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208 やれることは意外にも

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‥‥‥召喚時に起きていた問題点を見つめ直し、まずは全員から一度ある程度距離を取る時間を設けようと思い、ディーは放課後にバイトを始めた。

 どのようなバイトが良いのかを考えつつ、相談できる相手としては流石に王族である王子たちの方には分からないこともあるだろうと思ったので、一番身近な人で聞けそうな相手を探すとルナティアがいた。

 留学生としてここに来ている彼女ではあるが、小遣い稼ぎのために自分でバイトをすることもあるらしく、そこで彼女に良いバイト紹介を頼んだところ…‥‥



「‥‥‥これもバイトなのか?」
「バイトだニャ」

‥‥‥ある程度考えていたバイトは、飲食店街などでウェイターなどの接客業。

 だが、今日彼女に紹介されたバイトは‥‥‥

「大掃除というか、何と言うか‥‥‥清掃屋か」
「でもやりやすく、お手軽なのは間違いないのニャ。室外というか、建物の外壁・屋根限定なのもあるかもニャ」

 街中にある建物で、依頼があったところの清掃を行う清掃屋。

 建物の外見というのは店にとってはかなり大切な物でもあり、汚れている場所には誰も近付きたくはないからこそ、外観だけでもきれいにするためのバイトが存在しているのだとか。

 なお、外壁や屋根の掃除を行うだけに、ある程度身軽だったり、あるいは落ちても大丈夫なように用心など心がけられる人だけにというような制限があったが‥‥‥ルナティアや俺にとっては問題ない。

 彼女は猫の獣人なだけあってかなり身軽であり、ひょいひょいっという間に壁を駆け上がっていたりするし、俺の方はそれなりに諜報としても潜入捜査などで必要になるからこそ、対応できるようにちょっとした体技なども身に付けているので問題ない。

 というか、ノイン御手製装備で空を飛んだりホバリングしたり、あるいはひっついたりできるのでうってつけすぎる。ガントレットも改良してモップが出たりと便利でもあるからな。

 ‥‥‥何でこの変型があるのかが疑問だが、どうも前にあったゲイザー騒動の事を頭に置いているそうで、もし同じような個体が出たらその眼球にごしごしと…‥‥いや、想像すると結構えぐいのでやめておこう。ドリルで攻撃ってのもあるけど、それは今関係ない。

 何にしてもこのバイトは俺たちにとっては中々お手軽な物であり、苦労もさほどない。

 外壁なども軽く水洗いを先にした後に洗剤などで磨いていけばいいし、職人技とかは必要ないのだ。


…‥‥まぁ、本当はもっと専門的にその道を究めまくったすごいプロの人もいるらしいが、値段的に安く済むって言うのもあってこのバイトを頼む人はそれなりにいるらしい。

 人が行き交う大通りの店とか、賑わう分汚れやすくもあり、需要もしっかり存在する。

 

 何にしてもちょうどいいバイトなだけあって、結構楽ではあるだろう。

 掃除のプロを考えるとノインとかを召喚した方が良いかもしれないが…‥‥この時間帯は、彼女達には呼ばれるまで別の事をしてもらっているしね。

「そう言えば、ノインさんたちとかはどうしているのニャ?普段一緒なのに、見かけないのニャ」
「一応、将来を考えて、とある手段をちょっと実践してもらい中なんだよ。召喚を行き成りしても問題無かったりするようにかつ、ある程度は対応できるようにまとめてやってもらう方法を試しているんだ」

 うまいこと言えば、将来的な諜報の仕事時にやれる稼ぐ手段や情報収集手段としても良いものになるはずだが‥‥‥大丈夫かなぁ?









「将来的な諜報のために、日常に紛れ込むという手段でこれを使用して、今実践してますガ‥‥‥」
「忙しいですわね。思いのほか大盛況ですわ」

 ディーがバイトに励んでいる丁度その頃、ノインたちは彼女たちなりに動いていた。

 いつでも召喚されても大丈夫なように、なおかつ自分達でもある程度働くという事を経験するために、出した案。

 それは…‥‥

「さぁさぁ、よってらっしゃいみてらっしゃいでござるよ!」
「ただ今やっているのは、剣技槍技の舞踏じゃ!」

 キィンカァンっと打ち合う火花に、ぶつかり合う者たち。

 簡易的に作られた舞台ながらも、その上でまるで踊っているかのように魅せる戦いは、観客たちの目を惹きつける。

「とっと、危なかったな!!だが、速度ならこっちも自信があるぜ!!」
「ふふん、魅せる事を忘れてないだろうか?早すぎてもいけないことを、こちらが教えよう!」

 ちょっと調子に乗って技を見せ合うティアとレイアの武闘の武闘に、周囲で見ていた人たちは拍手喝さいを送る。

 そう、今彼女達は将来的な諜報用の移動手段兼情報収集手段として扱えそうな‥‥‥大道芸を行っているのだ。

 もちろん、本職の大道芸人などには負けはするが、その分を彼女達の技術や特技、容姿で補っている。

 食材を華麗に調理して振舞ったり、花を咲きほこらせて魅せつけたり、疲れ気味な人には舞台上に出てもらって施術を施して回復させたりと、各自のできる事を活かしているのだ。

 まぁ、目立ちすぎるのも不味いと考えるので、ゼネの幻術でちょっとは記憶に残りにくいようにしていたりするが…‥‥それでも、大盛況にはなってしまった。

 一応、万が一ディーが各自ごとに召喚しても、大道芸だからできイリュージョンとしてごまかしたり、各自がすぐに出て穴を埋めるなどができるので、そう悪くはないだろう。

 それに、ディーのバイト状態をノインの頭のアホ毛センサーが常にロックオンして監視しており、終わると共に直ぐに撤収できるようにしているのである。


 何にしても、試しにやってみた大道芸という方法だが、思いのほか売れてはいる。

 料金に関しても各演目ごとに細かく設定しつつ、穴が空いたらすぐに払い戻しができるようにしているのだが‥‥‥

「‥‥‥グゲェ、グゲェグェ」
「おおぅ、ちょっとこれは予想外というか‥‥‥術があっても目立ってしまうのぅ。うーむ、ちょっと変えぬと諜報には使いづらくないかのぅ?」

 料金計算を裏手で行っているリリスにゼネは、現時点で稼げた金額を数え終え、その結果に唖然とさせられる。

 熟練の大道芸人には負けるだろうと思っていたが…‥‥下手するとこれだけで一生食いつなげそうなほどだったのだ。

「御前様が仮に諜報になれなかったら、これで稼ぐのもありそうじゃな」

 何にしても、料金を取る以上はきちんとお客に対してその分の魅力を見せなければいけないだろう。

 そう思いつつ、彼女達はディーが召喚する時まで稼ぐのを少し楽しんでしまうのであった‥‥‥‥


「というか、個人ごとに店を開いた方が稼げるとは思うのじゃが…‥‥」
「グゲェ、グゲ」
「まぁそうじゃな。御前様のバイト中なら、こっちもそこまで稼ぐとは考えずに、気楽にやればいいのじゃろう」
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