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177 一日の間にこうも動く
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「…‥‥ねぇ、お母さん」
「あらあら、どうしたの?」
ヴィステルダム王国の辺境地に位置する、田舎のヌルングルス村の一軒家‥‥‥ディーの実家にて、夕食の用意を母親がしているところで、ディーの妹であるセラが口を開く。
「お兄ちゃんが夏休み前にはほとんど出さなかった手紙を受け取ったのはいいけれども…‥‥どうなんだろう、コレ」
「ああ、姿が変わったとか、召喚獣が増えたとかだったかしら?家族が増えているのは良いものねぇ」
「…‥‥」
にこにこと微笑ましそうに笑いつつ、スープをさらに盛り付ける姿を見て、この母は全く動じないなぁとセラは思いつつも、手紙に書かれている内容に顔をしかめる。
百歩譲って、ディーの姿が変貌したという点はまだ良いだろう。
精々髪の色が白くなったとか、瞳が赤くなったといっても、彼女にとっての唯一無二の兄であり、大好きなお兄ちゃんであることには変わらないのだ。
‥‥‥ただ、その他の内容に関して、ツッコミどころがあった。
「夏の時は、ノインさん、カトレアさん、ルビーさん、ゼネさん、リリスさん、リザさんで‥‥‥そこからさらに、二人増えているのもどうなのよ…‥‥」
雪女に、ケンタウロス‥‥‥どうやら兄の元に、また女が増えてしまったようなのだ。
しかも、どうやら以前に別件で来たらしい猫獣人の彼女も学園に留学しに来ていたようで、こちらもこちらで油断できない。見た感じ当時はまだ微妙だったが、時間が経って変化している可能性は非常に大きい。
幸いというべきか、猫の方は森林国という方へ帰郷するらしいが、それでも兄の元に女が増えているのは変わらない事実なのだ。
「お兄ちゃん、何でそんなに女の子を増やすのよ――――!!」
兄が帰ってくる嬉しさと、女が増えた嫉妬に悲しみと、色々と複雑な感情がせめぎ合い、思わずセラは叫ぶのであった。
「いいじゃない。お父さんだって、若い時はモテて‥‥‥あ、そうではなかったわね。あの人しょっちゅう、何かに喰われていたとか、攫われていたとか、挙句の果てにはダンジョンに迷い込んでモンスター・カーニバルを引き起こしてしまったとかだったわねぇ…」
「お父さんも結構やらかしていた!?」
亡き父ではあるが、謎は多いようである。だが、何かが起きるという部分はしっかり遺伝されているといえるのだろうか‥‥少なくとも、生命力の高さぐらいは確実そうである。
‥‥‥村の方でディーの妹が彼以上のツッコミ力を見せている丁度その頃。
ヴィステルダム王国の王城内の特別会議室ではようやく議題をすべてこなし、閉廷となっていた。
「「「「‥‥‥」」」」
そして内部にいた者たちは全員机に伏せ、疲労困憊な様子を見せていた。
「よ、ようやく話が付いたというか…な、長かった‥」
「思いのほか、内容が濃かった…‥‥いや、聞きたくなかった情報とかもあったが‥‥‥」
「ふふふ、先日の上層部の迷惑に関しての話もあったが‥‥‥その代償がこれなのか」
「か、彼の話の方が多かったというか‥‥‥増えすぎですわね‥‥‥」
ヴィステルダム王国の国王に、フルー森林国の副議長、デオドラント神聖国の大神官、ゼオライト帝国の女帝フローラ‥‥‥それぞれ立場が色々と違えども全員疲れているのには変わらない。
というのも、非常に頭を悩ませるような議題が多すぎて、全員の頭が既に知恵熱で熱くなったのである。
「と、とりあえず今のところ決まり切っていないものもあったが…‥‥それはまた次回ということにしよう。次の機会は、継承権に関しての話にもなるので、息子たちを場に呼ばせてもらう」
「ああ、ここの王子がどの様な者か見たいが…‥‥こちらも議長を引きずってこよう。そもそもあっちがやらなければいけないことだったしなぁ…‥‥」
「こちらは上のものを‥‥‥手段としては秘蔵のお宝を使うとしよう‥‥‥」
「わ、わたくしのほうは‥‥‥あ、そう言えばいませんわね…‥‥」
「「「道連れ、出せないのはお疲れ様です」」」
「ショックですわぁぁぁぁぁあ!!」
‥‥‥長引いた会議ゆえにちょっと言葉や形式が崩れているが、とりあえず仲は深まったといっても良いだろう。
少々次回に関しては道連れを増やすことに同意しつつ、今回決まった各国の対応などに関しては、それぞれ満足のいく結果ではある。
「あとは、仮面の組織フェイスマスクの対策及び‥‥‥そちら側に、既に伝わっている召喚士の扱いか」
仮面の組織の方はちょっと怪しい国が出てきたのでそちらに絞ればいいような感じはするが、本題のその召喚士の扱いについては、各国ともに決め損ねていた。
「すでに情報にある通り、とんでもない召喚獣を連れているようだが…‥‥できれば、我が国を救ってくれたこともあり、こちらに身を置かせたいのだがな」
「わたくしの方も、帝国の方で面倒をかけてしまった事もありますけれども、放置はできませんもの」
「こちらは上の者が色々というのだが…‥‥まぁ、そのあたりとしても譲歩し切れないな」
各国ともに事情があるとは言え、譲り合えないこの状況。
であれば、重複や共同などの手段をとる方法もあるのだが…‥‥それでも国としての面子上、できるだけ自分達に利益も欲しいのだ。
「しかし、肝心の議題の召喚士の意思も尊重せねばなるまい」
「道具としてみるような真似もできませんものね…‥‥したらお終いなのは目に見えていますもの」
この中で一番その発言で重みをもつのは、帝国の女帝であろう。
一度は道具としてみなしかけた、愚かにも帝国での騒動をどうにかすることができなかった可能性もあるのだ。
「でも、あの時以上に増えている情報はできれば聞きたくなかったですわね…‥」
遠い目をしてそうつぶやく女帝に対して、その場の者たちは同意して頷く。
国王の方は情報を集めていると結構耳にしやすく、副議長の方は森林国での怪物騒動での収めた実力を聞きつつ、ちょっと情報を集める者がいるところから得ているがそれはそれで情報が多く、神聖国の方は上の方にいる者が事前学習をさせてきたので、どの様な物か全員把握しているのだ。
だからこそ、その召喚士‥‥‥ディーおよびその召喚獣たちの無茶苦茶ぶりは想像するに容易く、国としては悩みの種になるというのを非常に理解させられてしまうのであった。
国としては非常に欲しい人材でもあるが、その功績などに対する褒賞なども中々用意しづらい人材あった。
‥‥‥そして深夜、適正学園の職員室の方では、残業覚悟でテストの採点を終え、教師陣たちはさらさらと灰になって風に流されていた。
やるだけやって燃え尽き、全てを終えた達成感故か全員の表情は何処か安らかに眠っているように見えるだろう。
とはいえ、中間時に比べて一部は少々とある圧力によって名称を変えたものもあり、その他の見直しなども含めた作業で、全員の疲労は途轍もないものだろう。
今はただ、その疲れを癒すために眠るのみである‥‥‥‥
「くぅ‥すやぁ‥‥‥」
ぽよころん
「…‥‥レイア、それは卑怯な気がしますガ
「いや、仕方がないだろう?私の場合は膝枕しにくいから、柔らかいコレでやっているだけだ」
そして明け方頃に、とある寮室の一室でそのような会話がなされていたが…‥‥そんなことは、彼女たち以外誰も気にしない。
「膝枕以外の手段にそれもありですガ‥‥前例がありますので、沈ませ過ぎないでくだサイ」
「前例?」
「以前、同様の手段で…‥‥いえ、何でもないデス。聞かなかったことにしてくだサイ」
とあるメイドが目をそむけたことも、誰も知らないのであった…‥‥‥
「あらあら、どうしたの?」
ヴィステルダム王国の辺境地に位置する、田舎のヌルングルス村の一軒家‥‥‥ディーの実家にて、夕食の用意を母親がしているところで、ディーの妹であるセラが口を開く。
「お兄ちゃんが夏休み前にはほとんど出さなかった手紙を受け取ったのはいいけれども…‥‥どうなんだろう、コレ」
「ああ、姿が変わったとか、召喚獣が増えたとかだったかしら?家族が増えているのは良いものねぇ」
「…‥‥」
にこにこと微笑ましそうに笑いつつ、スープをさらに盛り付ける姿を見て、この母は全く動じないなぁとセラは思いつつも、手紙に書かれている内容に顔をしかめる。
百歩譲って、ディーの姿が変貌したという点はまだ良いだろう。
精々髪の色が白くなったとか、瞳が赤くなったといっても、彼女にとっての唯一無二の兄であり、大好きなお兄ちゃんであることには変わらないのだ。
‥‥‥ただ、その他の内容に関して、ツッコミどころがあった。
「夏の時は、ノインさん、カトレアさん、ルビーさん、ゼネさん、リリスさん、リザさんで‥‥‥そこからさらに、二人増えているのもどうなのよ…‥‥」
雪女に、ケンタウロス‥‥‥どうやら兄の元に、また女が増えてしまったようなのだ。
しかも、どうやら以前に別件で来たらしい猫獣人の彼女も学園に留学しに来ていたようで、こちらもこちらで油断できない。見た感じ当時はまだ微妙だったが、時間が経って変化している可能性は非常に大きい。
幸いというべきか、猫の方は森林国という方へ帰郷するらしいが、それでも兄の元に女が増えているのは変わらない事実なのだ。
「お兄ちゃん、何でそんなに女の子を増やすのよ――――!!」
兄が帰ってくる嬉しさと、女が増えた嫉妬に悲しみと、色々と複雑な感情がせめぎ合い、思わずセラは叫ぶのであった。
「いいじゃない。お父さんだって、若い時はモテて‥‥‥あ、そうではなかったわね。あの人しょっちゅう、何かに喰われていたとか、攫われていたとか、挙句の果てにはダンジョンに迷い込んでモンスター・カーニバルを引き起こしてしまったとかだったわねぇ…」
「お父さんも結構やらかしていた!?」
亡き父ではあるが、謎は多いようである。だが、何かが起きるという部分はしっかり遺伝されているといえるのだろうか‥‥少なくとも、生命力の高さぐらいは確実そうである。
‥‥‥村の方でディーの妹が彼以上のツッコミ力を見せている丁度その頃。
ヴィステルダム王国の王城内の特別会議室ではようやく議題をすべてこなし、閉廷となっていた。
「「「「‥‥‥」」」」
そして内部にいた者たちは全員机に伏せ、疲労困憊な様子を見せていた。
「よ、ようやく話が付いたというか…な、長かった‥」
「思いのほか、内容が濃かった…‥‥いや、聞きたくなかった情報とかもあったが‥‥‥」
「ふふふ、先日の上層部の迷惑に関しての話もあったが‥‥‥その代償がこれなのか」
「か、彼の話の方が多かったというか‥‥‥増えすぎですわね‥‥‥」
ヴィステルダム王国の国王に、フルー森林国の副議長、デオドラント神聖国の大神官、ゼオライト帝国の女帝フローラ‥‥‥それぞれ立場が色々と違えども全員疲れているのには変わらない。
というのも、非常に頭を悩ませるような議題が多すぎて、全員の頭が既に知恵熱で熱くなったのである。
「と、とりあえず今のところ決まり切っていないものもあったが…‥‥それはまた次回ということにしよう。次の機会は、継承権に関しての話にもなるので、息子たちを場に呼ばせてもらう」
「ああ、ここの王子がどの様な者か見たいが…‥‥こちらも議長を引きずってこよう。そもそもあっちがやらなければいけないことだったしなぁ…‥‥」
「こちらは上のものを‥‥‥手段としては秘蔵のお宝を使うとしよう‥‥‥」
「わ、わたくしのほうは‥‥‥あ、そう言えばいませんわね…‥‥」
「「「道連れ、出せないのはお疲れ様です」」」
「ショックですわぁぁぁぁぁあ!!」
‥‥‥長引いた会議ゆえにちょっと言葉や形式が崩れているが、とりあえず仲は深まったといっても良いだろう。
少々次回に関しては道連れを増やすことに同意しつつ、今回決まった各国の対応などに関しては、それぞれ満足のいく結果ではある。
「あとは、仮面の組織フェイスマスクの対策及び‥‥‥そちら側に、既に伝わっている召喚士の扱いか」
仮面の組織の方はちょっと怪しい国が出てきたのでそちらに絞ればいいような感じはするが、本題のその召喚士の扱いについては、各国ともに決め損ねていた。
「すでに情報にある通り、とんでもない召喚獣を連れているようだが…‥‥できれば、我が国を救ってくれたこともあり、こちらに身を置かせたいのだがな」
「わたくしの方も、帝国の方で面倒をかけてしまった事もありますけれども、放置はできませんもの」
「こちらは上の者が色々というのだが…‥‥まぁ、そのあたりとしても譲歩し切れないな」
各国ともに事情があるとは言え、譲り合えないこの状況。
であれば、重複や共同などの手段をとる方法もあるのだが…‥‥それでも国としての面子上、できるだけ自分達に利益も欲しいのだ。
「しかし、肝心の議題の召喚士の意思も尊重せねばなるまい」
「道具としてみるような真似もできませんものね…‥‥したらお終いなのは目に見えていますもの」
この中で一番その発言で重みをもつのは、帝国の女帝であろう。
一度は道具としてみなしかけた、愚かにも帝国での騒動をどうにかすることができなかった可能性もあるのだ。
「でも、あの時以上に増えている情報はできれば聞きたくなかったですわね…‥」
遠い目をしてそうつぶやく女帝に対して、その場の者たちは同意して頷く。
国王の方は情報を集めていると結構耳にしやすく、副議長の方は森林国での怪物騒動での収めた実力を聞きつつ、ちょっと情報を集める者がいるところから得ているがそれはそれで情報が多く、神聖国の方は上の方にいる者が事前学習をさせてきたので、どの様な物か全員把握しているのだ。
だからこそ、その召喚士‥‥‥ディーおよびその召喚獣たちの無茶苦茶ぶりは想像するに容易く、国としては悩みの種になるというのを非常に理解させられてしまうのであった。
国としては非常に欲しい人材でもあるが、その功績などに対する褒賞なども中々用意しづらい人材あった。
‥‥‥そして深夜、適正学園の職員室の方では、残業覚悟でテストの採点を終え、教師陣たちはさらさらと灰になって風に流されていた。
やるだけやって燃え尽き、全てを終えた達成感故か全員の表情は何処か安らかに眠っているように見えるだろう。
とはいえ、中間時に比べて一部は少々とある圧力によって名称を変えたものもあり、その他の見直しなども含めた作業で、全員の疲労は途轍もないものだろう。
今はただ、その疲れを癒すために眠るのみである‥‥‥‥
「くぅ‥すやぁ‥‥‥」
ぽよころん
「…‥‥レイア、それは卑怯な気がしますガ
「いや、仕方がないだろう?私の場合は膝枕しにくいから、柔らかいコレでやっているだけだ」
そして明け方頃に、とある寮室の一室でそのような会話がなされていたが…‥‥そんなことは、彼女たち以外誰も気にしない。
「膝枕以外の手段にそれもありですガ‥‥前例がありますので、沈ませ過ぎないでくだサイ」
「前例?」
「以前、同様の手段で…‥‥いえ、何でもないデス。聞かなかったことにしてくだサイ」
とあるメイドが目をそむけたことも、誰も知らないのであった…‥‥‥
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