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185 降り積もり、かき分けて
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‥‥‥実家に帰郷して4日目。
どうやら予想通りというか、例年以上に雪の降り積もる時が早かったようで、朝起きて窓の外を見たら、一面銀世界に変わっていた。
「なんとなく、ベッドから出にくいなぁ‥‥‥」
さっさっと部屋の窓から見終え、直ぐに俺はベッドの中に潜り込む。
ノインの手によって室内もある程度は改造され、空調設備があり、快適な気温設定はされているはずなのだが…‥‥これは気分的なものであろう。
うん、まぁどうせ今は休みでもあるし、普通に入り込んでいても良い。
朝食ができるまで、すぽっと入り込んでいるのも良いのかもしれない…‥‥
「いやっふぅー!!」
っと、何やら聞き覚えがありつつ、普段しないだろうなぁというような印象を持った声が、外から聞こえてきた。
気になったので、再びベッドから出て窓の外を見れば、降り積もった雪の上に、アナスタシアが駆け抜けていた。
流石雪女というべきか、まだ雪がちらちらっと降ってくる中で、朝っぱらからはしゃげているというべきか、テンションが急上昇しているというべきか…‥‥うん、まぁ、元気だからいいか。
そんな声を聴くと、気分的に平気になってきたので、さっさと朝食が用意されている場へ向かうのであった。
「‥‥‥っと、思った以上に積もっていたな」
「むぅ、陸上を歩けるようになって早々に、これとはツイてないぜ」
防寒具を備え、俺たちは外に出て見たが…‥‥それなりに雪は深いようだ。
一晩で積もっていたようで、まだ雪が降っているし、まだまだ積もる可能性は大きい。
そして見れば、村のあちこちでは既に雪かきの作業が行われ始めていたので、俺たちも雪かきに取り掛かり始める。
「よっせ、わっせっと…‥‥シャベルでそれなりにかけるけど、もっとグワッとやりたいな」
「拙者の火で、溶かした方が良いでござるかね?」
「いや、それはやめた方が良いな」
確かに雪は火で溶けるが‥‥‥その分水まみれになるし、この寒い中で濡れたら最悪である。
しかも、場合によってはそのまま凍結して、雪かきしづらくなるので、安直にその手法は取れないだろう。
「んー、神聖国の方はここまで積もらないのじゃが…‥‥ここ、山の近くでもあるしやっぱり積もるんじゃなぁ」
「とはいえ、この程度は特に支障にならんし、こっちの方が雪かきしやすいな」
魔法で雪を横にどかしているゼネや、馬に装備する雪かき用の道具をレイアが装備して雪かきを行い、互にそう口にしあう。
「なんというか、寒いですわね…‥‥防寒具を着ていても、見ている方が冷たいですわ」
「まぁ、この程度なら普通にどかせますがネ」
木の根を地面から生やして、その勢いで雪をふっ飛ばしていくカトレアに、何やらドドドっと音を出しながら雪を猛烈な勢いでどかしていくノイン‥‥‥いや、ちょっと待って?
「ノイン、それ何?」
「私の雪かき機デス。メイドたるもの、一気に雪をふっ飛ばせる装備を持つのも嗜みなのデス」
「‥‥‥それってさ、他にもないの?それ使えば、全員の雪かきの効率が上がるような‥‥‥」
「…‥‥あ、言われてみればそうですネ」
道具変更。
思った以上に天然ボケをかまされた感があるが、ノインの出してくれたスペアの雪かき機‥‥‥すごい効率が良かった。
雪道の上を通らせるだけで、機械が勝手に雪を吸い込んでいき、猛烈な勢いで横に排出していく。
人に当たらないように注意しつつ、やっていくのだけれども効率が凄まじい。
「‥‥‥さっきまで、人力でやっていた苦労は一体…‥‥」
「何か、スイマセン」
まぁ、結構楽にできるし、文句を言う意味はない。
というか…‥‥
「リザ、全然見ないな」
「部屋にこもりましたわ。防寒具を着ていても、冬眠すると…‥‥」
「アナスタシアはどこ行った?」
「拙者が見る限りでは、森の方に行ってしまったでござるな。テンション高いままで、一応人を気遣っているのか雪道を作りながら進んだようでござる」
どれどれっと見てみれば、確かに森の方に続いて雪が横に集められ、きちんとした雪道が出来上がっていた。
考えて見れば、彼女雪女だし、雪かきぐらい容易い事だったんじゃ…‥‥召喚してこの場に戻そうかと思ったが、やっている現状だとそれは意味が無いな。
「グゲェ♪グゲェ♪」
「あははは!!雪合戦楽しー!!」
っと、雪かきをしていた傍らで、リリスは妹と雪合戦をして楽しんでいた。
ついでに村の他の子供たちも混ざって、一緒に楽しんでいるようだが‥‥‥あ、バルンのやつがどこからともなく表れて混ざった。
「どっせぇい!!」
「ぎゃあああああああ!?」
「なんか吹っ飛んだぁぁぁあ!?」
混ざって早々、バルンが星になった。
よく見れば、いつの間にかティアが大きな雪玉を持ってぶん投げて混ざっている‥‥‥あいつ、あれを投げたのか?
バルンを星にしたのはどうでもいいが、あれはちょっと危険すぎるような‥‥‥あ、リリスが箱の収納で全部雪玉奪った。
どうするのかと思っていたら、一旦箱を閉じて…‥‥
「グゲェイ!!」
「のわぁぁぁ!?」
中で雪玉を集めて圧縮したのか、それを一気に吐き出し、ティアにぶつけた。
「なんの!!この程度平気だぜ!!」
ばっと足をサメの尾っぽに切り替え、叩きつけて雪玉を粉砕してしまう。
「‥‥‥ある程度終わったら、俺たちも混ざるか」
「そうしましょう。雪玉づくりには雪も必要ですし、遊びながら雪かきをできますわね」
「拙者もあれに混ざりたいでござる」
雪かきもある程度したし…‥‥あの中に混ざって良いかもしれない。
そう思い、俺たちは雪合戦場へ向かうのであった…‥‥
「あ、ご主人様。この1秒に雪玉1000発発射可能なスノーガトリング、使いますカ?」
「そこまで本気の奴は使わないぞ」
「‥‥‥ふぅ、やっぱりこの時期は活動しづらいでありんすなぁ」
「あらあら、召喚獣なのに、寒さに弱いのかしら?」
「ダーリンの母上よ、召喚獣と言っても色々あるんでありんすよ」
雪合戦にディーたちが混ざり、途中でノインとカトレアの喧嘩が始まってカオスになり始めてきた丁度その頃、家の中では部屋からようやく出てきたリザが、ディーの母と話していた。
椅子に腰かけつつ、用意してくれた温かいお茶を飲み、ほっと一息を突く。
「わっち、元々蛇のモンスターでありんすからなぁ‥‥‥人型に近いとはいえ、それでもこういう時期は、冬眠したくなるのでありんすよ。眠気もあるというか、本能的なものというか…‥‥」
「防寒具を着ていても、ダメなのね?」
「そうでありんす。ある程度は活動できるでありんすが、わっちの場合は‥‥‥」
ディーの母に説明するように、自身の体に指をさすリザ。
その指の先にあるのは、自身の下半身の蛇の胴体である。
「‥‥こっちが一番冷えるのでありんすよね」
「あらあら、それは確かにそうかもねぇ。何かと不便な事もあるのね」
「そうでありんすよ」
人の体に近くなったことで、手で物を持てたり、マッサージの際に全身を使う以外の手法も取れるようになったという利点などは多いだろう。
とはいえ、それでも残る元の蛇部分があり、そこでどうしても冬眠の体制に入ってしまいたくなるのだ。
「今でこそ、室内の空調がノインによって取り付けられ、快適ではありんすけれど、ちょっと不便でありんすねぇ‥‥‥本当は外で、ダーリンたちと共に遊びたいでありんすが‥‥‥」
はぁっと彼女は溜息を吐きつつ、空になったコップを机の上に置く。
「それは難しい問題なのかしらね…‥‥ああ、でも、外で遊べなくても貴女にはできることがあるじゃない」
その様子を見て、少し考え、ディーの母が何かを思いついたように口に出した。
「なんでありんすか?」
「あの子たち、今外で雪合戦して遊んでいるじゃない?」
「そうでありんすね。窓から見えるでありんすし‥‥‥あ、巻き添え喰らったレイアが、雪玉を転がして特大サイズので反撃しようとしているでありんすな」
「そうそう、で、その雪合戦って温まるけれども、雪が隙間から入って、濡れやすいのよ。そうすると、結構寒いのよね」
「まぁ、確かにそうかもしれないでありんすが‥‥‥」
今度は雪玉作成中のレイアの側で、テンションを上げて駆けまわって来たらしいアナスタシアが戻って来て、雪女の本領を発揮し始めている光景を見ながら、リザはそう答える。
「だったら、今ここで出来る限り、貴女の体温を上げて、触るだけで物凄く温かくすればいいのよ」
「それがどうしたでありんすか?」
「もぅ、中々察しの悪い子ね。その温かい体で、貴女の主である私の息子を温めてあげればいいんじゃないかって、言っているのよ」
「‥‥‥あ、その手段、あったでありんすな!」
ディーの母の言葉に、ようやく察することができて納得するリザ。
外の方では一気に猛吹雪が吹き荒れ、ようやく戻ってこれたらしいバルンが宙を舞っていくが、そんなことはどうでもいい。
「ダーリンを温めるために、わっちが温まっておくのもいいでありんす!ありがとう、ダーリンの母上!」
「ふふふ、どういたしまして。息子の可愛らしい召喚獣のリザさん」
なかなかいい案を得て、直ぐに実行し始めるリザに、ディーの母は温かい笑顔を向ける。
相手が人とは違う存在とは言え、息子が連れてきた女の子には変わりなく、困っているならどうにかしてあげたいと思うのは当たり前なのだ。
「さぁ、とりあえずもうちょっとで戻ってくるはずよ。それまでに、できるだけ体温を上げておきなさい」
「そうするでありんす!」
にこにこと笑顔になるリザに、ディーの母も一緒ににこりと笑う。
寒い寒い外なのに対して、室内はほんわかと暖かくなるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥そう言えば、外はどうなって‥‥‥ありゃ?」
「どうしたのかしら?‥‥‥あらあら、はしゃぎすぎねぇ」
「え”?」
‥‥‥外の惨状を見てその一言で片付くとは、結構豪胆じゃないかとリザは思ったが、彼女の主もある意味豪胆なような気がして、しっかりと血の繋がった親子でありんすなとも思うのであった。
どうやら予想通りというか、例年以上に雪の降り積もる時が早かったようで、朝起きて窓の外を見たら、一面銀世界に変わっていた。
「なんとなく、ベッドから出にくいなぁ‥‥‥」
さっさっと部屋の窓から見終え、直ぐに俺はベッドの中に潜り込む。
ノインの手によって室内もある程度は改造され、空調設備があり、快適な気温設定はされているはずなのだが…‥‥これは気分的なものであろう。
うん、まぁどうせ今は休みでもあるし、普通に入り込んでいても良い。
朝食ができるまで、すぽっと入り込んでいるのも良いのかもしれない…‥‥
「いやっふぅー!!」
っと、何やら聞き覚えがありつつ、普段しないだろうなぁというような印象を持った声が、外から聞こえてきた。
気になったので、再びベッドから出て窓の外を見れば、降り積もった雪の上に、アナスタシアが駆け抜けていた。
流石雪女というべきか、まだ雪がちらちらっと降ってくる中で、朝っぱらからはしゃげているというべきか、テンションが急上昇しているというべきか…‥‥うん、まぁ、元気だからいいか。
そんな声を聴くと、気分的に平気になってきたので、さっさと朝食が用意されている場へ向かうのであった。
「‥‥‥っと、思った以上に積もっていたな」
「むぅ、陸上を歩けるようになって早々に、これとはツイてないぜ」
防寒具を備え、俺たちは外に出て見たが…‥‥それなりに雪は深いようだ。
一晩で積もっていたようで、まだ雪が降っているし、まだまだ積もる可能性は大きい。
そして見れば、村のあちこちでは既に雪かきの作業が行われ始めていたので、俺たちも雪かきに取り掛かり始める。
「よっせ、わっせっと…‥‥シャベルでそれなりにかけるけど、もっとグワッとやりたいな」
「拙者の火で、溶かした方が良いでござるかね?」
「いや、それはやめた方が良いな」
確かに雪は火で溶けるが‥‥‥その分水まみれになるし、この寒い中で濡れたら最悪である。
しかも、場合によってはそのまま凍結して、雪かきしづらくなるので、安直にその手法は取れないだろう。
「んー、神聖国の方はここまで積もらないのじゃが…‥‥ここ、山の近くでもあるしやっぱり積もるんじゃなぁ」
「とはいえ、この程度は特に支障にならんし、こっちの方が雪かきしやすいな」
魔法で雪を横にどかしているゼネや、馬に装備する雪かき用の道具をレイアが装備して雪かきを行い、互にそう口にしあう。
「なんというか、寒いですわね…‥‥防寒具を着ていても、見ている方が冷たいですわ」
「まぁ、この程度なら普通にどかせますがネ」
木の根を地面から生やして、その勢いで雪をふっ飛ばしていくカトレアに、何やらドドドっと音を出しながら雪を猛烈な勢いでどかしていくノイン‥‥‥いや、ちょっと待って?
「ノイン、それ何?」
「私の雪かき機デス。メイドたるもの、一気に雪をふっ飛ばせる装備を持つのも嗜みなのデス」
「‥‥‥それってさ、他にもないの?それ使えば、全員の雪かきの効率が上がるような‥‥‥」
「…‥‥あ、言われてみればそうですネ」
道具変更。
思った以上に天然ボケをかまされた感があるが、ノインの出してくれたスペアの雪かき機‥‥‥すごい効率が良かった。
雪道の上を通らせるだけで、機械が勝手に雪を吸い込んでいき、猛烈な勢いで横に排出していく。
人に当たらないように注意しつつ、やっていくのだけれども効率が凄まじい。
「‥‥‥さっきまで、人力でやっていた苦労は一体…‥‥」
「何か、スイマセン」
まぁ、結構楽にできるし、文句を言う意味はない。
というか…‥‥
「リザ、全然見ないな」
「部屋にこもりましたわ。防寒具を着ていても、冬眠すると…‥‥」
「アナスタシアはどこ行った?」
「拙者が見る限りでは、森の方に行ってしまったでござるな。テンション高いままで、一応人を気遣っているのか雪道を作りながら進んだようでござる」
どれどれっと見てみれば、確かに森の方に続いて雪が横に集められ、きちんとした雪道が出来上がっていた。
考えて見れば、彼女雪女だし、雪かきぐらい容易い事だったんじゃ…‥‥召喚してこの場に戻そうかと思ったが、やっている現状だとそれは意味が無いな。
「グゲェ♪グゲェ♪」
「あははは!!雪合戦楽しー!!」
っと、雪かきをしていた傍らで、リリスは妹と雪合戦をして楽しんでいた。
ついでに村の他の子供たちも混ざって、一緒に楽しんでいるようだが‥‥‥あ、バルンのやつがどこからともなく表れて混ざった。
「どっせぇい!!」
「ぎゃあああああああ!?」
「なんか吹っ飛んだぁぁぁあ!?」
混ざって早々、バルンが星になった。
よく見れば、いつの間にかティアが大きな雪玉を持ってぶん投げて混ざっている‥‥‥あいつ、あれを投げたのか?
バルンを星にしたのはどうでもいいが、あれはちょっと危険すぎるような‥‥‥あ、リリスが箱の収納で全部雪玉奪った。
どうするのかと思っていたら、一旦箱を閉じて…‥‥
「グゲェイ!!」
「のわぁぁぁ!?」
中で雪玉を集めて圧縮したのか、それを一気に吐き出し、ティアにぶつけた。
「なんの!!この程度平気だぜ!!」
ばっと足をサメの尾っぽに切り替え、叩きつけて雪玉を粉砕してしまう。
「‥‥‥ある程度終わったら、俺たちも混ざるか」
「そうしましょう。雪玉づくりには雪も必要ですし、遊びながら雪かきをできますわね」
「拙者もあれに混ざりたいでござる」
雪かきもある程度したし…‥‥あの中に混ざって良いかもしれない。
そう思い、俺たちは雪合戦場へ向かうのであった…‥‥
「あ、ご主人様。この1秒に雪玉1000発発射可能なスノーガトリング、使いますカ?」
「そこまで本気の奴は使わないぞ」
「‥‥‥ふぅ、やっぱりこの時期は活動しづらいでありんすなぁ」
「あらあら、召喚獣なのに、寒さに弱いのかしら?」
「ダーリンの母上よ、召喚獣と言っても色々あるんでありんすよ」
雪合戦にディーたちが混ざり、途中でノインとカトレアの喧嘩が始まってカオスになり始めてきた丁度その頃、家の中では部屋からようやく出てきたリザが、ディーの母と話していた。
椅子に腰かけつつ、用意してくれた温かいお茶を飲み、ほっと一息を突く。
「わっち、元々蛇のモンスターでありんすからなぁ‥‥‥人型に近いとはいえ、それでもこういう時期は、冬眠したくなるのでありんすよ。眠気もあるというか、本能的なものというか…‥‥」
「防寒具を着ていても、ダメなのね?」
「そうでありんす。ある程度は活動できるでありんすが、わっちの場合は‥‥‥」
ディーの母に説明するように、自身の体に指をさすリザ。
その指の先にあるのは、自身の下半身の蛇の胴体である。
「‥‥こっちが一番冷えるのでありんすよね」
「あらあら、それは確かにそうかもねぇ。何かと不便な事もあるのね」
「そうでありんすよ」
人の体に近くなったことで、手で物を持てたり、マッサージの際に全身を使う以外の手法も取れるようになったという利点などは多いだろう。
とはいえ、それでも残る元の蛇部分があり、そこでどうしても冬眠の体制に入ってしまいたくなるのだ。
「今でこそ、室内の空調がノインによって取り付けられ、快適ではありんすけれど、ちょっと不便でありんすねぇ‥‥‥本当は外で、ダーリンたちと共に遊びたいでありんすが‥‥‥」
はぁっと彼女は溜息を吐きつつ、空になったコップを机の上に置く。
「それは難しい問題なのかしらね…‥‥ああ、でも、外で遊べなくても貴女にはできることがあるじゃない」
その様子を見て、少し考え、ディーの母が何かを思いついたように口に出した。
「なんでありんすか?」
「あの子たち、今外で雪合戦して遊んでいるじゃない?」
「そうでありんすね。窓から見えるでありんすし‥‥‥あ、巻き添え喰らったレイアが、雪玉を転がして特大サイズので反撃しようとしているでありんすな」
「そうそう、で、その雪合戦って温まるけれども、雪が隙間から入って、濡れやすいのよ。そうすると、結構寒いのよね」
「まぁ、確かにそうかもしれないでありんすが‥‥‥」
今度は雪玉作成中のレイアの側で、テンションを上げて駆けまわって来たらしいアナスタシアが戻って来て、雪女の本領を発揮し始めている光景を見ながら、リザはそう答える。
「だったら、今ここで出来る限り、貴女の体温を上げて、触るだけで物凄く温かくすればいいのよ」
「それがどうしたでありんすか?」
「もぅ、中々察しの悪い子ね。その温かい体で、貴女の主である私の息子を温めてあげればいいんじゃないかって、言っているのよ」
「‥‥‥あ、その手段、あったでありんすな!」
ディーの母の言葉に、ようやく察することができて納得するリザ。
外の方では一気に猛吹雪が吹き荒れ、ようやく戻ってこれたらしいバルンが宙を舞っていくが、そんなことはどうでもいい。
「ダーリンを温めるために、わっちが温まっておくのもいいでありんす!ありがとう、ダーリンの母上!」
「ふふふ、どういたしまして。息子の可愛らしい召喚獣のリザさん」
なかなかいい案を得て、直ぐに実行し始めるリザに、ディーの母は温かい笑顔を向ける。
相手が人とは違う存在とは言え、息子が連れてきた女の子には変わりなく、困っているならどうにかしてあげたいと思うのは当たり前なのだ。
「さぁ、とりあえずもうちょっとで戻ってくるはずよ。それまでに、できるだけ体温を上げておきなさい」
「そうするでありんす!」
にこにこと笑顔になるリザに、ディーの母も一緒ににこりと笑う。
寒い寒い外なのに対して、室内はほんわかと暖かくなるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥そう言えば、外はどうなって‥‥‥ありゃ?」
「どうしたのかしら?‥‥‥あらあら、はしゃぎすぎねぇ」
「え”?」
‥‥‥外の惨状を見てその一言で片付くとは、結構豪胆じゃないかとリザは思ったが、彼女の主もある意味豪胆なような気がして、しっかりと血の繋がった親子でありんすなとも思うのであった。
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