憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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118 何もないからこそ見えやすいものもあって

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「…‥‥ふぅ、ここの風呂は中々良いですヨネ」
「森林国の風呂場は木の香り漂うけれども、ここも同じ感じがするニャ」
「わたくしがちょっと交渉して、普通の風呂ではなく薬草風呂にいたしましたからね。美容効果などが見込める成分入りなのですわ」

 夕食も済み、風呂に入る者たちが続々と出る中、ルナティアもここへ留学して初めて寮の風呂に入りに来たのだが、偶然にもノインたちと風呂を共にするに事になった。

「ところで、召喚獣って召喚獣用のお風呂場があると聞いたけれども、何で全員こっちに入っているのニャ?」
「色々とありマス」


…‥‥容姿的に、どう見ても美女たちばかりな彼女達。

 召喚獣なので召喚獣用の風呂場も用意されていることは用意されていたのだが、覗きが横行しかけ、色々と手続きを経て、この女子寮用の女子風呂に入浴する許可をもらったのである。

 一応、容姿は人型とは言え、彼女達は召喚獣であり、モンスター。

 ともに風呂に入る人たちに不安を与えかねない可能性も考慮して、自主的にある程度の貢献をするようにも心掛けているのである。

 良い例とすれば、先ほどカトレアが言った薬草の提供による薬草風呂などであろう。

 その事で多くの女性陣から感謝され、配合も毎回変えて提供するようにしていたのであった。



「…‥‥そういう事情があるのニャね」
「そうなのデス。とは言え、私たちはご主人様の召喚獣であり、いざという時は風呂場を飛び出してすぐに迎えるようにはしていマス」
「着替えとか大丈夫なのかニャ?」
「瞬間着替えのテクニックは身に着けていマス」

 というか、そもそも衣服を別に着る必要性自体は無かったりする。

 カトレア、リリスなどが良い例でもありつつ、衣服を着るのはそもそもモンスターにとって無意味な事も多い。

 最初から衣服を着ている者もいるが、どちらかと言えば衣服というより自身の一部である皮膚のような認識をしていたりもするのである。

「まぁ、儂は元々人間じゃしな…‥‥そこの感覚は他の者とは違う事をはっきり言っておくのじゃ」
「そういうものなのかニャ」

 ふぅっと息を吐きながら浸かるゼネの言葉に、首をかしげるルナティア。

 人それぞれ、モンスターにとっての事情などもあるだろうし、これ以上探る意味もないだろう。

「なんにしても、こういう風呂場に浸かるのは気持ちいいというのは、どの様な者でも大概は同じ意見になるでござるよ」
「ん‥‥‥温かい、ゆっくり浸かれる‥‥‥布団とはまた違った、癒し‥‥‥」
「‥‥‥アナスタシアさん、溶けているニャ」
「冷やせば戻りますし、そのままで大丈夫デス」

 液状化して風呂の湯と一体になりかけている彼女ではあったが、一応分離はできるので問題は無さそうであった。


「それにしてもニャ‥‥‥」

 ツッコミをそろそろ放棄して諦めるべきかと考え始めながらも、ふと、ルナティアは周囲を見渡す。

 この湯に浸かっているのは現在彼女と、その他ディーの召喚獣たちばかりであり、他の者の姿はほとんど見ない。

 偶然、貸し切り状態のようなものだと思いつつも、他の様々な点が嫌でも目につきやすい状況ではあった。

「‥‥‥皆、スタイル良いニャ」


…‥‥猫の獣人であるルナティア。

 ややスレンダーな体型でありながらも、女の子としてのスタイルの部分は気にしているところもあり、この状況だと色々と見えてしまうところがある。

 というか、そのせいでまず、この場に誰もいないのではないかと彼女は思い始める。


 何しろ、風呂場というのは基本的に裸の付き合いの場であり、普段は衣服に隠されているようなところがさらけ出される場。

 バスタオルなどで隠していようがいまいが、布一枚隔てようがそれでも普段以上にはっきりと見えてしまうのだ。

「‥‥‥」

 己の身体を見て、他の者たちを見て、内心へこむルナティア。

 以前、色々と行動を共にしたことがあったとはいえ、やはりこのような場だと女として何かと負けたような気になってしまうのは悲しい事であった。

「スタイルの秘訣とか、無いかニャ?」
「私はそもそもこのように作られていマス」
「天然ですわね。自然に成長した結果ですわ」
「グゲェ」
「わっちは姿が変わった時にこうなっただけでありんすしなぁ」

 胸部が豊か組に聞いてみれば、全然参考にならない返答ばかり。

「拙者はさらしで押さえているでござるが、それでもちょっと欲しいとは思うでござるよ」
「儂はもともとこれじゃからなぁ‥‥‥いやまぁ、BとCの中間じゃし、これ以上あったら妹に更に強襲されていた可能性を考えるとこのままでよかったと思えるのじゃ」

 割と良い組に聞いてみれば、こちらはこちらで参考にならなかった。

「アナスタシアさんは‥‥‥今液状化しているニャね。スタイル良さそうだけど、これはこれで究極かニャ?」
「液体‥‥‥こういうのも、良い」

 参考にするどころかもはや別状態な彼女も参考にはならないだろう。ただ、布団に籠っていたりすることが多いと聞くのに、溶けている時以外のスタイルが良いのは分かっている。

「何だろうニャァ‥‥‥。ディーに召喚される召喚獣は、同性のあたしが言うのもなんだけど、美女しか出ない呪いでもかかっているのかニャ?」

 ばかばかしい仮定ではあるが、こうも色々と見せ付けられるとそう思わないとやっていられない気分になりそうである。

 彼女もちょっと自分の体に自負していたが、ノインたちを見るとそれが木っ端みじんに砕けてしまった。

 おそらくは、森林国のエルフとか、目の保養国と言われるだけの美男美女たちが彼女達を見れば、それこそその名称を返却しなければならない事態になるかもしれない。

(‥‥‥引き込めればとか、言って居た人もいたけれども、目の保養国の名称を失う可能性が絶対に大きいと思うのニャ)

 内心そう思いつつも、すでにその名称はノインたちのせいで失せているのではないだろうかと思うのであった。






…‥‥そしてこの時、ルナティアは気が付いていなかったが、その他の面々は気が付いていた。

 時間も経過し、そろそろ彼女達が上がる頃合いを見計らって入浴しに来た者たちがいたことを。

 そしてその中には、自然にしつつも目を向けている者たちがおり、その中にある感情が通常のものとは異なる者も確認していた。


(…‥‥共に入浴しないのは、何故でしょうカ。情報を集めたいのであれば、上がる頃合いではなく、共に入浴すればいい話しだとは思いますガ)
(‥‥‥あー、儂としては、生前の感じじゃとなんかわかるかもしれん。情報を集めたくとも、自然と比較してしまってそれぞころじゃなくなる可能性もあるからのぅ。…‥‥あと何か、ものすっごい覚えのあるような目力を感じるのは気のせいじゃろうか。気のせいであって欲しいのじゃが…‥‥)

 それぞれ内心別々の事を思いながらも、風呂から上がり、同時にあがってきていたディーの元へすぐに向かうのであった。

「…‥‥入浴時間、ちょうどぴったりで上がってこられるってある意味すごいな」
「ご主人様の時間を把握していますからネ」
「あと、なんか男湯の壁際で転がっていた奴がいたんだが」
「覗き防止用のトラップを、先日学園長に申請し、正式採用されましたからネ。熱湯急所直撃砲など、暴漢対策用の試作品を試すのにも都合よかったのデス」
「…‥‥色々とえげつないというか、断末魔を上げていた奴がいたのはそのせいだったか…‥‥」


‥‥‥なお、後に犠牲者は増加するのだが、それでも挑戦する者は後を絶たなかったようである。

 罠の配置などを把握し切ったモノが裏ルートで販売されるなどあったようだが、勿論それも掌握済みであり、毎回きちんと変更されて迎撃される者がいたようであった。

 タンクマン学科所属の者はわざとかかるようになっていたらしいが‥、それもある意味入浴時の名物になっていただろう。

 そしてついでに防音も施され、断末魔も次第に失せていくのであった…‥‥断末魔を上げる間もなく、様々な意味で終わる者が多くなっていたというのもあったが‥‥‥‥
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