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214 精鋭部隊だけあって

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―――仮面の組織フェイスマスクの者たちが集まる場所。

 その周辺にて、見張りの者がいる中、ディーたちは待機していた。


「‥‥‥こちら城伯、城伯、通信状態はどうか応答を頼む」
『こちら副隊長、応答を確認』

‥‥‥何と言うか、手に持ったこの小さな箱に声をかけただけで、こうやってやり取りできるのはちょっと不思議に思えてしまうが‥‥‥

『確認したのはいいが、本当に声が届いているだろか?』
「ああ、間違いなく届いている‥‥‥不安だった気持ちは分かる」

 話し相手になっている、今回の作戦で選出された精鋭部隊の副隊長に対して、俺はそう返答する。

 今回の作戦で、いくら相手が色々と国内でやらかしてきた組織だからこそ、全力で叩き潰すために様々な案が出されつつ…‥‥協力のためにノインがお手製の道具を貸し出したが、その道具のやらかし具合に対しての思いは同情するだろう。

 彼女の作り出す道具は、組織を徹底的に叩き潰すために事前に作っていたらしいが‥‥‥この小型通信機とか、未知のものはどうなんだろうか。



‥‥‥思いかえすと、作戦実行前の顔合わせの場にて、全員が実力を出すために色々と用意してきたのか山積みの道具を持ってきた時の表情が、全員同じだった。

「性能は事前テスト済みデス。妨害電波対策なども施していますが、ひとまずこれで簡単な連絡は取れるでしょウ」
「‥‥‥連絡手段で、確かにバラバラになってもすぐに取れるのは良いが‥‥‥」
「これ、一つだけでもとんでもない道具になっているよね?」

 まったくもって、おっしゃる通りです。

 いや、確かにまぁ今回の殲滅作戦で組織の根幹部分を確保できなかったとしても、徹底的に搾り取って今後に生かしたいとか、あるいはこれで潰しまくった結果を堂々と見せつけて組織そのものを沈下させたいなぁ等、密かに思ってはいた。

 薬を打たれ、生死の境をさまよったことがあったゆえに、個人的な恨みがたっぷりだったが‥‥‥

 けれどもノインが今回持ち込んできたというか、全員に貸し出すことにしたという道具、どれもこれも流出したら結構ヤヴァイ類が多かった。


 怪物の溶解液・毒液・なんかその他ヤバイ液体対策を想定してコーティングされた特殊金属鎧に、俺の装備品の中にあるものの量産型特殊繊維スーツ。

 今使っている、遠距離でも通信して連絡可能になる小型通信機。

 火力を増すために様々な細工を施したようで、その場で皆が試し切りを見守った後あっけにとられた、おかしい切れ味の剣。

 その他、不可視・実体無し・集団などを相手に想定した装備品の数々も出してきたのだが‥‥‥これは流石にやり過ぎである。

 確かに徹底的な殲滅は可能だが、オーバーキルというやつになると確実に言えるだろう。

「というかノイン、いつの間にこんなものを作って来た?」
「何時と言われましても、以前からデス。大規模掃討作戦が行われるのを想定しまして、事前に準備してきたのデス」
「グゲェ、グゲグゲェ」
「ええ、リリスの箱の中には保管せずに、私が個人的に保有していまシタ。保管してもらうこともできましたが、これはこれで新鮮味のある驚きになるとも思いましたからネ」

 淡々と返答しながらも、どこか自信のある雰囲気を感じさせる彼女に、その場にいた者たちは唖然とする。まずどこにどうやって保管していたのか…‥‥いや、その保管方法も聞いたらツッコミどころ満載な気がする。

「これ、下手に国外で使われたら大問題になりかけるな」
「‥‥‥ディー君、彼女が君の召喚獣で良かったと今物凄く思えているんだけど」
「それは俺も同じです」

 王子たちのその言葉には、全員うんうんと深く頷いていたなぁ…‥‥ここまで過激に備える方がむしろ十分だと全員納得できたから良いか。

 それに、今回限りの貸し出しであり、作戦終了後には回収することにしている。

 下手に強力な武器を持つと、おかしくなる人も出る可能性も考慮してだ。戦争に使われる可能性もあるだろうが、そうそう使いたくもないし、力というモノには責任があるからな。

 とはいえ、王子たちからは終了後の絶対回収を漏れなくやるようにと念を押されたし、油断せずに気を引き締めておいた方が良い。

 ついでに功績押し付け枠都合のいい生贄に関しても、あの顔合わせの場で確認したし‥‥‥問題あるまい。

 ああ、しいて言うのであれば、ノインのその道具のやらかしの数々に感化されたのか現在…‥‥





「‥‥‥地下系統、及び地表植物より連絡ですわ。人数をある程度確認し、ココへ向かっているようですわね」
「主殿に報告でござる。上空より確認したでござるが、間違いなく仮面をつけた集団が馬車や徒歩などで接近していたでござるよ」
「ちょこっと気配を消して近寄って見たでありんすが、武器らしきものは確認できなかったでありんす。とは言え、隠し持っている可能性もあるようでありんすし、まだ油断できないでありんす」

‥‥‥他の召喚獣たちも、前夜から気合いを入れていたが、今はそれ以上のやる気を見せているようだ。

 詳細な状況把握、相手の人数や戦力など、様々な情報がすぐに通信機を通じて待機している精鋭部隊に送られていく。

 それ故に、決行前に確認し合っていた作戦内容に少々修正を加えやすく、より完璧な作戦が出来上がっていく。

「‥‥‥流石にこれで、へまが無ければ確実だろうけれども…‥‥っと、そう言えばノイン、ゼネたちからは?」
「先ほど連絡がありまシタ。予想通り・・・・であり、対処に移るようデス」
「わかった。それならこっちも安心できるからな」

 こういう大規模な作戦を行う際には、様々な想定も必要になる。

 そしてその想定内容の一つが当たってしまったようで、その対処に召喚獣たちの一部を向かわせるのであった…‥‥











「‥‥‥ふむ、予想通りじゃな」
「そのようだぜ。バレてないと思っているようだが…‥‥こうしてみると滑稽だなぁ」
「大道芸をやったけれど、彼らのあれも大道芸に通じそうだが…‥‥どうなんだろうか?

 ディーたちと離れたとある場所にて、ゼネとティア、レイアはそうつぶやき合う。

 彼女達の向けている視線の先には、鎧を着こなした者たちがいる。

 ただしそれは、今回の作戦の精鋭部隊に渡したものではなく、渡す前に精鋭部隊が着ていた類に類似したものだ。


 必死になって走っており、どうやら彼らの仲間の元へ駆け込む気のようだが…‥‥そうは問屋が卸さない。

「せいやっ!」

 ティアがナイフを持ち、投擲すると彼らの足元へ刺さり、盛大に転ばせた。


「いだぁぁあっ!?」
「な、なんだ今のは!!」

 いきなりの転倒に何が起きたのか理解できずに混乱したかのような叫びを見せるが、それは大きな隙。

 彼らが体を起こそうとしたその時には、既にゼネが前に立っており、手をそれぞれの頭に置いていた。

「よいしょっと」

 軽く掛け声を上げ、手を持ち上げるとズボッという音と共に彼らの中から何がか引っこ抜かれ、体の力が抜けたのか再び地面に伏した。

‥‥‥そう、ゼネが今行ったのは、彼らの魂を引っこ抜くだけの単純なお仕事。

 なぜそのような事をするのかと言えば‥‥‥‥

「‥‥‥うむ、当たりじゃな。こやつら、情報を流そうとしていた輩の手の者のようじゃな」
「類似品を装備している時点で、怪しい者とは思っていたが‥‥‥やっぱりそうか」

 ナイフを地面から引っこ抜きつつ、動かなくなった彼らの体をレイアは持ち上げ、あらかじめ用意していたノイン御手製リアカーに乗せた。

「どうやら紛れ込みつつ、妨害・情報漏洩・その他などをやろうとしていたようじゃが‥‥‥‥まぁ、ノインの鎧のせいで紛れ込もうにも明らかに違うものになって狼狽していたようじゃな。近場まで来て、せめてできる限りの情報をとも思ったようじゃが‥‥‥甘いのぅ」
「ここで情報を集めずに逃げればまだどうにかなったのに、馬鹿か?」
「無理無さそうだぜ。こいつら自体、無理やり雇われたというか、より内部の方から来ていたというか…‥‥まぁ、これの背後の輩たちは終わりだろうな」

 魂を引っこ抜かれた体を哀れそうに見つつ、彼女達はそれらを証拠として王子たちの元へ直ぐに輸送する。

 すぐにディーから召喚されて動く時があるだろうが、その前に面倒ごとの種になりそうなものはさっさと片付けた方が良いという事で、こうやって回収しに来たが…‥‥こういう輩が潜り込もうとしていた時点で、どこかで情報が流れているのは間違いないだろう。

 情報通りにフェイスマスクの者たちが来たようだが、ある程度の対策を隠し持っている可能性が大きくなったので、警戒を緩めないように連絡を送っておくのであった。

「まぁ、その対策もどういうものかは気になるな」
「いつぞやかの媚薬ガスは対策済みじゃが‥‥‥‥どういう手で来るかのぅ?」
「そういう手が来るよりも前に、ぶっとばせばいい話しじゃ無いか?」

‥‥‥何にしても、油断は出来ないだろう。大勢の捕縛ができる機会という事は、その分大勢を相手取る必要があるということなのだから…‥‥
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