憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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171 見え見えのものほど対策は立てやすい

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「…‥‥という訳で、噂の物をここに持ってきました」
「ちょっと待ってディー君。それ普通に危ないやつだよね?」

 生徒会の場にて、俺たちは入手したその代物の説明をしながら机の上に置くと、グラディ副生徒会長はそうツッコミを入れてきた。

 うん、そのツッコミを入れたくなる気持ちは分かるだろう。

 何故ならば、この場に出された代物は、今噂になっている消える本なのだから。

 いや、この言い方だと本が消えるみたいな感じだな‥‥‥正確に調べてより詳細を述べあげるならば、読んだ人が消えうせる本とも言うべきだろうか。



 そんな書物を俺たちは、ココへ持ってきた。

 というのも‥‥‥‥

「‥‥‥内部に大勢の生命反応だと?」
「間違いないとは思う。ノインがそう報告してくれたからな」

 ゼノバース生徒会長の問いかけに対して、俺はそう返答した。

 人を消せるこの本…‥‥調べてみると、どうやら本当に消失させるのではなく、内部に人を閉じ込める本。

 分類的にはリリスに似た種類のトラップモンスター…‥‥『アリスブック』の類であると分かったのだ。


―――――――――――――――
『アリスブック』
ミミックなどのトラップを持つモンスターの本バージョン。
種類によっては様々な内容が書かれているのだが、その内容を読もうにも、本を開いた瞬間に周囲でその中身を見た対象全てを取り込んでしまうモンスターでもある。
捕食、単純にいたずら、中には永遠の玩具にするなどの目的を持つものなど数が多く、見た目が普通の本なのですぐに分かる事もなく、被害がそれなりに報告されている。
―――――――――――――――

…‥‥まぁ、要は開かなければただの本であるのと変わりないので、今こうやって持ち込んできても、その内容を読むような真似さえしなければ囚われることはない。

 ついでにノインによれば内部に多くの生命反応がある事から、捕食目的をもつモンスターでもなく、中で何かをしている可能性はあるが、危険性としてはやや低い方であると判断できるのだ。

「とはいえ、中にはおそらく行方不明になった生徒たちが閉じ込められていると予想できるが、救出しようにも‥‥‥」
「ご主人様の今の状態ですと、中ですぐに対応ができまセン。しかも、この本を調べた限りでは‥‥‥」
「どうも、男子しか対応せぬようじゃからなぁ…‥‥儂らが付いて行きたくとも、行けぬのじゃ」

 一応生徒会の立場もあるので、見つけた以上は中に囚われた者たちを助け出しに向かいたい。
 
 見て見ぬ振りもできないし、危険度はまだ低そうなので、なんとかやろうと思えばできるだろう。

 だがしかし、今の俺はまだリハビリ中で万全ではないし、召喚獣たちも全員男とではなく女の子なので、入ることがほぼ不可能らしいのだ。

「それで、こちらも一緒に入ってもらえないか‥‥‥か」
「んー、一応僕らは王子だから、立場的にはあれだけど‥‥‥うん、学園を担う生徒会としては放置できないし、協力するよ」

 グラディもゼノバースも、この生徒会に所属しているとはいえ一応この国の王子たち。

 なので、ちょっと王子が囚われかねない方法だが、それでも快く了承してくれた。

「普通にそちらが、また面倒なモンスターを召喚されても困るからな」
「ディー君が補助のために、狙って男のモンスターでも召喚して、それがまたヤヴァイやつだったら不味いからね。そうなる前に動いた方が楽だよ」

 あははっと軽く笑ってそう告げられたが…‥‥うん、ちょっとその手段も考えてました。

 とはいえ流石に男の召喚獣とか狙って呼べるとは思えないからなぁ‥‥‥今までの例を見る限り絶対に狙ってやるのは不可能に近い部分もありそうなので、それはやめたのである。


「でも、一つ良いかな?僕らが共に入って、中にいる男子生徒たちを見つけて救出しようにも、まずどうやって出るんだい?」
「それもそうだ。中に入って囚われてしまうのであれば、意味がないのではないか?」
「その問題も考えたけど…‥‥」

 確かに、この本の中に入ることは楽でも、そう簡単に脱出できそうにないのは、内部に囚われた者たちがいるのが証明しているだろう。

 だがしかし、囚われても出ることができないわけでもない。

「モンスター、アリスブックであれば、脱出方法は二つほどあるらしい」

 図書館内にあった、「奇妙奇天烈摩訶不思議モンスターピックアップ図鑑」に、都合よくその脱出方法が書かれていたのである。

 一つ目には、単純にアリスブック自体が放出をすること。

 要は吐き出してもらえればそれで充分らしい。

 二つ目には、内部で攻撃をしまくる事。

 中にはその本の世界があるだろうけれども、本の中‥‥‥モンスターの腹の中と変わらない。なので、ガンガン攻撃をすることによって、一つ目と同じ要領で出ることができる。


「その中で、一つ目の方法はアリスブック自身の決定だから、どうやって意思疎通するのかもわからないからできない。だからこそ、二つ目の‥‥‥」
「内部で、攻撃しまくるってことか」
「それなら確かに、できるといえばできるからね」

 王子たちも実力者だし、攻撃手段は多く持っている。

 そしてこちらも、ノイン御手製の武器をきちんと腕時計の中に詰め込んでおり、内部で暴れまくることができるのだ。

「とはいえ、不安要素もあるがのぅ。アリスブック自身は今はモノを言わぬが、内部ではどうなっておるのかもわからぬ。囚われた者たちが出たくないような状況にしている可能性もあるし、もしかすると攻撃される前に取り込もうと動かれる可能性があるのじゃ」

 本を持ちつつ、そう告げるゼネ。

 確かに、腹の中で暴れられる危険性があるならば、アリスブックもある程度の抵抗を見せる可能性があるだろう。

「その抵抗が効くとは思えないけどな」
「僕等だって、それなりにわかるからねぇ。王城内部、貴族社会での抵抗や嫌がらせ、その他諸々怪しい妨害方法なども対処可能だよ」

 さらっと黒い貴族社会の闇が垣間見えたような気がするが…‥‥うん、まぁ気にしないでおこう。城伯の地位を俺も持つとはいえ、そこまで積極的に関わるつもりもないからな。



 とにもかくにも、リハビリ中の身とは言え、ノイン御手製の補助スーツを着用すれば俺も一応動けるし、グラディたちも実力はある。

 なので、合意を得つつ、万が一の対処方法なども話し合った後に、俺たちはアリスブックの中に入り込むことにした。

「それでは行きマス。本を開いたと同時に、おそらく取り込まれますが…‥‥できるだけ、すぐに帰ってくるようにしてくだサイ」
「分かっているよ」
「本当は、御前様を入れたくはないがのぅ…‥‥まぁ、そのスーツ着用であれば、そう危険な事もあるまい」
「本当にどうなっているのそのディー君のスーツ。世に出されたら困りそうだし、販売する予定があったら絶対に国に報告をお願いするよ」

 販売する気もないが、とんでもない代物の一つなのは理解しています。

 そう思いつつも、本を開いてもらい、俺たちはその本の中の世界へ飛び込むのであった…‥‥

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