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140 ごくごくっと
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‥‥‥学園祭開催は明日。
できればそれまでに、起きているらしい面倒ごとのようなものに対して、何やら嫌な予感を抱えたゼネが全力で取り組んだ結果…‥‥
「知りたくない情報まで、何故出てきちゃったのじゃ‥‥‥いや、探してしまったのじゃ、儂…‥‥」
「うわっ、すっごい負のオーラというか、滅茶苦茶暗いけど何があった?」
朝、いつものように起床したところで、ベッドの横でズズーンっという効果音が聞こえてきそうなほど机にめり込み、落ち込むゼネを見て俺は思わずそう問いかけた。
「御前様ぁ‥‥‥儂、深淵を見ちゃったというか、知りたくなかった情報まで手に入れてしまったのじゃぁ‥‥‥!!」
がしっと服をつかみ、涙をぼろぼろこぼしながらそう口にするゼネ。
召喚獣たちの中で年長者と言えるような立場上、そうそう泣き言をこぼさないはずの彼女が、ここまでこぼしまくるというか、色々壊れたようにしてくる様は珍しい。
男装の令嬢と言えるような表情が今は崩れ、本気で落ち込んでいる一人の女性と化していた。
「‥‥‥で、何を知ったんだ?というか、何をどうして情報を探ったんだ?」
「儂、色々な情報模索手段として、いつも以上に張りきったのじゃよ…‥‥」
朝食までまだ時間もあり、手短な報告として内容を聞く。
彼女いわく、何やら自分関連っぽいので、まずは情報を持っていそうな相手を罠にかけるべく、学園内、学園外の各所に自身を模した幻影を投影し、盛大にかかる時を待っていたらしい。
8割がいつの間にかできていたらしいファンクラブによって捕獲されかけたそうだが、残りの2割で本命を引き当てたそうだ。
「そ奴ら、捕縛してちょっと軽く仮死状態にして魂を引っこ抜き、無理やり情報を提供してもらったのじゃけど‥‥‥どうもデオドラント神聖国のとある一派じゃったようなんじゃよ」
「神聖国のか?」
聞き取り方が物騒な気がしなくもないが、やり方としては正確性が非常に高く、しっかりと中身を聞き出せたらしい。
いわく、デオドラント神聖国では今、ちょっとした政変というべきか、トップの頭がいつの間にか挿げ替えられており、その者たちがとった政策によって辛うじて腐敗時代から生き延びていた者たちが次々に駆逐され、国外逃亡を図っているらしい。
そんな中で、駆逐を逃れようとしつつ、無駄に足掻こうとする者たちがおり、その者たちが今回、ゼネを狙おうとしてきたようなのだ。
「‥‥‥何でまた、ゼネを?」
「そのトップが問題でなぁ…‥‥御前様も前にちょっとだけ見たことあるじゃろ?」
「何をだ?」
「何故か生きておった儂の妹が就いておった」
「‥‥‥え?」
…‥‥調べて見たところ、実はゼネの妹に加え、その生前時に度を越えて慕いまくっていた者たちが大勢いたようで、何やら特殊な手段を用いて、時を超えて復活したらしい。
そしてあの夏休み時、ゼネを発見した妹がその者たちを結集させ、自ら動いて神聖国を乗っ取ったそうである。
「‥‥何ですカ、その行動力がある方ハ」
「聞いているだけでも、凄まじい感じですわよね」
「グゲェ」
っと、気が付けばノインたちも集まっており、彼女の話を聞いていた。
ひとまずはその色々ツッコミどころがある処も省き、話を戻す。
神聖国を乗っ取ったらしいが、その妹たちは国の権力を完全に掌握はしなかったらしい。
過去の人間が全てをつかむのも無理があるし、今の者たちだけでもより綺麗な国になるように動かしたそうだ。
まぁ、その裏の理由を調べたら、すべての掌握は色々と大変で、労働力をさけきることができなかったそうである。
だが、その部分が災いし、一部で目を付け損ねた腐敗した者たちが活発化。
そいつらを排除しているそうなのだが、その最中で何か色々な技術を盗まれたらしく、色々と鼬ごっこな部分も発生し…‥‥
「‥‥‥あ、そうか、だからゼネを狙ったのか!」
そこまで詳しく聞いたところで、ようやく俺は理解した。
あのゼネの妹はどうもシスコンをこじらせまくっているようで、彼女のトラウマメーカーでもある。
でも、逆に言えばそれだけゼネを想いまくっているのは目に見てよく分かり過ぎてしまうからこそ、ゼネを狙う事によってどうにかしようという考えを持つ者が出てもおかしくはないのだ。
「情報だと、更に神聖国の方では聖女の絵がトップの指導でより正確に変えられられたようじゃったが‥‥‥それがあだとなったようじゃな」
いかんせん、人の世の伝聞などは何処かで欠損したり、伝えが変わってしまうことが多い。
その神聖国の聖女の絵も歴代分があったそうなのだが、そのゼネの代にあたる部分…‥‥聞けば最後の聖女とされる人物の肖像画もあったそうだが、長い年月を経てだんだん変わってしまったらしい。
その事をシスコン拗らせた者が許すはずもなく、徹底的に正しいモノへと変更したのだろうが、それはゼネを狙おうとする輩にとってすれば、より正確な相手を見つける目印になってしまうも同然。
ゆえに、先日の襲撃が起き、彼女を狙う動きが判明したのであった。
「‥‥‥まぁ、そう言う動きがあるというのは分かったのじゃが、ここでさらなる訃報も分かったのじゃ」
「というと?」
「‥‥‥妹がこの情報を逃すわけもなく、儂への危害を排除しようと動いたようじゃが‥‥‥どうも別件でというか、妹も儂の事を狙っているようでな、明日には来るようじゃ」
「…‥‥居場所を突き止めちゃったのか」
「そう言う事じゃろうなぁ‥‥‥あははは‥‥うううううううっつ!!なんでこうも来るのじゃぁぁぁぁぁ!!」
視線を遠くに移し、軽い笑い声をあげるもごまかしきれず、泣き出すゼネ。
なんというか、見事な調査内容ではあったが、不幸すぎる未来を知る羽目になったようだ。
「…‥‥連れ戻しにとか、そう言う動きはそうそうできないとは思うが‥‥‥」
何しろ、生前の彼女の関係者とは言え、今のゼネは俺の召喚獣。
召喚士の召喚獣を連れ去ることは難しいだろうし、そもそもゼネ本人が絶対に逃げると思うのだが‥‥‥
「甘いのじゃ、御前様。あの妹はやるといったら確実に成しとげるだけの手数をそろえようとするからのぅ‥‥‥この国へ向かっている時点で、何か手段を確保している可能性もあるのじゃぞ!!」
ぐぐぃっと詰め寄り、涙でちょっと赤くはらした目で、そう告げるゼネ。
その言葉の説得力は非常に重い。
「そうだ、学園祭当日に来るのは分かっているんだろ?」
「そうじゃが‥‥‥」
「だったら話は早い。リリス、ゼネを匿えないか?」
「グゲェ!」
その手があったかとポンッと手を打つリリスに、その案を聞いてはっとした顔になるゼネ」
「それじゃ!!御前様!!リリスの中であればそう簡単に手出しもできぬはずじゃ!!」
何しろ、リリスの箱は強固な要塞と言っても差し支えないほどのもの。
全召喚獣の総攻撃を受けても傷ひとつもつかない強靭さを持ち、こじ開けようにもリリスが動かなければ意味はない。
「あとは、俺自身も下手すると狙われる可能性もあるからな‥‥‥」
召喚獣を狙うには、まず召喚士の方から狙う可能性もある。
「学園祭を楽しみたいけれども、そう言う時に限って油断させてくれないからなぁ…‥‥ノイン、防御用の道具とかはあるよな?」
「ハイ。すでにだいぶできており、しかも大改良を行い、ちょうどこのような形に仕上がってきまシタ」
俺の問いかけに対して、ノインが何故か谷間の方から取り出したのは、綺麗な装飾が彫られた腕時計。
カチカチと針を刻みつつも、何やら文字盤の数字がボタンとなっていた。
「‥‥あれ?ホバーブーツとかあのガントレットとかは?」
「これ一個に、全て詰め込みました。ボタン式の瞬間装着装置であり、真ん中を押せば一気に全身装着。番号のボタンを押せば部分的に装着可能デス。もう一度押せばすぐに脱衣可能という優れモノなのデス」
‥‥‥何と言うか、未知の技術というか、いつの間にか着ておく時代から、必要時に切り替えて装着可能にした時代へ変化したようである。
うん、ある程度の答えは予想していたけど、その答えを予想から進化させられてくるとは思わなかった。
「なお、ご主人様の意思で装着可能ですが、緊急時には私のこのセンサー同様の仕組みが働き、自動で装着して動きマス」
「なるほど、緊急時用の‥‥‥あれ?着るのはまだわかるけど、動くって何?」
「筋繊維モドキを備え付け、ご主人様が確認なさる前に、危険から素早く離れるようにして置きまシタ。十数秒ほどだけの、自動撃退装置が付いたと思えば良いものデス」
さらに改良を積み重ねられ、ちょっとした戦闘服のような状態にされているらしい。
何このメイド、家事ではないような分野に明らかに手を出しまくっているが‥‥‥いや、今更か。
とにもかくにも主従両者ともに対応できるようにしつつ、互に警戒を怠らない方が良いだろう。
「本当は自由に学園祭を楽しみたいけど…‥‥今回は仕方が無いか」
「なんかすまぬのぅ、御前様」
「いや、ゼネのせいじゃないって。悪いのは狙って来た者たちだからな」
ゼネをどうにかしようと企む者ども、彼女の妹の勢力などが入り混じるような、カオスな状況となるのが目に見えている。
だからこそ、ほとぼりが冷めるまで警戒を解けそうにはないが…‥‥何とか途中でどちらもお引き取り願いたいところである。
「リリス、ゼネのガードをしっかりとしておけよ」
「グゲェ!!」
「あと他の皆も、今回は彼女のために警戒を怠らないように頼む」
「了解デス。ご主人様の命令通りにいたしマス」
「まぁ、ストーカーと悪質強化ストーカーが襲って来たと考えればいいですわね」
「多分、それもっと最悪になっている。けど、凍らせれば良い話し」
「一気に上から鉄球でも落として片付く話なら楽でござろうがな…‥‥」
「わっちとしても、不審者が出た時に全力で力を抜かせてもらうでありんす」
全員に確認を取り、俺たちは一致団結する。
そんな怪しい所へも、そして時を超えてのウルトラシスコンにも彼女を引き渡さないようにしないといけない。
なんとかどちらも潰れてくれればいいが…‥‥ああ、なんでこうも騒動が起きそうになるのやら。
「ところでノイン、ちょっと聞いて良いか?」
「何でしょうカ?」
「これまでの道具だと、足に手、頭の装備だったけど3つぐらいだよな?一括で着用できるのは良いけど、数字の方で部分展開できるなら…‥‥これ、どう見ても数が多いんだけど」
「新しく作成してますからネ。全機能は流石に開放できていませんが、今後の課題デス」
…‥‥この新しい装備とかが不安になるような。何を作った。
できればそれまでに、起きているらしい面倒ごとのようなものに対して、何やら嫌な予感を抱えたゼネが全力で取り組んだ結果…‥‥
「知りたくない情報まで、何故出てきちゃったのじゃ‥‥‥いや、探してしまったのじゃ、儂…‥‥」
「うわっ、すっごい負のオーラというか、滅茶苦茶暗いけど何があった?」
朝、いつものように起床したところで、ベッドの横でズズーンっという効果音が聞こえてきそうなほど机にめり込み、落ち込むゼネを見て俺は思わずそう問いかけた。
「御前様ぁ‥‥‥儂、深淵を見ちゃったというか、知りたくなかった情報まで手に入れてしまったのじゃぁ‥‥‥!!」
がしっと服をつかみ、涙をぼろぼろこぼしながらそう口にするゼネ。
召喚獣たちの中で年長者と言えるような立場上、そうそう泣き言をこぼさないはずの彼女が、ここまでこぼしまくるというか、色々壊れたようにしてくる様は珍しい。
男装の令嬢と言えるような表情が今は崩れ、本気で落ち込んでいる一人の女性と化していた。
「‥‥‥で、何を知ったんだ?というか、何をどうして情報を探ったんだ?」
「儂、色々な情報模索手段として、いつも以上に張りきったのじゃよ…‥‥」
朝食までまだ時間もあり、手短な報告として内容を聞く。
彼女いわく、何やら自分関連っぽいので、まずは情報を持っていそうな相手を罠にかけるべく、学園内、学園外の各所に自身を模した幻影を投影し、盛大にかかる時を待っていたらしい。
8割がいつの間にかできていたらしいファンクラブによって捕獲されかけたそうだが、残りの2割で本命を引き当てたそうだ。
「そ奴ら、捕縛してちょっと軽く仮死状態にして魂を引っこ抜き、無理やり情報を提供してもらったのじゃけど‥‥‥どうもデオドラント神聖国のとある一派じゃったようなんじゃよ」
「神聖国のか?」
聞き取り方が物騒な気がしなくもないが、やり方としては正確性が非常に高く、しっかりと中身を聞き出せたらしい。
いわく、デオドラント神聖国では今、ちょっとした政変というべきか、トップの頭がいつの間にか挿げ替えられており、その者たちがとった政策によって辛うじて腐敗時代から生き延びていた者たちが次々に駆逐され、国外逃亡を図っているらしい。
そんな中で、駆逐を逃れようとしつつ、無駄に足掻こうとする者たちがおり、その者たちが今回、ゼネを狙おうとしてきたようなのだ。
「‥‥‥何でまた、ゼネを?」
「そのトップが問題でなぁ…‥‥御前様も前にちょっとだけ見たことあるじゃろ?」
「何をだ?」
「何故か生きておった儂の妹が就いておった」
「‥‥‥え?」
…‥‥調べて見たところ、実はゼネの妹に加え、その生前時に度を越えて慕いまくっていた者たちが大勢いたようで、何やら特殊な手段を用いて、時を超えて復活したらしい。
そしてあの夏休み時、ゼネを発見した妹がその者たちを結集させ、自ら動いて神聖国を乗っ取ったそうである。
「‥‥何ですカ、その行動力がある方ハ」
「聞いているだけでも、凄まじい感じですわよね」
「グゲェ」
っと、気が付けばノインたちも集まっており、彼女の話を聞いていた。
ひとまずはその色々ツッコミどころがある処も省き、話を戻す。
神聖国を乗っ取ったらしいが、その妹たちは国の権力を完全に掌握はしなかったらしい。
過去の人間が全てをつかむのも無理があるし、今の者たちだけでもより綺麗な国になるように動かしたそうだ。
まぁ、その裏の理由を調べたら、すべての掌握は色々と大変で、労働力をさけきることができなかったそうである。
だが、その部分が災いし、一部で目を付け損ねた腐敗した者たちが活発化。
そいつらを排除しているそうなのだが、その最中で何か色々な技術を盗まれたらしく、色々と鼬ごっこな部分も発生し…‥‥
「‥‥‥あ、そうか、だからゼネを狙ったのか!」
そこまで詳しく聞いたところで、ようやく俺は理解した。
あのゼネの妹はどうもシスコンをこじらせまくっているようで、彼女のトラウマメーカーでもある。
でも、逆に言えばそれだけゼネを想いまくっているのは目に見てよく分かり過ぎてしまうからこそ、ゼネを狙う事によってどうにかしようという考えを持つ者が出てもおかしくはないのだ。
「情報だと、更に神聖国の方では聖女の絵がトップの指導でより正確に変えられられたようじゃったが‥‥‥それがあだとなったようじゃな」
いかんせん、人の世の伝聞などは何処かで欠損したり、伝えが変わってしまうことが多い。
その神聖国の聖女の絵も歴代分があったそうなのだが、そのゼネの代にあたる部分…‥‥聞けば最後の聖女とされる人物の肖像画もあったそうだが、長い年月を経てだんだん変わってしまったらしい。
その事をシスコン拗らせた者が許すはずもなく、徹底的に正しいモノへと変更したのだろうが、それはゼネを狙おうとする輩にとってすれば、より正確な相手を見つける目印になってしまうも同然。
ゆえに、先日の襲撃が起き、彼女を狙う動きが判明したのであった。
「‥‥‥まぁ、そう言う動きがあるというのは分かったのじゃが、ここでさらなる訃報も分かったのじゃ」
「というと?」
「‥‥‥妹がこの情報を逃すわけもなく、儂への危害を排除しようと動いたようじゃが‥‥‥どうも別件でというか、妹も儂の事を狙っているようでな、明日には来るようじゃ」
「…‥‥居場所を突き止めちゃったのか」
「そう言う事じゃろうなぁ‥‥‥あははは‥‥うううううううっつ!!なんでこうも来るのじゃぁぁぁぁぁ!!」
視線を遠くに移し、軽い笑い声をあげるもごまかしきれず、泣き出すゼネ。
なんというか、見事な調査内容ではあったが、不幸すぎる未来を知る羽目になったようだ。
「…‥‥連れ戻しにとか、そう言う動きはそうそうできないとは思うが‥‥‥」
何しろ、生前の彼女の関係者とは言え、今のゼネは俺の召喚獣。
召喚士の召喚獣を連れ去ることは難しいだろうし、そもそもゼネ本人が絶対に逃げると思うのだが‥‥‥
「甘いのじゃ、御前様。あの妹はやるといったら確実に成しとげるだけの手数をそろえようとするからのぅ‥‥‥この国へ向かっている時点で、何か手段を確保している可能性もあるのじゃぞ!!」
ぐぐぃっと詰め寄り、涙でちょっと赤くはらした目で、そう告げるゼネ。
その言葉の説得力は非常に重い。
「そうだ、学園祭当日に来るのは分かっているんだろ?」
「そうじゃが‥‥‥」
「だったら話は早い。リリス、ゼネを匿えないか?」
「グゲェ!」
その手があったかとポンッと手を打つリリスに、その案を聞いてはっとした顔になるゼネ」
「それじゃ!!御前様!!リリスの中であればそう簡単に手出しもできぬはずじゃ!!」
何しろ、リリスの箱は強固な要塞と言っても差し支えないほどのもの。
全召喚獣の総攻撃を受けても傷ひとつもつかない強靭さを持ち、こじ開けようにもリリスが動かなければ意味はない。
「あとは、俺自身も下手すると狙われる可能性もあるからな‥‥‥」
召喚獣を狙うには、まず召喚士の方から狙う可能性もある。
「学園祭を楽しみたいけれども、そう言う時に限って油断させてくれないからなぁ…‥‥ノイン、防御用の道具とかはあるよな?」
「ハイ。すでにだいぶできており、しかも大改良を行い、ちょうどこのような形に仕上がってきまシタ」
俺の問いかけに対して、ノインが何故か谷間の方から取り出したのは、綺麗な装飾が彫られた腕時計。
カチカチと針を刻みつつも、何やら文字盤の数字がボタンとなっていた。
「‥‥あれ?ホバーブーツとかあのガントレットとかは?」
「これ一個に、全て詰め込みました。ボタン式の瞬間装着装置であり、真ん中を押せば一気に全身装着。番号のボタンを押せば部分的に装着可能デス。もう一度押せばすぐに脱衣可能という優れモノなのデス」
‥‥‥何と言うか、未知の技術というか、いつの間にか着ておく時代から、必要時に切り替えて装着可能にした時代へ変化したようである。
うん、ある程度の答えは予想していたけど、その答えを予想から進化させられてくるとは思わなかった。
「なお、ご主人様の意思で装着可能ですが、緊急時には私のこのセンサー同様の仕組みが働き、自動で装着して動きマス」
「なるほど、緊急時用の‥‥‥あれ?着るのはまだわかるけど、動くって何?」
「筋繊維モドキを備え付け、ご主人様が確認なさる前に、危険から素早く離れるようにして置きまシタ。十数秒ほどだけの、自動撃退装置が付いたと思えば良いものデス」
さらに改良を積み重ねられ、ちょっとした戦闘服のような状態にされているらしい。
何このメイド、家事ではないような分野に明らかに手を出しまくっているが‥‥‥いや、今更か。
とにもかくにも主従両者ともに対応できるようにしつつ、互に警戒を怠らない方が良いだろう。
「本当は自由に学園祭を楽しみたいけど…‥‥今回は仕方が無いか」
「なんかすまぬのぅ、御前様」
「いや、ゼネのせいじゃないって。悪いのは狙って来た者たちだからな」
ゼネをどうにかしようと企む者ども、彼女の妹の勢力などが入り混じるような、カオスな状況となるのが目に見えている。
だからこそ、ほとぼりが冷めるまで警戒を解けそうにはないが…‥‥何とか途中でどちらもお引き取り願いたいところである。
「リリス、ゼネのガードをしっかりとしておけよ」
「グゲェ!!」
「あと他の皆も、今回は彼女のために警戒を怠らないように頼む」
「了解デス。ご主人様の命令通りにいたしマス」
「まぁ、ストーカーと悪質強化ストーカーが襲って来たと考えればいいですわね」
「多分、それもっと最悪になっている。けど、凍らせれば良い話し」
「一気に上から鉄球でも落として片付く話なら楽でござろうがな…‥‥」
「わっちとしても、不審者が出た時に全力で力を抜かせてもらうでありんす」
全員に確認を取り、俺たちは一致団結する。
そんな怪しい所へも、そして時を超えてのウルトラシスコンにも彼女を引き渡さないようにしないといけない。
なんとかどちらも潰れてくれればいいが…‥‥ああ、なんでこうも騒動が起きそうになるのやら。
「ところでノイン、ちょっと聞いて良いか?」
「何でしょうカ?」
「これまでの道具だと、足に手、頭の装備だったけど3つぐらいだよな?一括で着用できるのは良いけど、数字の方で部分展開できるなら…‥‥これ、どう見ても数が多いんだけど」
「新しく作成してますからネ。全機能は流石に開放できていませんが、今後の課題デス」
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