きな被害を生み出す種になったかもしれないと考えるのであれば、その功績も非常に大きいのではあるまいか?自身の功績よりも、他者への気遣いを増やし、未来に起こり得たであろう被害の数々を減らしたという事にもなるのだからな」
「…‥‥」

‥‥‥嫌な予感、今まさに的中しかけているような。

 というか、そう言う解釈があったか‥‥‥!?功績押し付けのために、まずは捕縛を他の人に多く任せたつもりが、手助けをした=未来への被害を減らすのに役立ったとか、そう言う意味合いにとられたのかよ!!


 平然としつつ、内心冷や汗をドバドバ流し始めつつ、功績に対する褒賞の内容が出される。

「また、以前の式からさらに功績を積み重ねたというのもあり…‥‥今後の事を考えると、より大きな褒賞を今のうちに与えた方が良いだろう。ゆえに、その褒賞に何がふさわしいのか議論を行い、様々なことを決めようとしたが‥‥‥できれば国につなぎとめる手段として、誰かと婚約させようとも考えはした」
「!?」

 その言葉が国王から出された途端、瞬時に周囲の気温が下がったような気がした。

 なんとなく、召喚獣たちからの視線の圧力があったような…‥‥いや、振り返りたくないなぁ。

「だが、それでは本人の意思なども尊重し切っておらず、ならば領地や爵位を与えようかとも思ったが‥‥それでは不十分かもしれぬ。だからこそ、将来性を考えると‥‥‥先ずは城伯には、住まう場所が必要になるのではないかと思った」

 いわく、将来的に諜報系統の職に就くのであれば、帰還した際の家があった方が良い。

 各地に拠点を作るのもありなのだが、それ以外での本当の居場所としての家があった方が良いのではないかと思ったらしい。

「なので、今回城伯には学園卒業後の活動拠点ともなり得る居場所を与えよう。この都市内にある貴族街の一等地に、将来的な拠点としての屋敷を褒美として与えよう」
「はっ」

…‥‥思ったよりも、普通な褒美で内心安堵しまくった。

 冷え切った空気はすぐに戻ったが…‥‥うん、婚約云々は流石に冗談とかであってほしいような気がする。

 それはともかくとして、褒美としての屋敷か‥‥‥‥まぁ、確かにあった方が良いのかもしれない。

 将来的に各地を転々と移動していくこともあるだろうが、帰る家は必要だからね。いつまでも実家に居続けるわけにもいかないし、都合が良いだろう。

 とにもかくにも、功績の割にはちょっと低めでありつつ安心できる条件の褒美をもらえたことに、俺たちは満足するのであった。



 だがしかし、それはまだ甘かった。

 貴族街の一等地にある邸ということだが‥‥‥‥一等地だけに、ただの屋敷では済まないという事を知らなかったのだ。

 そしてついでに言うのであれば、改造しがいのありそうな家であったがゆえに、ノインたちがいろいろ手を加えてしまうのだが…‥‥今の俺は、まだその事に考えが至らないのであった‥‥‥‥





「…‥‥なんか父上、今回はまともな案を出してきたな」
「ああ、てっきりまた爵位の授与や、婚約などでとんでもない所から引っぱって来るかと思ったが‥‥‥」

‥‥‥そしてまた、国王の今回の褒美内容に王子たちが首をかしげていたが、この式の後に国王に話を聞いて、ツッコミを入れる羽目になる事も知る由は無いのであった。
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