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184 安全のためにも適度に動き

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「見つけたでござるよー!!頭の数が多く、ヒュドラのようでござる!!」
「なら、その場所へ向かうぞ!!」
「「「「了解!!」」」」

‥‥‥ハイガドロンからマリンデビルへと変わり、新しい召喚獣となったティアを連れ、俺たちは村の安全のために動いていた。

 何処ぞやの馬鹿組織がしっかりやっていなかった不始末というべきものだが、それでも何とかしなければいけないだろう。

 そう思いつつ、他に逃げ出していたというモンスターの居場所がないかどうかを全員で探していたが‥‥‥どうやら上空から見ていたルビーが、その影を発見した。


「「「「「「「「「じゃっぐわあああああああ!!」」」」」」」」」

「っと、報告通りにヒュドラか!!」
「頭が9つの、中々の大型ですネ」

 毒や呪いを交えた攻撃能力を持ち、再生能力が高い、把握している中でもかなり危険なモンスターであるヒュドラ。

 9つの頭をすべてこちらへ向け、威嚇するような咆哮をあげる。


‥‥‥まだ意思疎通ができればよかったが、残念というべきかできない個体のようだ。

 しかも既に多くの獣が犠牲になっているようで、その身には多くの赤黒い染みが付着しつつ、体には傷が一切ない。

 どうやら脱出時に相当の怪我を負っていたと思われるが、持ち前の再生能力と周辺の獣を喰らう事で自己回復に集中し、今はまだ回復したばかりなのだろう。

 とはいえ、放置することもできないし‥‥‥あちらは完全にこちらを獲物と見て、襲撃する気満々のようだ。

「全員、一斉攻撃開始!!」

 ヒュドラの厄介なところは、呪いや毒攻撃などもあるが、その中でも再生能力が群を抜くらしい。

 というのも、頭を一つ切り落としても、他の頭が無事であればすぐに再生してしまうそうだ。

 まぁ、その特性を利用して頭の身を量産して確保するような事も可能らしいが…‥‥こんな場所ではそんな方法をとる意味もないし、さっさと絶命させればいいだろう。

「ふむ、せっかくの初陣だし、ここは任せろ!!」

 っと、さっそくティアがレイアよりもすぐに前に駆けだし、空中へ飛びあがる。

 そして水魔法を使って自身の足をサメの尾びれに変え、空中で回転する。

「脱出時の怪我を負わされた恨みも込めて!!『テールインパクト』!!」

 くるくるっと勢いをつけて落下し、ヒュドラが口を開けて捕食しようとしたところを横に逸れ、横回転に切り替えて重い一撃をぶつける。

ドッゴォォォォウ!!
「ぐげばぇぇぇぇぇ!?」

 頭の一つを横殴りにぶっとばされ、ヒュドラがひるむがまだ頭は残っており、千切れたわけでもない。

 なので、素早く反撃に出ようとしたようだが‥‥‥ハイガドロン時代ならいざ知らず、召喚獣となって種族が変化したことで、彼女に負ける要素はない。

「そいやっさぁぁぁ!!」

 背中に構えていた鎖鎌を振り回し、一気にヒュドラの頭を切り裂いていく。

 体をうまくひねって回転することで勢いをつけて殺傷能力を高めつつ、更に腰に帯刀していたナイフを持ち、投げまくる。

「「「「「ぎゅげがばぁぁぁあっ!?」」」」」

 切り裂かれ、突きさされ、蹴り飛ばされてヒュドラの形勢は一気に悪化していく。

 そこへ更に隙が出来上がったので、後方にいたノインたちが援護射撃を行う。

「ガトリング発射デス」
「縛りあげますわ!!」
「近接戦なら、こちらも専門だ!!」

 鶴で縛られていき、撃ち抜かれていき、槍で薙ぎ払われていく。

「氷結、一気に氷像!!」
「グゲグゲェ!!」

 氷で固まったところで宝石を喰らい、その衝撃で丸ごと粉々にもされていく。

 各自の攻撃がさく裂しあい、焼き払い、脱力させて防御が緩くなったところに一撃を入れ込むなど、全員でのフルボッコに、ヒュドラは既に不利な状況に立たされていた。

 だが、この状況でも逃げずに、ギリギリ落とされなかった頭が周囲を見渡し‥‥‥俺の方に狙いを定めたようだ。

「ぐがあぁぁぁぁ!!」

 せめて、お前だけでも道連れにとか言うような声だが…‥‥残念ながら、意味はなさないだろう。

 腕時計のボタンを素早く操作し、俺は装備品の一つ…‥‥ノイン御手製のガントレットを装着する。

「それっ!!」

 ドンッという音に続け、飛んでいく鋼鉄の拳。

 いや、その先には手ではなくドリルが装着されており、頭からヒュドラの口元へ入り込み‥‥‥一気に粉砕していく。

 そして他の皆も動きが鈍くなった隙をついて、再生前に素早く他の頭を斬り落とすのであった‥‥‥




「‥‥‥入ったばかりなのに、良く連携できたな」
「ふふん、こういう時に全体に合わせることぐらいはできるのさ!」

 ヒュドラの死骸を血抜きし、丁寧にリリスの箱の中に収納しながらティアにそう聞くと、彼女は自信満々に答えた。

 なんというか、感覚的に戦況が読みやすく、どの様な手段で行けばいいのか直感でわかるようだ。

 まぁ、自ら突撃して最前線に出ることが前提らしいが…‥‥それでも、こうやってそれぞれの攻撃を読んで動きつつ、連携できているのは良いだろう。

 足場代わりの水をアナスタシアが凍らせて攻撃に活用したり、鎖鎌の軌道をルビーが羽ばたきの風で軌道を修正していくなど、各々の攻撃を活かしあっていたのもあるからな。

 ただ、気になる点として一つ。

「ところでですが、何で寝そべったままなんでしょうカ?」
「‥‥‥まだ、慣れていないだけだぜ」

 ぐでーんっとぶっ倒れているが、どうやら尾っぽがまだ足になり切っていないようで、陸上で歩けるようになってそこまで時間も経っていないので、歩きなれなかったらしい。

 格好がつかないというか、何と言うか…‥‥大物相手で善戦出来たのは良いのだが、陸上歩行関係はしっかりできるようにさせた方が良いと思うのであった。

 あと、ついでに言うのであれば水魔法を周囲にやらかしまくったので、全員濡れているんだよなぁ‥‥‥そのあたりの制御も、もうちょっと気づかいができるようにして欲しい。

「ノイン、ちょっとまだ早いけど、家の風呂を沸かしに向かってくれないかな?このままだと全員、風邪ひくからな」
「了解デス」

 何にしても、まだ残っていそうだが…‥‥今日はさっさと帰った方が良いかもしれん。ヒュドラ自体がかなりの大物でもあったし、あの様子だと他の奴とかも捕食して済ませている可能性が大きいからな。

「でも、ヒュドラの死体をこのまま持ち帰って良いものか?」
「アンデッド化しないように細工済みじゃし、心配無用じゃ。しかもこやつ、全身無駄なく使えるのじゃ」
「というと?」
「薬に食材など、用途が多いからのぅ」

 どうやらまだまだ、俺は知識不足か‥‥‥‥いや、流石にこの面子とか濃すぎるから、他の知識を頭に入れにくいってのがあるだけか。

 とりあえず、そのあたりは後でゆっくりと考えるとして、今日はこのまま家に戻るかなぁ…‥‥









‥‥‥ディーたちがヒュドラの討伐をあっさりと終えつつ、冷えてしまった体を温めるために帰宅に向かう丁度その頃。

 北の方角からは大きな雲が迫っていた。

 それは、どこぞやの組織が用意したわけでもなく、単純に自然の力が集まってできた、吹雪を引き起こすだけの大きな雪雲。

 そしてそれは今、ディーたちの住まう村へどんどん進行しているのであった…‥‥

「おお?これ、なんか、良い予感」
「良い予感?」
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