憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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173 洗浄は必要不可欠なもので

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「‥‥なぁ、ノイン。これ全員洗浄したのか?」
「ハイ。荒っぽいですが、風呂場に投入し、特性洗剤を入れてかき回し、すすぎ脱水などもきちんと終えてマス」
「洗濯と同じような方法でこれか‥‥‥‥」

‥‥‥アリスブックから脱出後、色々と訳合って汚れていた男子たちを俺たちは洗浄し終えていた。

 何しろ、本の中で粘液とかに色々やられていたからなぁ…‥‥お見せできず、なおかつ思い出したくもない地獄絵図とはあのような光景をいうのだろうか。


 まぁ、幻覚にやられていたのもあって、殴って治したのは良いが、それでも完全に抜けきってない部分もあったので、処理として大洗浄を行い…‥‥こうして今、彼らは吊るされて干されているのであった。

 なお、女性陣には見苦しい光景となりうるので、室内である。天日干しはできないからなぁ…‥‥




 とにもかくにも、救助して助け出し、ちょっと強引に洗浄しすぎて脱色した男子たちはどうでもいいだろう。

 問題はこっちのアリスブックの方だ。

「…‥‥生命反応アリ。未だに生きているようデス」
「所々、黒く焦げているようじゃがのぅ」

 生徒会室の机の上に置かれたのは、中身をすっかり放出しきってボロボロになった本、アリスブック。

 図書室に紛れ込み、被害を出していたので中身を取り出せたのは良いのだが、そもそもどこからこの本が来たのかという話にもなった。

 けれども、その来た方法に関しては、案外あっさりと判明した。





「…‥‥え?ここの卒業生の置き土産?」
「そのようなんだよねぇ。父上ぐらいの時の学生に、どうやらやったやつがいたようだ」

 アリスブックが学園内に侵入したルートが王子たちの手によって判明した。

 それによれば、どうやらアリスブックは今の国王陛下と同級生と言えるぐらいの者が生徒だった時に、こっそり何処かの露店で手に入れたものだったらしい。

 モンスターとは言え、このアリスブックは中に取り入れた者に対して都合のいい幻覚を見せ虜にする性質を持つだけで、栄養源が色欲にまみれた欲望で、捕食される危険性はほとんどない。

 なので、吐き出させるための特殊な薬品とやらを常備して、中に時々入り込んでは幻覚で楽しんでいた者が、持ってきた奴だったようなのだ。

 で、卒業と同時にお役御免となるはずが、見た目が普通の何かの本と変わらないので、うっかり図書室の本と混濁して行方不明になっていたようだ。


「でも、それって結構昔の話になるよな?なんで今さら、そんなものが噂になったりしたんだ?」
「あー‥‥‥それがね、どうもディー君の召喚獣たちが間接的な原因になったというらしくてさ」


‥‥‥年が結構離れている国王陛下と同じぐらいの同級生の生徒がいた時代を考えると、それは結構昔の話。

 なのに、なぜ今になってアリスブックが出てきたのかと言えば、その張本人が息子にぽろっと漏らしたことが原因だったそうだ。


「気を悪くするかもしれないけどね、その息子が今、ここに通っていたらしいんだ。で、ディー君が入学してきて…‥‥」

 俺が召喚獣を呼ぶたびに、何故か美女ばかりが出る。

 そして最近では一緒に風呂に入るなどの行動を耳にした結果、嫉妬や羨ましさ、その他ぶつけたい欲望が溢れまくりつつ、迷惑をかけるわけにもいかない理性ぐらいは残っており、親に相談したそうだ。

 そしたらその親が、アリスブックを紛れ込ませてしまった人だったようで、今ももしかしたらあるかもしれないと話を出してきたようである。

 で、脱出用の薬品も一緒に手に入れ、血眼になって探した結果、蔵書の奥深くに眠っていたアリスブックを発見。

 そして使用し、欲望を発散してスッキリしたのは良いのだが…‥‥その時に他の友人も誘っていたようで、一緒に味わっていたようなのだ。

「で、それが巡り巡って噂話となって…‥‥あの消える図書になったようだね。ああ、もちろん最初の被害者はその発見した人で、脱出用の薬品が切れていることに気がつかずに囚われてしまったようだ」
「その結果が、脱出方法が出ないままの欲望を叶えてくれるかもしれない本としての噂が男子のほうに広まったうえに、内容が内容だけに女子たちには広げにくく、結果として今回の騒動になったのか‥‥‥」

「「「「‥‥‥‥」」」」

 はた迷惑すぎるというか、何と言うか。

 間接的な一因になったかもしれないが、そもそもそんな代物を持ち込んできて忘れていた人が一番悪いような気がする。

 ついでにアリスブック内での幻覚作用が、色欲を満たす類だったようで…‥‥その内容を聞いて、ノインたちの目が絶対零度の状態になっていた。

‥‥‥うん、彼女達も女の子だもんね。そりゃ、内容を聞いて面白く思う訳もないし、蔑みたくなるのは良く分かる。

 というか怖い。かなり怖い。


「間接的な要因となったかもしれませんが…‥‥ご主人様に、責任があるのかと言われればないデス」
「むしろ、わたくしたちを見て勝手に色々と想像された方々の自己責任ですわね」
「グゲェ‥‥‥グゲェ」
「拙者たちになぜそのような目を向けることができたのか‥‥‥ちょっと理解に苦しむでござる」
「うーん、異性の考えていることは分からないからのぅ。生前はむしろ同性の方が怖ろしかったのじゃが‥‥‥」
「わっち、元々蛇でありんすし、その辺の都合なんぞよくわからないでありんすよ」
「馬鹿は見る、幻覚の夢」
「根性がないだけではないだろうか?叩き直したいな」

 全員、中々辛辣なコメントである。そして武器を抜いて使おうとしないでほしい。槍とか宝石とかナイフとか、結構シャレにならない。

「まぁ、そんなわけでそのアリスブックは閉じれば良いけど、開いたら危険物だし…‥‥処分した方が良いね」
「「「「「「「「異議なし」」」」」」」」

 アリスブックは本能的にというか、元々持ってきた奴の欲望のために使われていたかもしれないが、使いようによってはさらに危険を招く可能性もあり、処分が決定した。

 間違っても召喚獣にはできないだろうしね‥‥‥‥いやまぁ、やろうと思えばやれるかもしれないが、流石にあの惨状を見た後だと絶対やりたくない。


 で、処分方法はどうするのかと思いきや、アリスブックの場合退治方法は楽な方で、焼けばいいだけのようだ。

「それじゃ、拙者がやるでござるよ」

 っと、ひもで縛りあげて、開かないようにしたアリスブックを軽く放り投げ、ルビーが全力の火炎放射で焼き払う。

 後には、塵一つも残らないのであった‥‥‥‥














「‥‥‥はぁ、解決したのは良いけど、なんか後味悪かったな」
「元々、欲望を持った人たちの暴走が原因ですからネ。巻き込まれただけのようですからネ」
「それもそうだよなぁ‥‥‥まぁ、そんな一因に、これもあるだろうけれども‥‥‥」

 そうつぶやきつつ、俺は湯船に方まだ浸かり、できるだけ周囲を見ないようにしていた。

 男子たちの洗浄も終わったのは良いが、運んでいた汚れもある。

 なので、さっさと王子たちは王城の方の特別な湯船の方に向かってしまい、俺は学園の寮の風呂で洗うことになったのだが‥‥‥スーツで動けていたとはいえ、まだリハビリ中だったのを忘れていた。

 そのためにちょっと調子に乗って動き過ぎた反動で体が動けなくなってしまい、彼女達と風呂に共に入る羽目になってしまっていた。

 うん、流石に一因になってしまったのは良く分かるが…‥‥どうしようもないだろう。

 というか、筋肉痛みたいに体中が痛い。

「なんで、こんなに痛いんだ‥‥?」
「んー、スーツは負担かけないようにしていたはずですガ…‥‥ご主人様、何か重いものを持ちましたか?」
「あ、そう言えば男子たちの輸送をやっていたっけ」
「それですネ」

 あの行き来しての救助、どうも体に負担が思いのほかかかっていたらしく、筋肉痛の原因となったらしい。

 まぁ、筋肉痛があるという事は、筋肉を使えていたというのもあるだろうし、体の感覚もちょっとずつ戻って来て、リハビリの効果が出ている証でもあるそうだ。


「でも、こうも動けないでなされるがまま、洗われるのはなぁ‥‥‥」
「安心してください、ご主人様。体の痛みを考慮して、本日の体の洗浄作業はちょっと変えていマス」
「具体的には?」
「柔らかいもので、洗いマス」

‥‥‥‥普通のタオルとかかな?

 そう思いたかったが、どうやら違うらしい。


「なんか柔らかすぎるんだけど!?明らかに布じゃないよねこれ!?」
「重くてちょっと邪魔なこれが、こうも役立つのは何か良いな。マイロードよ、好きなだけ堪能するがいい」
「堪能も何も、何を使っているんだお前らはぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 位置的に見えないんだけど!!というか、今までの洗い方と何か大差あるのかこれ!?

 そしてこの日も、俺は理性をガリガリとおろし金で削られるかのような‥‥‥‥いや、むしろみじん切りのごとく細かく裁断されるかのような目にあわされてしまうのであった…‥‥‥


「削れているのに、なんか惜しいですネ」
「御前様のメンタルは頑強じゃな。むぅ、これは我らだけではちょっと弱いか?」
「なら、他の手も借りて見るのはどうでござろうか?」


‥‥すごい良からぬ企みを去れている気がするのに、逃げられないのはどうしたらいいのだろうか。ああ、逃走用の召喚獣か、もしくはこの精神を癒してくれるような召喚獣を非常に呼びたい…‥‥召喚獣を呼ぶための詠唱文なら頭にあるが…‥‥厄介なのが出るか、救いの手が出るのか、天秤にかけると悩ましい…‥‥
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