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210 人によっては色々と

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‥‥‥清掃バイトというのも、案外悪くはない。

 と言っても、建物の内部ではなく外観部分であるからこそ細かくし過ぎずに済むし、やれる人であれば結構いい感じにできるが…‥‥

「‥‥‥何でバイト早々、雨になるのやら」
「仕方がないニャ。止むまでできないのニャ」

 本日もバイトをこなそうとした矢先に、まさかの雨が降り始めた。

 流石に滑りやすくなったりするので、天候が変わった時は待機状態となり、天候の回復が見込めなければ給与無し。

 それを考えるとできるだけ晴れていてくれた方がありがたいが…‥‥まぁ、こればっかりは天気次第だからなぁ。

「流石に天候を変える事もできないし、大人しく待つしかないか」
「出来たら出来たで、大問題な気がするのは気のせいかニャ?」

 うん、気のせいではないとは思う。でも、天気を変えることは流石にできないだろう。

 ああ、ノインたちでさえもおそらくは出来…‥‥あ、いや、考えるのをやめておこう。なんか彼女達ならできかねないと思ってしまったけど、やらかすのは勘弁したい。俺、彼女達のやらかし具合をよーく学んでいる。


 とにもかくにも、一時的なバイトの中止状態に、この空いた時間をどうするべきか、ルナティアと悩む。

 ノインたちがやっているであろう大道芸の舞台の方に向かうのは‥‥‥無いな。繁盛しているらしいが、直接見に行くのもちょっと怖い。

 大盛況というが、彼女達の容姿もあるだろうし、そこにある時の俺が行くと学園以上の怨嗟の視線が飛んできそうである。ある程度なら平気だが、そうなるほど慣れている自分もどうなんだろうか…‥‥

「どうしたものかなぁ」
「取りあえず、そこの店で大人しくお茶でも飲んで待とうかニャ?」

 仕方がないので、雨宿りも兼ねて、俺たちは近場の飲食店に入店した。


「んー、お金自体はそう気にしなくていいけど‥‥‥雨が早くやんでほしい。バイトしたいのにバイトできないとはこれいかに」
「同感だニャ。こういう雨のあとなら濡れていてより洗うのも楽だろうし、出来れば今日の依頼は今日中に片付けたいニャ」

 はぁっとルナティアと揃って溜息を吐きつつ、注文したジュースを飲んでいた…‥‥その時であった。

「あれ?」
「どうしたのニャ?」

 ふと、俺は店内から外を見ている中で、気が付いたことがあったので思わずそう声に出していた。

 外には人が雨ながらも雨具や傘を使って行き交っているが…‥‥その中に何やら仮面をつけた人たちがいたような気がしたのだ。

「…‥‥いや、流石に決めつけも‥‥‥するか」

 いくら何でも、人込みの中を堂々と仮面をつけて歩く人達なんぞいるわけもない。

 いるとすれば当然、例の仮面の組織フェイスマスクの者たちである可能性が非常に高いのだが‥‥‥今、見かけた者たちはその可能性が高い。

「ルナティア、さっき外に仮面の組織の者たちらしい奴らがいた」
「仮面の‥‥‥ああ、フェイスマスクのやつかニャ」

 俺の言葉に、彼女の表情が厳しくなる。

 それもそうだろう、彼女の出身国である森林国は、一度組織の手によって大迷惑を被ったことがあったのだから。

 あの怪物騒動によって動力源にされていたこともあっただろうし、ルナティアにとってはフェイスマスク自体を潰したいようだ。

「でも、なんでそんなやつらがいたのニャ?」
「目的まではまだわからんが…‥‥でも、なんか妙だな?」

 流石に何度も何度もこの国内で仮面の組織が猛威をというか、迷惑をかけまくってきたことによって、仮面の組織に対する警戒などは国自体が相当しているはずである。

 国内に入らないようにしていたり、衛兵たちには仮面の者がいたらすぐに連行したりするようになど、少々過激かもしれない警戒が常に張られているはずなのだが…‥‥そんな中を突破できたのだろうか?

 流石に無いとは思うのだが…‥‥もしかすると、衛兵とかその他貴族とかで、組織について公表があったとしても繋がりを持っているやつらがいるのかもしれない。

 研究所から得た資料などで、取引先などになっていたところは捜査されていたはずだが‥‥‥潜んでいてもおかしくはないだろう。あとはまぁ、賄賂とか渡されて通したり、あるいは組織とは違う仮面変人集団だったりとか‥‥‥それはないか。


「ルナティア、すぐに衛兵か学園にいるだろう王子たちの方へ連絡してくれないか?」
「ディーはどうするのニャ?」
「俺の方は、彼女達を召喚して追跡するよ。流石に危ない橋は渡りたくないから、ある程度で引き上げるけどな。ああ、場所などが分かったら召喚獣を向かわせる」

 経験上、ろくでもなさすぎる組織だからな…‥‥下手に暴れられても厄介だし、何かをやらかされる前に撤退するべきである。

 窮鼠猫を噛むというように、下手に気が付かれて追い込んでしまったら、本気で何をしでかすのかもわからない。


 だからこそ、慎重に追跡するだけだ。

「とりあえず、『召喚、ノイン、ルビー!』」

 今はまず、追跡に関してはこの二人を呼んでからにしよう。他の皆も、追跡の合間にちょっとずつ呼んで、バレないようにやっていかないとな…‥‥

「及びでしょうカ、ご主人様」
「何かあったのでござろうか?」
「仮面の組織らしい奴らを発見した。そいつらの追跡を行う」
「「了解」」

…‥‥これだけですぐに理解してもらえるのは良いな。ただ、大道芸中だったのか燃える瓶をジャグリングしているのは危なかったが。

 そもそも、危なそうな芸などはしないようにと言っておいたはずだが…‥‥あ、でも彼女達にとっての危ない基準ってどこかズレて…‥‥あとで話し合うか。

「とりあえず、その火炎瓶を片付けてくれ」
「了解デス」

 ああ、万が一の戦闘になったらそれを投げつけて逃亡を図るのもありか。

 そう思いつつも、俺たちは仮面の不審者共の追跡をし始めるのであった‥‥‥
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